このブログは元動画「【独占】米国経済が危機的状況に陥った本当の理由!」の内容を基に作成しています。
結論:数字は好調でも、米国経済の土台はかなり危険な状態にある
動画の結論を一言でまとめると、次のようになります。
表面の数字だけを見ると、米国は実質GDP成長率が年率3%超、株価も史上最高値圏、AI関連株も大ブームという「絶好調」に見えます。
しかし、その裏側では
- 50州のうち、実際に成長しているのは16州だけ
- 22州ではすでに景気が縮小に入りつつある
- 製造業と農業が関税・移民政策で二重の打撃
- 10年以上続いた低金利で、家計も企業も州政府も債務まみれ
- AIバブルを支える企業や金融機関も、実は過去最高クラスのレバレッジ
という、かなり危うい構図が進行しています。
2008年のリーマンショックが「住宅ローン」という当たり前の分野から崩れたように、次の危機は
- 農場ローン
- 製造業の工場閉鎖
- レバレッジをかけたハイテク・AI企業
といったところから火がつく可能性がある、というのが動画の主張です。
以下では、動画の内容をできるだけ削らず、初心者にも分かるように順番に整理していきます。
1.「50の経済圏」で見ると、アメリカはすでに割れている
まず動画では、米国経済を「一つの国」ではなく「50の別々の経済圏」として見る重要性が強調されます。
数字で整理すると次のようになります。
| 区分 | 州の数 | 状態の概要 |
|---|---|---|
| 景気が成長している州 | 16州 | まだ経済は拡大している |
| 足踏み状態の州 | 13州 | 成長も縮小もしていない停滞ゾーン |
| 景気が縮小し始めている州 | 22州 | すでに後退入り、しかも毎月増加中 |
表面的には「米国全体」で見ると、GDPは3%成長、株価も高値更新と非常に強く見えますが、その裏で半分近い州がすでに縮小局面に入っており、その数が毎月増えているという状態です。
過去の金融危機やリセッションも、いきなり全米が一斉に悪化したわけではありません。
動画では、次のようなプロセスが繰り返されてきたと説明しています。
- まず一部の州・一部の産業で「ひび」が入る
- そのひびが、他の州・他の業種に少しずつ広がる
- 気づいたときには、連鎖が止まらないところまで悪化している
今起きている「ひび」は、多くの人が予想していた場所とは、少し違うところから入り始めています。
だからこそ、多くの投資家やエコノミストがまだ本当の危機感を持てていない、というのが動画の問題意識です。
2.製造業はなぜここまで弱くなったのか
2-1.第二次世界大戦後から続く「製造業の細り」
アメリカの「ものづくり」は、実は何十年も前からじわじわと弱くなってきました。
GDPに占める製造業の割合はおおよそ次のように推移しています。
- 1960年代 約25%
- 1990年代 約15%
- 現在 約10%
つまり、アメリカの経済構造は「工場で稼ぐ国」から、「サービスやIT・金融で稼ぐ国」へと大きくシフトしてきたということです。
それでもなお、中西部を中心とした州では、今でも製造業が地域の雇用の柱になっています。
しかし、その「柱」ほど、この40年間で一番のダメージを受けてきました。
2-2.トランプ政権が掲げた「ブルーカラー復活」
2017年、ドナルド・トランプが大統領に就任したとき、彼は
- ブルーカラー労働者の復活
- 製造業の雇用をアメリカに取り戻す
ことを大きな公約に掲げました。
ワイオミング州、アーカンソー州、ミシシッピ州などは、ブルーカラー労働者比率がとても高い州です。
こうした州では「工場が戻ってくる」「仕事が増える」と期待してトランプに投票した人も多くいました。
そのためにとられた政策が、輸入品に高い関税をかける「保護貿易」です。
- 安い外国製品に関税をかけて値段を上げる
- その結果、アメリカ国内の製品が相対的に有利になり、工場や雇用が戻る
というロジックでした。
2-3.関税の「想定外の結果」:コスト増と雇用喪失
しかし、動画が示す現実の数字はこの逆を示しています。
- 製造業指数は8か月連続で縮小
- 製造業セクターだけで、すでに4万人以上の雇用が失われた
- ゴールドマンサックスの試算では、関税の負担の約86%は、外国ではなく「アメリカの消費者と生産者」が負っている
関税は「外国を痛めつける」ための武器と思われがちですが、現実には
- 工場が輸入している原材料や部品のコストを押し上げる
- その結果、アメリカ国内の工場も競争力を失う
というブーメランになってしまいました。
製造業は、アウトプット(製品)を作るために
- 労働力
- 原材料・部品
という二つのインプットに依存しています。
アメリカは人件費が高いため、労働コストでは中国やベトナムのような国には勝てません。
それでも、過去には
- 強力な貿易インフラ
- 世界トップレベルの鉄道・港湾・海運
によって、なんとか一部の製造業の優位性を保っていました。
ところが、輸入原材料にまで関税をかけてしまった結果、その「最後の優位性」すら削ってしまったのです。
工場の閉鎖が進み、例えばピッツバーグでは、大手製鉄所が閉鎖され、元鉄鋼労働者が宅配ドライバーや飲食店のバイトに流れている、という現場レベルの変化も動画では紹介されています。
3.移民制限が製造業と農業の「現場」を崩壊させる
3-1.移民頼みだった現場労働
トランプ政権は、移民政策にも非常に厳しい姿勢を取りました。
狙いは
- 外国人労働者への依存を減らす
- アメリカ人の雇用を優先し、国内労働者の訓練と採用を増やす
というものでした。
しかし現実には、多くの製造業・建設業・農業は、すでに長年にわたって「移民労働者なしでは回らない構造」になっていました。
動画では、こうした州の中には
- 製造業雇用の4分の1を移民に頼っている州もある
と指摘されています。
移民を減らせば、理屈の上では「アメリカ人の雇用」が増えるはずですが、実際には
- 過酷な現場仕事をやりたがるアメリカ人は少ない
- 一から人材を育てるには多額のコストと時間が必要
- 経験豊富な移民労働者から学ぶ機会も失われる
ため、短期的には「雇用増」ではなく「人手不足」と「生産能力の低下」に直結してしまいました。
3-2.ICEの摘発と現場停止の連鎖
動画では、ICE(移民関税執行局)の事例も紹介されています。
ある高級加工工場では、そこで働いていた数百人の韓国人労働者が一斉に拘束され、国外退去となり、現場の生産が止まってしまいました。
これは一つの象徴的な事例にすぎません。
全米各地の
- 建設現場
- 製造現場
- 農場
で同様の人手不足やプロジェクト中断が起きています。
農場では、せっかく実った作物を
- 収穫する人がいない
- 結果として畑に放置されたまま腐らせてしまう
という、非常にもったいないことが現実に起きています。
4.農業州を直撃する「関税戦争」と世界市場の変化
4-1.農業が州経済の4分の1を占める地域
カンザス州、アイオワ州、サウスダコタ州などの中西部の州では
- 州GDPの約4分の1を農業が占める
というほど、農業が地域経済の中心です。
こうした州では
- 大豆
- トウモロコシ
- 豚肉
などの作物や畜産物を生産し、世界中に輸出して収入を得てきました。
4-2.価格が半分に落ちた理由
ここ数年で、これらの農産物の価格は
- ほぼ半分にまで下落
してしまった、というのが動画の指摘です。
背景として、動画では二つの要因が語られています。
1つ目は、世界市場の供給過剰です。
- ブラジル
- アルゼンチン
などが生産量を大幅に増やし、かつ人件費も安いことから、アメリカより安い価格で世界市場に農産物を出せるようになりました。
2つ目が、やはり関税です。
4-3.中国の報復関税で「お得意さま」が消えた
トランプ政権が中国に高関税をかけたのに対し、中国も報復として
- 大豆
- トウモロコシ
- 豚肉
など、アメリカの主要な農産物に最大25%の関税を課しました。
その結果
- アメリカ農産物の最大級の輸入国であった中国が、一晩で「ほぼ消える」
- 価格競争力を失ったアメリカ農家は、作っても売り先がない
という状況に陥りました。
作物を収穫しても
- どうせ売れない
- 保管コストもかかる
という理由で、畑で腐らせる農家も出てきていると動画は伝えています。
その影響は数字にも表れています。
- こうした関税と需要減だけで、中西部を中心とした州全体で約30億ドル以上の損失が報告されている
- ある地域では農業労働力不足が40%超という深刻さ
- ネブラスカ州では農家の破産が1年で30%増加
- カンザス州やアイオワ州では、2023年以降の農業所得が約25%減少
そして、現在の予測では
- 2030年までに、最大10万以上の農場が破産または閉鎖する可能性
があると言われています。
5.なぜ「農業の問題」が金融危機の引き金になりうるのか
ここで重要なのは「農業そのものはGDPの約1%しか占めない」という点です。
それなのに、なぜ動画の中でここまで農業が強調されているのか。
理由は、「農業セクターに流れ込んでいる巨額の資金と債務」にあります。
アメリカの農業ビジネスは、日本とは比べものにならない規模で行われており
- 機械
- 倉庫
- 土地
- 飼料・肥料など
への設備投資は莫大です。
その投資は、ほとんどが借入金によって賄われています。
動画では
- 金融機関が農業セクターに注ぎ込んだ資金は、4500億ドル以上
と紹介されています。
農場が破産しても、その借金が「消える」わけではありません。
- 地方銀行
- 信用組合
- 保険会社
などの貸し手側のバランスシートに「損失」として残り、それがまた別の金融機関へと波及していきます。
つまり、
- 農業の崩壊 → 地方銀行や信用組合の不良債権化 → 地域金融の連鎖破綻
というルートで、農業問題が「金融システムの問題」に変わってしまうのです。
これは2008年に
- サブプライム住宅ローン → 証券化商品 → 大手金融機関の破綻
と連鎖した構図とよく似ています。
6.家計も企業も州政府も「借金漬け」になった構造
6-1.家計の債務対所得比率130%という異常値
動画では、特にサービス業中心の州でも債務問題が深刻だと指摘しています。
例えば
- イリノイ州
- マサチューセッツ州
- テキサス州
などの州では
- 家計の債務対所得比率が130%超
つまり、年間の手取り収入の1.3倍以上の借金を抱えている状態です。
なぜここまで債務が膨らんだのか。
一番大きな理由は、2010年代に続いた「超低金利」です。
- 実質ゼロ金利に近い環境が約10年続いた
- 家計も企業も州政府も、安い金利でどんどん借金できた
- 古い債務は、新しい債務で借り換え
- 利益がなくても、借金さえできれば支出を増やせた
その結果、経済は見かけ上の成長を続けましたが、同時に債務残高も爆発的に増えていきました。
2013年から2021年の間だけでも、これらの州では
- 家計債務が45%以上増加
したとされています。
6-2.低金利の天国が終わり、高金利の地獄へ
ところが、インフレ高進などを背景に金利が引き上げられ、「高金利時代」へと移行すると状況は一変します。
- それまで管理できていた「月々の返済額」が、金利上昇で急増
- 家計は支出を削り、企業は設備投資を止めたり廃業したりする
- 債務返済が難しくなり、延滞やデフォルトが増える
特に、フロリダ州やテキサス州のように
- 社会保障やセーフティネットが脆弱な州
では
- 仕事を失っても十分な失業保険がない
- 生活費を賄うためには、さらに借金をするしかない
という悪循環に陥りやすくなります。
その結果として
- クレジットカードローン
- 自動車ローン
などの延滞率が急上昇していると動画は指摘しています。
7.AIバブルで「勝ち組」に見える州も、実はレバレッジだらけ
7-1.GDP成長3%のほとんどは「AI関連のごく一部の州」
ここまで見ると「アメリカはもうリセッション寸前なのでは」と思えてきますが、実際のGDP成長率は
- 年率約3%で、先進国の中ではトップクラス
この成長のほぼすべてを牽引しているのが
- ニューヨーク州
- カリフォルニア州
- ワシントン州
など、AI革命の最前線にいるごく少数の州です。
動画の説明によると
- これらの州の成長の約92%は、AI関連の支出や投資によって生み出されている
とのことです。
一見すると「AIのおかげでアメリカはまだまだ盤石」に見えますが、ここにも大きな落とし穴があります。
7-2.AI企業に積み上がる危険なレバレッジ
AI関連企業への投資や融資は、非常に大きなレバレッジを伴っています。
動画では例として
- オラクルの負債比率は約500%
(自社で持っている1ドルの自己資本に対して、5ドルの借金)
という数字が挙げられています。
通常の経済環境ですら、ここまで借金に依存した経営はかなり危険です。
さらに、こうしたAIスタートアップやハイテク企業へお金を貸している金融機関は
- 安定した収入源(元手)があって、その上でリスクマネーを供給するのが本来の姿
のはずですが、その「安定収入源」自体も揺らいでいます。
動画によると
- 商業用不動産の延滞率は2008年以来の最高水準
- 中小企業のデフォルトも増加
- 住宅ローンや中小企業ローンなど、これまで「安定収入源」だった部門が次々と危うくなっている
そのため、銀行は
- 低リスクで安定的な利ざやを稼ぐ手段を失い
- よりリスクの高い投資に手を出して収益を確保しようとする
という、これまた危ない方向に追い込まれています。
AIバブルにより
- 株価
- 表面上のGDP
は押し上げられているものの、その土台は
- 債務
- レバレッジ
- 期待だけで膨らんだ投資
に支えられた非常に不安定な構造だと動画は警告しています。
8.2008年との共通点:違うのは「どこが爆発するか」だけ
動画の後半では、現在の状況と2008年の金融危機が比較されています。
2008年のとき、経済を崩壊させたのは
- 最新テクノロジー株のバブルでも
- 派手な投機でも
なく
- 世界で最も安全だと信じられていた「住宅市場」
でした。
同じように、今のアメリカでも
- レバレッジという「爆薬」はすでに十分に積み上がっている
- 何か一つのセクターが崩れれば、同じ金融チャネルを通じて一気に広がる
という点は、2008年とほとんど変わっていません。
違うのは、引き金となる「着火点」がどこか、というだけです。
動画では、その候補として
- 農場ローン
- 工場閉鎖や製造業ローン
- レバレッジをかけたハイテク・AI企業
などを挙げ、「今回は住宅ローンではないかもしれない」と警戒を促しています。
9.個人投資家は何を意識すべきか
動画は主にマクロの問題を解説していますが、個人投資家として意識したいポイントも整理しておきます。
1つ目は、「全米平均」という数字だけに騙されないことです。
- 米国全体のGDP成長率3%
- 米国株インデックスの史上最高値
といった数字は、あくまで「平均」です。
実際には、成長している一部の州と、縮小し始めている多くの州の差がどんどん開いています。
2つ目は、「債務とレバレッジの大きさ」に敏感になることです。
- 家計債務対所得130%超の州
- 負債比率500%の企業
- 農業・製造業・商業不動産・中小企業ローンの延滞増加
といった数字は、「もし景気が悪化したときに、どこが最初に崩れるか」を示すヒントになります。
3つ目は、「AIバブル」の功と罪を冷静に見ることです。
- AIによる生産性向上や新ビジネスの可能性は確かに大きい
- しかし、投資マネーが過剰に集中し、負債で膨らんだバブルになっていないか
という視点を持つことで、「乗るところ」と「距離を置くところ」を判断しやすくなります。
まとめ:見えている「好景気」の裏にある、静かに進むひび割れ
最後に、ここまでの内容を簡潔にまとめます。
- 米国全体のGDPや株価は好調に見えるが、50州のうち22州ではすでに景気が縮小し始めている
- 製造業は、半世紀以上かけてGDP比25%から10%へと細り、関税と移民制限が「最後の優位性」まで削ってしまった
- 農業州では、価格半減・中国の報復関税・労働力不足40%・破産30%増など、深刻なダメージが広がっている
- 農業や製造業の問題は、4500億ドル規模の融資を通じて、地方銀行や保険会社など金融システム全体に波及しうる
- 家計・企業・州政府は、10年以上の低金利によって債務を膨らませ、今は高金利で返済負担が急増している
- GDP成長の主役であるAI関連の州も、実は負債比率500%といった危険なレバレッジに支えられている
- 2008年と同じく「レバレッジという爆薬」はすでに揃っており、違うのは爆発する場所が住宅ローンではなく、農場ローンやレバレッジの効いたハイテク企業かもしれないという点だけ
数字だけを見れば「アメリカ一人勝ち」に見える今の状況ですが、その裏側では確実にひびが広がっています。
こうした構造を理解したうえで投資戦略を考えることが、これからの米国投資家にとって欠かせない視点だと、動画は強く訴えかけていました。


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