2024年10月時点での経済状況を踏まえて、今後の金利動向と株価への影響について詳しく説明した動画をご紹介します。
初心者でもわかりやすいように、この記事では中立金利とは何か、アメリカの経済政策や株式市場への影響、そして今後の見通しについて、具体的な数字や例を交えながら解説していきます。
中立金利とは?
中立金利とは、景気を刺激せず、また抑制もしないバランスの取れた金利のことを指します。
中央銀行(アメリカではFRB)が金融政策を決定する上で非常に重要な指標です。簡単に言うと、中立金利は経済が過熱もしないし、冷え込みもしないちょうどよい金利の水準です。
現在、米国の中立金利は3.5%とされており、FF金利(フェデラルファンド金利)は5%となっています。
これは、現在の金利が中立金利よりも高く、金融引き締め状態であることを意味します。引き締めとは、インフレを抑えるために金利を高める政策であり、これによって経済活動が抑制されます。
インフレと利下げの関係
FRBがFF金利を2022年に0.25%から5.5%まで引き上げた大きな理由は、インフレでした。
2022年には消費者物価指数(CPI)が前年比で9%近くまで急上昇しましたが、2024年8月には2.5%まで鈍化しました。つまり、米国のインフレは明らかに落ち着いてきており、利下げがしやすい環境が整いつつあるということです。
今後のFF金利の予測
ここで、今後のFF金利(フェデラルファンド金利)の動向について説明します。
2024年9月のFOMC会議では、FF金利が5.5%から5%に引き下げられました。今後、11月と12月に残るFOMC会議でさらに利下げが行われると予測されています。
具体的には、年末にはFF金利が4.25%まで下がる可能性が高いとされています。
さらに、2025年に入ると、金利は3%前後まで下がる見込みです。
これはFRBがインフレを抑えつつ、中立金利付近まで利下げを続ける可能性が高いことを示しています。したがって、2025年までは株式市場にとって強い追い風が吹いている状況が続くと考えられます。
利下げの後の展開とリスク
では、FF金利が中立金利である3.5%に到達した後はどうなるでしょうか?
動画の投稿者さんは「躊躇なく行われる利下げ」から、慎重な利下げに移行すると予測しています。
リーマンショックやコロナショックのようなテールリスク(予測できないリスク)が発生した場合には、FRBが追加の利下げを行う可能性もありますが、そうでなければ、利下げはより慎重に進むと考えられています。
また、2026年にはFF金利が2.5%以下に下がることはほとんどなく、この時期には株価にとってリスクが高まる可能性があると警告しています。
株価への影響とセクター別の分析
次に、金利動向が株価に与える影響について解説します。
2025年までの利下げは、株式市場にとってプラスに働くと考えられますが、その後は注意が必要です。
特に注目すべきは、S&P500のセクター別のパフォーマンスです。
ここでのポイントは、景気サイクルに応じて異なるセクターが強くなったり、弱くなったりすることです。
たとえば、過去5年間ではテクノロジーセクターが197%の上昇を見せ、S&P500全体の88%を大きく上回るリターンを記録しています。
しかし、直近3ヶ月ではテクノロジーセクターは低迷し、公益事業や生活必需品セクターが強くなっています。
景気サイクルとディフェンシブ銘柄の重要性
最近では、景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄が注目されています。
ディフェンシブ銘柄とは、景気が良かろうが悪かろうが、安定した需要がある銘柄のことを指します。例えば、生活必需品や公益事業が該当します。どんな状況でも私たちは毎日お風呂に入り、歯を磨くので、これらのセクターは景気に影響されにくいのです。
最近のセクター別の成績を見てみると、エネルギーセクターが低迷している一方で、公益事業や生活必需品が好調であることがわかります。
このことから、一部の投資家は既に景気後退に備えて景気敏感株を売却し、ディフェンシブ銘柄にシフトしていると考えられます。
まとめ
今回の動画では、中立金利とFF金利に焦点を当て、アメリカの利下げが今後どのように進むか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるかについて詳しく解説されました。
特に2025年までの株価には強い追い風が期待できる一方で、2026年以降は利下げが慎重になり、株式市場にはリスクが高まる可能性が示されています。
また、セクター別のパフォーマンスや景気サイクルに応じた投資戦略も重要です。テクノロジー銘柄だけに注目せず、ディフェンシブ銘柄への投資も検討すべき時期に来ているかもしれません。
知っておきたい専門用語集
- 中立金利:景気を刺激も抑制もしない、経済にとってバランスの取れた金利水準を指す。中央銀行が金融政策を決定する際の重要な指標。
- FF金利(フェデラルファンド金利):アメリカの中央銀行(FRB)が銀行間での短期貸出に適用する金利。経済活動やインフレを調整するために操作される。
- FRB(連邦準備制度):アメリカの中央銀行で、金利政策や金融政策を通じて経済を安定させる役割を持つ機関。
- インフレ(消費者物価指数CPI):物価の全般的な上昇を指す。特にCPIは、消費者が購入する商品やサービスの価格変動を測る指標。
- 利下げ:中央銀行が経済を刺激するために金利を引き下げること。これにより企業や個人が借り入れをしやすくなる。
- テールリスク:予測が難しく、極端な影響を及ぼす可能性のあるリスク。リーマンショックやコロナショックが典型例。
- 景気サイクル:経済活動の拡大と収縮の循環。回復期、好況期、後退期、不況期の4つに分かれる。
- ディフェンシブ銘柄:景気に左右されにくく、安定した需要が見込まれる企業の株式。生活必需品や公益事業がこれに該当。
- 景気敏感株:景気の変動に影響を受けやすい企業の株式。エネルギーやテクノロジーセクターが含まれることが多い。
- 公益事業セクター:電力や水道、ガスなどのインフラを提供する企業群。景気に左右されず、安定した収益を見込める。
- 中立金利付近:FF金利が中立金利に近い状態を指し、経済に大きな刺激や抑制を与えないバランスの取れた状態。
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