※この記事は、YouTube動画「【日本円】日本円は安全資産ではなくなったのか!スイスはマイナス金利へ!」をもとに、初心者でも分かりやすくまとめた内容です。
結論:円売り・スイスフラン買いは加速、日本の「安全資産」としての地位は後退中
近年、各国の外貨準備における日本円の比率が低下し、代わりにスイスフランが買われる傾向が強まっています。
これまでは「有事の円買い」と言われたように、日本円は世界の安全資産の代表格でしたが、現在はその構造が崩れ始めており、「スイスフラン一強」の様相さえ見えてきています。
では、なぜ円が売られ、スイスフランが買われているのか。背景と影響を順を追って整理していきます。
円とスイスフランの共通点と変化
かつて日本円とスイスフランは、以下のような共通点から「安全資産」として人気がありました。
安全資産とされた主な理由:
共通項 | 内容 |
---|---|
経常収支が黒字 | 貿易黒字に支えられた外貨流入 |
対外純資産が多い | 巨額の資産を海外に保有 |
政治的な安定性 | 特にスイスは永世中立国で地政学的リスクが小さい |
変化の原因①:日本の経常収支構造の転換
以前は「貿易黒字」が主な黒字要因でしたが、現在の日本は以下のように構造が変化しています。
経常収支の変化:
時期 | 主な黒字の構成要素 |
---|---|
~2010年頃 | 輸出による貿易黒字が中心 |
2010年以降 | 海外投資(証券収益)による所得黒字が中心 |
- 輸出黒字が減少し、代わりに証券投資収益が主な収入源に
- しかし、これらの収益は再び海外に投資され、円買い圧力には繋がりにくい
さらに、**GoogleやYouTubeなど米国サービス利用による「デジタル赤字」**の拡大も加わり、円の需要が減少しています。
変化の原因②:地政学リスク下でも円高が起きにくい
かつては有事に「円高」が進む傾向が強かったのですが、2025年の中東危機など、最近ではむしろスイスフランの方が買われるようになっています。
これは、日本が中東のエネルギー依存度が高いことなど、経済的な脆弱性への懸念も影響していると考えられます。
スイスフランの躍進:高まる通貨高リスクと政策対応
スイスフランは世界で最も買われる安全資産になりつつあります。
- スイス中央銀行(SNB)は2025年6月時点で政策金利をゼロにまで利下げ
- 今後はマイナス金利の復活も視野
これはフラン高によって輸出産業が打撃を受けているためであり、安全資産であることの「副作用」が表れているといえます。
チャートで見る:円/スイスフランの為替推移
スイスフラン/円の為替チャートはスイスフランの持続的な上昇を示しており、世界の投資家がいかにフランを好んでいるかが分かります。
- 日本の金利は依然として極めて低く、通貨の魅力が薄い
- 経済成長率・インフレ率も低迷し、通貨高を支えるファンダメンタルズが弱い
安全資産“降格”で得られるものもある?
安全資産の地位を失ったことが「日本にとって悪いことばかりか」というと、実はそうでもありません。
円高のデメリット:
現象 | 経済への影響 |
---|---|
円高 | 輸出企業の収益圧迫、株安圧力、デフレ圧力 |
投資流入 | 株価がドル換算で割高になり売り圧力 |
過去にはリーマンショック(2008年)、欧州債務危機(2010年代)で急激な円高→株安→デフレという悪循環に悩まされました。
その意味では現在の「普通の通貨化」は、日本経済にとってプラスの可能性もあるのです。
各国の外貨準備構成と中国の影響力
- 世界の外貨準備は、中国、日本、スイスなどが大きなシェアを持つ
- 特に中国は全体の約1割を占めるほど
- 外貨準備の「通貨シフト」は一部の大国の動向が大きな影響を与える
つまり、日本円が売られスイスフランが買われている現象は、単なる「人気の移行」ではなく、グローバルな通貨パワーバランスの変化といえます。
まとめ:円は普通の通貨へ、スイスは孤独な安全資産に
通貨 | 状況 | 今後の注目点 |
---|---|---|
日本円 | 安全資産としての地位後退 | 通貨安で日本株に追い風も |
スイスフラン | 安全資産としての役割増大 | 金融緩和圧力・マイナス金利リスク |
- 日本は「普通の通貨」へと移行中
- スイスは「安全資産の重責」を背負い、通貨高で自国経済に圧力
- 世界の通貨構造が大きく動くなか、今後のイールドカーブ変化や金利政策にも注目が集まります
コメント