この記事は、YouTubeチャンネル「モハピーチャンネル」の動画
「【英国経済】なぜ今EU離脱の悪影響が注目されるのか!増税発表が迫る英国経済!経済的苦境が続く!」をもとにまとめています。
結論:EU離脱の「代償」がいま明確になりつつある
2025年現在、イギリスでは再び「EU離脱(ブレグジット)」の影響が大きな議論を呼んでいます。
背景には、経済の停滞と「増税発表」を控えるスターマー政権の苦境があります。
イギリス財務大臣リーブス氏は、IMF年次総会の場で「EU離脱が英国経済に長期的な損害を与えている」と発言。その根拠とされたのが、英国予算責任局(OBR)の分析です。
同局によれば、EU離脱の影響でGDP成長率が約4%押し下げられる可能性があり、
その影響は15年にわたって続くとされています。
つまり、2020年の離脱決定から5年が経った今こそ、その「代償」が現実となって現れ始めているのです。
英国予算責任局(OBR)とは?
OBR(Office for Budget Responsibility)は、2010年に設立された英国の独立財政機関で、
国の財政が持続可能かどうかを検証し、政府とは独立して報告を行う組織です。
このOBRが2020年に発表したレポートで、EU離脱の長期的影響として以下の見通しを出していました。
指標 | 影響内容 |
---|---|
GDP成長率 | 約4%押し下げ |
影響が顕在化する期間 | 約15年間 |
投資への影響 | 国民投票後すぐに企業投資が減少(全体の約2/5分が既に顕在化) |
輸出入への影響 | 約15%減少(事務手続き増による) |
実際に何が起きているのか?5年後のイギリス経済
離脱から5年が経ち、ようやく実データによる検証も進んできました。
結論から言えば、モノの輸出は減った一方で、サービス輸出は大きく増えたという結果が出ています。
ただし、これは「EU離脱の影響」だけで説明できるものではありません。
2020年以降の世界的な変化、
たとえばコロナ禍、ウクライナ戦争、世界的インフレ、再生可能エネルギー政策の変化などが複雑に絡んでおり、単純な比較は難しいのです。
それでも、研究によっては次のような見積もりが出ています。
試算内容 | もしEU離脱していなかった場合の輸出増加率 |
---|---|
強気の試算 | 約+30% |
控えめな試算 | 約+6% |
EU離脱の「プラス面」も存在する
もちろん、悪い影響ばかりではありません。
EUを離れたことで、イギリスは独自の貿易協定を自由に結べる立場を手に入れました。
代表的なのがTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への加盟です。
イギリスは2023年に正式加盟しました。
ただし、政府の試算によれば、TPPによる経済成長の押し上げ効果はわずか+0.08%にとどまる見通しです。
つまり、プラス効果は限定的と言わざるを得ません。
他にもEUへの拠出金(年183億ポンド)を支払わなくなったことで、財政面では一定の余裕が生まれました。
ただし、EU時代にはその資金の一部が国内の産業補助金として還元されていたため、「全額浮いた」というわけではありません。
経済以外の「独自政策」も可能に
EUを離れたことで、経済以外の政策面でも大きな変化がありました。
イギリスは以下のような独自方針を導入しています。
- 生きた動物の輸出を禁止(動物福祉の観点から)
- 遺伝子組み換え作物に関する法律の改正
- 私立学校の授業料に付加価値税を導入
これらは経済指標には直接現れないものの、国の価値観や社会構造に関わる大きな変化であり、「イギリスのことはイギリス人が決める」というブレグジットの理念を象徴しています。
なぜ今になって「EU離脱の悪影響」が注目されているのか?
2025年10月現在、再びブレグジットが話題に上っている理由は、スターマー政権による「増税方針」が関係しています。
労働党政権は、EU離脱が原因で経済が落ち込み、税収が減った結果として増税が必要になった、という論調を展開しています。
しかし、これは一種の「政治的責任転嫁」とも言えます。
EU離脱を主導したのは保守党政権であり、その結果としての経済鈍化を理由に「増税は仕方ない」と説明することで、国民からの批判をかわそうとしているという見方もあります。
世論の変化:「EU離脱は間違いだった」と考える人が増加
最近のイギリス国内の世論調査では、「EU離脱は間違いだった」と考える国民の割合が増えています。
これは、生活コストの上昇や経済成長の鈍化を肌で感じる人々が多くなっているためです。
労働党はこの世論の流れを利用し、「ブレグジットの負の遺産を清算する政権」として自らを演出している側面もあります。
まとめ:数字だけでは測れないEU離脱の意味
EU離脱の評価は「経済の損得」だけでは語り切れません。
確かにGDP成長率や輸出入の面ではマイナスの影響が大きいですが、一方で国の独立性や政策の自由度を取り戻したという意味では、政治的・社会的な価値も存在します。
しかし、経済的な事実として、英国は依然として低成長・高インフレ・財政赤字の三重苦に苦しんでおり、その中での「増税議論」は避けられない状況にあります。
EU離脱から5年。
イギリスが手に入れた「主権」の代償として、どれだけの経済的コストを払うのか――今まさに、その現実を突きつけられていると言えるでしょう。
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