ユニ・チャーム決算と中期経営計画を点検 株価半減の背景と「違和感」の正体

本記事は、YouTube動画『ユニ・チャームの業績と中期経営計画に忖度なしでコメントします』の内容を基に構成しています。

ユニ・チャームは、日本を代表する衛生用品メーカーとして高いブランド力を築いてきました。

特に紙おむつや生理用品は生活に密着した必需品であり、品質面での信頼も厚い企業です。動画では、そうした企業に投資してきた発信者自身が、直近の決算と中期経営計画を受けて損切りを決断した経緯を、かなり率直に語っています。

結論から言うと、今回の論点は単なる短期の業績悪化ではありません。

中国とインドネシアでの失速が示す競争環境の変化、そして中期経営計画が提示する打ち手が「強みの強化」ではなく「強みの手放し」に見えてしまう点、さらに情報開示姿勢への不信感が重なったことで、長期投資としての前提が崩れた、というのが動画の骨格です。ここから先は、その根拠を順番に整理していきます。

目次

なぜ「推奨銘柄」を損切りしたのか

動画の話者は、ユニ・チャームを実際に購入し、会員向けの推奨銘柄としても取り上げてきた立場でした。

しかし直近の決算発表と中期経営計画の公表を受けて、厳しいと判断し損切りしたと説明しています。

応援している投資家には不満が出る内容になるかもしれない、と前置きしつつも、長期投資の本質を見極めたい人には役立つはずだという姿勢で議論を進めています。

ここで重要なのは、話者がユニ・チャームの製品そのものを否定しているわけではない点です。

育児経験を踏まえ、かぶれにくさなどの観点からユニ・チャーム製品の良さを実感してきたとも述べています。

つまり製品満足度と投資判断は別物であり、投資では業績と競争環境、そして経営の打ち手を冷静に見る必要がある、という問題提起が出発点になっています。

株価はなぜピークから半分になったのか

動画ではまず株価推移が確認されます。2016年頃から上昇基調が続き、2023年に1985.9円のピークを付けた一方で、その後下落し、直近は1064円程度と、ほぼ半分にまで落ち込んだという説明です。

株価下落の背景として、業績の変調が挙げられます。

2025年12月期は、それまで伸びてきた売上がついに減少に転じ、売上は前年比でマイナス4.4%、経常利益も20%減少となったと語られています。

ここで特に響いたのが中国とインドネシアの悪化です。

日本は比較的横ばいだった一方、アジアでの利益が大きく落ち込み、コア営業利益が73%減、利益率が2.9%まで低下したという数字が示されます。

売上面でも中国がマイナス27%、インドネシアがマイナス1%という説明で、かつて成長ドライバーだった地域が失速したことが全体を押し下げた構図だと整理されています。

中国とインドネシアで何が起きたのか

中国 偽物騒動という「不運」と、景気悪化と競争の二重苦

中国については、ユニ・チャーム製品の偽物が出回り、その偽物から虫が出たという報道が中国の国営放送で流れたことが大きな打撃になったと説明されます。

話者は、偽物である以上ユニ・チャーム自身に直接の落ち度はないものの、消費者から見れば印象が悪くなり、購買行動が冷えるのは避けにくいと述べます。

しかもこの報道が昨年3月頃に1回あっただけでなく、10月にも同様の報道が出たことで、1年を通じて「踏んだり蹴ったり」だったという表現になっています。

ただし、ここで議論は「偽物騒動は一時的だから戻る」とは終わりません。

話者は、本当に一時的要因だけなのかと疑問を投げかけます。

景気が悪くなると、消費者はより安い商品へ移りやすくなります。さらに中国では現地企業の品質が上がり、価格面で強い競合が育っているため、日本企業だから選ばれるという構図が揺らいでいる可能性がある、という見立てです。

加えて、中国の国営放送で流れるという点に着目し、何らかの意図があった可能性も中国という国の性質上は否定できない、とも述べます。

もちろんこれは断定ではなく可能性の指摘ですが、少なくとも外部環境リスクが読みづらい市場であることを示す材料として語られています。

インドネシア 「ダウントレード」と安価な競合の台頭

インドネシアでは、ディストリビューター、つまり卸業者の変更に伴う出荷調整があったという説明が出ます。

ただし話者が重視しているのはそれ以上に、ダウントレードという現象です。

現地企業や、インドネシアに進出している中国企業がより安い製品を投入し、その品質がユニ・チャームの方が高いとしても「そこまで遜色ない」レベルに達してきたことで、消費者が価格重視に動いたという流れです。

景気が弱い局面では、日用品ほど価格の影響を受けやすい面があります。結果としてユニ・チャーム製品から離れる動きが強まり、シェアが低下してきた、というのが動画の見立てです。

品質が良いだけでは参入障壁になりにくいという現実

ここまでの整理から、奥さん役の話者も「品質が良いだけでは参入障壁になりづらい」ことを実感したと語ります。

特に紙おむつは、確かにかぶれにくさなどの差はあるものの、一定の機能を満たしていれば大差がないと感じる消費者も多く、少なくとも倍の価格を払うほどの差別化が難しい場合がある、という指摘です。

この部分は、日用品ビジネスの構造的な難しさを示しています。

技術や品質で差を付けても、競合がキャッチアップすれば価格競争になりやすい。動画は、ユニ・チャームがアジアで築いてきた優位性が薄れつつある可能性を、ここで強く示唆しています。

ユニ・チャームの強みは何だったのか

話者は、ユニ・チャームの強みを「現地ニーズを泥臭く拾い、商品に落とし込む力」だと説明します。いわゆるパパママストアのような小規模店に入り込み、消費者の動きを観察し、求められる商品を作る。これが勝ち筋だったという理解です。

ただ、その差別化事例を振り返ると、象徴的に語られるのはテープ型からパンツ型への移行といった分かりやすい変化が多く、細かな吸収率などはあっても、根本的に大きく差別化できていたのか疑念が湧いてきたとも語ります。

そして今、現地企業が力を付け、同じような商品をより安く出せるようになったことで、家電業界で起きたような現象が、紙おむつの世界でも起き始めているのではないか、という比喩が出ます。

ここでのポイントは、ユニ・チャームの過去の成功を否定していないことです。むしろ成功したからこそ、競合が追い付き、環境が変わった。長期投資では、この変化を見落とすと致命傷になるというメッセージが含まれています。

業績予想が「強気すぎる」ことへの違和感

次に話者は、会社が出した業績予想の強さに疑問を呈します。売上高は1兆100億円、コア営業利益は1360億円と、いずれも過去最高水準を見込んでいると説明されます。

地域別には、中国が直近で大きく落ち込んだところから14%から16%成長に回復、インドネシアも8%から10%成長といった前提が置かれているとのことです。

しかし話者は、直近の10月から12月期の売上がマイナス6%、利益が64.7%減という状況を踏まえると、急に大きく反転して過去最高に達するという絵が描きにくいと述べます。構造改革費用などの一時要因はあるにせよ、売上自体が弱っているのに短期でV字回復する前提は信じにくい、という感覚です。

さらに、企業が陥りがちな罠として「過去最高を目標にしたいがために無理な数字を置く」傾向が語られます。部署から積み上げた計画が楽観的になりやすいこと、組織が大きくなるほど現場の空気で目標が下げにくくなることなどが背景にあるのではないか、という推測です。

ここでは中国のGDP発表に例えるなど、やや強めの比喩も出ますが、論点は「数字の妥当性」にあります。

情報開示の姿勢への不信感

動画の中でかなり強いトーンになっているのが、情報開示の姿勢です。

話者は、決算説明会の質疑応答の動画公開や文書公開を多くの企業が行う中で、ユニ・チャームはパワーポイント資料を出して終わりで、透明性が弱いと感じたと述べます。

さらに、機関投資家にだけ開示される各国シェア資料が存在し、個人投資家と機関投資家で開示格差があるという指摘が出ます。本来、市場はフェアであるべきで、同じ情報を同時に開示するフェアディスクロージャーが求められるのに、それが徹底されていないように見える、という問題提起です。

会社側の説明として「競争優位性が他社に漏れるから」という趣旨があるものの、話者はそれなら上場の意味は何か、という強い違和感を示します。言葉は厳しいですが、ここは長期投資で最も重視されるガバナンスと透明性の話であり、単なる感情論ではなく投資判断に直結しやすい領域です。

株主総会についても、四国でアクセスが良くない場所で開催され、参加したメンバーが「身内だけで開くような総会に近い印象だった」と述べた、というエピソードが紹介されます。地元開催自体を否定しているわけではなく、個人株主への配慮が薄いと感じた点が問題視されています。

中期経営計画の「3つのR」と、ずれる打ち手

中期経営計画では、ルネッサンス、リバース、レゾナンスという3つのRが掲げられていると説明されます。ここからが動画の核心の1つで、話者はこれらの方向性が的を外していると感じたと述べます。

ルネッサンス AI活用が「強みの逆」を向いていないか

ルネッサンスは、AI活用で人の痛みや不快に寄り添い、潜在的不快を解消し、模倣できない価値を創出する、といった趣旨の説明です。しかし話者は、ユニ・チャームの強みが「現地に入り込む泥臭いマーケティングと商品開発」だと捉えているため、AIを前面に出す戦略は真逆に見えると言います。

AIは今や多くの企業が使えるコモディティに近く、AIを使うだけで模倣困難な競争優位が生まれるとは考えにくい、という指摘です。さらに、資料にはライフサイクルインサイト、SBU横断データ、ウーダーループなど横文字が並ぶものの、具体的にどう勝つのかが見えにくい、取って付けたように見える、という感想が述べられています。

リバース OEM活用は「強みを手放す」リスクにならないか

リバースでは、OEM活用による最適化、スピードとコスト競争力で新興国のボリュームゾーンを獲得する、といった趣旨が語られます。ここについて話者はかなり否定的です。

製造業の強さとは、本来、良いものを安く作るために製造プロセスを握り、改善を積み重ねることで生まれるはずです。ところがOEMで外部委託を進めると、委託先が同じものを自社で作れてしまう構造になります。委託先が中国企業などであれば、いずれ同等品を自分たちで出すのではないか、という懸念が示されます。

さらに、安く作ることを狙えば品質やブランドが毀損しやすいという問題があります。ユニ・チャームブランドで安価品を出すほどブランド力が落ち、長期的に不利になるのではないか、という論点です。動画では家電業界でOEMを通じて技術移転が進み、結果として日本勢が苦しくなった歴史にも触れ、同じ過ちを繰り返すのではないかという危機感が語られています。

この指摘は、短期的な利益改善というより、長期的な競争優位の源泉をどこに置くのかという本質に関わります。特に、ペットケアやウェルネスケアなど、今も高利益率の領域まで外注する方針に見える点は、強みを削る行為ではないか、と話者は見ています。

レゾナンス 社会課題の語りだけで差別化になるのか

レゾナンスは、社会課題解決を成長エンジンにし、企業価値の最大化と持続的成長を目指すという趣旨です。ただ話者は、紙おむつや生理用品を普及させること自体は社会的意義があるとしても、同じことは中国企業でもできるので、差別化要因にはなりにくいのではないかと述べます。

要するに、良い理念を語ることと、競争市場で利益を守り抜くことは別問題です。ここが中期計画全体を通じた「儲かる絵につながっていない」という評価につながっています。

長期投資で本当に見るべきポイントは何か

動画では、株主還元強化が株価にとってプラス要因になり得ることも触れられています。内部留保が積み上がっているなら還元するのは合理的であり、ここ自体を否定しているわけではありません。ただし話者は、還元はあくまで対症療法に見えやすく、長期投資で重要なのは「どこに投資し、どこで強みを強化するのか」だと強調します。

この論点は一般化できます。日用品ビジネスで競争が激化したとき、選択肢は大きく分けて2つあります。1つは価格競争に巻き込まれないように、プレミアム領域へ軸足を移し、明確な価値差で価格を維持する戦略です。もう1つは、徹底したコスト競争力で勝ちに行く戦略ですが、これは製造やサプライチェーンを握り、規模と効率で勝てる企業でないと難易度が高いです。

動画の話者は、ユニ・チャームは前者、つまりプレミアム戦略に寄せた方が筋が良いのではないかという感覚を述べています。ところが中期計画ではOEM活用など、後者の方向に見える打ち手が前面に出ており、そこにズレを感じたというわけです。

また、情報開示姿勢や説明会の見せ方も、長期投資では軽視できません。透明性が高い企業ほど市場との信頼関係を築きやすく、逆に開示が限定的だと投資家はリスクプレミアムを上乗せしやすいからです。動画はこの点を、個人投資家が軽視しがちな重要ポイントとして提示しているようにも見えます。

まとめ ユニ・チャームをどう見るべきか

動画の結論は、ユニ・チャームの製品力を認めつつも、足元の中国とインドネシアの失速が示す競争環境の変化は重く、会社が掲げる業績予想は強気すぎて信頼しづらい、さらに中期経営計画の方向性が強みの強化ではなく外部委託など強みを失う方向に見え、加えて情報開示の姿勢にも不信感があるため、長期投資として保有する理由が薄れた、というものです。

損切りは結果論であり、将来ユニ・チャームが立て直して「売らない方が良かった」展開になる可能性もゼロではありません。話者自身もその可能性を認めた上で、それでも長期投資は「投資する理由がなくなったら売る」というルールが重要だと述べています。成功してきた企業ほど、過去の勝ちパターンに縛られ、危機感が薄れたように見える局面があり得るという指摘も含め、投資家側が企業の変化を見抜けるかが問われる内容でした。

読者としては、ユニ・チャームに限らず、海外成長ストーリーに依存してきた企業が、現地競争の質的変化にどう対応するのか、そして経営が何を強みとして再定義し、どこに資源を投下するのかを、決算数字だけでなく中期計画の中身と開示姿勢まで含めて点検することが重要だと言えます。今回の動画は、そのチェックの仕方を具体的に示した事例として、長期投資の学びになり得る内容でした。

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