本記事は、YouTube動画『年末ラリーは来る?S&P500が最高値目前。利上げ局面でも米国株が上がる3つの条件をプロ投資家の視点で徹底解説』の内容を基に構成しています。
米国株では、金利上昇局面にもかかわらずS&P500が高値圏で推移し、年末に向けた「年末ラリー」への期待が意識されています。
一般的には、政策金利の引き上げは株式市場にとって逆風と考えられています。金利が上がれば企業の資金調達コストが増え、債券などの利回りも上昇するため、株式の相対的な魅力が低下しやすいためです。
ところが過去の米国株を見ると、利上げが始まった後でも株価が上昇したケースは少なくありません。
動画では、年末にかけて米国株が上昇するための条件として、「利上げのペース」「市場に出回るお金の量」「年末特有の季節性」の3つに注目しています。
重要なのは「利上げしたから下がる」「年末だから上がる」と単純に考えるのではなく、株価上昇を支える条件がどこまで揃っているのかを確認することです。
年末ラリーに必要とされる3つの条件
動画で挙げられている条件は、大きく3つです。
1つ目は、FRBによる利上げが急激ではなく、緩やかなペースで進むことです。
2つ目は、市場に十分な資金、つまり「流動性」が供給されることです。
3つ目は、クリスマスラリーなど、年末から年始にかけて見られやすい季節的な株高傾向です。
この3つが同時に揃えば、S&P500が年末に向けてさらに高値を目指す可能性が高まるのではないか、というのが動画の基本的な見方です。
条件1 利上げの「有無」より「ペース」が重要
利上げ後に株価が下落するとは限らない
利上げは株価にとって悪材料と考えられがちですが、動画では「利上げそのものより、どれくらいの速さで金利を上げるのかが重要」と説明しています。
動画で紹介されたチャールズ・シュワブの分析では、第2次世界大戦後の18回の利上げ局面について、最初の利上げ後にS&P500が最も下落した時点までの下落率は平均約14%でした。
つまり、利上げ開始後に10%を超える調整が起きること自体は、歴史的にはそれほど珍しい現象ではないということです。
しかし、利上げ局面を「急速な利上げ」と「緩やかな利上げ」に分けると、その後の株価には大きな差が生じています。
動画によると、最初の利上げから12か月の間に記録した最大下落率は、急速な利上げの場合が平均約16%、緩やかな利上げの場合が平均約12%でした。
さらに大きな違いが出るのが、1年後の株価です。
緩やかな利上げの場合、12か月後のS&P500は平均約10.5%上昇している一方、急速な利上げの場合は平均約3.6%下落していたと紹介されています。
仮に利上げ開始時点で100万円を投資していた場合、単純計算では緩やかな利上げなら約110万円、急速な利上げなら約96万円となります。
同じ「利上げ」であっても、その進め方によって株式市場への影響はかなり異なるということです。
急速な利上げが株価に厳しい理由
利上げのペースによって株価の反応が異なる理由について、動画では「中央銀行が利上げする理由そのものが違う」と説明しています。
緩やかな利上げは、景気や企業業績が比較的堅調ななかで、金利を正常な水準へ戻していくケースです。
一方、急速な利上げは、インフレを抑えるために景気を冷やすことを承知の上で金融引き締めを進める局面です。
代表的な例として挙げられているのが2022年です。
動画では、FRBが2022年3月から12月までの約9か月間で、ほぼ0%だった政策金利を4.25~4.50%まで引き上げたことを紹介しています。
同年のS&P500は年間で約19%下落しました。
急激な金融引き締めが企業業績や株式のバリュエーションに強い下押し圧力をかけた例といえます。
利上げ開始後は時間とともに回復するケースも
動画では、ゴールドマン・サックスの分析として、利上げ開始後3か月間のS&P500は平均約2%下落している一方、12か月後には平均約9%上昇しているというデータも紹介しています。
さらに1994年以降の6回の利上げ局面では、最初の数か月は株価が苦戦しやすいものの、5か月目付近から持ち直し、12か月後のリターン中央値はプラス10.7%だったとしています。
したがって、利上げ開始直後だけを見ると株価は弱くなりやすいものの、経済が耐えられる程度の利上げであれば、半年から1年という期間では上昇に転じるケースもあったということです。
1997年の利上げと現在のAI相場
動画が現在の株式市場を考えるうえで参考例として挙げているのが、1997年です。
当時はインターネットが急速に普及し始め、新しい技術に大量の投資資金が流れ込んでいました。
現在のAIブームと似た構図があったという見方です。
1997年3月にFRBが利上げを実施しましたが、動画では、その後S&P500は2か月で約8%上昇し、1年後には約42%上昇したと紹介しています。
金利上昇による株価への逆風よりも、新技術が生み出す将来の成長期待が上回ったという解釈です。
現在もAI関連投資への期待が非常に強いため、「金利上昇より成長期待が優勢になる」という似た動きが起こる可能性があると動画では考えています。
ただし、1997年から約3年後の2000年にはITバブルが崩壊しました。
そのため、AIへの成長期待が金利上昇を上回る局面が続いたとしても、それが永続するとは限りません。
上昇相場が続く局面ほど、過度な楽観には注意が必要です。
今回の利上げは「緩やかな利上げ」なのか
動画では、FRBの金利見通しを基に、現在の利上げについて「急速な利上げよりも緩やかな利上げに近い」と判断しています。
動画内では、2026年末の政策金利見通しが4.1%とされており、現在の政策金利3.75~4.00%から考えると、年内の追加利上げは1回程度になるとの見方が示されています。
さらに2027年末も4.1%とされているため、利上げ後はしばらく金利を維持するシナリオが示されていると説明しています。
2022年のように短期間で4%以上金利を引き上げるケースとは異なり、今回の引き締め幅は限定的になるという見方です。
そのため動画では、年末ラリーの1つ目の条件である「緩やかな利上げ」は、現時点では満たされていると評価しています。
ただし、S&P500はすでに高値圏にあるため、過去の平均リターンがそのまま再現されるとは限らないとも指摘しています。
S&P500は割高なのか
予想PERは低下している
株価が最高値付近にあると、「米国株は高すぎるのではないか」と考える投資家も多くなります。
しかし、割高かどうかは、使用する指標によって見え方が変わります。
動画ではまず、企業利益と株価を比較する「予想PER」を取り上げています。
紹介されているファクトセットの集計では、S&P500の予想PERは年初の22.2倍から、9月11日時点では19.1倍へ低下したとされています。
株価そのものは上昇しているにもかかわらずPERが下がっている理由は、企業利益が株価以上に増えているためです。
動画では、S&P500採用企業の4~6月期利益が前年同期比52%増、一部の巨大企業を除く493社でも31.8%増となり、7~9月期についても28.9%増益が見込まれていると説明しています。
例えば株価が10%上昇していても、利益が30%増えていれば、利益から見た株価の割高感はむしろ低下します。
この意味では、米国株は最高値圏にあっても、企業利益を基準にすれば必ずしも割高感が拡大しているわけではないという見方になります。
バフェット指数では高水準
一方、異なる指標を見ると印象は変わります。
動画では「バフェット指数」も取り上げています。
バフェット指数は、米国株式市場全体の時価総額を米国の名目GDPで割った指標です。
動画では、2024年時点で米国株式市場の時価総額がGDPの2倍を超え、2000年のITバブル時を上回る水準に達していると説明しています。
この指標だけを見れば、米国株は歴史的な高水準にあるということになります。
ただし、現在の米国大型企業は米国内だけでなく世界中から利益を得ています。
そのため、米国企業全体の時価総額を米国国内のGDPだけと比較すると、以前より高い数値が出やすいという問題もあります。
したがって動画では、「利益から見れば割高感は以前より和らいでいる一方、株価水準そのものは歴史的に高い」という2つの面を同時に見る必要があるとしています。
条件2 市場に出回る「お金の量」
年末ラリーの2つ目の条件は、市場に出回る資金の量です。
金融市場では一般的に「流動性」と呼ばれます。
市場に存在するお金が増えれば、その一部が株式市場へ向かうため、企業業績だけでは説明できない株価上昇が起こることがあります。
その典型例として動画が取り上げているのが、2020年の新型コロナ相場です。
2020年に株価が急回復した理由
S&P500は2020年2月19日に当時の最高値をつけた後、新型コロナウイルス感染拡大への懸念から約1か月で30%以上下落しました。
ところが、その後は急速に反発し、同年8月には最高値を回復しました。
世界経済がまだコロナ禍の混乱の中にあったにもかかわらず、株式市場だけが先に回復した背景として、動画では2つの資金供給を挙げています。
1つがFRBによる大規模な金融緩和です。
動画では、FRBの資産規模が2020年3月中旬の約4.3兆ドルから、6月初旬には約7.2兆ドルまで膨らみ、3か月弱で約3兆ドル増えたと説明しています。
もう1つが米国政府による給付金です。
動画によると、米政府は現金給付を3回行い、1回目が2020年3月の1,200ドル、2回目が2020年12月の600ドル、3回目が2021年3月の1,400ドルでした。
3回を合わせた総額は約8,670億ドルとされています。
家計に直接お金が入れば、一部は消費に回り、企業の売上や利益になります。
さらに使われずに残った資金の一部は、預金ではなく株式市場へ向かう可能性があります。
中央銀行と政府が同時に大規模な資金供給を行ったことが、2020年以降の急速な株価回復を支えたという見方です。
大規模給付金は新たな株高材料になるのか
動画では、今後の流動性を左右する要因として、トランプ大統領による給付金構想についても触れています。
動画内では、中間選挙の結果などを条件として、米国居住の成人1人当たり5,000ドルを給付する構想が取り上げられています。
仮に対象人数を約2億7,000万人とした場合、総額は約1兆3,500億ドルとなり、コロナ禍の給付金3回分を合計した約8,670億ドルの約1.6倍になります。
1人当たり5,000ドルという金額も、2021年の1,400ドル給付と比べると約3.6倍です。
もしこれほど大規模な資金が家計に直接入れば、一部が消費や投資に向かい、株式市場への追い風になる可能性があるというのが動画の見方です。
ただし、2020年と現在では大きな違いがあります。
FRBは2020年とは逆方向
コロナ禍では、政府による給付金だけでなく、FRBも大規模な資産買い入れを行っていました。
一方、動画によると現在のFRBは、コロナ禍のように大量の資金を金融市場へ供給する姿勢ではありません。
そのため、仮に給付金が実現したとしても、「政府と中央銀行の双方から大量の資金が供給された2020年」とまったく同じ環境になるわけではないということです。
さらに、大規模な給付金には財源問題があります。
動画では、給付金の財源が明確でなければ国債発行が増える可能性があり、国債供給の増加が米長期金利を押し上げる恐れがあると指摘しています。
給付金によって株式市場に資金が入る一方で、長期金利が上昇すれば株価には逆風になります。
したがって動画では、2つ目の条件である「市場に出回るお金の量」は、現時点ではまだ完全に満たされていないと判断しています。
条件3 クリスマスラリーという季節的な追い風
3つ目の条件は、年末特有の季節性です。
株式市場には、理論だけでは説明できないものの、過去の統計上繰り返し現れてきた値動きがあります。
これを「アノマリー」と呼びます。
その代表例が「サンタクロースラリー」または「クリスマスラリー」です。
動画では、年末最後の5営業日と新年最初の2営業日を合わせた7営業日の値動きをクリスマスラリーとして紹介しています。
1950年以降は平均1.3%上昇
動画によると、1950年以降、この7営業日におけるS&P500の平均上昇率は約1.3%で、上昇して終わった確率は79%です。
通常の7営業日の平均上昇率は約0.3%、上昇確率は58%とされているため、年末年始は統計的に株価が上昇しやすい期間だったことになります。
仮に100万円を投資していた場合、単純計算では通常の7営業日なら平均約3,000円の上昇ですが、クリスマスラリー期間では平均約1万3,000円の上昇となります。
もちろん毎年上昇するわけではありませんが、歴史的には年末年始に強い値動きが出やすかったということです。
なぜ年末は株価が上がりやすいのか
年末ラリーが発生する理由について、明確に1つの原因が確定しているわけではありません。
動画では、大口投資家が休暇に入ることで取引量が減少すること、新年に向けて投資家心理が楽観的になりやすいこと、年末や年明けの資金流入、ポートフォリオの組み替えなどが重なる可能性を挙げています。
また、クリスマスラリーは翌年の相場との関係でも注目されています。
動画によると、クリスマスラリー期間がプラスだった年は、翌年のS&P500が平均10.4%上昇した一方、マイナスだった年は平均6.1%の上昇にとどまっています。
ただし、これは因果関係を示すものではなく、あくまで過去の統計的傾向です。
中間選挙の年は10~12月が強い傾向
動画では、2026年が米国中間選挙の年であることも年末相場の材料として挙げています。
中間選挙の年は、1~9月の3四半期が比較的弱くなりやすい一方、10~12月期にはS&P500が平均6.6%上昇してきたと紹介されています。
選挙という大きな不透明要因が解消されることで、それまで様子を見ていた投資資金が市場へ戻りやすくなるのではないか、というのが動画で示された考え方です。
ただし、こうしたアノマリーが毎年成立するわけではありません。
動画では、2023年末から2024年初め、2024年末から2025年初めのクリスマスラリーが2年連続でマイナスだった例も紹介しています。
したがって季節性は、株価を上昇させる「主役」ではなく、他の条件が揃ったときに相場を後押しする補助的な要因として考える必要があります。
3つの条件はどこまで揃っているのか
動画の整理では、現在の状況は次のように評価されています。
1つ目の「利上げのペース」については、FRBの見通しが比較的緩やかなため、すでに条件を満たしているとしています。
2つ目の「市場に出回るお金の量」については、給付金など今後の政策次第で変化するため、まだ答えが出ていません。
3つ目の「年末の季節性」については、カレンダー上ではこれから接近していく条件です。
つまり、3条件すべてが現時点ですでに完成しているわけではありません。
動画では、今後2つ目の条件まで揃えば、そこへ年末の季節性が重なることで、S&P500が再び最高値を更新するシナリオも考えられるとしています。
一方で、中間選挙などの重要イベントを控える時期は市場が不安定になりやすいため、年末まで一直線に上昇するとは限らないとも指摘しています。
年末ラリーのシナリオを崩す3つのリスク
動画では、年末ラリーが実現しない可能性を考えるうえで、「原油」「長期金利」「為替」の3つが重要だとしています。
原油価格の再上昇
1つ目は原油価格です。
原油価格が上昇すると、ガソリンや輸送費、製造コストなどを通じて物価上昇圧力が強まります。
インフレが再加速すれば、FRBは利上げを速めなければならなくなる可能性があります。
そうなれば、年末ラリーの1つ目の条件である「緩やかな利上げ」が崩れます。
動画では、原油が1バレル100ドルを超えて定着するかどうかを重要なチェックポイントとして挙げています。
米10年国債利回りの上昇
2つ目は長期金利です。
政府が大型給付金を実施するため国債発行を増やせば、国債の需給悪化によって長期金利が上昇する可能性があります。
動画では、米10年国債利回りが5%を大きく超え、その水準に定着するようなら株式市場にとって厳しい環境になるとしています。
株価を見る際には、FRBの政策金利だけではなく、10年国債利回りなど市場で決まる長期金利も確認することが重要です。
日本人投資家は円高にも注意
3つ目は為替です。
日本からS&P500やオルカンなど海外資産へ投資している場合、ドル建ての株価だけでなく、ドル円相場も運用成績に影響します。
仮にS&P500がドル建てで上昇していても、同時に大幅な円高が進めば、円換算した評価額は減少する場合があります。
そのため、証券会社のアプリに表示される円建て評価額だけで判断せず、S&P500そのものがドル建てでどう動いているかを確認することも重要だと動画では説明しています。
新NISA投資家は年末にどう動くべきか
動画では、新NISAなどでインデックス積立を続けている人については、年末ラリーを期待して積立設定を大きく変更する必要はないという考えを示しています。
年末ラリーの条件はまだすべて揃っているわけではないため、期待だけで積立額を急激に増やすと、予想に反して株価が下がった場合に不安が大きくなる可能性があります。
長期の積立投資であれば、短期的な相場予測だけを理由に積立方針を頻繁に変えるより、当初の資産形成計画を維持するという考え方です。
追加投資は分散して入れる考え方も
一方、ボーナス資金や新NISAの成長投資枠が残っている場合について、動画では一括投資ではなく、複数回に分けて投資する方法を例として挙げています。
例えば30万円を投資する場合、10万円ずつ3回に分け、重要イベントの前後や年末など、異なるタイミングで投資する方法です。
分割しておけば、最初の投資後に株価が下落しても追加投資する余力が残ります。
逆に株価がそのまま上昇した場合でも、一部の資金はすでに市場に入っているため、完全に上昇を取り逃すわけではありません。
ただし、これは動画投稿者の投資方針の一例であり、必ず有利になる方法ではありません。
年末ラリーは「3条件」が揃うかを確認する
今回の動画では、年末のS&P500を考えるうえで、単純に「年末だから上がる」と考えるのではなく、3つの条件を見ることが重要だとしています。
1つ目は、FRBが急激な利上げではなく緩やかな金融引き締めを続けること。
2つ目は、政府による給付金などを通じて市場に流動性が供給されること。
3つ目は、クリスマスラリーなど年末特有の季節的な株高傾向です。
動画の見方では、現在は1つ目の条件が比較的整っており、2つ目については今後の政策次第、3つ目は年末が近づくにつれて意識されやすくなります。
一方、原油価格の再上昇、米10年国債利回りの上昇、日本人投資家にとっての円高などは、このシナリオを崩す要因になり得ます。
まとめ
年末ラリーが起こるかどうかを正確に予測することはできません。
過去には利上げ開始後でもS&P500が上昇した例があり、特に緩やかな利上げ局面では1年後の株価が上昇したケースが多かったと動画では紹介されています。
さらに、企業利益の伸び、流動性の増加、クリスマスラリーや中間選挙後の季節性などが重なれば、株価を押し上げる材料になる可能性があります。
その一方で、現在の米国株は歴史的に見ても高い水準にあり、長期金利の再上昇やインフレ再加速、原油高、為替変動などのリスクも残されています。
重要なのは、「利上げだから売る」「年末だから買う」と1つの材料だけで判断しないことです。
金利、企業利益、流動性、季節性、原油、為替といった複数の条件を確認しながら、自分の投資期間やリスク許容度に合わせて判断することが大切です。


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