なぜ独裁国家の9割は乾燥帯にあるのか?

世界には民主主義国家と独裁国家が存在し、その違いは単に政治的な選択や経済状況だけでなく、驚くべきことに「気候」が関係しているという説があります。

この動画では、乾燥地帯で独裁国家が多い理由を、気候と農業、そして歴史的背景を交えて深く解説しています。


目次

民主主義と独裁主義の違いを気候で説明できるのか?

民主主義国家と独裁国家が分布する理由について、これまでは経済や歴史的要因に注目する研究が多くありました。

しかし、この動画では「気候」という視点から、その分布の違いを読み解きます。特に「降水量」が政治体制に与える影響に焦点を当てています。


乾燥地帯に独裁国家が多い理由:ポイント解説

乾燥地帯では農業に水の管理が不可欠

乾燥地帯では降水量が非常に少なく、農業を営むためには川やオアシスから水を引く「灌漑(かんがい)」が必須となります。

灌漑を行うには、大規模な水路や堤防を建設し、水を効率的に分配する必要があります。この過程では、個人での取り組みは不可能で、集団行動が求められます。

この集団行動を効率よく指揮するために、強力なリーダー、つまり独裁的な権力者が必要となります。

灌漑の持つ性質が独裁体制を強化

灌漑施設は公共物であり、個人が勝手に使うことを防ぐために、誰かが一括管理する必要があります。例えば、ある農民が水を過剰に使うと、他の農民に影響を与えます。

そのため、独裁者が水の管理を行い、違反者を厳しく取り締まる仕組みが形成されました。

中国の黄河流域では、皇帝が堤防建設や水量管理を統括し、強大な権力を持ち続けました。このシステムが長い間、中国を独裁的な国家へと導いた一因とされています。

災への備えと中央集権化

乾燥地帯では天候不良が地域全体に及ぶことが多く、洪水や干ばつが起これば、すべての住民が影響を受けます。

こうした災害に備えるために、中央集権的な政府が農作物を徴収し、巨大な備蓄倉庫で管理する体制が求められました。この備蓄を公平に分配する役割を果たすのも、独裁的な権力者の仕事でした。


    雨が「ほどほど」の地域で民主主義が発展する理由

    乾燥地帯とは対照的に、雨が「ほどほど」に降る地域、いわゆる中間降水量の地域では、民主主義が発展しやすい環境が整っていました。その理由を詳しく見ていきます。

    農業に灌漑が不要

    ヨーロッパのような適度な降水量の地域では、雨だけで農業が成り立ちます。このため、集団行動や大規模な灌漑工事が必要なく、農家ごとに独立して経営が可能でした。

    この独立性が、権力の分散を促し、民主的な社会の基盤を作りました。

    穀物の貯蔵性と資本主義の発展

    穀物は乾燥した環境であれば長期間保存が可能で、貯蔵が容易でした。これにより農民は備蓄を資産として活用でき、労働すればするほど財産を増やすことができました。

    余剰の穀物を他の村に売る「商業」が発達し、資本主義的な経済が育ちました。これが、民主主義の発展に重要な役割を果たしました。

    天災の影響が分散

    乾燥地帯と異なり、適度な降水量の地域では、天候不良が村ごとに異なる影響を与えました。一つの村が不作でも、別の村が豊作ならば、その差を補う商業取引が行われました。

    この取引を円滑に進めるために、法律や交通インフラが整備され、それがさらに民主的な社会を形成しました。


      降水量が多い地域の特徴と独裁への傾向

      一方、降水量が多すぎる地域では、また別の課題が発生します。

      農作物が腐りやすい

      湿度が高い地域では、穀物のような貯蔵に向いた作物よりも、バナナやサトウキビのような保存が難しい作物が中心になります。

      これらの作物は早く消費する必要があるため、備蓄文化が発展しにくく、商業や国家形成が遅れました。

      大規模農園と独裁の温床

      多雨地域では、大規模なプランテーションが発展しました。このシステムでは、白人が黒人奴隷を使役する形で農園を運営し、強力な独裁体制が必要でした。

      このため、現代でも中南米や東南アジアには独裁国家が多い傾向が見られます。


        日本の特殊性:なぜ独裁ではなく分権的なのか?

        アジアの中で日本は独特な位置付けにあります。日本は米を主食とする農業社会であり、米の栽培には灌漑が不可欠ですが、中国や中東のような強力な独裁性は見られません。その理由は以下の通りです。

        地形の影響

        日本は山地が多く、川が小規模であるため、灌漑が村単位で行われることが多かった。

        地域ごとの自治が可能で、中央集権的な権力は必要ありませんでした。

        米以外の作物と独立性

        日本では、米以外の作物は雨だけで育つため、農家は一定の独立性を保つことができました。

        この独立性が、地方分権的な社会構造を支えました。

        歴史的背景

        江戸時代には幕府が全国的な工事を指揮することもありましたが、大名がそれぞれの領地を支配する地方自治が中心でした。

        この分権的な体制が、戦後の民主化をスムーズに進める基盤となりました。


          結論:気候が政治体制を方向づける

          乾燥地帯では灌漑の必要性から独裁体制が、適度な降水量の地域では農家の独立性が民主主義を促しました。

          また、多雨地域では農作物の保存が難しく、商業や国家形成が遅れたことが独裁の温床となりました。

          現代では農業技術や経済のグローバル化により、気候が与える影響は減少していますが、それでも歴史的な気候と政治体制の関連性は無視できません。

          この動画は、気候と政治の密接な関係を知る上で、非常に興味深い内容を提供していました。

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