住宅市場の異変は何を意味するのか金利・価格・供給不足が同時に進む米国不動産の現状と今後の行方

本記事は、YouTube動画『What Just Happened To The Housing Market?! (What It Means For You)』の内容を基に構成しています。


目次

住宅市場で同時進行する3つの問題

現在の米国住宅市場は、複数の深刻な問題が同時に重なり合う、極めて難しい局面に入っています。

動画の冒頭で指摘されているのは、住宅価格が非常に高いこと、住宅ローン金利が高止まりしていること、そして売りに出ている住宅の数が極端に少ないという3点です。

これらが同時に発生していることで、住宅の購入はかつてないほど困難になっています。

こうした状況を受け、米連邦準備制度は2025年に入ってから3回目となる利下げを実施しました。多くの人は、これによって住宅ローン金利が下がり、住宅が少しでも買いやすくなることを期待していました。

しかし、その期待に対して、連邦準備制度のトップは冷静な見解を示しています。わずか25ベーシスポイントの利下げでは、住宅市場の問題を根本的に解決することは難しいというのです。


なぜ住宅はここまで手が届かなくなったのか

住宅市場が抱える本質的な2つの問題

動画の中で、連邦準備制度の議長は、住宅市場がこれほどまでに手の届かない存在になった理由を2つ挙げています。

1つ目は、住宅を売却する人が極端に少ないことです。2つ目は、その背景として、多くの住宅所有者が非常に低い住宅ローン金利に「固定」されている点があると説明されています。

パンデミック期間中、多くの人は2.5%前後、あるいは3%台前半という歴史的な低金利で住宅ローンを借りることができました。

その後も借り換えを繰り返し、低金利を維持してきた人が多数存在します。

こうした人たちにとって、現在の6%から7%の住宅ローン金利で新たに住宅を買い直すことは、経済的な負担が大きすぎるため、住み替えを避ける行動につながっています。

中央銀行でも解決できない構造問題

さらに重要なのは、連邦準備制度自身が、現在の住宅問題は金融政策だけでは解決できないと認めている点です。

利上げや利下げはできても、長年にわたって積み重なった住宅供給不足という「構造的問題」に対して、直接的な手段を持っていないという認識が示されました。

ここが非常に皮肉なポイントです。現在の住宅市場の歪みは、もともとパンデミック時に連邦準備制度が金利をゼロ近くまで引き下げたことが大きな要因となっています。

しかし、その結果として生まれた問題を、今度は「解決できない」と表明しているのです。


数字で見る住宅購入の現実

2019年と現在の住宅購入コストの比較

動画では、具体的な数字を用いて住宅市場の変化が説明されています。

2019年時点で、米国の中央値の住宅価格は288,000ドルでした。この住宅を30年固定、金利4%、頭金20%で購入した場合、毎月の住宅ローン返済額は約1,099ドルとなります。

一方、現在では住宅価格は約60%上昇しています。同じ住宅は約460,000ドルとなり、仮に30年固定で金利6%、頭金20%とすると、月々の返済額は約2,200ドルにまで跳ね上がります。

住宅価格は60%の上昇にとどまっているにもかかわらず、月々の支払いは約100%増加しています。

一方で、米国の平均所得の増加率は25%未満にとどまっており、住宅購入者の負担は明らかに過剰なものとなっています。

K字型回復がもたらす格差

この現象は、いわゆる「K字型回復」を象徴しています。

資産を保有していた人、つまり住宅や株式を持っていた層は大きな恩恵を受け、資産価値を急激に増やしました。一方で、労働所得に依存する層は、生活コストの上昇に追いつけず、相対的に貧しくなっています。

連邦準備制度の議長であるジェローム・パウエル氏も、資産価格の上昇が高所得層に集中している現状について、「この状況が持続可能かどうか分からない」と述べています。

住宅価格が60%上昇し、住宅コストが100%上昇する一方で、株式市場を示すS&P500指数は約125%上昇しました。これらの数字は、投資家がいかに優遇され、投資をしていない人が取り残されているかを如実に示しています。


住宅価格を左右する3つの要因

供給と需要がすべてを決める

動画の後半では、住宅価格の今後を考えるうえで重要な視点として、供給と需要の関係が解説されています。住宅に限らず、資産価格は基本的にこの2つで決まります。

買い手が売り手より多ければ価格は上昇し、売り手が買い手より多ければ価格は下落します。その需給関係に影響を与える要因として、動画では3つのポイントが挙げられています。

経済状況と購入意欲

まずは経済です。住宅価格が高くても、人々が「支払える」「ローンが通る」「仕事が安定している」と感じていれば、住宅は購入され続けます。実際、2024年に住宅価格が過去最高を更新していたにもかかわらず、住宅購入は活発でした。

重要なのは、価格の高さそのものではなく、支払い可能性と心理的な安心感です。銀行が融資を認める限り、人々は本来の予算を超えてでも住宅を購入しようとします。

在庫不足と売却意欲の低下

次に在庫の問題があります。

低金利の住宅ローンを持つ人が売却をためらうことで、市場に出る住宅が極端に少なくなっています。

この問題への対策として、トランプ政権下では「ポータブル・モーゲージ」、つまり住宅ローン金利を持ち運べる制度の検討が進められています。

これが実現すれば、低金利を失わずに住み替えが可能となり、供給が増える可能性があります。

また、住宅建設も徐々に増えていますが、建設業者は景気後退のリスクを警戒しており、積極的な増産には慎重です。

住宅ローン金利の行方

最後が住宅ローン金利です。6%という水準は歴史的に見れば低いものの、過去10年と比べると非常に高いと感じられます。

2026年には連邦準備制度議長の任期が切れ、トランプ大統領がより積極的な利下げを志向する人物を指名する可能性が指摘されています。

政策金利と住宅ローン金利は直接連動しませんが、銀行の資金調達コストが下がれば、結果的に住宅ローン金利も低下する可能性があります。


まとめ:住宅は投資ではなく生活の基盤として考える

動画の締めくくりでは、住宅購入を検討する人への実践的なアドバイスが語られています。経済や金利の先行きを正確に予測することは困難であるため、それよりも個人の家計状況を重視すべきだという考え方です。

毎月の返済額、頭金、引っ越しや改修費用まで含めて無理なく支払えるのであれば、住宅を購入してもよいという姿勢が示されています。金利が下がれば、後から借り換えをすればよいという発想です。

重要なのは、住宅を「資産」ではなく「負債」として捉えることです。住むための家で一攫千金を狙うのではなく、余剰資金は別の投資に回すことで、長期的な資産形成が可能になります。

連邦準備制度自身が認めているように、住宅市場の問題は簡単には解決しません。2026年以降も大きな変化が続く可能性があります。その中で冷静に判断し、自分自身の経済状況に合った選択をすることが、これからの時代には求められています。

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