このブログは「米国株が新興国株に負ける時代へ 警告」という元動画のタイトルを基に記事を書いています。
結論:これからの10〜15年、「米国一本勝ち」時代は終わり、欧州・新興国・コモディティの時代になる可能性が高い
動画全体を一文でまとめると、次のようなメッセージになります。
今後10年程度のリターンは、米国株よりも、欧州株・日本株・特に新興国株の方が高くなる可能性が高い。
オルカン一本では新興国の恩恵を十分に受けられず、タイミングを見て「新興国中心のポートフォリオ」へシフトしないと、 世界のマネーの流れから取り残されるリスクがある。
具体的には、動画で語られているポイントは次のような流れです。
- 米政府閉鎖と統計データ欠落で、FRBも市場も「視界不良」のまま運転している
- ゴールドマン・サックスの長期予測では、今後10年の期待リターンは、米国より欧州・日本・新興国の方が高い
- 足元の年初来リターンでも、米国株より欧州、日本、新興国が上回っている
- 米国株は過去のドル高・減税・低金利の恩恵でEPSとPERが同時に膨らんでおり、今はかなり危険な水準
- オルカンは米国比率が約64%あり、新興国の成長を十分には取り込めない
- 本気で新興国の成長に乗りたければ、早い段階で「新興国中心」の配分に切り替える必要がある
- 世界同時株安が予想される2026年秋頃が、大きな乗り換えタイミングになり得る
- その後の10年以上は、「国際分散投資の時代」になる可能性が高い
ここから先は、動画の内容を、初心者の方にも分かるように順を追って整理していきます。
米政府閉鎖がもたらした「視界ゼロ運転」という危うさ
まず動画の前半では、米国の政府閉鎖(シャットダウン)の影響が語られています。
政府機関が停止したことで、
- 航空輸送に混乱が生じた
- 食料支援(生活保護のような制度)の給付が遅延
- 雇用統計やCPIなどの重要な経済統計の発表が延期
- 政府職員は一時的に無給状態
といった実害が出ました。
議会でつなぎ予算が可決され、政府は再開しましたが、それも「2026年1月30日まで」の時限措置にすぎません。
再び同じような閉鎖リスクが残された状態です。
さらに厄介なのは、「景気の分かれ目」にあたる重要な局面で、雇用統計やCPIといったデータが欠落する可能性があることです。
- 雇用統計のうち、事業者調査は後からデータを埋められるが、家計調査は電話調査のため欠落の恐れ
- CPIも現地調査ができなければ、正確な統計が取れない
もし景気が絶好調の時期なら、多少データが欠けても問題は小さいかもしれません。
しかし今は「景気が後退に向かうかもしれない、非常に微妙な局面」です。
そんなタイミングで、FRBや市場参加者は「視界の悪い中で車を走らせている」ような状態になっており、マーケットはしばらく方向感に乏しい展開が続きやすいと指摘されています。
ゴールドマンの長期予測:米国株より新興国株の方が有利な10年へ
動画の中で特に重要なのが、ゴールドマン・サックスの長期リターン予測です。
今後10年間の予想年平均リターンは、ざっくり次のようになっています。
| 地域・指数 | 10年の予想年平均リターン(概算) |
|---|---|
| S&P500(米国) | 約 +6.5% |
| 欧州株 | 約 +7.1% |
| 日本株 | 約 +8.2% |
| 日本を除くアジア | 約 +10.3% |
| 新興国株全体 | 約 +10.9% |
この数字から読み取れるメッセージはシンプルです。
- 米国株の期待リターンは、主要地域の中で最も低い水準
- 欧州、日本よりも、新興国(特にインド・ベトナム・ラテンアメリカなどのグローバルサウス)がより高いリターンを生みやすい
注意すべきなのは、「全ての新興国が一律に伸びるわけではない」という点です。
実際には、一部の国や地域が指数全体のリターンを大きく引き上げる形になります。
欧州なら、財政出動を強めているドイツや、その恩恵を受けやすいポーランドなど。
新興国なら、インド・ベトナム・ラテンアメリカといった成長ポテンシャルの高い地域が中心になると見られています。
足元の年初来パフォーマンスでも、米国株は既に出遅れている
長期予測だけでなく、直近の年初来パフォーマンス(11月11日まで)でも、米国株の出遅れが見えてきています。
動画内で紹介されていた各国ETFの年初来リターンは、おおよそ次の通りです。
| 地域・市場 | 年初来リターン(概算) |
|---|---|
| 米国株 | 約 +16.6% |
| 欧州株 | 約 +29.4% |
| ドイツ株 | 約 +29.6% |
| 日本株 | 約 +24.8% |
| 新興国株全体 | 約 +32.9% |
数字だけを見ると、「米国株も十分上がっているじゃないか」と感じるかもしれません。
しかし世界全体で比較すると、米国株はむしろ「一人負けに近い」状況になりつつあります。
日本の個人投資家の多くは、
米国株と日本株くらいしか見ていないため、
- 米国株が世界の他地域に比べて出遅れている事実を知らない
- 知っていても、「一時的なものだろう」と軽視してしまう
という傾向があります。
ところがバフェット太郎氏は、これは「一時的なノイズ」ではなく、
今後10年以上続く「新しいトレンドの始まり」だと警告しています。
米国株が危険水域に入っている理由:EPSとPERの両方が膨らみきっている
ではなぜ、米国株の将来リターンが相対的に低く見積もられているのでしょうか。
動画で挙げられている主な理由は、次の通りです。
- ドル高によって輸入コストが下がり、企業の利益率が押し上げられてきた
- 減税によってEPS(一株あたり利益)が大きく拡大した
- 低金利時代が長く続き、PER(株価収益率)が大きく上昇した
その結果をよく表しているのが、シラーPER(景気循環調整後PER)です。
- 現在のシラーPERは約40倍超
- 過去のITバブルピーク時(ドットコムバブル)の44.2倍に接近
一方で、過去154年間の長期平均は約17.3倍とされています。
つまり、今の米国株は「利益に対して見れば、長期平均の2倍以上の値段が付いている」状態です。
ここで重要なのが、今後のシナリオです。
- これ以上の減税余地は乏しい
- 今後はドル安に転じれば輸入コストが上昇し、利益率の追い風が弱まる
- インフレが高止まりすれば、金利は高めで推移し、PERは下がりやすい
動画では、次のようなケースが示されています。
仮に、今後数年間でEPSが合計20%成長したとしても、シラーPERが40倍付近から長期平均の17倍付近まで低下した場合、株価は約50%下落する計算になる。
これは「米国株は必ず崩壊する」と断言しているわけではありませんが、少なくとも「それくらい下がっても、何ら不思議ではない水準までバリュエーションが膨らんでいる」という警鐘です。
「オルカン持ってるから新興国も大丈夫」は本当か?
最近の日本の個人投資家の間では、「オルカン」(全世界株インデックス)への投資が大人気です。
多くの人は、
「オルカンを買っておけば、世界中の成長をまるごと享受できる」
「新興国も含まれているから、新興国の成長も自然に取り込める」
と考えています。
しかし、バフェット太郎氏はこれに対して明確に「それは難しい」と指摘しています。
オルカンの国別構成比は、おおよそ次のようになっています。
| 地域・国 | 構成比(概算) |
|---|---|
| 米国 | 約 64% |
| 欧州 | 約 14% |
| 日本 | 約 6% |
| その他先進国 | 約 6% |
| 新興国全体 | 約 10% |
この構成比を見ると分かる通り、「オルカンの正体」はほぼ「米国株ファンド」です。
この比率だと、次のようなことが起こります。
- 仮に新興国株が1年で30%上昇しても
- 同じ年に米国株が5%下落しただけで
- 指数全体の成長率はほぼゼロになってしまう
つまり、新興国株が大きく伸びていても、米国株が足を引っ張れば、オルカンのパフォーマンスはほとんど伸びません。
その結果、
- 新興国株を中心に投資している人はどんどん資産を増やしているのに
- 米国株中心、あるいはオルカン中心の人は、なかなか資産が増えない
という格差が広がる可能性があります。
さらに、新興国株がブームになれば、指数の中で新興国の構成比が15〜20%と拡大していくことが予想されます。
しかしそれは、「既に割高で成長余地の小さくなった新興国株」が指数内で占める割合が増えただけ、ということになりがちです。
本気で新興国の成長を取り込みたいなら、
「安くて成長余地が大きい段階」で、自分から新興国中心のポートフォリオを組む必要がある、というのが動画の主張です。
では「いつ」新興国中心に切り替えるべきか?
バフェット太郎氏は、そのタイミングとして「世界同時株安」が訪れるタイミングを想定しています。
動画では、
- 2026年秋頃に、景気後退を伴う世界同時株安が起こる可能性が高い
- その局面で、世界中の株が一斉に叩き売られる
- そこで初めて、本格的に新興国への資金シフトを検討すべき
というシナリオを描いています。
もちろんこれは一つの予測であり、「必ずその年の秋に崩れる」と決まっているわけではありません。
ただし歴史的に見ると、
- 景気後退を伴う下落相場は、天井から平均15ヶ月後に底打ちする傾向がある
- 米国株は、大きなトレンド転換が3月か10月に起こりやすい
といったパターンがあるとされており、
今回も「天井を近いうちにつけ、その後2027年3月頃の底打ち」という流れがあり得るとしています。
ゴールドとドル、利下げサイクルの関係
動画の後半では、質問コーナーの中で「金(ゴールド)」の話も出てきます。
金価格の見通しを考えるときのポイントは、次のように整理されています。
- 金はドルと逆相関になりやすい
- 景気悪化で利下げサイクルが本格化すれば、ドル安が進み、金は上昇しやすい
- 逆に、インフレ高止まりや景気の底堅さで利下げが見送られると、ドル高が続き、金は上がりにくい
バフェット太郎氏自身は、
- 米経済は今後、景気後退に向かう
- その過程で利下げサイクルが本格化し、ドル安・金高が進む
と見ています。
ただし注意点として、
- AIバブル崩壊を伴う世界同時株安の局面では、金も一時的に売られる
- そのため、来年以降は「ドル安加速直前」と「世界同時株安」の二度、押し目買いのチャンスが来るかもしれない
という形で、「一方向にまっすぐ上がる」のではなく、波を打ちながら大相場入りしていく可能性があると語られています。
AIと雇用、そして景気後退の関係
もう一つ重要な論点が、「AIによる生産性向上と景気」の関係です。
よくある誤解として、
「AIのおかげで企業利益が伸びるなら、景気後退しないのでは?」
という考え方があります。
これに対して、バフェット太郎氏は次のように説明しています。
- 景気後退は「雇用市場」だけで判断されるものではなく、経済全体の生産・需要の落ち込みで判断される
- AIによる効率化で人員削減をしても、その浮いたお金を再投資し、新たな需要(生産・消費)を生み出せれば、景気は維持される
- しかし、単にリストラが進み、解雇された人が再就職できず、消費が冷え込めば、結局は景気後退になる
現状では、
- AIを理由にしたレイオフが加速
- 10月の人員削減数は15万3千人と、10月としては2003年以来の高水準
- 解雇された人は再就職に苦戦している
という状況があり、「AI導入が短期的に景気悪化要因として働いている側面がある」と指摘しています。
また、マサチューセッツ工科大学のレポートでは、
・AIを導入した企業のうち、95%が収益化に失敗している
というデータも紹介されており、
現時点では「AIの恩恵で景気が支えられる」と期待するのは時期尚早だとしています。
長期的には、90年代のIT革命のように、新しい産業・職種が生まれて経済全体が拡大する可能性は高いものの、
短期的には「AIバブル崩壊→失業率上昇→景気後退」という過程を通らざるを得ないという見立てです。
これから投資を始める人・既に米国集中の人はどう考えるべきか
最後に、動画の内容を踏まえて、個人投資家が意識しておきたいポイントを整理しておきます。
- 「米国株=最強」という前提は、一度リセットして考え直した方がよい
- オルカンは便利だが、その中身は米国64%の「ほぼ米国ファンド」であり、新興国の成長を十分に取り込める設計にはなっていない
- 本気で新興国の成長を取り込みたいなら、自分で新興国比率を高める配分を考える必要がある
- ただし焦って今すぐ全力で新興国に乗り換えるのではなく、世界同時株安など大きな調整局面を意識しつつ、時間をかけて準備していくことが現実的
- 金やコモディティ、欧州株なども含め、「米国以外」の資産に目を向けることで、次の景気拡大局面を取りに行く土台を作れる
バフェット太郎氏の動画は煽りが強いように見える部分もありますが、
中身を丁寧に追ってみると、
・長期リターンはどこから生まれるのか
・バリュエーション、為替、金利、景気サイクルがどう絡み合うのか
・インデックスの「中身」を理解しないまま流行に乗る危うさ
といった、とても本質的なテーマが詰まっています。
今後10年、20年と投資を続けていくうえで、
「米国株が新興国株に負ける時代」という視点を一度頭に入れておくことは、
ポートフォリオ戦略を考える上で大きなヒントになるはずです。


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