本記事は、YouTube動画『【英国経済】失業率5.2%!5年ぶりの高水準!低成長が続く英国経済についての解説』の内容を基に構成しています。
失業率5.2%、英国経済に広がる停滞感
2025年2月17日、英国国家統計局が発表した失業率は5.2%となり、2020年以来の高水準を記録しました。前回の5.1%からさらに上昇し、労働市場の悪化が鮮明になっています。この発表を受けてポンドは下落し、英国経済の先行きに対する懸念が改めて意識されました。
今回の数字は一時的なブレではなく、2024年半ばに労働党政権が発足して以降、じわじわと続いている上昇トレンドの延長線上にあります。低成長、増税、不透明な財政運営といった構造的な問題が、英国経済の重しとなっているのが実情です。
ブレグジット後も続く構造問題
英国経済を語る上で外せないのが、2016年のEU離脱、いわゆるブレグジットの影響です。離脱後、貿易や労働市場の柔軟性が低下し、慢性的な人手不足や物流コスト上昇が続いてきました。
さらに近年では、再生可能エネルギーへの急速なシフトによるエネルギー価格の上昇、少子高齢化の進行、不法移民問題、慢性的な経常収支赤字など、複数の構造問題が同時進行しています。
2022年には「トラス・ショック」と呼ばれる財政不安が起き、国債利回りが急騰し、ポンドが急落しました。それ以降、英国では財政政策に対して市場が極めて神経質になっており、国債増発を示唆するだけでも通貨や国債価格が大きく動く状況が続いています。
こうした土台の上に、現在の労働党スターマー政権が立っているのです。
失業率5.2%の内訳と労働市場の実態
今回発表された失業率は、国際労働機関(ILO)基準による3か月移動平均で5.2%となりました。これは2020年以来の高水準です。
雇用関連データを詳しく見ると、11月の就業者数は5.9万人減少しました。しかも、フルタイム・パートタイムともに減少しています。さらに労働力人口も1.6万人減少しており、単純な失業増加だけでなく「労働市場からの退出」も進んでいることが分かります。
労働参加率は64%で横ばいですが、人口構造の変化や経済停滞の影響が背景にあると考えられます。
賃金上昇率の鈍化
賃金面では、11月の前年比+4.6%から12月は+4.2%へ鈍化しました。ボーナスを除くベース賃金も+4.4%から+4.2%に減速しています。
民間部門は+3.6%から+3.4%へ、公共部門は+7.9%から+7.2%へ鈍化しました。2025年12月の消費者物価指数は前年比+3.4%ですから、民間部門の実質賃金はほぼ横ばいです。
ここから賃金上昇率がさらに低下すれば、家計の購買力が弱まり、消費が冷え込み、景気の下押し圧力が強まる可能性があります。
GDP成長率はほぼ横ばい状態
2025年の実質GDP成長率を見ると、10〜12月期は前期比+0.1%と極めて低い伸びでした。
13月は+0.7%と一時的に持ち直しましたが、その後は
- 4月:+0.2%
- 7〜9月:+0.1%
- 10〜12月:+0.1%
と、ほぼ横ばいが続いています。
さらに月次ではマイナス成長となった月もあり、実質的には停滞局面と言って差し支えありません。
増税と企業マインドの悪化
2025年4月には、企業の社会保険料負担が増額されました。企業はそのコストを価格転嫁し、春から夏にかけて物価が上昇しました。結果として、消費への下押し圧力が強まりました。
また、外国人富裕層向けの「ノン・ドム制度」を廃止したことで、富裕層の海外流出も進んでいます。これは高額消費や投資の減少につながり、経済にはマイナスです。
さらに2025年11月にも追加増税が発表されました。所得税の増税は見送られましたが、高額不動産取引など一部の富裕層向け課税が強化されました。
問題は、スターマー政権が2024年に「増税しない」として政権を獲得したにもかかわらず、1年半で2度の増税を実施した点です。この政策転換が企業マインドを冷やしています。
財政拡大路線と市場の警戒
スターマー政権は以下のような大型政策を掲げています。
- 150万戸の住宅建設
- 大規模な警察改革
- 無料の学校給食拡充
- 国民医療制度(NHS)の強化
いずれも多額の財源が必要です。しかし、英国では国債増発への市場の警戒感が非常に強く、財政拡張は容易ではありません。
このため、市場では「今後も増税が続くのではないか」との見方が広がっており、それが投資や雇用の抑制につながっています。
中国との関係強化という成長戦略
スターマー首相は2025年1月、中国を訪問しました。英国首相としてはメイ首相以来の訪中です。
金融、製薬、コンサルティング、会計など英国が強みを持つ分野で、中国との協力強化を確認しました。規制緩和や投資促進を通じて成長を目指す戦略です。
しかし、対中依存の拡大には地政学リスクも伴います。米中対立が続く中で、どこまで成果を上げられるかは不透明です。
政治不安とポンド相場への影響
スターマー首相は党内外から辞任圧力を受けています。支持率低迷、増税方針転換への批判、エプスタイン事件を巡る人事問題などが背景です。
辞任観測が浮上するとポンドは下落する傾向があります。一方で国債市場は、景気悪化による利回り低下期待の影響もあり、比較的落ち着いた動きを見せました。
今後も辞任圧力が高まるたびに、ポンドや英国株式市場は不安定化する可能性があります。
英国経済はなぜ脆弱なのか
英国は慢性的な経常収支赤字国です。海外資本に依存して国債を消化しており、通貨と国債の信認が揺らぐと急激な市場変動が起こりやすい体質です。
加えて、
- 医療制度の機能低下
- 老朽化したインフラ
- 水道会社の経営危機
- 少子高齢化
といった問題も抱えています。
これらは日本にとっても他人事ではありません。エネルギー政策、移民政策、財政規律など、多くの示唆を含んでいます。
まとめ:当面は上向きの兆し見えず
失業率5.2%という数字は、英国経済の停滞を象徴する指標です。GDPは低成長、賃金上昇率は鈍化、増税は継続、政治不安もくすぶっています。
スターマー政権は中国との関係強化や公共投資拡大で成長を模索していますが、財政制約と市場の警戒感が大きな壁となっています。
当面、英国経済が力強く回復する兆しは見えていません。ポンドや英国資産に投資する場合は、政治リスクと財政リスクを十分に意識する必要があるでしょう。
今後も英国経済の動向は、日本にとっても重要な参考事例となります。引き続き注視していく必要があります。


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