本記事は、YouTube動画『巨大IPOで投資信託の中身はどうなるのか』の内容を基に構成しています。
新NISAをきっかけに、S&P500やオール・カントリー、いわゆる「オルカン」を積み立てている人は増えています。
一度設定してしまえば、あとは毎月自動的に積み立てていくだけ。インデックス投資には、こうした手軽さがあります。
しかし、ここで意外と見落とされているのが、「自分が買っている投資信託の中身はずっと同じではない」という点です。
大型企業が新規上場すれば、株価指数への採用によって投資信託の構成銘柄が変化する可能性があります。また、同じ米国株を対象とする指数でも、S&P500とNASDAQ100では企業を採用する基準が大きく異なります。
動画では、巨大IPOをきっかけにインデックスファンドの中身がどのように変わるのか、そしてS&P500、オルカン、NASDAQ100、NYダウ、TOPIX、読売333などをどのように考えればよいのかについて詳しく解説されています。
そもそもインデックスファンドの「指数」とは何なのか
インデックスファンドを理解するうえで、まず知っておきたいのが「指数」と「インデックスファンド」の関係です。
歴史的には、インデックスファンドより先に株価指数が存在しました。
ニューヨーク・ダウのような株価指数は、もともと「今日は株式市場全体が上がったのか、下がったのか」を分かりやすく示すために作られたものです。
日本の日経平均株価も、基本的にはニューヨーク・ダウと似た考え方から生まれています。
その後、「市場全体の値動きを示す指数があるのなら、その指数そのものに投資すればよいのではないか」という考え方が登場します。
そこから発展したのがインデックス投資です。
現在では、企業の時価総額に応じて組み入れ比率を決める「時価総額加重型」の指数が主流となっています。
代表例が、
- S&P500
- MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
- TOPIX
などです。
つまり、インデックス投資とは「市場に参加している企業を時価総額に応じて広く保有する」という考え方だと理解できます。
巨大IPOが起きると投資信託の中身も変わる
巨大企業が株式市場に上場すると、市場全体の構成そのものが変化します。
その企業の時価総額が非常に大きければ、当然ながら各種株価指数にとっても無視できない存在になります。
そして株価指数に採用されれば、その指数への連動を目指すインデックスファンドやETFも、その企業の株式を購入することになります。
ここで重要なのが、「巨大企業ならどの指数にもすぐ採用されるわけではない」という点です。
指数ごとに採用基準が異なるためです。
動画ではSpaceXのIPOを例に、S&P500、MSCI系指数、NASDAQ100などで対応が異なるケースが紹介されています。
つまり、同じ「米国株インデックス投資」であっても、どの指数を選ぶかによって保有する企業が変わってくるわけです。
S&P500は企業の採用基準がかなり厳しい
動画の中で特に注目されていたのがS&P500です。
S&P500は、単純に「米国の時価総額上位500社」を並べた指数ではありません。
指数への採用には複数の条件があります。
たとえば動画では、上場後一定期間売買されていることや、市場で実際に売買可能な株式の割合が一定以上あることなどが紹介されています。
中でも重要なのが「財務の健全性」です。
動画によれば、S&P500への採用には、過去4四半期の利益合計が黒字であり、さらに直近四半期も黒字であることなどが求められます。
つまり、注目度や成長期待が非常に高い企業であっても、利益面の条件を満たさなければ簡単には採用されません。
さらに、条件をすべてクリアしたからといって、自動的に採用されるわけでもありません。
最終的には指数委員会による判断が入ります。
この点は、一定の条件を満たせば比較的機械的に採用される指数との大きな違いです。
「話題の企業が入っていない」のはS&P500の弱点とは限らない
新しい成長企業が登場すると、「S&P500にもすぐ入れてほしい」と考える投資家もいるでしょう。
特にAI、宇宙、半導体など、今後大きく成長すると期待されている企業であればなおさらです。
しかし動画では、S&P500が簡単に採用基準を緩和しない姿勢について肯定的に評価しています。
S&P500は世界で非常に多くの投資商品に利用される指数です。
そのため、単に話題性の高い企業を入れるのではなく、一定の財務品質を保つという思想があると考えられます。
一見すると「新しい成長企業への対応が遅い」という弱点にも見えます。
しかし別の見方をすれば、「一定の実績が確認できるまで採用しない」という品質管理の役割を果たしているとも言えるでしょう。
オルカンやNASDAQ100では新しい大型企業が入りやすい場合もある
一方、MSCI系の指数やNASDAQ100では、採用ルールがS&P500とは異なります。
通常、株価指数は定期的に構成銘柄の見直しを行います。
ただし、極めて時価総額の大きな企業が新規上場した場合には、「ファストエントリー」のような特例を設け、通常の見直しを待たずに組み入れるケースもあります。
巨大企業が上場したにもかかわらず、長期間指数から除外してしまうと、市場全体を正確に表しにくくなるからです。
そのため、オルカンやNASDAQ100などでは、新興の巨大企業をS&P500より早く保有する可能性があります。
ここには明確な考え方の違いがあります。
S&P500は企業の財務面や実績を重視する一方、時価総額型の指数は「現在の市場をできるだけ正確に反映する」という役割を重視します。
どちらが正しいという話ではなく、指数の設計思想が違うのです。
浮動株が少ない企業は組み入れ比率も小さくなる
大型企業が指数に採用されたからといって、必ず大きな比率になるわけではありません。
ポイントになるのが「浮動株」です。
浮動株とは、大株主などが長期保有している株を除き、市場で実際に売買できる株式のことです。
IPO直後の企業では、創業者や既存株主が大量の株式を持ったままであることも珍しくありません。
この場合、企業全体の時価総額は巨大でも、市場で実際に売買できる株式は少なくなります。
時価総額加重型指数でも、浮動株ベースで計算するタイプでは組み入れ比率が小さくなる可能性があります。
その後、ロックアップ期間が終了し、市場で売買可能な株式が増えていけば、指数に占める比率が高くなることもあります。
つまり、インデックスファンドの中身は一度決まったら固定されるものではありません。
企業の成長、市場評価、株式の流通量などに応じて常に変化しています。
オルカンやS&P500を「何となく買う」だけでは分からないこともある
インデックス投資の最大のメリットの1つは、自分で企業を選ばなくても幅広い企業に投資できることです。
しかし、その便利さゆえに「何に投資しているのか分からない」という状態にもなりがちです。
新しく上場した赤字企業が指数に採用されれば、自分でその企業を選んでいなくても、インデックスファンドを通じて間接的に保有することになります。
これを将来の成長企業を自動的に取り込めるメリットと考えることもできます。
一方で、収益性がまだ確立されていない企業まで自動的に保有するリスクと考えることもできます。
だからこそ、「S&P500だから安心」「オルカンだから安心」と商品名だけを見るのではなく、その裏側にある指数の採用ルールまで理解しておくことが重要です。
オルカンは依然としてコア資産の有力候補
動画では、こうした違いを踏まえながらも、オルカンのような世界株式インデックスを否定しているわけではありません。
オルカンは世界中の企業へ時価総額に応じて分散投資する、非常にオーソドックスな指数です。
投資理論の観点でも、市場全体を時価総額に応じて保有する考え方には合理性があります。
そのため、資産形成の「コア」としてオルカンを持つ考え方は、今後も十分有力でしょう。
ただし、動画では「オルカンやS&P500だけが唯一の正解ではない」という視点も紹介されています。
NYダウという意外な選択肢
そこで登場するのがNYダウです。
NYダウはわずか30銘柄で構成されています。
しかもS&P500のような時価総額加重型ではなく、株価を基準とする「株価平均型」の指数です。
さらに銘柄選定には人間の判断が大きく関わります。
採用されるのは、米国を代表し、持続的な成長が期待され、多くの投資家から高い関心を集める企業です。
ある意味では「米国を代表する優良企業を30社に厳選した指数」と見ることもできます。
動画では、2000年末以降のNYダウとS&P500のパフォーマンス比較も紹介されています。
足元ではS&P500が優勢なものの、過去にはNYダウの方が強かった時期もありました。
さらに興味深いのがリスクです。
30銘柄しかないにもかかわらず、動画で示された比較では、NYダウのボラティリティはS&P500より小さくなっていました。
これは、銘柄数だけでは分散効果を判断できないことを示す興味深い例です。
厳選された質の高い企業を組み入れていることが、結果としてリスク抑制につながっている可能性があります。
日本株ならTOPIXと日経平均は性格が違う
日本株についても同様です。
代表的な指数としてTOPIXと日経平均がありますが、設計思想はかなり違います。
TOPIXは日本株市場を広くカバーする時価総額型の指数です。
一方、日経平均は225銘柄で構成され、NYダウと同じく株価平均型に近い仕組みを持っています。
そのため、一部の値がさ株の影響を受けやすいという特徴があります。
日本企業全体の成長を広く取り込みたいのであればTOPIX、厳選された225銘柄で構成される日経平均を選ぶのであれば日経平均というように、目的によって考え方が変わってきます。
「読売333」という新しい日本株指数
動画では、比較的新しい日本株指数として「読売333」も紹介されています。
読売333は、その名前の通り333銘柄で構成される指数です。
特徴は、333銘柄をほぼ均等な比率で保有する点です。
1銘柄当たりおよそ0.3%になるため、トヨタ自動車のような巨大企業でも、中小型銘柄でも基本的な比率は同じです。
この仕組みでは、値上がりして比率が高くなった銘柄をリバランス時に売り、値下がりした銘柄を買うことになります。
そのため、結果として逆張り的な運用になります。
さらに時価総額加重型と比較すると、小型株や割安株の影響が大きくなるという特徴があります。
動画で紹介されたシミュレーションでは、2002年1月末を100として比較した場合、読売333はTOPIXを上回る成績となっていました。
また、リターンとリスクのバランスという意味でも興味深い結果が紹介されています。
読売333にも弱点はある
もちろん、均等加重型にもデメリットがあります。
333銘柄すべてをほぼ同じ比率で保有するため、ファンドの運用規模が大きくなりすぎると、小型株を大量に購入しなければならなくなります。
市場での売買量が少ない銘柄を大量に買えば、自ら株価を押し上げてしまう可能性もあります。
動画では、ファンド規模が非常に大きくなった場合、運用そのものが難しくなる可能性についても触れられています。
つまり、均等加重型は非常に面白い仕組みではあるものの、時価総額加重型とは別の弱点を抱えているということです。
高配当投資信託は「分配金の多さ」だけで選ばない
動画後半では、高配当株ファンドについても取り上げられています。
ここで注意したいのが、投資信託の「分配金」と、企業が支払う「配当金」は同じものではないという点です。
高配当株ファンドが保有する企業から多くの配当を受け取っているからといって、その金額がそのまま投資家への分配金になるわけではありません。
投資信託では運用益などから分配金を支払うことも可能です。
したがって「分配金が多い=優れた高配当投資信託」と単純に考えるべきではありません。
重要なのは、何のためにそのファンドを買うのかという目的です。
「オールカントリー高配当株」という考え方
動画では、高配当株に投資したい人向けの選択肢として、世界の高配当株へ投資するタイプのファンドも紹介されています。
単純に配当利回りが高い企業だけを集めるのではなく、配当の継続性や企業の質なども考慮する指数です。
また、通常のオルカンとは構成業種も異なります。
動画では、通常のオルカンと高配当株指数の相関係数がおよそ0.8なのに対し、S&P500とオルカンは期間によっては0.97程度になるとの説明もありました。
S&P500とオルカンは別の商品ではあるものの、値動きがかなり似ています。
そのため、本当の意味で値動きを分散したいのであれば、単にS&P500とオルカンを両方買うのではなく、異なる性質を持つ資産を組み合わせるという考え方もあります。
投資信託は「3つくらい」に絞るのも1つの考え方
動画では最終的に、複数の投資信託を組み合わせたポートフォリオの話へ進みます。
たとえば、
- 米国株としてNYダウ
- 日本株としてTOPIX
- 株式以外の資産として金
という組み合わせです。
もう少し攻めたいのであれば、金の代わりにNASDAQ100など成長株色の強い指数を入れるという考え方も紹介されています。
もちろん、この組み合わせが絶対的な正解というわけではありません。
オルカン1本、S&P500一本という方法も十分合理的です。
重要なのは、「なぜその投資信託を持っているのか」を自分で説明できることです。
「ほったらかし投資」でも中身は知っておいた方がいい
インデックス投資では「一度買ったら、あとはほったらかしでよい」と言われることがあります。
長期投資では、頻繁に売買しないという意味では確かに重要な考え方です。
しかし動画では、完全に無関心になるのではなく「ほどよく投資に関わった方がよい」という考え方も示されています。
自分が何に投資しているのか分からなくなってしまうほど商品を増やす必要はありません。
3つ程度であれば、それぞれの役割も把握しやすくなります。
たとえば、
「これは米国株」
「これは日本株」
「これは株式以外の資産」
というように役割を明確にしておけば、市場が大きく動いた時にも、自分が何を持っているのか理解しやすくなります。
インデックスファンドの低コストも永遠とは限らない
もう1つ動画で触れられていた興味深いテーマが、インデックスファンドのコストです。
S&P500やMSCIなどの指数は、運用会社が自由に使えるわけではありません。
インデックスファンドを設定する運用会社は、指数を提供している「インデックスプロバイダー」にライセンス料を支払っています。
動画では、こうしたライセンス料が上昇しているとの話も紹介されています。
現在は低コスト競争が進み、非常に安い信託報酬の商品が増えています。
しかし指数使用料などが上昇すれば、そのコストが将来的に投資家へ転嫁される可能性もあります。
「インデックスファンドはずっと低コスト」という前提も、必ずしも固定されたものではないということです。
まとめ
今回の動画で重要なのは、「インデックス投資は何も考えずに買うものではない」という点です。
S&P500、オルカン、NASDAQ100、NYダウ、TOPIX、日経平均、読売333。それぞれ同じ「インデックス」と呼ばれていますが、中身を決める仕組みは大きく異なります。
S&P500は財務健全性などの採用条件が厳しく、企業の品質を重視する特徴があります。
一方、オルカンなどの時価総額型指数は、世界の株式市場を幅広く保有することを重視します。
NASDAQ100は成長企業やテクノロジー企業への比重が大きくなりやすく、NYダウは米国を代表する30社を厳選するという特徴があります。
日本株でも、TOPIX、日経平均、読売333では考え方が全く異なります。
また、巨大IPOが発生すれば、指数の構成銘柄や比率も変化します。
私たちが何もしなくても、インデックスファンドの中身は市場の変化に合わせて少しずつ入れ替わっているのです。
だからこそ重要なのは、「オルカンだから」「S&P500だから」という理由だけで選ぶのではなく、その指数がどのようなルールで企業を選び、どのような思想で作られているのかを知ることです。
長期投資で毎日の値動きを追いかける必要はありません。
しかし、自分のお金がどのような仕組みで運用されているのかを理解しておくことは、長期的な資産形成を続けるうえで大きな意味があります。
インデックス投資は「何も考えなくていい投資」ではなく、「仕組みを理解したうえで、市場全体の成長に任せる投資」と考えると、より納得感のある運用ができるのではないでしょうか。


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