この記事は、YouTube動画「高市総理誕生で積極財政に?どうなる今後の日本経済?ズボラ株投資」の内容を基に、初心者でも理解しやすいように整理したものです。
結論を先に
動画の主張は次の三点に集約されます。
- 日本は今後、政権の顔ぶれに関わらず積極財政の方向へ進む可能性が高い。
- ただしマネーストックの実態を見ると、家計や企業の借り入れによる信用創造が鈍っており、お金の増え方は低速。
- 一時的な給付や国の支出だけでは持続的なマネーストック拡大は難しく、最終的には民間の投資や借入が回り出すかがカギ。
ここから、動画の論点を具体的な数字とともに丁寧に解説していきます。
積極財政とは何か
積極財政は、政府が景気下支えや成長促進のために支出を増やす政策です。
給付金、減税、公共投資、補助金、信用保証などが代表例です。動画では、たとえ政権内部の意見が割れても、日本の政策の大勢としては支出拡大に傾きつつあると指摘しています。
マネーストックとマネタリーベースの違い
動画で最も重要な基礎知識がここです。
マネタリーベース
日銀が供給する現金や当座預金の合計。動画では目安として約650兆円と説明。
マネーストック(M2)
私たちの財布や預金口座にあるお金の合計。動画では直近で約1,250兆円と説明。
ポイントは、世の中に出回るお金は日銀が刷った分だけではないことです。銀行が企業や個人に融資すると預金が新たに生まれます。これが信用創造で、マネーストックがマネタリーベースを上回る理由です。
指標の違いを整理
動画はM2、M3、広義流動性の違いを図解的に説明しています。
理解を助ける簡易表を置いておきます。
指標 | 含まれる主な資産 | ざっくりした意味 |
---|---|---|
M2 | 現金+国内銀行の預金(定期含む) | 日本国内の狭いお金 |
M3 | M2+ゆうちょ・信金などの預金 | もう少し幅広いお金 |
広義流動性 | M3+国債・投信など金融商品 | 金融商品まで含めた広いお金 |
コロナ期はなぜ一気に増えたのか
2020年のコロナ対応では、10万円給付、持続化給付金、ゼロゼロ融資など、財政出動と信用供与が重なりました。
結果としてマネーストックは短期間で大きく増加。これは一過性の特需で、平時と比べて異常値だったことがグラフ上でも分かると動画は強調します。
なぜ今は伸びが鈍いのか
動画では、2024年以降のマネーストック伸び率が低水準である理由を複合的に説明しています。
1 金利上昇
日銀のYCC撤廃後、長期金利が上昇。10年金利の上昇は貸出金利に波及し、企業も個人も借入を控えがちになり、信用創造が鈍化。
2 新NISAによる資金の付け替え
2024年は投資信託などを含む広義流動性が増加。一方、投資の原資は銀行預金が多く、M2から広義流動性へとお金が移っただけで、経済全体の新しいお金の創出には直結しにくい。2025年に入ると新NISAの資金流入ペースも一服。
3 企業の現金厚め体質
内部留保が厚く、金利上昇局面で無理に借りない。投資判断が慎重化している可能性。
歴史比較で見えるヒント
動画は長期の前年比推移にも触れ、バブル期(1990年前後)のマネーストック増加率は年10%程度が続いたと紹介します。
当時は民間が積極的に借り入れて不動産や設備投資へ資金を回したことが背景でした。コロナ期は一瞬の突起で、持続性がなかった点が決定的な違いです。
積極財政の役割と限界
積極財政は、信用創造が冷えた局面で経済にお金を押し込む起爆剤になります。
給付金、減税、公共投資、信用保証などで需要を作り、企業収益や雇用を支える狙いがあります。
ただし、単発で終われば、マネーストックの水準を一時的に押し上げるだけでトレンドにはなりにくい、というのが動画の見立てです。
持続的な拡大のためには、民間の前向きな借入と投資が再び動き出すことが不可欠です。
個人と企業の借入がなぜ大切か
銀行融資は新しい預金を生み、経済全体の取引を増やします。
企業が借入で設備投資を行えば、機械メーカー、建設業、IT、人材などにお金が回り、所得と需要の循環が強まります。
個人の住宅ローンも同様で、建設、不動産、内装、家電など幅広い産業に波及します。
投資家の視点で見る資金調達の使い方
動画は投資のリターンを、利回りだけでなく元本の大きさで考えるべきだと指摘します。
例えば金利2〜3%で資金を調達し、年率10%の運用が安定的に可能なら、スプレッド分が純増益になります。
もちろん現実には価格変動、金利上昇、信用枠縮小、ロールオーバーリスクなどの落とし穴があります。資金調達のコストと継続可能性、ドローダウン時の耐性、損失限定のルール作りが前提です。
投資行動の実務ヒント
家計のバランスシート点検
変動金利の住宅ローンは金利上昇耐性を試算。借換えや繰上げ返済の損益分岐を数字で把握。
資産配分の見直し
預金偏重から、インフレ耐性のある資産(株式、インフレ連動債、REITなど)を段階的に組み入れる。
ドルコストと再均衡
積極財政や金利変動で相場が振れる局面こそ、定期積立と年1回の再均衡で機械的にリスクを管理。
信用の使い方は保守的に
レバレッジは小さく始め、ストップや証拠金維持率のルールを先に決める。借入コスト上昇を常に想定。
まとめ
積極財政そのものは景気の足場を固めるうえで有効ですが、持続的にマネーストックを増やして経済を太くするには、最終的に民間の投資と借入が回り出すことが不可欠です。
いまの日本は、金利上昇と慎重姿勢で信用創造が弱く、広義流動性への付け替えが中心でした。
今後、政府の支出の質と継続性、金利の落ち着き、企業と家計の前向きな借入と投資がかみ合えば、実体経済の循環は強くなります。
投資家としては、政策シグナルと金利、信用指標を見ながら、資産配分と資金調達コストの管理を徹底していきたいところです。
コメント