この記事は、YouTube動画「流行を追うのではなく勝てる土俵で戦う」を基に内容をわかりやすくまとめたものです。
まず結論:日本のフォトレジスト供給が止まると世界の半導体製造は完全に止まる
半導体製造に不可欠な薬剤フォトレジスト。この世界シェアの約9割を日本企業が握っており、特に最先端半導体向けは日本が事実上の独占状態です。
つまり
日本がフォトレジスト供給を止める
→ 世界の半導体製造ラインが止まる
→ AI、スマホ、EV、軍事など全産業がストップ
というレベルの影響力を持っています。
この構造を理解すると、世界の半導体産業における日本のポジションがいかに強力かがわかります。
日本が握るフォトレジスト市場の圧倒的シェア
フォトレジストとは?
半導体製造は写真技術の応用で、シリコンウエハーに回路パターンを焼き付ける時に必要な薬剤です。
フォトレジストの品質次第で
- 歩留まり(不良品率)
- 半導体の性能
が決まるほど重要。
日本の世界シェアは驚異の9割
世界シェア約90%。
特にEUV(極端紫外線)など最新プロセスに使うフォトレジストはほぼ日本しか作れません。
主要企業は以下の通り。
- 東京応化工業(TOK)
- JSR
- 新越化学工業
- 住友化学
- 富士フイルム
- 東洋合成工業(観光剤シェア70%)
一般的な知名度は低いですが、全社が半導体分野で世界トップクラスの技術を持っています。
なぜ日本のフォトレジストは他国が真似できないのか?
1:均一分散技術が桁違い
フォトレジストは複数の物質を混ぜて作られます。
しかし、
- 一部の濃度が濃い
- わずかにムラがある
これだけで不良品率が爆発的に増えます。
この均一分散技術は数十年の蓄積が必要で、配合レシピを見ても再現できません。
2:不純物ゼロレベルの管理が必要
フォトレジストは微量の不純物で歩留まりが壊滅します。
求められる純度は成長(ほぼゼロ)
と表現される異常なレベル。このレベルの品質管理は日本企業の独壇場。
3:半導体製造装置との共同開発が必要
フォトレジスト単体で開発されるものではなく、
- どの光の波長を使うか
- 製造装置の仕様
- 回路の仕様
こうした細かな調整を半導体メーカーと共同で行います。
このため装置メーカーが弱い国は真似できません。
日本には世界的装置メーカーが多数あり、これが圧倒的な優位性につながっています。
中国はなぜ真似できない?輸入しても再現不可能
動画で語られている重要なポイントです。
中国はフォトレジストの約90%を日本から輸入。
目の前に現物があるのに同じものを作れない理由は次の通りです。
- 均一分散の技術を再現できない
- 不純物レベルの管理が不可能
- 製造装置との共同開発体制がない
- そもそもノウハウが数十年単位で積み上がっている
これらは一朝一夕では構築できません。
つまり中国の半導体製造は日本への依存度が極めて高く、フォトレジストが止まると中国全体の製造業が停止するレベルということです。
世界の半導体需要と日本企業のビジネス構造
半導体需要が増えれば日本が潤う仕組み
現在、以下の理由で世界中で半導体需要が爆発しています。
- AI開発(特にNVIDIA向け)
- データセンター増加
- EV化
- スマート家電や5G
半導体が必要になる
→ 世界中のファウンドリーがフル稼働
→ その全てが日本のフォトレジストを使用
つまり、
世界の半導体需要=日本の売上アップという最強のビジネスモデル。
TSMCだけでなく、世界中のファブが顧客になるため、地域ごとの影響も受けにくいのが特長です。
日本はファウンドリーをやるより薬剤・装置で勝つべき理由
動画では、TSMC誘致の議論に対して以下の視点が語られています。
- ファウンドリーは投資額が巨大
- サイクルの波で業績が大きく上下する
- アメリカが国内優先政策を取ると日本が不利になる
- 同じ土俵で戦うと政治的リスクが大きい
一方、
- 世界中が絶対に必要とする薬剤や装置供給
- 政治リスクが少なく需要が安定
- 日本独自の技術で真似されにくい
つまり、日本は流行を追うよりも日本が勝てる土俵で戦う方が合理的という提言です。
中国に対する日本の圧力カード:フォトレジストの存在
中国はレアアースを武器にした制裁を行うことで有名です。
しかし、実際に影響力が大きいのはレアアースではなくフォトレジストです。
中国が日本に政治的圧力をかけてくるなら日本はフォトレジスト輸出審査を遅らせる
こうした「現場レベルの牽制」が可能だという話が動画で語られていました。
これは宣言する必要もなく、審査が遅れているというだけで実質的な圧力になります。
この程度でも中国製造業は大混乱になります。
まとめ:日本は世界半導体産業の要であり、独自の強みを最大化すべき
今回のポイントをまとめると次の通りです。
- 世界のフォトレジストの約9割は日本製
- 最先端EUV向けは日本が事実上の独占
- 均一分散・純度管理・装置メーカーとの共同開発など高度技術の結晶
- 中国は輸入しても真似できない
- 世界の半導体需要増加=日本企業の売上増
- ファウンドリーをやるより薬剤・装置で勝つべき
- 必要なら中国に対する効果的な牽制カードにもなる
つまり、
日本はすでに「世界を止める力を持つ産業」を握っている
ことをもっと国内でも理解すべきであり、
勝てる土俵で戦う戦略こそ長期的に正しいという内容でした。


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