この記事は、YouTube動画「ドル崩壊の序章?トランプ関税による米国市場のトリプル安について解説します!」の内容をもとに執筆しています。
2025年4月、アメリカ市場に異常事態が発生しました。株安・ドル安・米国債安の「トリプル安」です。これは通常のリスクオフ局面とは異なり、「アメリカそのものがリスクの震源地」となっている点が最大の特徴です。
この記事では、この異常事態の背景にあるトランプ政権の過激な関税政策や市場の反応、そして今後の展望について、わかりやすく詳しく解説します。
トリプル安とは?その全体像
2025年4月第2週、アメリカの株式、ドル、そして米国債が同時に下落しました。これは過去に類を見ない非常に珍しい現象です。
資産 | 通常の危機時の動き | 今回の動き |
---|---|---|
株式 | 下落 | 下落 |
ドル | 上昇(安全資産) | 下落 |
米国債 | 上昇(逃避資産) | 下落(=金利上昇) |
この「トリプル安」は米国そのものへの信頼低下を示しており、世界市場に大きなショックを与えました。
きっかけは「総合関税」政策
発端は2025年4月2日、トランプ大統領が「アメリカ開放の日」と称して発表した総合関税政策です。
- 全世界の輸入品に10%の関税を一律で適用
- 57カ国(日本含む)にはそれ以上の関税
- 中国は報復関税で対抗し、関税率100%超の貿易戦争に発展
このような過激な政策は、米国企業の輸出を直撃し、自由貿易体制全体を脅かすものとして強く警戒されました。
【1】株安の背景
トランプ関税の影響で株式市場は急落。
主な要因:
- 輸入価格の上昇→インフレ加速
- 報復関税→米国の輸出企業が打撃
- 企業業績悪化→株価下落
- AI・ハイテクへの過剰期待が冷却
S&P500などの主要指数は大きく下落し、VIX指数はコロナ初期以来の高水準に跳ね上がりました。
【2】ドル安の異常性
通常、危機時にはドルが「安全通貨」として買われます。しかし今回はドルも売られました。
要因 | 内容 |
---|---|
信頼低下 | アメリカの政策に対する不信感 |
通貨回避 | 投資家はユーロやスイスフラン、金へ資金移動 |
金利の高さでも買われない | 利上げ維持でもドル離れ進行 |
実際にドルインデックス(DXY)は3年ぶりの安値を記録しました。
【3】米国債の急落=世界最大の安全資産が売られる
もっとも衝撃だったのが米国債の暴落です。
- 米10年債利回りが1週間で0.5%上昇
- これは2001年の同時多発テロ以来の急騰
- 「投げ売り」「連鎖的損切り」が発生
売りが加速した理由:
- 関税に対する中国の対抗措置としての米国債売却観測
- 日本の農林中金などが大量売却したとの憶測
- 含み損を恐れた機関投資家の連鎖売却
米国債市場は**世界で最も巨大(5000兆円規模)**な債券市場であり、その信頼が揺らいだことは極めて重大です。
なぜトランプ政権は政策修正を行ったのか?
4月9日、トランプ政権は突如、中国を除く国への関税を90日間停止すると発表。これは市場を驚かせました。
背景には以下の事情:
- 債務増大:アメリカの連邦政府債務は約35兆ドル(約5200兆円)
- 金利上昇により利払い負担が急増
- トランプ政権の財政支出政策に悪影響
- 市場混乱が選挙への悪影響を及ぼす懸念
つまり、米国債の利回り上昇を危険視した“市場通”の閣僚の進言が働いたと考えられます。
トラスショックとの共通点
今回のアメリカの状況は、2022年のイギリス「トラスショック」と重なる部分があります。
項目 | トラスショック | トランプ関税ショック |
---|---|---|
政策内容 | 減税+支出拡大 | 一律関税導入 |
市場の反応 | 国債暴落・ポンド安 | 米国債暴落・ドル安 |
政府の対応 | 政策撤回、首相辞任 | 一部政策を90日停止 |
政府の信頼低下が金融市場の動揺を招いた点で構造的には極めて類似しています。
FRBに残された選択肢とそのリスク
FRB(米連邦準備制度理事会)は以下の対応が可能とされていますが、どれもリスクを伴います。
選択肢:
- 利下げで市場を下支え
→インフレ再燃のリスク大 - 米国債の買い入れ(QE的対応)
→「誰も買わない国債をFRBが刷ったドルで買う」=信頼失墜の恐れ
つまり、救済策自体がさらなる危機を呼ぶリスクを含んでいます。
今後の展望と市場の注目点
現時点で市場は以下のような状況にあります:
- トリプル安は一旦落ち着いた
- しかしドル・米国債に対する不信感は続いている
- トランプ政権の“現実路線”への軌道修正が続くかどうかがカギ
市場関係者の間では、「これ以上の暴走があれば、アメリカ自身がリスク資産になってしまう」との危機感が広がっています。
結論:ドル崩壊はまだ“序章”、今後の政策転換に注目
2025年4月に起きたアメリカ市場のトリプル安は、トランプ政権の過激な政策によってアメリカへの信頼が揺らいだ結果です。
この事象は「ドル崩壊の序章」とも言われていますが、まだ崩壊が確定したわけではありません。今後、
- 政策の現実路線への転換
- FRBの対応姿勢
- 債券市場とインフレ動向
などに注目しつつ、投資判断は冷静にかつ柔軟に対応することが求められます。
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