本記事は、YouTube動画『インド株 夢見るオバハンを冷徹ジジイが軽くいなす。GDP成長7.4%でも米と中のリスクが。#アフレコ #意訳 #金融 #インド株 #トランプ関税 #中国+1』の内容を基に構成しています。
近年、インド株は「次の中国」とも言われ、多くの個人投資家の注目を集めてきました。
しかし、ここに来てインド株市場は伸び悩み、為替のルピー安も進行しています。かつてインド株を強気で推していた投資家たちは、今やどこに消えたのかと思えるほど市場は静かです。
本記事では、ムンバイからブルームバーグの編集者と元インド政府の主席経済顧問が語るリアルなインド経済の現状をもとに、その実態とリスクを整理します。
インド株が冴えない現状と市場の違和感
最近のインド株市場は、代表的な株価指数であるセンセックスを見ても力強さに欠けています。
インド経済は高成長を続けているはずなのに、株価は冴えず、ルピーも下落基調にあります。この「経済は好調なのに市場が弱い」というギャップが、投資家の間で違和感として広がっています。
こうした中、インドの実情をより正確に知るため、ブルームバーグのムンバイ編集者であるメダ・ドゥーシー氏が登場し、2025年度のGDP成長率について解説しています。
インド政府が発表した速報値では、2025年度の実質GDP成長率は7.4%となりました。これは主要国の中でもトップクラスの成長率であり、一見すると非常に明るい数字です。
7.4%成長を支えた要因と関税の影響
メダ氏によれば、この高成長の背景には政府の積極的な経済活動の回復があります。
前年は総選挙の影響で政府の投資や公共事業が抑制されていましたが、今回はその反動で公共投資や企業活動が活発化しました。サービス業や製造業も上向き、経済全体の勢いが戻ってきたと説明されています。
また、アメリカのトランプ政権によるインドへの関税強化が話題になっていましたが、今回のGDP速報値を見る限り、その影響は限定的だとされています。
インドは内需主導型の経済であり、輸出依存度が比較的低いため、関税による成長率への影響は最大でも0.5%程度と見積もられています。
さらに、電子機器や医薬品といった主要産業は関税の対象外であり、繊維や宝飾品などの労働集約型産業も関税発動前に輸出を前倒ししていたため、短期的なダメージは小さいとされています。
こうした説明だけを見ると、7.4%という数字は非常に説得力があり、インド経済は順調に拡大しているように見えます。
元主席経済顧問が指摘する数字の裏側
しかし、この楽観的な見方に強い疑問を投げかけるのが、元インド政府主席経済顧問のアルビンド・スブラマニアン氏です。彼はこの7.4%という成長率について、率直に言って懐疑的だと述べています。
理由の1つは、GDP統計そのものの正確性に対する疑問です。
もう1つは、経済の実態が本当に回復しているのかという点です。名目GDPの伸びは減速しており、ルピー安も進行しています。
さらに不思議なのは、これほど高い成長率が発表されているにもかかわらず、海外の機関投資家がインドから資金を引き揚げ続けていることです。通常であれば高成長国には資金が流入するはずですが、現実は逆の動きになっています。この矛盾こそが、数字と実態の乖離を示していると彼は指摘します。
インド経済を脅かす2つの外的リスク
スブラマニアン氏は、インドが直面している外的リスクとして2つの大きな問題を挙げています。
1つ目はアメリカの関税問題です。
現時点では多くの品目が関税の対象外となっており、影響は限定的ですが、米印間で貿易協定が結ばれず、将来的に関税率がさらに引き上げられるリスクは残っています。つまり、関税問題はまだ解決しておらず、不確実性が続いているということです。
2つ目は中国の存在です。
トランプ関税によってアメリカ市場での輸出が難しくなった中国は、その製品をインドや他の新興国市場に振り向けています。
その結果、安価な中国製品が大量にインド市場に流れ込み、インドの国内産業が圧迫されています。これはインドの輸出競争力を弱め、貿易赤字をさらに悪化させる要因になっています。
さらにインド政府は景気刺激策としてGST、日本でいう消費税を大幅に引き下げましたが、その結果、税収が減少し財政赤字が拡大しています。マクロ経済の数字は強く見えても、財政面では決して健全とは言えない状況にあります。
最大の課題は民間投資の弱さ
スブラマニアン氏が最も問題視しているのは、民間投資が回復していない点です。
企業からの融資申請は増えているものの、実際の銀行貸し出しは減速しており、本格的な投資回復とは言えません。電力消費や鉄鋼消費といった産業活動を示す重要指標も成長が鈍化しており、実体経済の勢いはGDPの数字ほど強くないことがうかがえます。
インドは銀行システムに十分な資金があり、公共インフラも整備されています。
それにもかかわらず、なぜ企業が積極的に投資しないのか。
その理由として彼が挙げるのが、インド特有の事業リスクです。
政府が突然ルールを変更したり、特定の企業にだけ厳しい対応を取ったり、国家機関を使って政府批判を抑え込んだりすることが、投資家にとって大きな不安要素になっています。
法人税の引き下げなどの努力は見られるものの、事業リスクを下げる制度的な改革が十分ではないと指摘されています。
中国プラス1の機会を逃すリスク
さらに重要なのが、中国プラス1と呼ばれるグローバルなサプライチェーン再編の流れです。
世界の企業は中国依存を減らすため、中国以外にもう1つの製造拠点を持とうとしています。このとき、インドがその受け皿になれなければ、大きな成長機会を失うことになります。
iPhoneの生産移転などはその象徴的な例ですが、関税問題や政策の不確実性が高まっている現在の状況では、投資家はインドへの大規模移転に慎重にならざるを得ません。この不透明さこそが、インド株の将来に暗い影を落としているのです。
まとめ
インドのGDP成長率7.4%という数字は、表面上は非常に魅力的です。しかし、その裏側では名目GDPの減速、ルピー安、海外資金の流出、中国製品の流入、財政赤字の拡大、そして何より民間投資の低迷といった問題が積み重なっています。さらに、アメリカの関税政策と中国プラス1の流れという外部環境の不確実性が、インド経済と株式市場の将来を曇らせています。
インド株は夢のある市場である一方で、その成長が自動的に続くわけではありません。高い成長率の数字だけを信じるのではなく、こうした構造的なリスクと政策の不安定さを冷静に見極めることが、投資家にとってこれまで以上に重要になっています。


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