2025年5月16日、米国の大手格付け会社ムーディーズが米国債の格付けを「Aaa(トリプルA)」から「Aa1(ダブルAプラス)」に引き下げると発表しました。
このニュースは一見「ふーん」と思われるかもしれませんが、実は世界中の機関投資家の投資行動を変え、株や債券市場全体に影響を与える可能性がある大きな出来事です。
この記事では、「格下げってそんなに重要なの?」という疑問に答えながら、市場がどう動くのか、なぜ格下げで売りが出るのか、どんな過去の例があるのかを初心者にもわかりやすく解説します。
結論:機関投資家のルールが市場を動かす
格付けが下がると、「信用力が下がった」という評価になります。
これは単なるイメージの問題ではなく、機関投資家がリスク管理上のルールに従って売却などの対応を強いられるため、実際に市場に資金移動や価格変動が起こります。
ムーディーズの格下げが意味すること
✔ ムーディーズはどんな会社?
ムーディーズは、アメリカの代表的な格付け会社の一つ。企業や国の信用度を評価して「Aaa」や「Baa」などのスコアを付けます。
✔ 今回の変化
- 今までの格付け:Aaa(トリプルA、最上位)
- 今回の格付け:Aa1(ダブルAプラス、1段階下)
これにより、S&P・フィッチに続き、3大格付け会社すべてがアメリカ国債のトリプルA評価を取り下げたことになります。これは歴史的にも大きな出来事です。
なぜ格下げで市場に影響が出るのか?
✔ 機関投資家の「リスク管理ルール」による制約
大手の投資銀行、年金基金、保険会社などの機関投資家は、リスクを定量的に管理するために格付けを利用しています。
例:リスク点数ルール
- トリプルA(Aaa):1点
- ダブルA(Aa1):2点
- シングルA(A1):3点
- トリプルB(Baa1):4点
ポートフォリオ全体の点数が例えば「2.75未満にしないといけない」というルールがある場合、
格下げにより保有資産の点数が上がってしまうと、リスクを減らす=「資産を売る」必要が出てきます。
どういう動きが起こるか?
- 米国債が売られる可能性
- 格付けが下がったため、米国債の比率を減らす。
- → 結果:10年債利回りが4.48%まで上昇(債券価格は下落)
- 他の資産も売られる可能性
- 米国債を売れないなら、よりリスクの高い資産を減らすという選択肢も。
- → 株式や新興国債券などにも売り圧力が。
- 金融機関の信用力にも波及
- 米国債を大量保有している銀行などが、連鎖的に格下げされる懸念。
- → 銀行株などに影響、金融株全体が下がるリスクも。
過去の格下げとその影響
年 | 格付け会社 | 株価への影響 | 債券への影響 |
---|---|---|---|
2011年 | S&P | S&P500が20%下落(1350→1100) | 米10年債利回りが2.5%→2%(価格上昇) |
2023年 | フィッチ | S&P500が10%弱下落(4600→4100) | 債券利回りは4%→5%へ上昇(価格下落) |
つまり、格下げの影響は「無視できないが、大暴落ではない」というレベル。
しかし今回は3社すべてが格下げしたため、影響が2011年〜2023年の中間か、それ以上になる可能性もあるとされています。
今後どうなる?注目ポイント
- 米国債の利回りがさらに上がるか
- 機関投資家のポートフォリオ調整がどれほど大きくなるか
- 銀行や保険会社などの連鎖的な格下げの有無
- 株式市場への売り圧力の波及
米国債やドルの信用力が揺らぐ中で、安全資産としての地位が徐々に変わっていく可能性もあるとの指摘もあります。
まとめ:格下げは市場のルールを変える“引き金”
- 「格付けなんて信用できない」という意見もあるが、機関投資家にとってはルールそのもの。
- ムーディーズによる格下げで機関投資家の資産運用ルールが変化し、市場に売りが波及する可能性がある。
- 特に米国債、株式、金融株に注目。
- 過去と同じく、しばらく混乱が続くリスクもあり、警戒が必要。
もしあなたが投資をしているなら、米国債や米国株を中心に、保有資産のリスクを一度見直しておくことをおすすめします。金融市場が大きく揺れる時期は、冷静に、しかし確実に準備することが大切です。
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