本記事は、YouTube動画『【50代60代は必見】子供NISA誕生で贈与戦略と相続対策が進化します』の内容を基に構成しています。
子供NISA誕生で「お金持ち家系」と「そうでない家系」の差が広がる
2024年に始まった新NISAは、いまや成人人口の4人に1人が口座を開設する「国民的投資制度」となりました。そんな新NISAに、今後大きな転換点となり得るニュースが加わろうとしています。それが「未成年へのNISA解禁」、いわゆる子供NISAの誕生です。
報道ベースではありますが、18歳未満の未成年も新NISAに類する非課税口座を持てる方向で政府・与党の議論が進んでいます。これが実現すれば、教育資金や将来資金の準備だけでなく、「生前贈与」「相続対策」の面で大きなパラダイムシフトが起こります。
一方で、動画の話者はこの制度を高く評価しつつも、「子供NISAは結果的に富裕層・高所得層をさらに有利にし、経済格差を拡大させる側面がある」と冷静に指摘しています。本記事では、そのメカニズムとメリット・リスクを、初心者にも分かりやすく解説していきます。
新NISAの基本と、なぜ未成年はこれまで使えなかったのか
最初に、ベースとなる新NISAの仕組みを整理しておきます。新NISAは、以下の2つの枠で構成されています。
- 積立投資枠:年間120万円
- 成長投資枠:年間240万円
合計で年間360万円まで投資可能で、累計の非課税投資枠は1800万円です。非課税期間は無期限に拡充され、旧NISAと比べて「長期投資がしやすい」「大きな金額を非課税で運用できる」制度へと大きく進化しました。
例えば、運用利回りを年5%と仮定して、毎月の積立額と運用年数の組み合わせを見てみると、次のようなイメージになります。
- 月30万円を10年続けると、約2600万円
- 同じく20年で約4300万円
- 30年で約7000万円
月30万円という「最速パターン」は現実的に達成できる人は限られますが、月10万円でも30年後には約5600万円という、相当な資産規模に育ちます。これが、非課税で運用できるというのが新NISAの強みです。
しかし、ここには1つ大きな制約がありました。それは「新NISA口座を開設できるのは18歳以上」という点です。未成年は新NISAの非課税枠を使えず、親や祖父母が代わりに自分名義の口座で運用するしかありませんでした。
過去には「ジュニアNISA」という子供向け制度もありましたが、年間80万円、累計非課税枠400万円、非課税期間は最長5年、かつ原則として18歳まで引き出し不可という制約があり、利用が伸びず2023年で廃止されています。
今回議論されている子供NISAは、このジュニアNISAの「非課税期間が無期限版」とも言える内容であり、かつ現在はすでに多くの大人が新NISAを利用していることから、普及スピードはジュニアNISAとは比べものにならないと考えられます。
動画内容の詳細解説①:子供NISAの制度イメージと非課税枠
想定されている子供NISAの枠とルール
現時点では、子供NISAはあくまで「報道ベース」の情報であり、正式決定ではありません。ただし複数の大手メディアが報じていることから、実現する可能性はかなり高いと見られています。
報道されている主なポイントは次の通りです。
・未成年(18歳未満)も新NISA類似の非課税口座を持てる
・累計投資上限は600万円案が有力
・年間の投資上限額は60万円案が検討されている
・投資対象は大人の「積立投資枠」と同様のインデックスファンド中心
・12歳以降は教育目的などに限定して払い出し可能
・親世代が自由に引き出して使えないよう、使途制限を設ける方向
つまり、年間60万円を最大10年間積み立てて、合計600万円まで非課税で投資できるイメージです。毎月換算すると、月5万円の積立を10年続けるのが「最速パターン」となります。
大人の新NISAは累計1800万円、そのうち成長投資枠が1200万円、残りの600万円が積立投資枠という構造です。この「積立枠600万円」を、そのまま子供に開放するイメージで設計されていると動画では説明されています。
ジュニアNISAとの違い
かつて存在したジュニアNISAとの主な違いは、以下のように整理できます。
・ジュニアNISA:年間80万円、累計400万円、非課税期間最長5年、18歳まで原則引き出し不可
・子供NISA(想定):年間60万円、累計600万円、非課税期間は無期限(新NISA同様)
金額感は近いものの、非課税期間が無期限になっている点が決定的な違いです。ジュニアNISAは「使いにくくて浸透しなかった」制度でしたが、子供NISAは新NISAの認知拡大を追い風に、一気に広まる可能性が高いと考えられます。
動画内容の詳細解説②:子供NISAの税金メリットとシミュレーション
0歳から10年間積み立てた場合のインパクト
動画では、分かりやすいシミュレーションが提示されています。
前提として、以下の条件を置きます。
・子供が0歳の瞬間から毎月5万円を積み立て
・10年間で上限の600万円を積み切る
・運用利回りは年7%と仮定
この場合、子供が10歳になる時点での資産額は約866万円となります。投資元本は600万円なので、含み益は約266万円です。
通常であれば、この266万円に対して20.315%の金融所得課税がかかりますが、子供NISA口座であれば、この税金がゼロになります。つまり、866万円まるごとが子供の資産になるというわけです。
20歳まで運用を続けた場合の資産規模
さらに、10歳以降も運用を継続した場合どうなるか、というシミュレーションも示されています。前提は同じく年7%の運用利回りです。
・10歳以降は追加積立なしで20歳まで運用
→ 約1703万円
・10歳以降も毎月5万円を20歳まで積み立て
→ 約2563万円
・10歳以降は毎月10万円に増額して20歳まで積み立て
→ 約3424万円
なお、子供NISAの600万円分はすでに使い切っているため、11歳以降に追加で購入する分は課税口座での運用となります。18歳以降になれば、大人の新NISAの残枠を使って非課税での運用を再開することも可能です。
いずれにせよ、「0歳から10年間で600万円を投じ、その後も運用を続ける」という前提に立つと、20歳時点で数千万円規模の資産を持つ子供が珍しくなくなる、というのが動画の主張です。
特に私立の名門中高に通うような、比較的裕福な家庭の子供は、自分名義で1000万円以上を持つことが「当たり前」の世界線になり得る、と話者は指摘しています。
動画内容の詳細解説③:贈与と相続の観点から見た子供NISAの威力
運用益非課税だけではない「生前贈与」の効果
子供NISAのメリットは、運用益が非課税になる点だけではありません。動画で特に強調されているのが、生前贈与による「相続税圧縮効果」です。
日本の相続税率は最高55%です。つまり、相続のタイミングで資産の半分以上が税金として失われるケースもあるということです。一方で、贈与税は一般税率・特例税率ともに、低額帯では10%からスタートします。
例えば、年間110万円までは「暦年贈与の非課税枠」として贈与税がかかりません。理論上は、父親が妻と3人の子供、計4人に対して110万円ずつ贈与しても、贈与税は1円も発生しません。
さらに、贈与額を増やした場合のイメージとして、動画では次のような説明がありました。
・トータル310万円を贈与
→ そのうち110万円は非課税、残り200万円に対して10%の贈与税(20万円)
・トータル410万円を贈与
→ 同様に、300万円部分に10%の贈与税
一方で、これを全て相続で渡す場合には、資産規模によっては相続税が30%、40%、場合によっては55%かかる可能性があります。であれば、「生前に10〜15%程度の贈与税を払ってでも、相続の55%を回避した方がトータルでは有利」という考え方が成り立ちます。
この「相続税率と贈与税率の差」を利用するのが、富裕層にとっては定番の相続対策であり、子供NISAはその新たな受け皿になる、というのが動画のポイントの1つです。
1世代飛ばし贈与と子供NISA
今後増えると予想されるのが、「1世代飛ばしの生前贈与」です。祖父母が、自分の子供(親世代)を飛ばして、直接孫に資産を移すパターンです。
祖父
↓
父親
↓
子供(孫)
という3世代の構図において、祖父が父親を経由せずに孫へ資産を贈与することで、1回分の相続を飛ばすことができ、相続税負担を大きく軽減できます。
これまでも、祖父母が孫へ学資や住宅資金の名目で贈与をするケースはありましたが、子供NISAが登場すると、「孫名義の非課税口座」で資産を運用できるため、贈与による資産移転効率がさらに高まることになります。
動画の視聴者層には50代・60代が多いという前提から、「今は孫がまだ小さく18歳未満という人が多いが、子供NISAが始まれば、その孫名義での投資という選択肢が現実的になる」と指摘しています。
動画内容の詳細解説④:子供NISAがもたらす「残酷な経済格差」
新NISAと子供NISAは、本質的に「富裕層優遇」か
動画の中で話者は、「新NISA自体、もともと富裕層優遇の側面がある」と率直に述べています。
確かに、月3万円〜5万円程度の積立に対して非課税が適用されるのは、中間層にとっても大きなメリットです。しかし、日本全体で見ると、年間360万円の非課税投資枠をフル活用できる人はごく少数です。
さらに、生前贈与と組み合わせることで、新NISAの威力は飛躍的に高まります。ここに子供NISAまで加わると、「制度をフル活用できる層」と「そもそも投資に回せる余裕がない層」の差は、年を追うごとに開いていきます。
家族4人モデルで見る「非課税枠4800万円」のインパクト
動画では、次のような4人家族をモデルケースとして取り上げています。
・父:38歳
・母:35歳
・長男:7歳
・長女:5歳
この家族構成だと、家族全体の非課税枠は以下のようになります。
・父の新NISA:1800万円
・母の新NISA:1800万円
・長男の子供NISA:600万円
・長女の子供NISA:600万円
合計で4800万円もの非課税枠を持つことになります。
さらに「最速パターン」で年間の上限まで投資すると、家族4人で年間840万円、月換算で約70万円の積立が必要になります。これは「高属性サラリーマンの手取りを全て投資に回す」レベルの金額であり、現実的に実行できる家庭は日本全体の数パーセント程度だろう、と話者は見ています。
いでこと組み合わせると、月80万円超が非課税に
さらに2027年からは、企業型DCやいでこの拡充も予定されています。会社員や公務員のいでこ掛金上限は、現行の月2万円台から、月6万2000円へ大幅に引き上げられる見込みです。
もし先ほどの夫婦が共にいでこを利用すれば、2人で月12万4000円の非課税投資枠が追加され、先ほどの新NISA・子供NISAと合わせると、家族全体で月82万4000円という非課税枠になります。
現実的に、この金額をフルで使える家庭はごく一部です。多くの家庭はインフレと実質賃金の低迷に苦しみ、投資どころか日々の生活費で精一杯という状況にあります。
こうした構図から、話者は「子供NISAは堅実な中間層を富裕層へ押し上げるチケットである一方で、放漫な中間層と非投資層を相対的な貧困へ追いやる装置にもなり得る」と冷静に分析しています。
資産インフレと金融リテラシー格差
動画では、日経平均が過去15年で5倍以上になったことにも触れています。2010年には1万円を割り込んでいた日経平均が、2025年には5万円を超える水準に達しているという事実は、「資産を持つ者」と「持たない者」の格差を端的に示す例です(配当込みならさらに差は広がります)。
加えて、金融リテラシーの格差も広がりつつあります。
・富裕層・高所得層の子供
→ 親や祖父母からの贈与を通じて投資や金融に触れる機会が増える
→ 子供のうちから金融スキル・資本主義のルールを学びやすい
・一般家庭・低所得層の子供
→ そもそも動かせるお金が少なく、投資に触れる機会が乏しい
→ 学ぶきっかけも少なく、金融リテラシーが上がりにくい
「R>G(資本収益率は経済成長率より高い)」というトマ・ピケティの有名な不等式にも触れながら、話者は「日本でも今後、この傾向がより強まるだろう」と警鐘を鳴らしています。
動画内容の詳細解説⑤:政府・財務省の「ちゃぶ台返し」リスク
名義預金認定と生前贈与への監視強化
子供NISAが拡大し、生前贈与が一般化していくと、税務署の目線からは「脱法的な節税」に見える余地もあります。動画では、特に名義預金のリスクが指摘されています。
名義預金と認定される典型的なパターンは、次のようなものです。
・贈与を受けた本人が、贈与があったことを認識していない
・通帳やカードを実際に管理しているのが親や祖父母で、子供は事実上コントロールできない
・毎年同じ金額を機械的に贈与しており、「相続税回避目的」と判断されやすい
この場合、「名義は子供だが、実質的な所有者は親」と判断され、相続時には親の財産としてカウントされる可能性があります。特に近年は、国税庁が生前贈与に対する監視を強めており、「残高評価を巡る問題」に関するレポートでも、名義預金や不自然な贈与が問題視されています。
制度面では、2024年から生前贈与の「持ち戻し期間」が3年から7年に延長されました。将来的には、7年よりさらに長くなる、あるいは贈与税と相続税を一体化させる可能性も指摘されています。
金融資産増税やマイナンバー連携の流れ
動画では、今後の金融資産課税の方向性についても触れられています。
・全ての銀行口座・証券口座をマイナンバーに紐づけ、資産の一元把握を進める
・社会保険料のさらなる引き上げという「実質的な増税」
・年収上位1%向けのミニマムタックス導入(すでに一部始まっている)
政府としては、「新NISAで非課税を拡大した代わりに、他のところで負担をお願いする」というスタンスになる可能性が高いと話者は見ています。つまり、子供NISAは「表向きは家計支援の制度」でありながら、裏では金融資産全体への課税強化の流れがじわじわと進んでいく、という構図です。
追加解説:FPとしての見解と、一般家庭が取るべきスタンス
動画の最後で、話者はファイナンシャルプランナーとしての個人的な見解を率直に述べています。
まず、「教育資金や生活費は、子供がいようがいまいが、最終的には親や祖父母が負担するものであり、そこには元々贈与税はかからない」という点を指摘します。その意味で、「教育資金のためだけなら、子供NISAの意義は思ったほど大きくない」側面もあると冷静に評価しています。
しかし一方で、「子供が成人するまでにコツコツと将来資金を作ってあげたい」という親は少なくなく、その気持ちを非課税枠でサポートできるという意味では、子供NISAは間違いなく有用な制度でもあります。
重要なのは、「子供NISAをフル活用できる家庭は、すでに日本全体で見れば相当裕福な側である」という現実を認識した上で、自分の立ち位置を冷静に見極めることです。
・月70万円の最速パターンを狙う必要はない
・15年〜20年かけてゆっくり枠を埋めていく形でも十分
・堅実な中間層にとって、新NISAと子供NISAは「不裕層へのチケット」になり得る
一方で、実質賃金が伸び悩み、日本全体としては「沈みゆく国」の側面も否定できません。その中で、「自分の身は自分で守る」という意識を持ち、制度のメリットを冷静に拾っていくことが求められます。
まとめ:子供NISAは「格差拡大装置」か「堅実な中間層の味方」か
本記事では、子供NISA誕生がもたらす影響について、動画内容を基に整理してきました。
子供NISAは、
・0歳からの長期積立で、20歳時点で数千万円規模の資産も現実的になる
・運用益非課税に加え、生前贈与による相続税圧縮効果を高める
・祖父母から孫への「1世代飛ばし贈与」の新たな受け皿になる
・新NISAと組み合わせることで、家族全体で4800万円以上の非課税枠となり得る
という強力な制度です。
一方で、
・そもそも枠を埋められる家庭はごく一部であり、富裕層・高所得層ほど有利になる
・名義預金認定や生前贈与への監視強化といった「ちゃぶ台返しリスク」が存在する
・金融資産増税・社会保険料アップといった別の形で負担増が進む可能性が高い
といった点も忘れてはいけません。
大切なのは、「制度が富裕層に有利なのは事実だが、堅実な中間層にとっても新NISA・子供NISAは貴重なチャンスである」という視点です。コツコツ働き、コツコツ節約し、コツコツ投資を続ける人にとって、この制度は確かに「上のステージへ上がるための階段」になり得ます。
投資や資産運用は、「知っているかどうか」で生涯の資産額が数百万円から数千万円単位で変わってくる世界です。子供NISAの正式な制度設計が固まり次第、自分の家庭の家計状況、将来設計、相続の見通しを踏まえて、「どこまで使うのが現実的か」を具体的に考えていくことが重要だと言えるでしょう。


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