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急成長するインド経済
インドは世界第5位の経済大国であり、近年驚異的な成長を遂げています。
2023年には総人口が14億2577万人を超え、中国を抜いて世界最大の人口大国となりました。これに伴い、2022年の名目GDPは旧宗主国イギリスを超え、世界第5位に浮上。経済規模は500兆円を超え、さらなる成長が期待されています。
米金融大手ゴールドマン・サックスの予測によると、インドは2075年までに世界第2位の経済大国になると見込まれています。この急成長の背景には、以下の要因があります。
- 人口増加:若年層が多く、労働力の供給が潤沢
- インフラ投資の拡大:政府による大規模な投資
- IT産業の発展:デジタルインディア政策によりインターネット普及が加速
- 製造業や宇宙産業の成長:低コストで競争力のある産業

IT大国としてのインド
インドは現在、世界で2番目に大きなIT大国としての地位を確立しています。
- ITエンジニア数(2023年)
- アメリカ:445.1万人
- インド:3403.1万人
- 中国:328.4万人
特に、プログラミングスキルやAI・データサイエンスの専門性の高さが評価され、リモートワークの普及とともに国際市場での競争力が向上しています。
また、IT以外の分野でもインドは成長を続けています。
- 宇宙開発:インド宇宙研究機関(ISRO)が低コストで高い成果を上げており、2014年には火星探査機「マンガルヤーン」が約7000万ドルのコストで火星の周回軌道に到達しました。
- 製造業・サービス業:国内外からの投資が拡大し、企業の成長を支えています。
経済成長の恩恵を受けるのは一部の層
インドの経済成長は都市部を中心に進み、IT産業、金融、製造業の発展により高収入の仕事が増えています。
- 中間層の成長:若年層がキャリアアップし、所得の増加が見られる
- 消費の拡大:中間層の収入増加により消費市場が拡大
- スタートアップ支援:政府の施策と海外投資により、企業家が増加
深刻な貧富の格差
一方で、インドの経済成長は富裕層に集中し、貧困層との格差が急速に拡大しています。
- 上位1%の富裕層:国内の富の40%以上を所有
- 10億ドル以上の資産を持つ人:58人(2023年)
- 下位50%の人口が持つ資産:わずか3%
- 貧困層の人口:1億7000万人以上(世界の貧困層の約1/4)
都市部では高収入の仕事が増えていますが、農村部では低収入かつ不安定な仕事が中心。インフラ、教育、医療の格差も大きく、都市部の平均所得は農村部の約2倍に達しています。
- 教育の格差:都市部では高等教育の進学率が高いが、農村部では教育環境が不十分で教員不足が深刻。
- 医療の格差:都市部には高度な医療設備や専門医が充実しているが、農村部では医療施設が不足。
- IT・AIの影響:高スキル労働者には恩恵がある一方、低スキル労働者の仕事が奪われている。
格差拡大の歴史的背景
インドの格差は歴史的な背景によっても深く根付いています。
- カースト制度:法的には廃止されているが、社会の構造に影響を及ぼし、低カースト層は高収入職への機会が限られる。
- 土地改革の不十分さ:独立後に実施された土地改革が不完全で、多くの農民が無土地状態のままとなっている。
- 経済自由化(1991年):経済成長を加速させたが、格差の拡大を招いた。
貧富の格差がもたらす影響
- 犯罪率の上昇:貧困地域では暴力犯罪が増加し、スラム街の拡大が治安の悪化を招いている。
- 社会的不安の増大:カーストや宗教間の対立が経済的不平等と結びつき、社会の安定を脅かしている。
- 教育・医療へのアクセス不足:貧困層がスキルを獲得できず、長期的な成長の妨げに。
インド政府の対策
インド政府は貧困削減のためにさまざまな施策を実施しています。
- リザベーション制度:低カースト層向けの教育・雇用枠を確保
- 農村雇用保障法(MGNREGA):最低限の有償労働を提供し、生活基盤の安定を図る
- プラダン・マンティ・アワス・ヨジャナ(PMAY):低所得者向けの住宅を提供
- 公共分配システム(PDS):食料や生活必需品を補助価格で提供
- デジタルインディア政策:銀行口座の普及やオンライン教育の拡大を推進
- 再生可能エネルギープロジェクト:農村部での雇用創出と生活改善
依然として残る課題
- 農村部のインフラ不足:医療・教育施設が不足し、経済成長の恩恵が都市部に集中
- 都市部への人口流入:スラム街の拡大や治安問題が深刻化
- 持続可能な発展の必要性:格差是正をさらに強化することが重要
まとめ
インドは急速な経済成長を遂げる一方で、深刻な貧富の格差が拡大しています。
この問題の解決には、政府のさらなる政策強化とともに、国民全体が公平に経済成長の恩恵を受けられる仕組みの整備が求められています。今後のインド経済の行方に注目が集まります。

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