株式市場の利益は上位4%の銘柄が生み出す?負け銘柄を避ける投資法とインデックス投資の最適解

本記事は、YouTube動画『負け銘柄を避けて、あとは何もしない投資法』の書籍解説・考察内容を基に構成しています。

株式投資で利益を上げるには、どのような銘柄を選べばよいのでしょうか。優良企業に投資することが重要だと考えられがちですが、実は優れた企業が必ずしも優れた投資先になるとは限りません。

1926年から2016年までに米国市場に上場していた約2万6,000銘柄を対象とした研究では、約58%の銘柄が1カ月物の米国短期国債のリターンを下回っていたことが明らかになっています。

さらに、株式市場が短期国債を上回って生み出した富の純増分は、上位わずか4%の銘柄によって説明できるという驚くべき結果も報告されています。

この事実は、投資家に2つの選択肢を提示しています。

1つは、将来的に大きな利益を生み出す企業を見極め、優良銘柄に集中投資する方法です。

もう1つは、将来の勝ち組を事前に予測することは難しいと考え、市場全体に分散投資するインデックス投資です。

今回紹介するパンローリング刊の書籍『負け銘柄を避けて、あとは何もしない投資法』は、前者の考え方を中心に、個別株投資で市場平均を上回るための原則を解説しています。

ただし、動画では書籍の内容を紹介するだけでなく、日本企業の収益性に関する独自分析や、インデックス投資と個別株投資を組み合わせる方法についても考察しています。

目次

株式投資で重要なのは「勝ち組を選ぶ」より「負け組を避ける」こと

本書の著者は、ダニエル・ラスムッセンではなく、ダニエル・ジウィ氏として動画内で紹介されている投資関連書籍の著者です。過去には『桁外れの投資家たち』という書籍も執筆しています。

本書では、優れた投資を実現するために、次の4つのステップが重要だと説明されています。

  1. 適切な企業を選ぶ
  2. 適切な価格で購入する
  3. 株価の上昇余地を見極める
  4. リスクを管理する

一見すると当たり前の内容ですが、それぞれのステップには一般的な株式投資の常識とは異なる考え方が含まれています。

特に重要なのが、企業の知名度や売上高の大きさではなく、その企業が本当に経済的価値を生み出しているかを見極めることです。

優良企業に投資しても株価が上がるとは限らない

ビジョナリー・カンパニーに選ばれた企業の意外な結果

1994年に出版されたジム・コリンズらの著書『ビジョナリー・カンパニー』では、長期にわたり優れた経営を続ける企業として18社が取り上げられました。

当時、これらの企業は時代を超えて成長し続ける優良企業だと評価されていました。

しかし、その後の株価パフォーマンスを確認すると、必ずしも期待どおりの結果にはなっていません。

動画では、3M、モトローラ、ソニーなどの事例が紹介されています。

3Mは2023年4月時点で、過去25年間の株価パフォーマンスがS&P500に大幅に劣後していました。

また、モトローラも書籍出版後の長期間にわたり株価が低迷しました。

ソニーについても、動画で引用された集計では1994年以降のリターンが低かったとされています。

結果として、選ばれた18社のうち約半数は、書籍で想定されたほど優れた投資成果を残せなかったというのです。

ここから得られる教訓は明確です。

優れた企業であることと、その企業の株式が魅力的な投資先であることは別問題です。

企業が優れた商品やサービスを提供していても、競争環境が変化したり、すでに株価に高い成長期待が織り込まれていたりすれば、株式投資としてのリターンは低下します。

ウォーレン・バフェットも業界トップ企業への投資で失敗

世界的な投資家であるウォーレン・バフェットにも、似たような経験があります。

1960年代、バフェットは当時の小売業界で有力だったホックシールド・コーンに投資しました。

ところが、小売業は競合他社が設備投資やサービスを模倣しやすい業界です。

例えば、ある百貨店がエスカレーターを導入すれば、他社も同じ設備を導入する必要があります。

結果として、設備投資が増えても競争優位性を維持できず、利益率が圧迫される可能性があります。

バフェットはこの投資から撤退することになりました。

業界トップという地位だけでは、長期間にわたって高い収益を確保できるとは限らないのです。

投資する企業は15分で判断できるのか

バフェットが実践した「15分ルール」

本書では、優れた企業を判断するための考え方として「15分ルール」が紹介されています。

バフェットは額縁メーカーのラーソン・ジュールについて説明を受け、短時間で買収を決断したとされています。

その背景には、競争優位性が明確な企業であれば、比較的短時間でも優れた事業であることを理解できるという考え方があります。

一方、本書の著者は英国の冷凍食品企業ノマド・フーズについて、年次報告書を読み込み、約1週間をかけて調査した経験を紹介しています。

しかし、それだけ調査しても明確な結論を出せませんでした。

そこで著者が気づいたのは、判断できないこと自体が重要な情報だという点です。

つまり、無理に投資判断を下す必要はなく、見送ることも正しい選択になります。

もちろん、15分であらゆる企業の投資価値を正確に分析できるという意味ではありません。

動画では、長時間調べても競争優位性を理解できない企業には、無理に投資する必要がないという解釈が示されています。

株式市場には見逃し三振がない

バフェットは、株式投資を野球に例えて説明しています。

野球では、ストライクを見逃し続けると三振になります。

しかし、株式市場では魅力を感じない投資機会を何度見送っても、強制的に退場させられることはありません。

投資家は自分が十分に理解できる企業や、魅力的だと判断した株価水準が現れるまで待つことができます。

この「投資しない自由」は、個人投資家にとって重要な強みといえるでしょう。

企業の利益率より重要な「経済的利潤」とは

航空会社は売上が伸びても株主が儲からない?

本書では、企業の収益性を考える事例として米国の航空業界が取り上げられています。

航空業界では、売上高や会計上の利益が増加しているにもかかわらず、長期的な株式投資の成果が低迷するケースがありました。

動画では、コロナ禍以前の米国航空業界の純利益率は約4.9%で、主要航空会社の売上高も長期間で大きく成長していたと説明されています。

しかし、過去には多くの航空会社が経営破綻を経験し、主要航空会社の株価パフォーマンスも長期的にはS&P500を下回る傾向があったと紹介されています。

その理由を考えるうえで重要なのが「経済的利潤」です。

ROICと資本コストの関係

経済的利潤とは、企業が事業に投じた資本に対して、資金調達に必要なコストを超える利益を生み出しているかを示す考え方です。

重要な指標となるのがROIC(投下資本利益率)です。

ROICは、企業が事業に投じた資本を使って、どの程度効率的に利益を生み出しているかを示します。

経済的利潤は、概念的には次のように計算できます。

経済的利潤=投下資本×(ROIC-資本コスト率)

例えば、100億円を事業に投じている企業があるとします。

その企業が年間5億円の税引後営業利益を生み出していれば、ROICは5%です。

しかし、株主や金融機関から調達した資金に対して、8%の資本コストがかかっている場合、必要な利益は8億円になります。

実際の利益が5億円であれば、経済的利潤はマイナス3億円です。

会計上は黒字でも、資本提供者が要求する収益率を満たしていないことになります。

飛行機など高額な設備を必要とする航空会社は、多額の資本を投じる必要があります。

そのため、売上高や利益が成長しても、資本コストを十分に上回る収益を生み出すことが難しくなる場合があります。

動画では、マッキンゼーのティム・コラーらによる企業分析も紹介され、経済的利潤と株式の長期的なパフォーマンスの関係が強調されています。

日本企業の稼ぐ力は米国企業の半分以下?

日本と米国のROICを比較

動画では、本書で紹介されている米国企業のデータに加え、ニューヨーク大学のアスワス・ダモダラン教授が公開する2026年1月版のデータを使用して、日本企業の収益性も分析しています。

対象となった日本企業は3,965社、業種は96分類です。

金融業を除いた市場全体のROICを比較すると、次のような結果になりました。

地域ROIC
米国15.1%
日本6.7%

同じデータソースと計算方法による比較では、日本企業のROICは米国企業の半分以下という結果です。

単純化すると、事業に100円を投じた場合、米国企業は年間15.1円、日本企業は6.7円の利益を生み出しているイメージです。

ただし、これは企業全体の集計であり、すべての日本企業が米国企業より収益性で劣っているという意味ではありません。

また、業種構成の違いも数値に影響します。

それでも、両国の資本効率に大きな差があることを示す興味深い結果です。

東京証券取引所が資本コストを意識した経営を求める理由

2023年、東京証券取引所はプライム市場とスタンダード市場の上場企業に対し、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しました。

日本企業には、利益を上げていても資本効率が十分ではない企業が存在します。

そのような企業では、株式市場からの評価が低くなり、PBRが1倍を下回る要因になることがあります。

PBRとは、株価が企業の1株当たり純資産の何倍で評価されているかを示す指標です。

企業が資本コストを上回る利益を継続的に生み出せなければ、投資家は純資産に対して高い株価を支払うことをためらいます。

そのため、ROICの改善は企業価値の向上を考えるうえで重要なテーマになっています。

日本で経済的利潤が高い業種と低い業種

ソフトウェアや広告業は資本効率が高い

動画で紹介された日本の業種別分析では、ROICと資本コスト率の差が大きくプラスになっていた業種として、次のような分野が挙げられています。

業種ROIC-資本コスト率
ソフトウェア+29.1ポイント
タバコ+28.9ポイント
広告+16.0ポイント
ビジネス・消費者向けサービス+13.9ポイント

特に注目されるのがソフトウェア業界です。

日本のソフトウェア業界のROICは40.7%で、動画で比較された米国の同業種を上回っていました。

ソフトウェア企業は、製造業のように大規模な工場や製造設備を必要としない場合が多く、事業が拡大しても追加の設備投資を比較的抑えられる特徴があります。

こうした資本効率の高さが、ROICに表れていると考えられます。

なお、タバコ業界の数値については、動画では日本たばこ産業(JT)1社のデータであることが指摘されています。

そのため、業界全体の普遍的な特徴として考える際には注意が必要です。

自動車や半導体は資本コストを下回る

一方、ROICが資本コスト率を下回っていた業種も紹介されています。

業種ROIC-資本コスト率
金属工業-6.2ポイント
卸売業-3.3ポイント
電子機器・半導体-3.0ポイント
製鉄-2.7ポイント
自動車-2.7ポイント

さらに、自動車業界の経済的利潤は、金額ベースではマイナス221億ドルと、動画で紹介された業種のなかでも厳しい数値になっていました。

自動車産業は、工場、製造設備、研究開発などに巨額の資金を必要とします。

世界的な競争も激しく、利益を上げ続けるためには継続的な設備投資が不可欠です。

その結果、会計上の利益が出ていても、資本コストを十分に上回ることが難しくなります。

半導体と半導体製造装置は分けて考える必要がある

興味深いのは、半導体関連企業の扱いです。

半導体業界全体ではROICと資本コスト率の差がマイナスになっていましたが、半導体製造装置は別の業種に分類されています。

動画によると、半導体製造装置業界のROICは24.1%と高い水準でした。

つまり、半導体関連株を分析する場合でも、半導体メーカーと製造装置メーカーを同じ業種として扱うことは適切ではありません。

東京エレクトロン、アドバンテスト、レーザーテックなどの企業が、具体的にどの分類に含まれているかについては、動画でも推測として説明されています。

重要なのは、同じ半導体関連という括りでも、事業構造や資本効率が大きく異なる可能性があるという点です。

また、米国では資本効率が高い業種でも、日本では同様の結果にならないケースがあります。

産業構造、競争環境、取引先との価格交渉力などが国によって異なるためです。

PERだけでは分からない株式の割安度

フリーキャッシュフロー利回りとは

本書で重視されているもう1つの指標が、フリーキャッシュフロー利回りです。

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、企業が営業活動によって生み出した現金から、設備投資などに必要な支出を差し引いたものです。

一般的には、企業が自由に使える現金を把握するための指標として利用されます。

FCF利回りは、次の式で計算します。

FCF利回り=年間フリーキャッシュフロー÷時価総額×100

例えば、時価総額1,000億ドルの企業が、年間70億ドルのFCFを生み出している場合、FCF利回りは7%です。

この考え方は、不動産投資の家賃利回りと似ています。

不動産を購入する際には、将来値上がりするかどうかだけではなく、購入価格に対してどの程度の家賃収入を得られるかが重要になります。

株式投資でも、将来の値上がり期待だけではなく、購入価格に対して企業がどれだけ現金を生み出せるかを見るべきだというのが本書の考え方です。

ただし、FCF利回りが高い企業が必ず割安というわけではありません。

一時的な資産売却や設備投資の抑制によってFCFが増えている場合もあります。また、将来の業績悪化が株価に織り込まれている可能性もあります。

そのため、FCFの持続可能性を確認することが重要です。

Apple株の投資成果をFCF利回りから分析

動画では、本書の著者がApple株への投資で500%を超えるリターンを得た事例が紹介されています。

投資時点のAppleの年間FCFは約600億ドル、時価総額は約7,300億ドルでした。

この場合、FCF利回りは約8.2%です。

当時の市場全体と比較して魅力的な水準だったことが、購入を判断する理由の1つになったと説明されています。

一方、バフェットがApple株を売却した時期には、FCF利回りが約2.9%まで低下していたと紹介されています。

同じ企業でも株価が上昇すれば、FCF利回りは低下します。

企業の競争力が維持されていたとしても、購入価格によって将来の投資リターンは変わるのです。

日本株は本当に米国株より割安なのか

PERでは日本が割安でもFCF利回りでは差が小さい

一般的に、日本株は米国株よりPERが低く、割安だといわれます。

しかし、動画ではFCF利回りから比較すると、異なる結果になることが紹介されています。

指標米国日本
PER35倍17倍
FCF利回り1.8%1.6%
利益に対するFCFの割合64%27%

PERだけを見ると、日本株は米国株のおよそ半分の評価です。

しかし、FCF利回りでは米国の1.8%に対して日本は1.6%と、大きな差がありません。

むしろ、この比較では米国の方がFCF利回りが高くなっています。

その理由として挙げられているのが、会計上の利益から実際に残る現金の割合です。

米国企業では利益の64%がFCFとして残るのに対し、日本企業では27%という数値が紹介されています。

日本企業は設備投資や運転資金などに多くの資金を必要とするため、会計上の利益が出ていても、自由に使える現金がそれほど増えない場合があります。

つまり、PERが低いことだけを理由に、日本株が米国株より割安だと判断するのは早計ということです。

なお、動画ではS&P500全体のFCF利回りとして約2.7%という別の数値も紹介されています。これは異なる時点・集計によるものであり、単純に同じ条件で比較できるわけではありません。

株主還元はFCFを上回っている可能性

動画では、日本企業の配当と自社株買いを合わせた株主還元利回りが約3.2%と紹介されています。

一方、比較対象となるFCF利回りは1.6%でした。

この数値だけを見ると、企業が新たに生み出しているFCF以上の株主還元を実施している可能性があります。

その背景として、過去に蓄積した現金を取り崩して株主に還元している局面ではないかという見方が示されています。

ただし、企業ごとの財務状況は異なります。

株主還元の持続可能性を判断するには、現預金残高、負債、FCFの推移などを総合的に確認する必要があります。

株価が大きく上昇する企業は「拡大期」にある

企業のライフサイクルを理解する

本書では、株価の上昇余地を考えるために企業のライフサイクルが紹介されています。

企業の成長段階は、大きく導入期、拡大期、成熟期、衰退期に分けることができます。

導入期は成長余地が大きい一方、事業が成功するかどうか分からず、リスクも高い段階です。

成熟期になると事業は安定しますが、成長率が低下し、株価の大幅な上昇を期待しにくくなる場合があります。

本書が特に魅力的だと考えているのが、その中間にある拡大期です。

拡大期の企業は、すでに商品やサービスの競争力が証明されている一方で、市場全体にはまだ成長余地があります。

このような企業は、動画では「すでに勝っているグロース株」と表現されています。

Microsoftとコカ・コーラの成功事例

英国の著名投資家テリー・スミス氏は、2013年にMicrosoftへ投資した際、同社を拡大期にある企業と評価していたと紹介されています。

Microsoftは当時すでに世界的な大企業でしたが、その後のクラウド事業などの成長によって企業価値を大きく高めました。

また、コカ・コーラの事例も紹介されています。

1970年から2009年までに、コカ・コーラの株価は60倍以上になったとされています。

しかし、この期間に市場シェアが大幅に拡大したわけではありません。

むしろ、米国の炭酸飲料市場そのものが拡大していました。

1人当たりの炭酸飲料消費量が約2倍になり、人口も約5割増加したことが、企業の成長を支えたと説明されています。

つまり、ライバル企業からシェアを奪わなくても、業界全体が成長すれば大きな利益を得られる可能性があるのです。

投資対象として重要なのは、企業の現在の規模ではなく、今後も成長を続けられる市場環境にあるかどうかです。

待機資金は現金とインデックス投資のどちらがよい?

バフェットが短期国債を大量に保有する理由

個別株に投資する場合、魅力的な購入機会が現れるまで資金を待機させる必要があります。

この待機資金を現金で保有するのか、それともインデックスファンドで運用するのかは、投資家にとって重要な問題です。

動画では、バークシャー・ハサウェイの株主総会でバフェットが受けた質問が紹介されています。

質問者は、同社が大量に保有していた現金を短期国債ではなくインデックスファンドで運用していれば、より大きな資産になっていたのではないかと指摘しました。

2018年末の現金約1,120億ドルについて、インデックス投資を選択していれば約1,550億ドルになっていたという試算です。

バフェットはこの指摘を妥当だと認め、通常の資産運用ではインデックスファンドを保有する選択にも合理性があると説明しています。

しかし、バフェットは同時に、2008年の金融危機のような状況では、すぐに投資できる現金を保有していることが大きな意味を持つと指摘しました。

実際、リーマンショックの際には、バークシャーはゴールドマン・サックスやゼネラル・エレクトリック(GE)などに巨額の資金を投じています。

市場が混乱しているときに投資できたのは、十分な流動性を確保していたからです。

個人投資家はインデックス投資を活用できる

一方、個人投資家の場合は企業とは事情が異なります。

給与所得などがあれば、毎月新しい投資資金が入ってきます。

そのため、長期間にわたって現金を積み上げなくても、定期的な積立投資を継続しながら、魅力的な投資機会を待つことができます。

動画では、待機資金を全世界株式インデックスファンドなどで運用する考え方が紹介されています。

ただし、株式市場が暴落したときにインデックスファンドを売却して個別株に乗り換える場合、安値で売却することになりかねません。

また、短期間で使用する予定の資金を株式で運用すると、必要なときに大きな含み損を抱えている可能性もあります。

したがって、生活防衛資金や短期的に必要な資金は確保したうえで、長期的に運用できる資金をインデックス投資に回すという区別が重要です。

集中投資で成功するには「ほとんどの銘柄を買わない」こと

3銘柄への集中投資で高いリターンを実現

動画では、英国の投資家ニック・スリープの事例も紹介されています。

ニック・スリープは金融業界での伝統的なキャリアを持たずに投資の世界に入り、独自の投資哲学を築いた人物です。

Microsoft、Apple、Netflix、Googleといった有名企業には投資せず、Amazon、コストコ、バークシャー・ハサウェイなど、少数の企業に集中投資しました。

動画では、約10年間にわたり年率20%程度のリターンを実現した事例として紹介されています。

その投資哲学は、魅力的な企業を数多く見つけることよりも、本当に優れていると判断した少数の企業だけを保有するというものです。

スティーブ・ジョブズも、集中することとは優れたアイデアの大半を断ることだという趣旨の考え方を示しています。

例えば、S&P500に含まれる500社のうち、最も魅力的な10社に集中投資するのであれば、残り490社を購入しないという判断が必要になります。

もっとも、将来の勝ち組を事前に見極めることは容易ではありません。

冒頭で紹介したように、株式市場の富の大部分は、ごく少数の銘柄から生まれています。

その勝ち組を事前に選ぶことが難しいからこそ、インデックス投資にも大きな合理性があります。

インデックス投資と個別株投資を組み合わせる方法

基本はインデックス投資、例外的に個別株を購入

動画の解説者は、自身のポートフォリオの半分以上をインデックス投資で運用していると説明しています。

そのうえで、本書の考え方を取り入れた現実的な投資戦略として、インデックス投資を基本にしながら、特に魅力的な投資機会が現れた場合に限って個別株を購入する方法を提案しています。

例えば、通常時はインデックスファンドへの積立投資を継続します。

そして、株式市場が大きく下落した場面や、優れた企業が何らかの理由で割安になった場面で、十分に調査した個別株を購入します。

その頻度は、毎月や毎週である必要はありません。

年に1銘柄、あるいは数年に1銘柄程度でもよいという考え方です。

動画では、上田ショックやトランプショックと呼ばれた相場急落時に、実際に買い向かった経験も紹介されています。

ただし、株価が下がったという理由だけで購入するわけではありません。

優れた事業を持つ企業が、将来のキャッシュフローに対して魅力的な価格で取引されていることが前提となります。

バフェットの「20回のパンチカード」という考え方

バフェットには、生涯で20回しか投資できないと考えれば、1回ごとの投資判断をもっと慎重に行うようになるという有名な考え方があります。

投資機会を無制限に利用できると思うと、株価の小さな変動にも反応し、頻繁に売買してしまいがちです。

しかし、生涯で20回しか投資できないのであれば、企業の競争力、将来の成長性、購入価格、リスクなどを慎重に検討するはずです。

動画でも、この考え方を踏まえ、本当に魅力的な投資機会は数年に1回程度しか現れないのではないかと指摘しています。

日常的な資産形成はインデックス投資で行い、特別な投資機会に限って個別株を購入するという戦略は、こうした考え方と整合的です。

長期投資で重要なのは売買回数を減らすこと

本書のタイトルにもある「何もしない」という考え方は、個別株投資だけに当てはまるものではありません。

インデックス投資でも、売買回数を減らし、長期保有を続けることには大きな意味があります。

頻繁な売買には、売買手数料や課税口座での利益確定に伴う税負担が生じる場合があります。

さらに、売買の判断回数が増えるほど、感情的な取引によって失敗する可能性も増えます。

株価が急落すると不安になって売却し、反対に急騰すると乗り遅れることを恐れて高値で購入してしまうことがあります。

こうした行動を繰り返すと、優れた投資対象を選んでいても、十分なリターンを得られない可能性があります。

動画では、過去に売却した銘柄について、保有し続けていればよかったと後悔した経験にも触れています。

長期投資では、何を買うかだけでなく、買った後に余計な売買をしないことも重要なのです。

不人気株と優良成長株は同じ基準で評価できる

本書には、一見すると矛盾しているように見える2つの原則があります。

1つは、不人気な銘柄を購入することです。

もう1つは、優良企業に対してプレミアムを支払うことを恐れないという考え方です。

不人気株は一般的に株価が低く評価されています。

一方、優良成長株は高いPERなどで取引される場合があります。

しかし、本書では両者をFCFという共通の物差しで評価することが重要だと説明されています。

現在のFCFに対して株価が十分に安いのであれば、不人気株でも魅力的な投資対象になります。

一方、現時点のFCF利回りが低くても、将来のFCFが大幅に増加すると合理的に予測できるのであれば、高い株価を支払うことが正当化される場合があります。

重要なのは、単純にPERが低い企業を買うことでも、人気の成長株を買うことでもありません。

将来生み出されるキャッシュフローと現在の株価を比較し、適切な価格で投資することです。

まとめ:勝ち組を予測する難しさを理解し、投資機会を厳選する

今回紹介した『負け銘柄を避けて、あとは何もしない投資法』は、個別株投資で市場平均を上回るための考え方を体系的に解説した書籍です。

特に重要なのは、企業の知名度や売上高だけで投資判断を行わないことです。

長期的な株式リターンを考えるうえでは、ROICが資本コストを上回っているか、企業が十分なフリーキャッシュフローを生み出しているか、今後も成長余地が残されているかを確認する必要があります。

また、日本企業と米国企業の比較からは、PERだけでは見えてこない資本効率やキャッシュフロー創出力の違いも明らかになりました。

一方で、将来大きく上昇する銘柄を事前に見極めることは非常に難しいものです。

だからこそ、すべての投資家が集中投資を目指す必要はありません。

インデックス投資によって市場全体の成長を取り込みながら、十分に理解できる企業が魅力的な価格になった場合に限って個別株を購入するという方法も考えられます。

そして、いったん投資した後は、頻繁に売買せず、長期的な企業価値の成長を待つことが重要です。

投資で成果を上げるためには、常に新しい銘柄を探し続ける必要があるとは限りません。

優れた企業を適切な価格で購入し、ほとんどの投資機会を見送り、余計な売買をしない。

このシンプルな原則こそが、長期的な資産形成において重要な考え方といえるでしょう。

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