本記事は、YouTube動画「Why Investors Are Dumping Stocks For Gold」の内容を基に構成しています。
近年、金価格が次々と過去最高値を更新する一方で、株式市場に対する警戒感が静かに広がっています。
ニュースでは「株価も史上最高値を更新している」と報じられることが多いものの、投資家の一部は株式から資金を引き揚げ、金へとシフトし始めています。本記事では、その背景にある本質的な理由を、動画内容を基に丁寧に解説していきます。
株価は本当に上がっているのかという疑問
一見すると、株式市場は好調に見えます。証券口座を開けば、S&P500は過去数年で大きく上昇し、直近5年間では約88%上昇しています。しかし、ここで重要なのは「何を基準に測っているか」です。
株価は米ドルという通貨を基準に測られています。
つまり「株価が16%上がった」という表現は、「米ドル建てで16%上昇した」という意味にすぎません。もし、その測定基準である米ドル自体の価値が下がっているとしたら、その上昇は本当に意味のあるものなのでしょうか。
金と株を比較すると見えてくる現実
同じ5年間で金価格は約180%上昇しています。株式の約2倍の上昇率です。これは何を意味するのでしょうか。
結論から言えば、株式を保有していた投資家は「購買力」を失っている可能性があります。
5年前と比べて、今では株式を売却しても、以前ほど多くの金を買うことができなくなっています。つまり、名目上は資産が増えていても、実質的な価値は目減りしているという見方ができるのです。
S&P500と金の比率が示す警告サイン
この関係をより分かりやすく示す指標が「S&P500と金の比率」です。2000年には、S&P500を1単位購入するのに約45オンスの金が必要でした。しかし2026年現在では、わずか1.4オンスで購入できます。
これは、2000年当時は株式が非常に割高で、金が割安だったことを示しています。
一方で現在は、金が大きく価値を高め、株式が相対的に安くなっている状況です。この急激な変化は、多くの投資家に「ドルの価値は大丈夫なのか」「株式市場は持続可能なのか」という疑問を抱かせています。
なぜ金と比較するのか
ここで「なぜ金と比較するのか」という疑問が生まれます。その理由は、金が世界共通の価値尺度だからです。
米ドルは世界の基軸通貨ではありますが、法定通貨、つまり信用によって成り立つ通貨です。
かつて米ドルは金と交換できる仕組み、いわゆる金本位制のもとで運用されていました。しかし1971年8月15日、ニクソン大統領が金本位制を停止し、ドルは完全な法定通貨となりました。
これにより、中央銀行は理論上、無制限にドルを発行できるようになりました。その結果、経済成長や株式市場の拡大が進んだ一方で、インフレや通貨価値の低下という副作用も生まれました。
金を買う理由と株を買う理由の違い
株式を購入する理由は明確です。企業が成長し、利益を拡大し、将来的により大きな価値を生むと信じるからです。AmazonやTesla、Nvidiaの株を買う人は、企業の将来性に期待しています。
一方で、金を買う理由はまったく異なります。金を買う人は、金そのものが生産性を高めるとは考えていません。金を保有する目的は、ドルの価値が下落するリスクから資産を守るための「保険」や「ヘッジ」です。
現在、株式の利益成長が金価格の上昇に追いついていないことが、資金移動を引き起こしています。
金価格が急騰する歴史的な局面
過去100年を振り返ると、金価格が株式を大きく上回った時期は限られています。
- 1930年代初頭の世界恐慌
- 1970年代のスタグフレーション
- 2000年のITバブル崩壊
- 2008年のリーマンショック
- 2020年のパンデミック
これらはいずれも、大きな経済的混乱と重なっています。そして現在も、再び金が株式を上回るペースで上昇しています。この事実が、多くの投資家に不安を抱かせているのです。
金価格上昇を支える3つの要因
金価格は需給によって決まります。現在、金市場では買い手が急増しています。その背景には3つの大きな要因があります。
中央銀行による金購入の加速
近年、多くの国が「脱ドル化」を進めています。中国、ポーランド、トルコなどの中央銀行は、自国通貨の安定性を高めるため、外貨準備として金を積極的に購入しています。これが金市場に大きな買い圧力を生んでいます。
ソブリン・ウェルス・ファンドの資産配分変更
政府系ファンドであるソブリン・ウェルス・ファンドも、株式やスタートアップへの投資比率を下げ、金への配分を増やしています。国レベルでも、金が重要な資産として再評価されていることが分かります。
著名投資家の発言と市場心理
レイ・ダリオをはじめとする著名投資家が金の重要性を強調していることも、投資家心理に影響を与えています。こうした発言は、金への注目をさらに高める要因となっています。
過去にもあった金ブームとその結末
2008年の金融危機後、大規模な金融緩和が行われた際にも、金価格は大きく上昇しました。しかし2012年以降、ハイパーインフレが起きなかったことで金価格は下落し、長期間低迷しました。
2020年のパンデミックでは再び大規模な資金供給が行われ、金価格は再び最高値を更新しました。現在の上昇も、当時と同様にインフレや通貨価値への懸念が背景にあります。
「無料のお金」がもたらす本当のコスト
動画では「最も高くつくお金は無料のお金だ」という表現が使われています。
お金を大量に印刷することはできますが、それによって実質的な富を生み出すことはできません。結果として、通貨の価値が下がり、資産を持たない人ほど影響を受けやすくなります。
今、投資家に求められる本当の分散投資
重要なのは、すべてを金に移すことではありません。必要なのは「本当の分散投資」です。株式の中で分散するだけでは不十分であり、異なる資産クラスを組み合わせることが重要になります。
- 株式
- 不動産
- キャッシュフローを生む実物資産
- 金などのハードアセット
- 暗号資産のようなリスク資産
経済の局面ごとに強い資産は異なります。2022年は株式と暗号資産が下落し、不動産が堅調でした。2008年は株式と不動産が下落し、金が上昇しました。この循環を前提に備えることが、長期的な資産形成には不可欠です。
まとめ
金価格が株式を上回るペースで上昇している背景には、ドルの購買力低下、中央銀行の動き、歴史的な経済不安が存在します。これは単なるブームではなく、資産の価値を測る基準そのものが問われている状況とも言えます。
重要なのは、恐怖に駆られて資産を一極集中させることではなく、異なる資産クラスを組み合わせた本当の分散投資を行うことです。変動の激しい時代だからこそ、冷静な視点と長期的な戦略が、資産を守り、成長させる鍵となります。


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