AIは確実に社会の標準装備になる。
でも、AIそのものを売るだけで儲かる時代ではない。儲かるのはAIを使って利益率を上げた企業、あるいはAIの基盤レイヤーを押さえた企業。だから今は、派手なAIバブルの熱狂と、地味な実需の導入が同時進行している段階だ、という話です。
Iはバブルなのか、まだ序章なのか問題
田端さんは「株のチャンネルだけど、世の中全体のテーマとしてAIをどう見るか」を年末の振り返りとして亀山会長にぶつけます。
世の中には両極の意見がある。
AI投資は何十兆円規模でチキンレースになっている、いつまでも続かないという声。
一方で、未来はAIしかないのだから投資が集中するのは当然という声。
田端さん自身、ネットバブルの時代を経験していて、レンタルビデオが配信になったように、産業が丸ごと変わる瞬間は確かにある。
だからこそ、意識高い系の一般論ではなく、修羅場を踏んできた亀山さんの生の感覚を聞きたい、という流れで始まります。
亀山会長の結論:AI単体では儲からない。AIスタートアップの時代ではない
ここが動画タイトルの核です。
亀山さんはかなりはっきり言います。
AIの時代ではあるが、AIスタートアップの時代とは思っていない。
AI専門の会社が増えても、そこでどんどん儲かるかは別問題。少なくとも自分たちが戦っている領域ではそう見えない。
田端さんが「AI関連でユニコーンっぽい会社もあるけど、それは期待値が集まった結果で、実際は儲かりにくいということ?」と聞くと、亀山さんはレイヤーによって違うと答えます。
データセンターや基盤、ソフト、BtoBの地味な業務システムの置き換えなどはビジネスになり得る。でも、世間が想像するような派手な形で一気に儲かる世界観とは違う、という温度感です。
儲かるのは誰か:AIを導入して利益率を上げる企業が勝つ
亀山さんの言い方が面白いのはここです。
AIで金を生むのは、AIの会社そのものより、AIを使って効率化して利益率を押し上げた企業。
例えば利益率がもともと5%や10%のビジネスにAIを入れて、生産性が5%や10%上がるとする。すると利益が倍になったりする。
だからAI導入した会社と、導入できていない会社で格差が出る。ここが本質だ、という話です。
つまり、AIは単独で儲ける道具というより、既存のビジネスの利益率を押し上げる増幅器として効いてくる、という考え方です。
AIの実態は地味:キムチ工場の異物検知みたいな世界で進む
田端さんが亀山さんの例として出しているのが、めちゃくちゃ象徴的です。
あるAI系の会社は、サイト上では製造業2.0みたいなカッコいい言葉を書いているけど、実態はキムチ工場など食品工場の異物混入チェックを、人間の目視からAI検知に置き換える話だった。
これが「分かる、便利だ、需要もある」と腹落ちする。
ただし、派手ではない。セクシーでもない。地味。
でも結局、社会に浸透していくのはこういう地味な置き換えからだ、という納得感が共有されます。
ただし、まだ“コカ・コーラ”が出てきていない:Googleのブレイクまで8年かかった話
ここから議論が一段深くなります。
亀山さんは、技術のブレイクと、ビジネスモデルのブレイクは別だと言います。
例として検索エンジン史を語ります。
ロボット型検索の仕組み自体は昔からあった。
Googleが本当にとんでもない会社になったのは、広告単価をオークション化するリスティング広告の仕組みが完成してから。ここで一気にビジネスとして爆発した。
そして、田端さんが紹介する比喩が刺さります。
LLMは冷蔵庫みたいなもの。
冷蔵庫が発明されても、一番儲かったのは冷蔵庫屋ではなく、コカ・コーラやアイスクリーム屋だった。
今のAIは、まだそのコカ・コーラやアイスクリームにあたる、キラー級の稼ぎ方が完全には見えていない。
だから、AIが儲からないのではなく、儲けの形がまだ固まっていない可能性がある、という話になります。
AI投資はチキンレースに見えるが、やらざるを得ない
亀山さんの感覚としては、今の状況は場所取りゲーム、資金レースに見える。トップだけが取るという空気の中で、プラットフォーム大手が突っ込んでいる。
田端さんは「Googleは検索広告を捨ててもいいからAIへ舵を切ったのがすごい」と評価します。
普通は既存収益を守ってじわじわやっているうちに、破壊的イノベーションにやられる。そこを振り切ってハードウェアまで含めて作りにいっている、と。
そして亀山さんは、もしOpenAIが出てこなかったら、もう少し様子見して資金を貯めていたかもしれないが、出された以上はやらざるを得ない、というニュアンスを語ります。
EV充電事業の話:AIと同じで、普及スピードは政策で変わる
動画は途中でEV充電の話に飛びますが、これがAIの話と似ています。
EVは未来だと言われて10年経っても、世の中の大半はまだガソリン車。
結局、広がるかどうかは国の政策と補助金次第で、設置コストがどれだけ支援されるかが決定的。
亀山さんのやり方はこうです。
BtoGやBtoBの領域で、補助金がある範囲内で設置を進める。
その上で、基地ができた後にB2C(どこでも使えるアプリ課金、将来的には物販や洗車など周辺ビジネス)へ派生させる。
ここもAIと同じで、最初から派手に儲けにいくより、土台を作りながら現実的に続ける設計をする、という発想が出ています。
AIを社内でやる意味:儲からなくても、ノウハウと人材が残る
亀山さんが強調するのはここです。
AIを外に売って儲ける必要がなくても、社内で触っておく価値がある。
理由は複数あります。
まず、ビジネス全体の効率が5%10%上がる可能性がある。
次に、社内にノウハウが溜まる。
さらに、外部ベンダーから営業された時に、見積もりや提案を厳しい目で判断できる。自社でやっていないと、よく分からないまま高い提案にサインしてしまう会社が多い、という指摘が出ます。
そして最後に、社員のスキルが育つ。扱える人が増えると、会社全体の文化が変わる。
ITの時代に外注中心でやっていた会社は、技術だけでなく考え方の文化が社内に入らず、結局“出版社やメーカー的発想”に留まってしまう。だから内製で浸透させることが重要だ、という組織論につながっていきます。
田端信太郎を誘った理由:社長が全部作る限界と「自走できる人」への期待
話は昔の裏話に移ります。
亀山さんは、以前は自分が全部「こっち行くぞ、あっち行くぞ」で切っていた。しかし限界があった。ビジネスがいくつかコケた経験もあり、「俺の代わりにビジネスを作れるやつがいる」と思って、田端さんに声をかけた、という流れです。
時期は2012年頃の話として語られ、田端さんがサラリーマン時代だったことも出ます。もし入っていたら人生が変わっていたかもしれない、という空気になります。
「年収10億」発言の裏話:怖くて希望額を言えなかった
ここが動画のエンタメ要素です。
亀山さんは当時こう言った、という趣旨が出ます。
一番頑張ってくれている社員は年収10億くらい。税金で持っていかれても、頑張ってくれているやつには払った方がいい。だから君はいくら欲しい?と。
田端さんは、怖くて具体的な数字が言えなかった、と笑いながら振り返ります。
当時の亀山さんは笑っていなかった、めっちゃ怖かった、という描写も入っていて、ここで視聴者は「確かにそういうオーナー社長の迫力あるよね」という生々しさを感じる場面です。
さらに、亀山さんが仕事では厳しい、社長は舐められるより恐れられた方がいい面もある、嫌な決断を引き受けなきゃいけない、権力を私物化しないなら恐れられても構わない、という経営者の覚悟論にもつながります。
まとめ:AIは“単体で稼ぐ商品”ではなく“利益率を上げるインフラ”になる
この動画を一言でまとめるならこうです。
AIは電気みたいな存在になる可能性が高い。
ただし電気で一人が利益の90%を取ったわけではない。AIも同じで、AIそのものより、AIを使って儲けを作る側に利益が分散する形になる。
だから、AI関連銘柄の期待値だけで判断するのは危険。
一方で、AIを導入して利益率を上げる企業、AIを社内文化として内製で育てる企業は、じわじわ強くなる。
AIバブルかどうかは断言できない。
でも、やらない選択肢が消えていくタイプの技術である。
だからこそ、派手な夢よりも、地味な導入と組織への浸透をどう積み上げるかが勝負、という話でした。


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