本記事は、YouTube動画『2月10日放送 「FX経済研究所」(スイスフラン高にリスクはないのか?)日経CNBC』の内容を基に構成しています。
年初から為替市場は荒れた展開が続いています。日本の政局や株式市場の急変、米国の金融政策を巡る思惑など、不確実性が高まる中で、ひときわ存在感を放っているのがスイスフランです。
株式や暗号資産、金などが上値の重さを見せる中、スイスフランは今年に入っても高値を更新し続けています。本当にこのスイスフラン高は安全なのか、それともどこかで大きな調整が待っているのか。本記事では、番組で語られた内容を丁寧に整理し、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
足元の為替市場とスイスフランが注目される背景
番組冒頭では、東京市場の動きが確認されました。
中国当局が国内銀行に対して米国資産の保有抑制を勧告しているとの報道を受け、ドル売りが進行しました。また、米国の労働市場の減速感やインフレ鈍化を背景に、FRBによる早期利下げ観測が浮上していることもドル安要因となっています。
一方で、こうしたドル安や市場の不安定さの中でも、スイスフランは堅調な動きを続けています。世界的にリスク資産が調整局面に入る兆しを見せる中で、安全通貨としてのスイスフランが買われている構図です。
スイスフランインデックスが示す異常な強さ
番組ではまず、スイスフランインデックスが紹介されました。これは主要通貨に対するスイスフランの強さを指数化したもので、指数が上昇するほどスイスフラン高を意味します。
現在のスイスフランインデックスは、過去の重要局面を明確に上回っています。特に比較対象として挙げられたのが2015年のいわゆる「スイスフランショック」です。この時は、スイス中銀がユーロとの為替上限政策を突然解除したことで、スイスフランが急騰し、為替市場が大混乱に陥りました。
今回の水準は、その2015年当時のレベルを超えており、「スイスフランは本当にここまで買われ続けて良いのか」という疑問が提示されました。
テクニカル指標であるストキャスティクスを見ると、まだ上昇余地が残っているようにも見えますが、過去の経験を踏まえると警戒が必要な水準に来ていることは間違いありません。
スイス中銀が直面する政策の限界
次に焦点が当てられたのが、スイス中銀の対応余地です。スイスフラン高に対して、中央銀行が取れる手段は大きく分けて2つしかありません。為替市場への介入と、金利政策です。
スイス中銀はこれまでも断続的に市場介入を行ってきましたが、その効果は限定的とされています。介入規模には限界があり、持続的にスイスフラン高を抑え込む力は弱いのが実情です。
もう一つの手段がマイナス金利です。スイスは過去にマイナス金利を導入した経験がありますが、金融機関への負担が大きく、再導入のハードルは決して低くありません。ただし、現在のような極端なスイスフラン高が続く場合、最終的に選択肢として浮上してくる可能性がある点が指摘されました。
ドルスイスとスイスフラン円のテクニカル状況
個別通貨ペアの分析では、まずドルスイスが取り上げられました。
ドルスイスは長期的に見て明確な下降チャンネルの中で推移しており、テクニカル的にはトレンドに沿った動きが続いています。ただし、足元ではチャンネル下限付近に位置しており、短期的な反発が起きても不思議ではない水準です。
ストキャスティクスを見ると、スイスフランは買われ過ぎ、ドルは売られ過ぎの状態に近づいており、ここからさらにスイスフラン高を追いかけるのは難しい局面に差し掛かっているとの見解が示されました。
続いてスイスフラン円です。現在は203円台という歴史的な高値圏にあり、過去に100円台だった時代を考えると、長期的には2倍の水準です。テクニカル的に見ても明確な目標値が見えにくく、波動論的に計算しても上値余地は208円台半ば程度に限られる可能性があります。
一方で、下落した場合の下値目安としては181円付近が意識されており、もし調整が起これば20円規模の下落余地がある点も強調されました。高値を追いかけるよりも、辛抱強く調整を待つ姿勢が重要だといえます。
他の資産との比較で見える違和感
番組では、スイスフランを他の主要資産と比較する視点も提示されました。世界の長期金利、主要国株価指数、ビットコイン、金といった資産は、いずれも2024年から2025年にかけて上昇してきましたが、足元では天井感や調整の兆しが見え始めています。
世界の10年金利は上昇が一服し、ビットコインは高値を付けた後に下落、金も上値の重さが意識され始めています。こうした中で、依然として上昇を続けているのが主要国株価指数とスイスフランの2つだけです。
しかし、株式については調整局面に入るとの見方が示されており、その流れの中でスイスフランだけが上昇し続けるのは不自然ではないかという問題提起がなされました。
金利差とスイスフラン高のねじれ
さらに注目されたのが、スイスと日本の金利差です。通常、為替は金利差と連動する傾向がありますが、現在は金利差が縮小しているにもかかわらず、スイスフラン高が続いています。
過去の局面では金利差とスイスフランの動きは概ね連動していましたが、今回はその関係が崩れています。このねじれは、いずれ解消される可能性が高く、調整が起こる前兆と考えることもできます。
最大の注目イベントは3月19日
番組のまとめとして強調されたのが、3月19日のスイス中銀の政策金利発表です。このタイミングで、もしマイナス金利導入やそれに近い強いメッセージが出れば、スイスフランは急落する可能性があります。
市場ではまだ織り込まれていないシナリオだからこそ、実現した場合のインパクトは大きく、いわば「スイスフランショック」の再来となる可能性も否定できません。積極的に売りを狙うにしても、この日程を意識した慎重な対応が求められます。
まとめ
スイスフランは現在、安全資産として強く買われていますが、その強さは過去の歴史的水準を超えており、決して無条件に安心できる状況ではありません。スイス中銀の政策余地は限られており、マイナス金利という切り札が再び使われる可能性もあります。
他の資産が調整に入りつつある中で、スイスフランだけが上昇を続ける状況には違和感があり、金利差との乖離も無視できません。3月19日の政策金利発表を一つの転換点として、スイスフラン高が永遠に続くと考えず、リスク管理を重視したトレードが重要です。初心者の方ほど、高値追いではなく、全体の流れとイベントリスクを意識した冷静な判断が求められる局面だといえるでしょう。


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