
インド株が29年ぶりの大幅下落
インドの株式市場が大きな調整局面を迎えています。インドの主要株価指数である ニフティ50 は、2023年9月から2024年2月にかけて 5か月連続で下落 し、下落率は 15% に達しました。これは、1996年以来 約29年ぶり の長期的な下落となります。

また、もう一つの主要株価指数である センセックス指数 も 13.1% 下落し、この期間の 世界最悪のパフォーマンス となっています。
加えて、通貨である インドルピー も 5か月連続で下落 し、対米ドルで 4.2% の減価となりました。
このように、インド株と通貨はともに下落傾向が続いており、多くの投資家にとって懸念材料となっています。
インド経済の最新データ
1. GDP成長率の回復
2024年2月28日に発表された 2023年10-12月期のインドのGDP成長率 は +6.2% となり、市場予想と一致しました。また、前期(2023年7-9月期)の +5.6% を上回り、やや回復の兆しが見えています。
特に 民間消費は+6.9%(前期+5.9%)、政府消費は+8.3%(前期+3.8%) となっており、政府の農村支援策の影響もあって消費が拡大しています。
農業部門の成長率は +5.6%(前期+4.1%) となり、農村部への支援策が一定の効果を示したことが分かります。
2. 貿易収支の動向
輸出は 前年比+10.4%(前期+2.5%) で大きく伸びています。一方、輸入は -1.1%(前期-2.5%) で減少幅が縮小しました。
これは、インドの輸出競争力が依然として高いことを示す一方で、内需の弱さも反映している可能性があります。
3. インフレ率の低下
2024年1月の 消費者物価指数(CPI) は前年比 +4.3% となり、2023年12月の +5.2% から低下しました。
特に、 野菜価格 の変動が大きく影響を与えており、2023年10月には 前年比+42.2% と急騰していたものの、2024年1月には +11.4% まで落ち着きました。
インド経済における懸念点
1. 相互関税の影響
ドナルド・トランプ氏が米国大統領に再選された場合、インドに対して 相互関税(reciprocal tariffs) を導入する可能性があります。
インドの主要輸出国は アメリカ(輸出額775億ドル、シェア17.7%) であり、2位のUAE(輸出額356億ドル、シェア8.2%)を大きく上回っています。米国がインド製品に高関税を課すと、輸出に大きな影響を与える可能性があります。
2. 経済成長の鈍化
インドの成長率は相対的に高い水準を維持しているものの、 2010年代の平均成長率(6.6%)から、2020年代は5.2%へ低下 しています。
政府は 8%の成長率 を目標にしていますが、現状では達成が難しいと考えられています。
3. 社会問題と経済格差
インドは民主主義国家であるため、経済成長が一部の地域や層に偏ると政権への不満が高まりやすいという特徴があります。
2024年の総選挙では モディ政権が苦戦 し、農村部や低所得層の不満が浮き彫りになりました。このため、政府は 農村部への支援策 を強化しており、以下のような政策を発表しました。
- 生産性の低い農業地域(100地域)の支援
- 1,700万人の農村労働者向けの支援策
- 収穫物の政府買取制度の強化
- 農業ローンの金利引き下げ
- 低所得者(年収22万円以下)の所得税免除
これにより、 3,000万人の可処分所得が約20万円増加 すると見込まれています。
しかし、こうした支援策が 経済全体の成長率を引き上げる効果があるのか については懐疑的な見方もあります。生産性の低い部門への支援ではなく、成長産業への投資を優先したほうが高成長を維持しやすいからです。
インド株の今後の見通し
インドの経済成長は今後も続く可能性が高いものの、
- 成長率の鈍化
- 政治的・社会的問題の顕在化
- 米国との貿易関係の不透明感
といった要因から、 株価の上昇ペースは鈍化する可能性が高い と考えられます。
ただし、これが インド株の終焉 を意味するわけではありません。
むしろ、これまでの急速な上昇トレンドから、 持続可能な成長へ移行する過渡期 と見ることもできます。
今後のインド株の動向については、
- 米国の貿易政策
- インド政府の経済政策
- 成長産業への投資動向
といった要素を注視することが重要になりそうです。
まとめ
- インド株は 29年ぶりの大幅下落 で、ニフティ50は 5か月連続で15%の下落。
- インドルピーも 4.2%下落 し、通貨安が進行。
- GDP成長率は6.2% と回復傾向だが、成長率の鈍化が懸念される。
- インフレ率は低下 しており、野菜価格も落ち着きを見せる。
- 米国との貿易摩擦 により、今後の輸出が懸念される。
- 農村支援策 などの財政政策が打ち出されたが、成長率への影響は不透明。
インド経済は今後も 成長は続くものの、上昇ペースが鈍化する可能性 が高く、慎重な投資判断が求められる状況となっています。

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