ROICとは何か?事業の本当の強さが分かる指標を初心者向けに徹底解説【長期投資の基礎】

本記事は、YouTube動画「学習編①:ROICを見れば事業の強さが理解できる」の内容を基に構成しています。

長期投資を行う上で、どの財務指標を最も重視すべきなのか。その答えとして動画内で一貫して語られているのが「ROIC(投下資本利益率)」です。

本記事では、ROICの基本的な考え方から、なぜこの指標が長期投資家にとって極めて重要なのか、さらにROEとの違いや分解による分析方法まで、初心者にも分かるよう丁寧に解説していきます。


目次

なぜ長期投資で見るべき指標はROICなのか

株式投資において、企業分析の際に注目される指標は数多く存在します。

売上高、営業利益、営業利益率、ROEなど、どれも重要な数字であることは間違いありません。しかし、動画内では「最終的にこれを押さえておけば間違いない指標」としてROICが紹介されています。

長期投資の前提となる考え方は、企業が一度利益を出して終わりではなく、稼いだ利益を再投資しながら成長し続ける存在であるという点にあります。

企業はゴーイングコンサーン、つまり永続的に事業を継続することを前提に存在しています。その中で、稼いだ利益をどれだけ効率良く次の投資へ回し、さらに大きな利益を生み出せるかが企業価値を左右します。

この「再投資の効率」を端的に示す指標こそがROICなのです。


ROICの基本的な定義と考え方

ROICは日本語では「投下資本利益率」と呼ばれます。計算式は非常にシンプルで、以下のように表されます。

ROIC = NOPAT ÷ 投下資本

NOPATとは税引後営業利益のことで、投下資本とは事業を行うために実際に使われている資本の合計を指します。つまりROICとは、「事業に投じたお金が、どれだけ効率良く利益を生み出しているか」を示す指標です。

これは企業内部における投資リターンとも言える数字であり、財務構成に左右されにくいという特徴があります。


ROEとの違いから見えるROICの優位性

多くの投資家にとって馴染み深い指標としてROEがあります。ROEは株主資本に対してどれだけ利益を生み出したかを示す指標であり、資本効率を見る上では有用です。しかし、ROEには明確な弱点があります。

それは、財務テクニックによって数値を操作できてしまう点です。

例えば、自己資本比率が50%の企業がROE5%だった場合、自己株式取得などで自己資本を減らし、自己資本比率を25%にすると、利益が同じでもROEは10%に上昇します。これは事業の実力が向上したわけではなく、単に分母を小さくした結果です。

一方でROICは、こうした財務操作の影響を受けにくく、純粋に事業の稼ぐ力を測ることができます。そのため、企業の「本当の実力」を把握する上で、ROICはROEよりも優れた指標だとされています。


ROICが示す企業成長のメカニズム

企業の成長は、稼いだ利益を再投資し、その再投資からさらに利益を生み出すという循環によって成り立っています。この循環がうまく回る企業ほど、複利的に資本を拡大していくことができます。

ROICが高い企業は、同じ金額を投資してもより多くの利益を生み出せるため、成長スピードが速くなります。逆にROICが低い企業は、時間をかけてじわじわとしか成長できません。

動画内では、ベンジャミン・グレアムの有名な言葉も紹介されています。短期的には株価は人気投票のように動きますが、長期的には企業の価値、つまり稼ぐ力によって決まるという考え方です。ROICは、その長期的な価値を測るための核心的な指標と言えます。


ROICを分解する「ROICツリー」という考え方

ROICの優れた点は、数値を見るだけで終わらず、さらに分解することで企業の強みや課題を具体的に把握できる点にあります。

ROICは次のように分解できます。

ROIC = 営業利益率 × 投下資本回転率

営業利益率は売上高に対する営業利益の割合を示し、投下資本回転率は投下資本がどれだけ効率良く売上を生み出しているかを示します。

さらに営業利益率は、売上原価率や販管費率に分解でき、販管費率は研究開発費、人件費、広告宣伝費などの内訳として捉えることができます。一方、投下資本回転率も、運転資本や固定資産の回転効率に分解できます。

このようにROICを分解していくことで、企業がどこに強みを持ち、どこに改善余地があるのかを具体的に理解できるようになります。


業界ごとに異なるROICの作り方

営業利益率が低いからといって、必ずしも投資対象として劣る企業とは限りません。動画内では卸売業や商社が例として挙げられています。

商社は営業利益率が低い一方で、取扱量が非常に多く、投下資本を高速で回転させるビジネスモデルを持っています。その結果、営業利益率が低くてもROICを高めることが可能です。

一方で、営業利益率を引き上げる戦略として、自社製品の開発や高付加価値化を進めるケースもあります。どの要素を伸ばすかは企業の戦略次第であり、その戦略がROICにどのように反映されているかを見ることが重要です。


ROICは企業の将来価値を判断する基礎になる

ROICは企業価値評価においても中心的な役割を果たします。動画内では、割引率であるWACCとの関係にも触れられています。

企業が価値を生み出しているかどうかは、ROICがWACCを上回っているかで判断できるという考え方があります。これは多くの機関投資家が用いる企業価値評価の基本であり、大学のファイナンス教育や専門書でも繰り返し説明されてきた概念です。

長期的に株価が上昇し続ける企業は、ROICが高く、かつそれを維持または改善できる企業である可能性が高いと言えます。


ROICを見る際の注意点と実務的な見方

ROICには弱点もあります。その一つが計算の分かりづらさです。会計基準の違いやデータの取得の難しさから、ROEやROAのように簡単に確認できない場合もあります。

そのため、ROICがすぐに見つからない場合の目安として、ROEとROAの中間程度の数値を参考にするという考え方も紹介されています。これはあくまで簡易的な方法ですが、財務構造の影響を抑えて企業を見る一助になります。

重要なのは、完璧な数値を追い求めることではなく、「稼いだ利益をどれだけ効率的に次の投資へ回せているか」という概念を理解することです。


投資だけでなく事業分析にも活かせるROIC

ROICの考え方は、投資判断だけでなく、自社の事業分析にも応用できます。売上や利益の増減だけを見るのではなく、どの要素を改善すれば事業全体の効率が高まるのかを考える視点を与えてくれます。

動画内では、このROICシリーズを通じて、より地に足のついた企業分析を行い、投資家同士でより高度な議論ができるようになりたいという意図も語られています。


まとめ

ROICは、企業の事業の強さと成長力を最も端的に示す指標の一つです。財務テクニックに左右されにくく、長期的な価値創造能力を測ることができます。

売上や利益の大小だけでなく、どれだけ効率良く再投資できているかに注目することで、企業を見る視点は大きく変わります。まずはROICという概念を理解し、企業比較や将来性の判断に活かしていくことが、長期投資において非常に重要です。

今回の内容を入り口として、今後はROICを構成する各要素や具体的な企業事例を学んでいくことで、より実践的な分析力が身についていくでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次