この記事は、YouTube動画「【仏銀行】BNPパリバの株価急落!和解金20兆円の可能性?過去のスーダンでの制裁違反の問題」をもとに執筆しています。
今回は、フランス最大の銀行BNPパリバ(BNP Paribas)が、過去のスーダン内戦期における制裁違反問題で再び大きな注目を集め、株価が一時11%以上急落したニュースを詳しく解説します。
結論:過去の制裁違反が再燃、最大20兆円規模の賠償リスクで市場が警戒
BNPパリバは、1990年代から2000年代にかけてスーダンの独裁政権オマル・アル=バシール政権に金融サービスを提供していたとされ、これがアメリカのテロ支援国家指定中の取引にあたるとして、2014年にすでに90億ドル(約1兆3,000億円)の制裁金を支払っていました。
ところが、2024年10月20日、米国で新たに起こされた民事訴訟により、BNPパリバが原告3名に合計約2,100万ドル(約30億円)の支払いを命じられたのです。
問題はここから。
この裁判の原告はわずか3名ではなく、合計2万3,000人にも上るとされ、もし同等の賠償金が認められた場合、総額は20兆円を超える可能性がある――これが投資家の恐怖を呼び、株価が一時11%超の大暴落につながりました。
スーダン内戦とバシール政権:長期独裁とテロ支援国家指定
BNPパリバの問題を理解するためには、背景となるスーダンの政治情勢を知る必要があります。
スーダンは1989年にオマル・アル=バシールがクーデターで政権を掌握して以降、約30年間にわたり独裁体制が続きました。
彼の政権下では、国内の少数民族弾圧やダルフール紛争などの深刻な人権侵害が発生。
1990年代以降、アメリカを中心とする西側諸国はスーダンをテロ支援国家に指定しました。
さらに、バシール政権は湾岸戦争期からイラクのサッダーム・フセイン政権と友好関係を築き、2001年の9.11テロの首謀者ウサマ・ビンラディンを一時庇護していたこともあり、国際的な孤立を深めていきました。
BNPパリバが関与した「制裁違反」とは?
このような情勢下でも、BNPパリバはスーダン政府と取引を継続していました。
スーダンは金などの鉱物資源が豊富な国。
バシール政権はこれら資源の利権を独占しており、BNPパリバが提供する金融ネットワークを通じて、制裁を回避しながら国際市場に資源を輸出していたとされています。
その結果、バシール政権は戦争を継続するための資金を確保し、虐殺や紛争を長引かせた――というのが原告側の主張です。
BNPパリバは2014年、こうした制裁違反を認めて米司法省により90億ドルの罰金を科されましたが、今回の裁判はその被害者個人による賠償請求という新たな段階に進んだ形になります。
今回の判決と株価急落の理由
2025年10月20日に下された判決では、原告3名への2,100万ドル支払い命令が出ました。
問題は、同様の訴訟を起こしている原告が2万3,000人もいる点。
もし同額が適用されれば、計算上は以下の通りになります。
| 原告人数 | 1人あたり賠償額 | 総額(円換算) | 
|---|---|---|
| 3人 | 約10億円 | 約30億円 | 
| 2万3,000人 | 約10億円 | 約20兆円超 | 
BNPパリバの2024年度純利益は約116億ユーロ(約1兆9,000億円)。
仮に20兆円規模の賠償が発生すれば、企業として存続が危ぶまれるほどのインパクトになります。
そのため市場では「最悪のシナリオ」を織り込み、株価が瞬時に2桁下落したのです。
BNPパリバの対応:控訴と火消しに奔走
BNPパリバは判決直後に「不当な判決」として控訴する意向を発表。
同時に、「今回の裁判は3名に限定されたもので、他の原告に自動適用されるものではない」と説明しました。
10月21日に行われたアナリスト向けの説明会でも、経営陣は「引当金を計上する予定はない」と述べ、財務への直接的影響は限定的と強調しています。
しかし、米国内ではスーダンから亡命した難民が数万人規模で存在しており、訴訟の波が広がるリスクは依然として残っています。
なぜフランスはスーダン政権と取引したのか?
この点も興味深い論点です。
当時(1990~2000年代)、アメリカとフランスの関係は決して良好ではありませんでした。
特に2003年、アメリカが国連の承認なしにイラク戦争を開始した際、フランスはこれに強く反対。
この姿勢は国内で高く評価されましたが、その裏ではフランスが石油などの経済的利権を中東諸国と維持したい思惑があったとも言われます。
結果として、BNPパリバがスーダンの独裁政権と関係を持っていたとしても、当時の国際政治の文脈を考えれば「不自然ではない」とも言えるでしょう。
しかし、そのツケを20年後に払う形になってしまったのです。
まとめ:20年前の取引が招いた“時限爆弾”
今回のBNPパリバの件は、
「過去の取引がいかに企業リスクとなるか」を象徴する事例です。
- 問題は1990~2000年代のスーダン内戦期
 - 2014年に90億ドルの制裁金を支払い済み
 - 2025年10月に新たな民事訴訟で3名に2,100万ドル支払い命令
 - 原告は2万3,000人、最大20兆円規模に拡大の懸念
 - 株価は一時11%下落
 - BNPパリバは控訴予定で、引当金は計上せず
 
今後、他の欧州金融機関に同様の動きが波及する可能性も否定できません。
特に、過去に中東やアフリカ諸国と深く関わってきた企業は、「人権・制裁関連リスク」を再点検する必要があるでしょう。
参考データ:BNPパリバの主要業績(2024年度)
| 項目 | 金額 | 
|---|---|
| 売上高 | 約500億ユーロ | 
| 純利益 | 約116億ユーロ(約1兆9,000億円) | 
| 時価総額 | 約1,000億ユーロ前後 | 
| 社員数 | 約19万人 | 
| 本社所在地 | フランス・パリ | 
BNPパリバはヨーロッパ最大級の金融グループとして、世界70カ国以上に拠点を持ち、資産規模では世界トップ10にも入る巨大銀行です。
そのような企業でも、過去の政治的取引が今なお経営リスクとして浮上するという事実は、国際金融の複雑さと厳しさを物語っています。


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