本記事は、YouTube動画「【円安時代の終焉。150円超はない】」をもとに、今後のドル円相場を「金利差」「資本の動き」「歴史的な為替レンジ」などの観点から初心者にもわかりやすくまとめたものです。専門家である吉田久氏(マネックス証券)による見解を軸に、2025年以降の為替相場の見通しを詳しく解説します。
結論:150円超えは「もうない」可能性が高い。130円割れが視野に
吉田氏は冒頭で断言します。「150円を超えることは、もうないと思う」。一時的な下落停止はあっても、円高ドル安の流れは中長期的に続く可能性が高いというのが今回の主張です。
その理由は主に次の3つです。
理由 | 詳細 |
---|---|
金利差との逆相関 | 2025年4月以降、金利差拡大にも関わらずドル安が進行。通常とは逆の動き。 |
アメリカ資本離れ | 国債利回り上昇に反してドル安が進行。アメリカ売りが始まった可能性。 |
歴史的な為替レンジ | ドル円は5年移動平均から±30%の範囲内で動くという長期トレンドに回帰中。 |
ドル安はなぜ起きているのか?「金利差」と「アメリカ売り」
通常なら「金利差拡大=ドル高」になるはず
2025年4月、アメリカの長期金利はトランプ政権による関税政策などを受けて急騰しました。それにもかかわらずドルは逆に急落。これは非常に珍しい「逆相関」現象であり、通常の相場環境では起きにくいことです。
吉田氏はこれを「別人になったドル円」と表現し、3月までの動きとは明らかに異なる構造的変化が起きていると指摘します。
背景にあるのは「米国資産離れ」
アメリカの金利が上がっているのにドルが売られるという現象は、アメリカ国債が売られ、他国の国債が買われていることを示唆しています。
特に、
- 中国などが米国債を報復的に売却
- 民間投資家も米国資産から資金を引き上げ
- ドイツなどのユーロ圏国債への資金シフト
などがドル安の背景にあるとされています。
これは「キャピタルフライト(資本逃避)」と呼ばれる現象で、特に政治的リスクが高いときに起こりやすいものです。
トランプ政権と「アメリカ売り」の再来
実はこの現象、トランプ政権1期目(2018年)にも起こっていたことがあります。当時も金利が上昇しているのにドルが売られる「悪い金利上昇(トリプル安)」が発生し、2〜3ヶ月間続いたと言われています。
今回は政権2期目で、かつ政権発足直後から関税政策を本格化していることから、「より深刻なアメリカ売り」になる可能性が高いと見られています。
為替相場は「構造的に変化」している
過去40年の為替レンジを見ると…
吉田氏は、1980年以降のドル円と5年移動平均線との乖離率のデータを提示し、次のように解説します。
- 円安(ドル高)は5年移動平均から+30%で天井を打つ
- 円高(ドル安)はかつて−40%あったが、現在は−20%以下に限定化
つまり、「円安にも円高にも限界がある」というのが歴史的傾向です。
現在(2025年4月)ドル円の5年平均は約130円。仮に5年平均から−20%の水準まで下がると、104円前後が下限と見られます。
円高が進みにくくなった理由:「日本の経常収支構造の変化」
一時期、日本の貿易赤字やデジタル赤字が拡大し「日本衰退論」が叫ばれました。しかし最新データ(2024年末)を見ると、貿易赤字は大幅に縮小しています。
ただし、吉田氏は「それでも昔のような強い円高にはならない」と指摘します。その理由は以下のとおりです。
昔(1980-90年代) | 今(2020年代) |
---|---|
世界一の貿易黒字国 | 経常赤字・低成長 |
円高を受け入れる経済体力あり | 円高に耐えにくい経済構造 |
産業構造:輸出偏重 | サービス産業・観光増加 |
今後のドル円見通し:130円割れはあるが、100円割れはない?
吉田氏の見通しでは、以下のシナリオが想定されています。
範囲 | 可能性 | 根拠 |
---|---|---|
130円〜125円 | 高い | アメリカ売り+金利差縮小 |
125円〜104円 | 中程度 | アメリカ経済の失速が進んだ場合 |
100円割れ | 低い | 日本経済が弱すぎて円高が進まない |
協調介入の可能性は?
1980年代の「プラザ合意」や、ユーロ危機時の「協調介入」のような大規模な市場介入も過去には行われていますが、現在のトランプ政権は協調路線に否定的であるため、実現性は高くありません。
まとめ:円高局面は続くが、極端な円高にはなりにくい構造
- ドル円は金利差逆相関やアメリカ売りの影響で下落傾向にある。
- 130円割れ〜125円程度までは十分にあり得る。
- しかし、日本の経済構造の変化により、100円割れの円高は難しい。
- 現在のドル円は、歴史的な平均乖離率(±30%)の範囲内に収束する傾向が強い。
円相場は、金利・貿易・資本移動・政治の複合的要因で動きます。過度な円高・円安どちらにも警戒が必要ですが、吉田氏の分析をもとにすれば「極端な円安時代の終焉」は、すでに始まっているのかもしれません。
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