この記事は、YouTube動画「【米中合意で始まる円安シナリオの真実】トランプ関税/今度のドル円相場の見通し/トランプ相場の振り返り/プラザ合意2.0/米国出張最新レポート/FRB金融政策2つのシナリオ/弱体化する円/佐々木融」をもとに執筆しています。
結論:円安はまだ終わらない。ドル円は中長期で170円へ向かう可能性も
佐々木融氏(福岡フィナンシャルグループ)は、円安トレンドは今後も続くとの見解を明言しています。その背景には、
- 米中関税の一時的な引き下げ合意(90日間)
- 日米の実質金利差
- 日本の貿易構造
- FRBの動向
など複数の構造的要因があります。
1. ドル円相場の背景:トランプ政策による揺れ
2024年春にかけてドル円は一時139円台まで円高方向に振れましたが、5月12日の米中関税引き下げ合意によりドル円は148円台まで急回復。
合意内容のポイント:
- 米中が互いに関税を115%から基本水準へ戻すというサプライズ合意
- 合意は90日間限定措置
- 日本やインド、EUなど他国への圧力として機能
佐々木氏は「他国もアメリカとの交渉を急ぐはずであり、今後は明るいニュースが続く可能性が高い」と述べています。
2. プラザ合意2.0はあり得るのか?
「プラザ合意2.0」については、佐々木氏は否定的な立場を取っています。
否定の理由:
- 当時と現在では市場規模が違いすぎる
- 今はG5ではなくG20時代、特に中国が交渉対象に含まれる
- アメリカがインフレ抑制を重視しており、意図的なドル安は困難
また、1985年のプラザ合意も最終的には過度なドル安を招き失敗に終わったと分析されています。
3. 円安のファンダメンタルズ:止まらない構造的要因
日本の実質金利はマイナス2.5%前後
- 政策金利:約0.5%
- インフレ率:約3%
- → 実質金利は−2.5%
このマイナス金利が円を弱くしている最大の要因であり、資産が海外に逃避する流れは続いています。
日本の貿易構造も円安要因
- 日本の対米貿易黒字の中心は自動車
- 米国から求められる要請:
- 直接投資の拡大
- LNG(液化天然ガス)の購入
- 現地生産へのシフト
これらはいずれも円売り圧力につながる政策です。
4. ドル円170円シナリオの根拠
佐々木氏は、ドル円が将来的に170円を目指す可能性もあると発言。現在の相場状況から見れば、年内は厳しいとしながらも、中長期的には十分あり得るとしています。
根拠1:円ロングポジションの巻き戻し
- 現在、円買い(円ロング)ポジションが過去最大の水準
- これが解消されるだけで、ドル円155円程度まで上昇可能
根拠2:ドルショートの解消
- 追加関税前倒し輸入で米国の貿易赤字が28兆円も増加
- これが今後減少することでドル売り要因が後退
- ドルの買い戻しが進みやすい
5. FRBの政策と今後の2つのシナリオ
米国の金融政策もドル円相場に大きな影響を与えます。現在、FRBの金融政策については2つのシナリオが語られています。
シナリオ1:金利据え置き(現状維持)
- 企業が価格転嫁(インフレ)を抑える
- FRBは利下げも利上げもしない
- → 金融政策は「動けない」状況に
シナリオ2:景気後退で利下げ
- 非農業部門雇用者数がマイナス10万人など極端に悪化した場合のみ利下げ
- 現状のインフレ水準では予防的な利下げは不可能
→ 利下げ期待が後退すれば、ドル高がサポートされやすい
6. 投資家としてどう動くべきか?おすすめの外貨は?
佐々木氏は、今後の外貨投資においては以下の通貨に注目しています:
推奨通貨:
- オーストラリアドル(AUD)
- 資源国でありエネルギー・食料自給率が高い
- 地政学リスクが比較的低い
- ユーロ(EUR)
- ドル安局面ではユーロが買われやすい
- スイスフラン(CHF)
- 通貨としての信頼性が高く、安全資産として人気
7. 外貨投資は「淡々と積み立て」がおすすめ
佐々木氏は「為替相場は上下に振れるもの。定期的な積み立て投資を続けることが重要」と語っています。
- 短期の上下動に左右されない
- 円安トレンドに備える資産防衛策として有効
- 投資家のリスク分散戦略としても外貨建資産は必須
まとめ:ドル円の未来は円安が本流、中長期で170円視野
ドル円相場は短期的な反発を挟みつつも、中長期的には円安ドル高トレンドが続く公算が大きいと見られています。
米中合意、FRBの金融政策、実質金利差、貿易構造など、複数のファクターが円の価値を押し下げる方向に作用しており、投資家はこの大きな流れを捉えた資産配分が求められます。
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