米国バブル崩壊と円安時代の投資戦略まとめ【エミン・ユルマズ氏解説要約】

結論を先に

  1. 米国株は複数のバリュエーション指標で歴史的割高。崩壊の起点は読めないが、崩れた後もしばらくは気づきにくい。
  2. 日本株の超強気相場が本格化する前提として、米国バブルの一度の崩壊とグローバル資本の再配分が必要。長期シナリオでは日経平均は2050年に30万円も視野。
  3. 円の弱さは構造的。ドルも弱いが円はさらに弱いため、ドル円のボラは限定でもクロス円は上がりやすい。安全資産は円ではなく金に資金が流れやすい。
  4. 日米関税合意は自動車関税の引き下げなど日本に比較的追い風。巨額投資枠は長期の民間主導で、過度な悲観は不要。
  5. 雇用統計は大幅な下方修正が頻発。見出し数字だけでなく、中身や代替データにも目配りが必要。
  6. インフレ時代の投資は通貨分散を含む多層的ヘッジが基本。積立はタイミングより継続。アクティブ運用は割安に徹しダウンサイドを限定。

以下、数字と具体例でかみ砕いて解説します。


目次

いま米国株はどれほど割高か

主な指標で歴史的水準に達しているという指摘。

  • PSR(株式時価総額/売上高):S&P500で約3.3。ドットコム期を上回る水準。
  • PERや他のメトリクスも軒並み高く、バフェット指数は約220%。
  • 世界時価総額のうちアメリカが約60%を占める一方、実体経済のシェア(世界GDP)は約25%。適正をややプレミアム込みで30%と仮置きしても、過大評価が疑われる。
  • 上昇はビッグテックとAI周辺に集中。指数は数銘柄で牽引され、実体経済の弱さ(商業不動産や景況感)は価格に十分反映されにくい。

バブルの特徴

  • 天井時期は読めない。ITバブルでも天井は2000年3月だが、崩壊認識は約半年後。
  • 崩壊しても反発が起き、しばらくは気づきにくい。レバレッジの高い相場は小さな悪材料で大きく振れ、流動性供給で短期に戻りやすい。

投資家の実務ポイント

  • 積立投資はタイミングより継続が効く。
  • アクティブは割安重視でダウンサイドを先に設計する。指数高止まり局面でも個別に割安は存在しうる。

日本株の長期シナリオと条件

短期見通し

  • 2026年に日経平均5万円台の可能性はありうるとの見立て。

長期見通し

  • 2050年に30万円を目安とするモデル。根拠は過去上昇率のモデリング(約20倍)。見立て初期の1万5000円から既に4万5000円へと約3倍進行。

達成のマスト条件

  • 米国に偏在した資本のリアロケーション。米国バブルが一度崩壊し、世界の資金が日本を含む他地域に向かうこと。
  • 日本には追い風が多い。割安資産の多さ、地政学・サプライチェーン再構築の恩恵、家計金融資産2200兆円のうち約半分が現預金という投資余地。

投資家の実務ポイント

  • 長期での日本株比率引き上げは一案。ただし米国崩壊の揺り戻しに耐える分散と現金クッションを併用。

円安はなぜ続きやすいか

現状

  • 年初来のドル指数は弱いのに、ドル円は150円近辺で高止まり。これは円の構造的弱さを示唆。
  • 政策金利0.5%に対しインフレ約3%で実質金利は大幅マイナス。円保有の機会コストが高い。
  • かつての安全資産としての円の地位は低下。リスク回避マネーは金や他資産へ。

示唆

  • ドルも円も弱ければドル円は方向感に乏しいが、クロス円(ユーロ円など)は上がりやすい環境。
  • 単一通貨集中はリスク。通貨分散は資産防衛の基本。

日米関税合意の読み方

要点

  • 総合関税は15%へ。自動車は27.5%から15%に引き下げ。
  • 80兆円規模の投資枠は、民間中心に長期で行われる想定。短期に日本が巨額の資金を拠出する性格のものではない。

日本への含意

  • 基礎関税10%がベースの中での+5%という着地は、過去の米日通商摩擦を踏まえれば悪くない。
  • 米の保護貿易は、中国からの低価格品流入抑制の副作用として日本メーカーに相対的追い風になりうる。

雇用統計の信頼性と見るべき指標

問題意識

  • 見出しの非農業部門雇用者数などが後日大幅に下方修正される事例が多発。発表直後に市場が反応し、修正時には織り込まれにくい。
  • 経済と相場の乖離を助長。

チェックの工夫

  • ADP(給与データ)や民間のPMI、高工業生産の独自推計など、代替ソースを併読。
  • 雇用の内訳を見る。正規・非正規、フルタイム・パート、賃金の質、労働参加率など。

インフレ時代の資産防衛と攻め方

通貨と地域の分散

  • 日本の最大リスクは自然災害、米国は治安・政治不安、欧州は地政学など、国ごとにプロファイルが異なる。通貨分散はリスク分散として合理的。

安全資産の再定義

  • 円ではなく金や他の実物資産へ資金が逃避しやすい。ポートフォリオに実物の比率を一定入れることを検討。

株式の選び方

  • 積立派は継続最優先。
  • アクティブ派は割安度を重視し、AIインフラ売り手よりも中長期の解決策(アプリケーション側)の台頭を待つ視点も。過剰設備投資の循環に注意。

使えるチェックリスト

円と為替

  • 実質金利がマイナスか
  • クロス円が上がりやすい地合いか
  • 通貨エクスポージャーは一極集中していないか

株式配分

  • 日本株の長期上昇シナリオを織り込みつつ、米国の下振れに耐える現金・債券・金の比率を確保
  • 指数中心なら積立継続。個別は割安基準とダウンサイド試算を明文化

マクロ指標の読み方

  • 見出しではなく中身へ。雇用の質、賃金、参加率、民間代替指標
  • 修正の癖を把握。初報で過度に傾かない

サンプル配分(例示・投資助言ではありません)

  • 株式全体50%(うち日本株20~30%、米国株15~25%、その他先進・新興5~10%)
  • 金・コモディティ10~15%
  • 債券20~30%(為替分散)
  • 現金5~15%
    相場の過熱時は現金と債券、金を厚めに、調整時は株式を厚めにと、逆張りでバランスを取る。

まとめ

  1. 米国はAI集中の高バリュエーションで、崩壊の時期は読めないが崩れた後もしばらくは気づきにくい。
  2. 日本株の長期強気シナリオには、米国偏重資本の再配分が前提。2050年30万円は条件付きで射程。
  3. 円の構造的弱さは継続しやすい。単一通貨は避け、金など安全資産の役割を再評価。
  4. 日米関税合意は日本に中立〜追い風。長期の民間主導投資として理解。
  5. 雇用統計などの見出し数字は鵜呑みにせず、中身と代替データで検証。
  6. インフレ時代は通貨・資産・地域の多層分散、積立の継続、アクティブでは割安とダウンサイド限定を徹底。

焦らず、仕組みと分散で守りを固め、来る資本の再配分に備える。これがインフレ・円安・高バリュエーション時代の現実的な戦い方です。

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