2024年10月、中国が主導する国際会議「BRICS」がロシアで開催されました。
この会議にはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イランなど、比較的中国寄りとされてきた国々が参加しました。
しかし、今回の会議では、BRICS内部の中国の影響力低下が浮き彫りとなりました。本記事では、このBRICS会議を通じて見えてきた中国の孤立について詳しく解説します。
BRICSとは何か?
BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国の頭文字を取ったもので、2001年に投資銀行ゴールドマン・サックスのジム・オニールが初めて提唱しました。
その目的は次の3つに大別されます。
- 経済協力による発展
30億人以上の人口を抱えるBRICS諸国は、世界の約40%を占め、豊富な天然資源を基盤に経済成長を目指してきました。
例として、2014年には、世界銀行に代わる新たな金融機関「新開発銀行」を設立しました。 - 国際的な発言力の強化
BRICSは国連やWTOなどの国際機関において、自国の立場を強調し、多極的な国際秩序を目指しています。 - 既存の国際秩序への挑戦
冷戦後、アメリカを中心とした国際秩序に対する不満を背景に、BRICSはアメリカ主導の金融システムや基軸通貨であるドルへの依存を減らす試みを続けています。
中国の孤立化:何が起きているのか?
今回の会議では、中国の影響力が急速に低下している兆候が多数見られました。
主要人物の欠席
財務大臣や中央銀行総裁が出席する重要な会議にもかかわらず、多くの国が代理人を派遣しました。
例外はイランだけで、インドや南アフリカなどは代理人対応でした。
ウウジアラビアのムハンマド皇太子も欠席しており、中国主導の会議の重要性が低下していることを示しています。
経済的メリットの低下
中国経済の悪化が影響しています。
不動産バブルの崩壊や独裁的な経済政策の副作用により、成長が鈍化し、中国と接近するメリットが減少しています。
また、アメリカと中国の対立に巻き込まれるリスクを懸念する国々も増えています。
各国の「脱中国」政策
BRICSに参加する国々でも、対中国の距離を置く動きが見られます。
- イランの転換
反米路線をとってきたイランが最近では西側諸国との関係改善を模索しています。 - アルゼンチンの脱中国政策
大統領ハビエル・ミレイは「共産主義国とは取引しない」と公言し、BRICSへの参加を拒否しました。 - フィリピンの反中姿勢
南シナ海問題で中国を名指しで批判したほか、アメリカや日本との軍事・経済連携を強化しています。
人民元への不信感
中国がアフリカ諸国に対し、7兆円規模の資金協力を発表しましたが、支払いが人民元建てであることから各国は冷淡な反応を示しています。
人民元は通貨としての信用度が低く、世界三大通貨(米ドル、ユーロ、日本円)と比べて流通や安全性の面で大きく劣るとされています。
一帯一路政策の問題
中国の「一帯一路」政策は、借金を負わせた国々で反発を招いています。
例えば、インドネシアやフィリピン、ベトナムなどでは反中感情が高まり、経済的・軍事的な面で西側諸国との連携が進んでいます。
中国経済の悪化と企業の撤退
外資系企業は中国からの撤退を加速させています。
例として、2024年時点でトヨタ、ホンダ、日産の新車販売台数は6か月連続で前年割れとなり、AppleやSamsungも中国での事業を縮小しています。
これにより、中国では雇用の減少や国内消費の低下が進み、経済へのさらなる打撃となっています。
アメリカと中国の対立激化
アメリカでは2024年の大統領選挙でトランプ氏が再選しました。彼の対中政策は特に強硬で、中国製品への関税を最大60%引き上げる可能性を示唆しています。
これに対し、中国は対抗措置としてアメリカ国債の売却や人民元切り下げを模索していますが、効果は限定的とされています。
台湾問題と安全保障の影響
台湾問題では、トランプ氏が台湾への武器売却を進める姿勢を見せており、中国は軍事活動を強化する可能性が高まっています。
日本を含む周辺国も、クアッド(日米豪印)の連携強化などで中国を牽制する動きを見せています。
今後の展望
中国がBRICS内で孤立化する中、アメリカや他の国々との経済・安全保障上の対立は一層激化する可能性があります。特に2024年以降、世界経済や国際関係がどのように変化していくか、注目が必要です。
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