以下の記事は、元動画のタイトル「アマゾン創業者ジェフ・ベゾス 現在のAIブーム 良いバブル」を基に作成しています。
結論
現在のAIブームは、相場の急落リスクをはらみつつも、社会に実物資産とインフラを残す意味で「良いバブル」になり得ます。
90年代ドットコム期の光ファイバー過剰投資が後年のYouTubeやNetflixの成長を支えたように、今はデータセンターへの巨額投資が将来の勝者を押し上げる土台になる可能性があります。
一方で投資回収が遅れれば大手ハイパースケーラーに減損が生じ、株価のマルチプル圧縮を招くリスクも現実的です。足元の米景気は雇用悪化の兆しとインフレ再燃の両リスクに挟まれており、著者は年内天井からの弱気相場入り、最終的な底は2027年3月前後というシナリオを示しました。
長期投資家は分散・現金比率・デュレーション管理を意識し、アップサイドを追い過ぎない姿勢が重要です。
そもそも「良いバブル」とは
動画での定義は、株価が過熱しても崩壊後に社会に有用な資産が残り、その資産を勝者が再活用して新しい価値を生むタイプのバブルです。持続的な株高を保証する言葉ではありません。
歴史的な実例(ドットコム期)
- 90年代後半、光ファイバー網に過剰投資
- バブル崩壊後、ダークファイバーが安価に放出
- 2005年前後にアルファベットがダークファイバーを買い集め独自網を整備
- 2006年のYouTube買収後も自社回線で爆発的トラフィックを処理可能に
- Netflixは回線コスト低下でサブスク型ストリーミングへ移行
この結果、誰でも無料で動画をアップでき、膨大なコンテンツを保存・配信できる時代が到来しました。過剰投資という副産物が、のちに巨大プラットフォームの基盤になったわけです。
今回のAIブームで「光ファイバー」に当たるもの
焦点はデータセンターです。GPU、冷却、電力、回線を束ねた巨大拠点への投資を、マイクロソフト、アマゾン、メタなどのハイパースケーラーが主導しています。もし将来の需要が想定未達なら、これらの投資が減損の形で利益を圧迫する可能性があります。
減損が株価を冷やすメカニズム(数値例)
- 投資額500億ドル、将来キャッシュフロー見積りが100億ドルに悪化
- 差額400億ドルを一括で減損計上
- キャッシュアウトは即時に起きなくても、成長期待の後退でPERが縮む
- 結果として時価総額の調整圧力が強まる
つまり良いバブルであっても、勝者が定まる前に投資家は評価損やバリュエーション圧縮に直面し得ます。
マクロ環境:雇用とインフレ、二つのリスク
- 米国では雇用の弱含みとインフレの高止まりが同居(スタグフレーションの兆候)
- 失業率は全体では4.3%近辺でも、黒人や若年層は上昇が先行
- 労働市場は一度悪化すると景気後退なしに回復しにくい歴史的パターン
- 一方、インフレの再燃リスクも残存。消費者の中長期インフレ期待が高止まりすると物価の粘着性が増す
この二方向のリスクに市場は挟まれており、短期のリスクオンは続き得るが、著者は年内にも天井を示現すると見ています。
著者の相場シナリオ(動画の主張を整理)
- 年内に米国株は天井を付ける可能性が高い
- 景気後退を伴う下落相場は平均15カ月で底打ち
- 転換点は季節性から3月または10月に集中しやすい
- 最終的な底は2027年3月前後を想定
- S&P500の最大下落率はドル建てで約30%、円建てでは為替要因込みで40%超の可能性
- 2026〜2040年のS&P500平均年率は一桁前半に低下するシナリオ
- 次の拡大局面は国際分散(欧州・新興国)、コモディティ、暗号資産などが相対的に有利になる可能性
この見立ては一つの仮説ですが、投資行動の前提として「過度な強気一本足」からの転換を促す内容です。
Q&Aで示された補足見解(要点のみ)
新興国の投資タイミング
・米景気悪化が顕在化し、米株の底打ちと同時期かやや早め(2026年秋〜2027年3月想定)
日本株の見通しと為替
・日米金利差の縮小で円高方向なら日本株は逆風
・ただし米株のバブル継続局面では日本株も短期的に強含む可能性
雇用かインフレか、どちらが株式の最大リスクか
・両方。失業の上昇とインフレ再燃は同時に警戒
個人投資家が今できる具体策
- 現金比率と分散の再点検
年内天井シナリオに備え、リスク資産の偏りを見直す。米国大型テック一本槍なら、地域・資産クラスを広げる検討を。 - デュレーション管理
金利上振れや景気後退の両にらみで、長期デュレーション資産の比率が過大になっていないか点検。債券は階段状の分散購入が有効。 - 為替前提の明確化
円安・円高いずれのシナリオでも、ヘッジの有無をルール化。長期積立は為替騰落を吸収するが、リバランスの基準値を決めておく。 - AIテーマへの向き合い方
データセンターや電力、冷却、半導体など周辺インフラは「良いバブル」の恩恵を受けやすい。一方、投資回収の時間軸が長く、減損リスクもある。個別に賭けず、ETFや分散で参加するのが無難。 - 下落シナリオの行動計画
想定ドローダウン幅(例:株式−30〜40%)を家計とメンタルで許容できるか、数字で確認。下落時に淡々と積み増す金額とタイミング(四半期、月次など)を事前に決める。
「良いバブル」かどうかを見極めるチェックリスト
- 実物資産が蓄積されているか(回線、データセンター、送電網、発電、ソフト基盤)
- 勝者候補が、その資産を独占的・効率的に活用できる経路を持っているか(自社網、顧客基盤、モデル提供面)
- 投資額とキャッシュフローの時間差を市場がどこまで織り込んでいるか(減損耐性、バランスシート余力)
- 規制や電力制約など外生要因で計画が頓挫しないか(環境規制、電力価格、送電容量)
まとめ
AIブームは急落リスクと隣り合わせですが、社会に実物資産を残すという意味で「良いバブル」たり得ます。
過去の光ファイバーのように、崩壊後の安価な資産が次の勝者を作る可能性もあります。
とはいえ、投資回収の遅れや減損が株価の重石になり得る点は冷静に受け止めるべきです。
年内天井からの調整、2027年3月前後の底という弱気シナリオを頭に置きつつ、分散・現金比率・為替ヘッジ・デュレーションを数値で管理し、上振れに飛びつかず下振れに備える。これが、良いバブル時代を生き延びるための現実的な戦い方です。
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