本記事は、YouTube動画『話題のオルタナ投信「賢者の設計」は投資の新たな選択肢?(3月7日セミナー開催!)』の内容を基に構成しています。
株式やインデックス投資が広く普及する一方で、価格変動に振り回されにくい「オルタナティブ投資」への関心も高まっています。今回の動画では、つばメ投資顧問の栫井氏が、ベイビーアセットマネージメントの担当者を招き、個人向けに提供されている投資信託「賢者の設計」について仕組みや実績、手数料、注意点まで掘り下げていました。
結論から言えば、この商品は株や債券の値動きと連動しにくい構造を目指しつつ、実績として年率約4.2%程度のリターンを積み上げてきたという点が特徴です。一方で、解約まで時間がかかること、為替ヘッジの有無で性格が変わることなど、向き不向きも明確に語られていました。以下、動画の流れに沿って初心者向けに整理します。
賢者の設計とは何が「新しい」のか
動画の冒頭で、栫井氏は「過去実績として年率4.2%を安定的に生み出している」と聞き、高配当株の代替になり得るのではないかと興味を持った、と話しています。
高配当株は配当が魅力でも、株価は普通に上下します。そこに対して賢者の設計は、相場変動に惑わされにくい別ルートのリターン源泉を狙う商品として紹介されました。
ここで重要なのは、賢者の設計が株式や債券のように市場価格が毎日大きく変動するタイプではなく、実体経済の「貿易取引」をベースに収益を狙う点です。
つまり、値上がり益を狙う投資というより、仕組み上は金利収益に近い性格を持つと説明されています。
なぜ「貿易」に投資すると安定を狙えるのか
賢者の設計の核は、貿易取引で生まれる「売り掛け債権」に投資することです。言葉が難しく見えますが、動画内でも「簿記をやった人ならイメージしやすい」と説明されていました。
貿易では、輸出企業が商品を出荷しても、代金が即日入金されるわけではありません。
早いケースで約1カ月、遅いと約半年、平均的には約3カ月程度かかることがあるという話でした。輸出企業側から見ると、入金まで待っている間も、従業員の給与や次の生産の原材料費など「運転資金」が必要になります。
ここで資金繰りが詰まると、利益が出ていても資金不足で倒産する、いわゆる黒字倒産のリスクすらあり得ます。
そこで、輸出企業が「代金を受け取る権利(売り掛け債権)」を早く現金化したいという需要が生まれます。この需要に対して資金を提供し、売り掛け債権を買い取ることで、その取引からリターンを得るのがこのファンドの基本構造です。
仕組みのポイントは「回収先が大企業」であること
ここで視聴者が気になるのは、「結局、誰が払うのか」「貸し倒れリスクは大丈夫か」という点です。動画ではこの部分をかなり明確に整理していました。
賢者の設計が資金を提供するのは、主にアジアの製造業など中小企業側です。
しかし、最終的に代金を支払うのは、輸入企業側、つまり日本や欧米の信用力が高い大企業であるケースが中心だという説明でした。例として、ナイキやアディダスのようなグローバル企業が挙げられています。
この構造のイメージを数字で表すと分かりやすいです。
例えば額面100円の売り掛け債権があるとします。
輸出企業は「半年待てないから早く現金が欲しい」ので、これを90円で買い取ってもらう。
輸出企業は今すぐ90円を受け取れるので資金繰りが改善します。
ファンド側は半年後に輸入企業から100円を回収できれば、差額の10円がリターン源泉になります。
この差額は「割引料」と呼ばれ、実質的には金利に近いものだと説明されました。
さらに動画では、貿易取引の多くがドル建てで行われ、割引率は年率9.6%程度の水準に設定されている、という具体的な数字も登場しています。
この時点で「年率9.6%ならすごい」と思うかもしれませんが、個人投資家が円建てで得るリターンは、為替ヘッジコストなどを差し引いた後の数字になります。動画で示された過去実績としては、為替ヘッジを行ったプログラムで年率4.2%が紹介されていました。
銀行がやらなくなった理由と、この市場の「需要の強さ」
動画の中で印象的だったのが、「昔は銀行がこうした貿易金融を支えていたが、リーマンショック後の規制強化でやりにくくなった」という説明です。
2008年のリーマンショック後、銀行には自己資本規制などが強化され、リスク資産を増やしにくくなりました。栫井氏も「バーゼル規制ですね」と反応しており、この領域が銀行にとって手間の割に収益になりにくいという現実が語られています。
特に、日用品など小口取引が多い分野は、1件あたり100万〜200万円規模の資金需要になりやすく、銀行から見るとコストに対して効率が悪い。
結果として銀行が手を引き、代わりにファンドが資金供給を担う余地が生まれている、という整理でした。
また、銀行が戻ってきて競合になるリスクについても質問が出ましたが、現状では規制や収益性の観点から再参入は簡単ではないのではないか、という見立てが語られています。
さらに、銀行以外の資金調達だと年率15%〜20%の高金利ローンになり得るケースもあるという話があり、資金需要が強い市場だという説明につながっていました。
値動きが安定して見える理由:株式と「相関がほぼない」設計
動画では、株価が大きく下がった局面でも、賢者の設計は階段状に基準価額が上がっていく例が紹介されていました。具体例として挙げられたのは、コロナショックの時期と、トランプ大統領の関税発言で株価が急落した局面です。
ここでの理屈は単純で、株式市場が混乱しても、生活必需品の生産と貿易が完全に止まるわけではなく、貿易取引は一定程度継続しやすい、という考え方です。
結果として、株式の急落局面でもこの戦略は比較的安定しやすい、という説明でした。
さらに数値面では、過去データとして年率4.2%、標準偏差0.46という「ブレの小ささ」が示され、相関係数もグローバル株式0.00、ヘッジファンド0.01、グローバル債券-0.13など、ほぼ相関がないという形で紹介されています。
初心者向けに言い換えるなら、株が上がっても下がっても、同じ方向に大きく動きにくい傾向があった、ということです。
為替ヘッジの有無で性格が変わる
賢者の設計には、為替ヘッジありとなしの2種類があると説明されました。ここは初心者がつまずきやすいので、動画の話を整理します。
この戦略の元の収益はドル建てが中心です。しかし円で投資する場合、ドル円の変動がリターンに影響します。そこで為替ヘッジをすると、為替変動の影響を抑えられる一方で「ヘッジコスト」がかかります。
動画では、このヘッジコストは主に日米短期金利差で決まる、と説明されています。
過去にはヘッジコストが約6%程度まで高まった時期があり、その時は円建ての手残りリターンが2%台まで下がったこともあったという話が出ました。
一方で、最近は日本の金利が上がり、米国の金利が下がる方向で、日米金利差が縮小しているため、ヘッジコストが下がり、円建て手残りが4%台後半まで上がってきている、という流れでした。
ここから言えるのは、為替ヘッジありは値動きの安定を重視する設計になりやすい反面、金利差次第で手残り利回りが変動する可能性がある、という点です。
手数料とコスト:購入手数料なし、運用コストは年率1.218%
投資信託で必ず確認したいのがコストです。動画では「直接販売」を採用しているため、購入時手数料や解約時手数料がないと明言されました。一般的な投信で購入時に3%かかるケースもある中で、ここは分かりやすい特徴です。
その上で、運用にかかる信託報酬として年率1.218%が提示されました。インデックスファンドに比べれば高く見えますが、オルタナティブ投資の同種商品では年率3%〜5%程度のコストがかかる例もある、という比較が語られています。かこ井氏も「デリバティブが絡むと手数料が不透明になりがちだが、ここは数字が明確だ」と評価していました。
また、年率4.2%の実績値は、これらの経費控除後、つまり投資家の手元ベースの水準だという説明がありました。
購入・解約条件:最低購入100万円、解約は1万円からだが時間がかかる
実務面の条件も動画で詳しく触れられています。
購入は月1回申し込み可能で、最低100万円以上、1円単位。
解約も月1回申し込み可能で、最低1万円以上、1円単位。
ただし注意点として、申し込みから運用開始まで約1カ月かかること、解約は申し込みから約2.5カ月かかることが説明されました。
つまり、株のように「思い立ったら明日売れる」商品ではありません。動画でも「どっしり構えられる人向き」というニュアンスで語られています。
この点は、生活防衛資金のようにすぐ必要になるお金ではなく、当面使う予定のない余裕資金の置き場所として検討する発想に近いと言えます。
分配金は出さない方針:必要なら解約で取り崩す
分配金については、これまで実績なし、今後も出す予定はないと説明されました。理由は、リターンを内部で再投資し、複利で増やす設計を重視しているためです。
一方で、インカムが必要な人は、1万円以上で一部解約して取り崩す形で対応できる、という話もありました。つまり、定期的な分配で受け取るというより、自分のタイミングで取り崩す方式に近い設計です。
運用会社ベイビーアセットマネージメントの特徴:独立系、残高1.3兆円、プロ向けが中心
動画後半では運用会社の紹介にも時間が割かれていました。
ベイビーアセットマネージメントは1998年創業で、創業から約28年。
独立系運用会社であり、特定の大手金融機関グループの子会社ではない点を強調。
運用残高は約1.3兆円規模で、個人向け公募投信よりも、プロ向けの私募投信が中心で、全体の約97%を占めるという説明でした。
さらに、GPIFから外国株式アクティブ運用で採用されたことがある点も紹介され、「プロの投資家から評価されている」材料として挙げられています。
また、販売会社を介した投信ビジネスでは、乗り換えで手数料が優先されやすいという問題意識が語られ、独立系として「運用会社が直接個人に販売する」構造を目指しているという話につながっていました。
分かりやすさへの工夫:漫画の目論見書を用意
初心者にとって意外に重要なのが、理解のしやすさです。動画では「世界一分かりやすい目論見書」として漫画形式の資料が用意されていると紹介されました。
従来の分厚く難しい目論見書は読まれにくいという現実があり、商品を理解した上で投資してもらうために漫画を作った、という趣旨です。金融当局にも相談し、こうした取り組みが認められたという話も出ていました。初心者にとっては、仕組みが難しい商品ほど、こうした理解支援があるかどうかは安心材料になり得ます。
まとめ:賢者の設計は「余裕資金の置き場所」を増やしたい人向けの選択肢
賢者の設計は、株式や債券と異なり、貿易取引の売り掛け債権を買い取ることでリターンを狙うオルタナティブ投資として紹介されました。輸出側は資金繰りを早期に改善でき、ファンドは輸入側の信用力の高い大企業から回収する構造を取ることで、リスクを抑えながら利回りを確保する設計を目指している、というのが動画の骨子です。
過去実績として年率4.2%、株式などと相関がほぼないという説明、購入手数料なし、信託報酬年率1.218%といった点は魅力として語られました。一方で、購入から運用開始まで約1カ月、解約まで約2.5カ月かかるため、短期で売買する商品ではなく、当面使う予定のない余裕資金の運用先として検討する性格が強いことも明確です。
インデックス投資が主流になった今でも、価格変動の小ささや資産の分散先を求める人は少なくありません。その意味で賢者の設計は、定期預金と株式の間にあるような「新しい選択肢」を探す人にとって、検討対象になり得る商品だと言えそうです。


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