本記事は、YouTube動画『学習編④:上がる株を探すにはPERの意味を理解せよ』の内容を基に構成しています。
株式投資を行ううえで、PERは多くの投資家が日常的に目にする指標です。
しかし「PERが低いから割安」「PERが高いから割高」といった単純な理解だけでは、本当に上がる株を見つけることは難しいのが実情です。本記事では、動画の内容を丁寧にひも解きながら、PERが持つ本質的な意味と、株価が上昇する企業の共通点について、初心者にも分かる形で解説していきます。
PERとは何かを改めて整理する
PERの基本的な定義
PERとは、株価収益率と呼ばれる指標で、
株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
によって計算されます。
例えば、株価が1,500円、EPSが100円であれば、PERは15倍となります。この「15倍」という数字は、株価が現在の利益水準の15年分を織り込んでいる、と説明されることが多いものです。ただし、この「15年」という数字自体に厳密な意味があるわけではありません。
PERを利回りとして考える視点
PERをより直感的に理解するために、逆数で考える方法があります。
EPS ÷ 株価
とすると、これは投資額に対してどれだけの利益が得られるかを示す「益回り」として捉えられます。
PERが15倍の場合、益回りは1 ÷ 15で約6.67%となります。
これは債券投資であれば比較的魅力的な利回りに相当します。株式は価格変動リスクを伴うため、これくらいの水準が「自然」と感じられる水準として市場に意識されている、という考え方が背景にあります。
株式と債券の違いがPERを動かす
利益は固定されていない
債券の場合、利回りは原則として固定されています。一方で株式は、利益が毎年変動します。
仮に現在のEPSが100円の企業でも、将来200円、300円と成長していくのであれば、将来的な益回りはどんどん高まります。
この「将来はもっと利益が増える」という期待がある企業ほど、現在の株価は高くなり、結果としてPERも高くなります。つまり、PERの高さは「成長期待の強さ」を反映していると言えます。
成長企業と低成長企業のPERの違い
高PERの代表例:成長が期待される企業
動画内で紹介されている代表例が、アドバンテストです。
アドバンテストはPERが50倍を超える水準で評価されていましたが、その背景には、AIや半導体需要の急拡大を背景とした業績の急成長があります。
特に2023年以降、利益が大きく伸びており、「今後もこの成長が続く」という市場の期待が株価とPERを押し上げています。
低PERの代表例:銀行株
一方で、三井住友フィナンシャルグループのような銀行株は、PERが10倍台と低水準にとどまっています。
足元では金利上昇による業績改善が見られるものの、長期的に見ると、10年以上前と現在の利益水準が大きく変わっていないことが分かります。
日本経済全体の成長率が高くない中で、銀行業界全体の成長性は限定的と見られており、その評価がPERの低さに表れています。
PERが本格的に上がるために必要な条件
一時的な好調では足りない
重要なのは、目先の業績改善だけではPERは持続的に上がらないという点です。
一時的なテーマや環境変化によって株価が上がることはありますが、その後の成長が続かなければ、PERは再び低下します。
永続的な成長がPERを押し上げる
PERが長期的に高水準で維持されるためには、成長が長期間続くと市場が信じられる必要があります。
動画内で紹介されている三菱重工業は、その好例です。
かつてはPER1桁台の典型的な低評価銘柄でしたが、データセンター向け発電設備需要の拡大などを背景に、長期的な成長ストーリーが描かれるようになりました。その結果、PERは10倍台から50倍台へと大きく上昇し、株価も大きく伸びています。
PERはDCF理論でも説明できる
PERとDCFの関係
PERは、理論的にはDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法の簡易形として、
1 ÷(R − G)
という形で説明することもできます。
ここで、
Rはリスク(割引率)
Gは成長率
を表します。
リスクが高い企業ほどPERは低くなる
Rが大きい、つまり利益の変動が大きく安定性に欠ける企業ほど、分母が大きくなりPERは低くなります。
テスラやソフトバンクグループのように、利益の振れ幅が大きい企業は、成長期待があってもPERが抑えられやすい傾向があります。
成長率が高いほどPERは高くなる
一方で、Gが高い、つまり長期的な成長率が高いと見込まれる企業ほど、PERは高くなります。ここで重要なのは「成長の大きさ」よりも「成長の持続性」です。
安定性がPERを支えるディフェンシブ企業
食品セクターが高PERになりやすい理由
味の素のような食品企業は、年率2〜3%程度の緩やかな成長にもかかわらず、PERが20倍から30倍で推移しています。
これは、景気が悪化しても需要が大きく落ち込みにくく、利益の安定性が非常に高いからです。
加えて、海外展開による長期的な成長余地も評価され、結果として高PERが許容されています。
キャッシュフローの安定性も重要
フリーキャッシュフローが安定してプラスで推移している企業は、財務的な安心感が高く、投資家からの評価も高まりやすい傾向があります。
どのような企業を狙うべきか
高PER企業を買う場合の考え方
PERが高い企業を買う場合は、
なぜそのPERが正当化されているのか
を考える必要があります。
永続的な成長と安定性が伴っている場合、そのPERは「高すぎる」とは限らず、長期保有に向いた銘柄である可能性もあります。
低PERからの改善を狙う戦略
一方で、大きなリターンを狙うのであれば、PERが低い状態から改善していく企業に注目する方法もあります。
商社株がバフェット氏の投資によって評価を見直された事例や、卸売業が自社製品開発によってメーカー評価へと変わるケースなどが、その一例です。
ただし、単にPERが低いだけの銘柄は、成長性や安定性に問題がある「バリュートラップ」である可能性もあるため、注意が必要です。
PERを見る際の注意点
PERは今期や来期の利益を基に算出されるため、特別利益や一時的な損失があると、異常値になることがあります。
必ず前後数年の業績と合わせて確認し、数字の背景を理解することが重要です。
まとめ
PERは単なる「割安・割高」を示す数字ではなく、
成長の持続性
利益の安定性
リスクに対する投資家の心理
を映し出す指標です。
恐怖が強ければPERは下がり、期待が強まればPERは上がります。その期待が一時的なものか、長期的なものかを見極めることが、投資家にとって最も重要な視点と言えるでしょう。
高PER銘柄であっても、永続的な成長と安定性があれば有力な投資先となり得ますし、低PER銘柄でも評価が変わるきっかけがあれば、大きな上昇余地を秘めています。
PERの本質を理解し、「なぜこのPERなのか」を考えることこそが、上がる株を探すための第一歩です。


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