株式市場には、理論では説明できないものの、過去の経験則から観測される一定の規則性、つまり「アノマリー」が存在します。中でも「1月アノマリー」は、その年の市場全体の方向性を占う重要な指標とされており、長年にわたり注目され続けています。
今回は、1月アノマリーの代表的な2つ、「サンタクロースラリー」と「1月最初の5日間」の結果を、過去45年分のデータと比較しながら解説します。
1月アノマリーとは?
アノマリーとは、理論的な根拠ではなく経験則として市場の規則性を捉えるものです。
株価はファンダメンタルズやテクニカル分析だけでは説明しきれない動きをすることがあり、特定の時期に見られるパターンを理解することが投資戦略に役立つこともあります。
1月アノマリーの代表例
- サンタクロースラリー
- 年末の5営業日+新年最初の2営業日の合計7日間の市場の動きを基に、その年のリターンを予測。
- 過去データでは、この期間にS&P500が上昇した場合、年間リターンが良好になる傾向がある。
- 1950年以降の平均上昇率は+1.5%。
- しかし、この期間に上昇が見られない場合、その年は弱気相場や調整局面になる可能性が高い。
- 1月最初の5日間
- 年明け最初の5日間の市場の動きが、その年の年間リターンに大きく影響。
- 5日間がプラスだった場合、その年の市場全体のパフォーマンスが良好になる確率が高い。
過去45年分のデータ検証
1980年以降の45年分のデータを用いて、これらのアノマリーの信頼性を検証しました。
サンタクロースラリーと年間リターンの関係
- サンタクロースラリーがプラスだった年: 33回(全体の73.3%)
- 年間平均リターン:+11.8%
- サンタクロースラリーがマイナスだった年:12回(26.7%)
- 年間平均リターン:+7.1%
➡ サンタクロースラリーがプラスだった年の方が、平均リターンが高い傾向
1月最初の5日間と年間リターンの関係
- 最初の5日がプラスだった年:25回(55.6%)
- 年間平均リターン:+13.4%
- 最初の5日がマイナスだった年:20回(44.4%)
- 年間平均リターン:+6.3%
➡ 最初の5日間の動きが年間リターンに与える影響はサンタクロースラリーよりも大きい
両方がプラスの年 vs 両方がマイナスの年
- 両方がプラスだった年(21回): 年間平均リターン +19.1%
- 両方がマイナスだった年(8回): 年間平均リターン +8.8%
➡ 両方がプラスだった年は、年間を通じて強気相場になる確率が高い
2025年の1月アノマリー結果
今年の結果は以下の通りでした。
- サンタクロースラリー:マイナス
- 1月最初の5日間:プラス
この組み合わせは過去45年間で 2回しか発生しておらず、
- 2015年:年間リターン -0.7%
- 1994年:年間リターン -1.5%
過去の傾向から見ると、「方向感に乏しい1年」になる可能性が高いと言えます。
大統領選挙の影響と市場の見通し
もう一つ注目すべきは、「アメリカ大統領選挙の翌年は市場パフォーマンスが悪い」というデータです。
- 選挙翌年のダウ平均上昇率(1833年~2011年のデータ)
- 平均上昇率が最も低い。
- 特に選挙前年と選挙年は上昇しやすい傾向がある。
➡ 2025年は選挙翌年であり、過去のデータから見ると株価上昇の期待値は低い
さらに、トランプ政権の政策が市場に与える影響も不透明であり、特に貿易関税政策が経済全体に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
日経平均とアノマリーの関係
日経平均でも同じアノマリーを分析した結果、
- サンタクロースラリーはプラスだったが、最初の5日間はマイナス。
- 過去45年間でこの組み合わせは 12回発生。
- 平均リターン:-2.4%(中央値 -9.4%)
➡ 過去のデータでは、このパターンはボラティリティが大きい傾向がある
まとめ
- 1月アノマリーは年間市場の方向性を示唆する重要な指標。
- サンタクロースラリーと最初の5日間がプラスだった年は強気相場の可能性が高い。
- 2025年は過去45年で珍しいパターンであり、方向感に乏しい年になる可能性がある。
- 大統領選挙翌年の市場は過去データから見ると不利。
- 日経平均においても類似のアノマリーが確認されている。
長期投資を考える際は、こうしたアノマリーを参考にしつつ、市場のトレンドやマクロ経済動向を冷静に分析することが重要です。今後も市場動向に注目しながら、戦略を練っていきましょう!
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