本記事は、YouTube動画『暴落は買い時です。』の内容を基に構成しています。
導入
株式市場が大きく下落すると、多くの人は不安になります。ニュースでは「歴史的暴落」「パニック売り」「金融危機の再来」といった強い言葉が並び、投資を始めたばかりの人ほど「今は絶対に手を出してはいけないのではないか」と感じやすくなります。
しかし一方で、長期投資の世界では昔から「暴落は買い時」という考え方が語られてきました。実際に大きな下落局面で買えた人が、その後の回復局面で大きな資産成長を得た事例は少なくありません。問題は、その言葉をそのまま信じてよいのかどうかです。暴落時に買えば必ず儲かるのか、あるいはその裏にある厳しい現実も理解しておく必要があるのか。この点を曖昧なままにしてしまうと、表面的な言葉だけが独り歩きしてしまいます。
今回の動画では、そうした「暴落は買い時」という考え方を、感覚論ではなく、恐怖指数と呼ばれるVIX指数やS&P500の過去データを使って丁寧に検証しています。単に「暴落時はチャンスです」と煽るのではなく、買った後にさらにどれだけ下がったのか、その後1年、5年でどうなったのかまで含めて、実際の過去事例をもとに具体的に示しているのが大きな特徴です。
この記事では、動画の内容を初心者の方にも分かりやすく整理しながら、暴落時の投資がなぜ有効になりやすいのか、その一方でどれほど強いメンタルと事前準備が必要なのかを詳しく解説していきます。結論から言えば、暴落局面はたしかに大きなチャンスになり得ます。ただし、それは積み立てを続けるという土台があってこそ成立する「追加戦略」であり、決して安易に飛びつくべきものではありません。
背景説明
恐怖指数VIXとは何か
動画の冒頭でまず説明されているのが、投資家心理を測る代表的な指標であるVIX指数です。VIXは一般に「恐怖指数」と呼ばれていますが、正式にはCBOEボラティリティ指数と呼ばれ、S&P500のオプション価格をもとに算出される指標です。算出開始は1993年で、アメリカ株市場における将来の変動の大きさに対する市場参加者の予想を数値化したものといえます。
動画では、このVIXを「相場の体温計」と表現しています。この例えは非常に分かりやすく、初心者にも理解しやすい説明です。普段の平熱はおおむね10から20程度で、相場が比較的落ち着いている時はこの範囲に収まることが多いです。ところが、何らかのショックが発生し、投資家の間に不安や混乱が広がると、この数値が急上昇します。
目安としては、30を超えると市場に熱が出ている状態、40を超えると高熱状態、80を超えるとまさに緊急搬送レベルという整理が動画内では示されています。これは感覚的にも非常に分かりやすく、今後ニュースでVIXが上昇したと聞いた時に、その数字の重みを把握する助けになります。
重要なのは、VIXは過去に何が起きたかを示す数字ではなく、これからどのくらい市場が荒れそうかという「未来への不安」を映し出しているという点です。つまり、恐怖指数という名前の通り、投資家が先行きに対してどれほど警戒しているかを示す温度計なのです。
過去の危機とVIXの水準
動画では、過去の大きなショック時にVIXがどこまで上昇したかも紹介されています。2008年のリーマンショックでは約90、2020年のコロナショックでは約83、令和のブラックマンデーでは約66、2025年4月のトランプ関税ショックでは約60という数字が示されています。
これらの数字から分かるのは、市場が本格的なパニックに陥ると、VIXは40どころか60、80、あるいは90近くまで跳ね上がることがあるという事実です。つまり、VIXが40を超えたからといって、それが必ずしも底打ちを意味するわけではありません。ここは今回の動画の中でも非常に重要なポイントとして強調されています。
初心者の方は「VIXが高いなら、そこが買い場なのでは」と単純に考えがちです。しかし実際には、VIXが40を超えたあとにさらに相場が崩れ、株価も一段と下がることは珍しくありません。リーマンショックでは40を超えてから90近くまで上がりましたし、コロナショックでも40から83まで上昇しました。高熱が出た日に薬を飲んだからといって、その日のうちに熱が下がるとは限らないのと同じで、市場も不安が一気に解消するわけではないのです。
動画内容の詳細解説
VIXが40を超えた日の投資成績はどうだったのか
今回の動画の中心となるのが、2001年以降のデータをもとに「VIXが40を超えた日にS&P500へ投資したらどうなったか」を検証した部分です。
動画によれば、2001年以降でVIXが40を超えた日は合計で約40回ありました。これらの全ケースを調べたところ、1年後にマイナスだったのはたったの3回で、40回中37回は1年後にプラスだったといいます。そして平均リターンはプラス30.3%という非常に高い数字でした。
さらにVIXが45を超えた局面に絞ると、該当日は21回あり、そのうち1年後にマイナスだったのはたった1回、平均リターンはプラス34.9%だったと紹介されています。
これだけを見ると、暴落時に買う戦略はかなり魅力的に見えます。平常時にコツコツ積み立てるよりも、パニックのピーク付近で思い切って買った方が、1年後の成績が大きくなりやすいように見えるからです。しかし動画が優れているのは、ここで話を終わらせない点です。ここだけを切り取れば、「じゃあVIXが40を超えたら全力で買えばいい」と誤解しかねません。実際はそう単純ではなく、その後にさらに大きな下落を耐えなければならないケースが多いのです。
ITバブル崩壊時のケース
1つ目の具体例として示されているのが、ITバブル崩壊時です。動画では、2001年9月17日、9.11テロ後にニューヨーク市場が再開した日に注目しています。この時、VIXは49まで上昇していました。
もしこの日にS&P500へ1000万円を投資したとすると、その後どうなったのか。ここからが現実の厳しさです。ITバブルの崩壊はこの時点で終わっておらず、その後もエンロンやワールドコムの会計不正問題などが重なり、S&P500はさらに下落していきました。
結果として、この1000万円は一時約750万円まで減少し、含み損はマイナス25%に達しました。しかも1年後の時点でも約854万円で、まだマイナス15%です。つまり、VIXが高い時に買ったからといって、1年程度では苦しいまま終わることもあるのです。
ただし、その後の回復は強く、3年後には約1144万円、5年後には約1387万円となり、最終的には約39%のプラスになったとされています。買った直後の苦しさは大きかったものの、長く保有することで報われた例といえます。
リーマンショック時のケース
次に紹介されるのが、2008年のリーマンショックです。動画では、2008年9月29日、アメリカ議会で金融安定化法案が否決され、S&P500が1日で約9%も下落したタイミングが取り上げられています。この日、VIXは40を超えていました。
仮にこの日に1000万円を投資したとすると、その後の下落はさらに過酷でした。VIXは最終的に約90まで上昇し、S&P500は2009年3月まで下がり続けます。その間、1000万円は一時約610万円まで減少し、含み損はマイナス39%に達しました。
これは数字として見る以上に、実際の心理的ダメージが大きい局面です。半年近くにわたり、自分の資産が毎日のように数十万円単位で減っていくのを見続けることになります。動画では、これを「本当の地獄」と表現していましたが、まさにその通りでしょう。
それでも1年後には約985万円まで戻り、損失はマイナス1.5%程度にまで縮小しました。そして5年後には約1711万円、10年後には約2970万円近くまで増えたと紹介されています。最悪の局面で買ったとしても、長期で持ち続ければ大きく資産が回復し、むしろ大きなリターンに結びついたのです。
コロナショック時のケース
3つ目の例は、2020年のコロナショックです。2020年2月28日にVIXが40を超えたタイミングで投資した場合を想定しています。
この時も、市場の不安はそこからさらに拡大しました。コロナの感染拡大は世界的に急速に進み、VIXは最終的に83まで上昇しました。S&P500は3月23日まで下落を続け、1000万円で買った資産は一時約750万円まで減少、含み損はマイナス24%となりました。
しかもリーマンショックが半年かけて下げたのに対し、コロナショックはわずか3週間で急落しました。このスピード感が投資家の恐怖を一層強めたことは想像に難くありません。
しかし、その後の回復もまた非常に早く、1年後には約1313万円、5年後には約2175万円にまで増加したと説明されています。コロナショックは、恐怖の深さと回復の速さが同時に際立ったケースであり、長期投資家にとっては暴落局面での投資が有効に機能した典型例として紹介されています。
3つの事例から見える共通点
ITバブル、リーマンショック、コロナショックという3つのケースを並べてみると、共通点がはっきり見えてきます。それは、VIXが40あるいは45を超えた時点で買っても、その後さらに下落するケースが非常に多いということです。
ITバブルでは含み損マイナス25%、リーマンショックではマイナス39%、コロナショックではマイナス24%。つまり「恐怖指数が高いから今が底」とは限らず、むしろその後の深い含み損に耐える覚悟が必要になります。
それでも、5年という時間軸で見れば、どのケースでも最終的には大きくプラスになっているのです。この事実が、動画の主張する「暴落は買い時」という考え方の土台になっています。
追加解説
なぜ暴落時の投資は大きなリターンにつながりやすいのか
動画では、暴落時に高いリターンが出やすい理由についても丁寧に説明されています。結論を言えば、暴落時には投資家心理が極端に悪化し、株価が本来の企業価値以上に売られすぎるからです。
市場が大きく崩れる時、人は冷静に企業業績や将来価値を計算して売買しているわけではありません。むしろ「これ以上下がる前に売りたい」「とにかく逃げたい」という感情が先に立ちます。そうなると、売りが売りを呼び、株価は本来の価値を大きく下回る水準までオーバーシュートします。
この現象を支えているのが、行動経済学でいう損失回避バイアスです。人間は利益を得る喜びよりも、損失を被る痛みをより強く感じる傾向があります。そのため、暴落局面では合理的な判断よりも「損したくない」という感情が優先され、過度な売りが発生しやすくなります。
そして、その行き過ぎた悲観が少しずつ修正されていく過程で、株価は元の価値に近づき、場合によっては新しい上昇相場へと移行していきます。この「行き過ぎの反動」が、暴落時投資の高リターンの源泉だというのが動画の説明です。
テンプルトンの言葉が示すもの
動画内では、著名投資家ジョン・テンプルトンの有名な言葉も紹介されています。
相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観と共に成熟し、幸福と共に消えていく。
この言葉は、相場の循環を非常に端的に表しています。VIXが40を超えるような局面は、まさに「悲観の中」にある状態です。誰もが不安を感じ、先行きを悲観している時こそ、次の上昇相場のスタート地点になっている可能性があるわけです。
もちろん、その瞬間にはまだ底が見えず、買った直後にさらに損失が膨らむこともあります。しかし、大勢が悲観に傾ききった局面では、将来の悪材料がすでにかなり織り込まれている場合が多く、そこから先は少しずつ戻りやすくなるという考え方です。
暴落時投資はメイン戦略ではなくスパイスである
今回の動画で最も印象的なのは、「暴落時投資は長期投資のスパイスである」という考え方です。これは非常に重要です。
つまり、投資の主役はあくまで新NISAやiDeCoなどを活用した平常時の積み立て継続であり、暴落時の追加投資はその補助的な戦略にすぎない、ということです。動画ではこれを「スパイス」と表現しています。料理においてスパイスだけでは食事にならず、入れすぎるとむしろ台無しになるのと同じように、暴落時投資もやりすぎれば危険だというわけです。
これは初心者にとってとても大切な視点です。相場が大きく下がった時だけ投資しようとして、普段は現金を大量に抱えて待ち続ける人もいます。しかし、株式市場は長期的には上昇してきた時間の方が圧倒的に長く、暴落待ちで長期間現金を寝かせるのは機会損失になりやすいのです。
そのため、普段は積み立てを淡々と続け、暴落時にはあらかじめ決めた範囲で追加投資を行う。このバランス感覚こそが、今回の動画で示されている中心的な考え方です。
暴落時に備えるための3つのステップ
動画では、暴落に備えるための実践的なステップも紹介されています。ここは非常に再現性が高く、読者にとっても参考になる部分です。
まず1つ目は、自分のポートフォリオにおける有リスク資産と無リスク資産のバランスを確認することです。株式や投資信託などの有リスク資産が大きく値下がりしても、生活に支障がなく、夜眠れなくならない水準になっているかを確認する必要があります。もしここが崩れているなら、暴落投資以前に資産配分そのものを見直すべきだという考え方です。
2つ目は、無リスク資産の一部に「暴落用資金」を用意しておくことです。生活防衛費とは別に、ポートフォリオ全体の5%から10%程度を暴落時の追加投資に使える待機資金として持っておくのが1つの目安とされています。動画では総資産3000万円の例を使い、そのうち100万円から200万円程度を暴落時のために確保しておくイメージが紹介されています。
ここで大切なのは、暴落用資金を持ちすぎないことです。暴落に備えるあまり現金比率を高くしすぎると、平常時の上昇相場の恩恵を取り逃してしまいます。その意味で、5%から10%程度という控えめな設定は、実務的にも合理的です。
3つ目は、暴落時のマイルールを平時のうちに決めておくことです。例えば、VIXが40を超えたら暴落用資金の25%を投入し、50を超えたらさらに25%、60を超えたらさらに25%、残り25%は予備として残す、といった具合です。
このルールの良いところは、感情に左右されにくくなることです。暴落の真っ最中に「まだ下がるかもしれない」「今買うのは怖い」と悩み始めると、人はなかなか動けません。逆に、底値を完全に狙おうとすると、結局何も買えずに相場が反発してしまうことも多いです。だからこそ、数字に基づいて段階的に投資する仕組みをあらかじめ決めておくことが有効なのです。
なぜインデックス投資が適しているのか
動画では、暴落時に何へ投資するかについても触れられており、基本的にはS&P500や日経平均などのインデックス投資が適しているとされています。
その理由は明快です。暴落時には市場全体が混乱しているため、個別株の選別は非常に難しくなります。大きく下がったからといって、その企業が本当に回復するとは限りません。業績悪化が長引く企業や、最悪の場合は市場から退場する企業もあるからです。
一方、インデックスであれば市場全体の回復に乗ることができます。経済全体が立ち直れば、指数も長期的には回復しやすいです。特に初心者にとっては、暴落局面で個別銘柄を精査するよりも、広く分散されたインデックスへ淡々と資金を振り向ける方が、はるかに現実的で再現性が高いといえます。
まとめ
今回の動画が伝えている結論は非常に明快です。暴落はたしかに買い時になり得ます。しかし、それは「暴落したら何も考えず全力で買えばいい」という意味ではありません。
VIXが40や45を超えるような局面で投資した場合、過去データでは1年後の勝率が高く、平均リターンも非常に大きいことが示されました。ITバブル、リーマンショック、コロナショックという歴史的な暴落局面でも、最終的には5年後に大きくプラスになった事例が並んでいます。数字だけを見れば、暴落時投資にはたしかに魅力があります。
ただし、その裏では買った後にさらに24%、25%、39%といった深い含み損に耐える必要がありました。つまり、暴落時投資は結果だけ見れば美しく見えても、途中経過は決して楽ではないのです。そこで狼狽売りしてしまえば、この戦略は成立しません。
だからこそ、積み立て投資を土台にし、その上で暴落時の追加投資を「スパイス」として使うという発想が重要になります。有リスク資産と無リスク資産のバランスを確認し、生活防衛費とは別に暴落用資金を少しだけ用意し、さらにVIXの水準に応じたマイルールを平時のうちに決めておく。こうした準備があって初めて、次の暴落が来た時に感情ではなくルールで動けるようになります。
投資に絶対はありませんし、過去のデータが将来を保証するわけでもありません。それでも、何も準備していない人と、あらかじめ想定してルールを作っている人とでは、暴落時の行動は大きく変わります。暴落をただ恐れるのではなく、冷静に備え、長期の視点で向き合える投資家になること。それが今回の動画全体を通じて伝えられていた、最も重要なメッセージだといえるでしょう。


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