本記事はYouTube動画「日本株の統括者JPXとは何者なのか【日本取引所決算】~ゆっくり解説~」をもとにしています。
株式投資をしていると必ず目にする「JPX(日本取引所グループ)」。
東京証券取引所や大阪取引所を運営しているのは知っていても、どんなビジネスで収益を上げているのか、実際にどんな財務状況なのかを把握している人は少ないのではないでしょうか。
今回はJPXの仕組みと決算を分かりやすくまとめます。
JPXの概要
- 設立:2013年(東京証券取引所と大阪証券取引所が合併)
- 管轄取引所:東証(プライム・スタンダード・グロース)、大証
- 非管轄取引所:名古屋・札幌・福岡(別運営)
東証は150年近い歴史があり、かつては人の声で取引していました。現在は完全にシステム取引化され、取引所は「取引の場」だけでなく、上場セレモニーなど象徴的な役割も担っています。
JPXの収益モデル
JPXの収益源は大きく4つに分かれます。
- 取引関連収益
- 証券会社(取引参加者)から「取引参加料」を徴収
- 基本料・取引料・アクセス料・システム利用料など
- 売買が増えるほどJPXの収益も増える
- 上場関連収益
- 上場企業から上場料・維持料を徴収
- 新規上場の審査や管理銘柄入りの監督も業務
- IPO件数は近年減少傾向
- 清算・決済関連収益
- 売買後の決済を仲介する役割
- 膨大な資金を一時的に立て替え、安全に決済を完了させる
- この「立て替え業務」のためJPXは莫大な現金を保有している
- 情報関連収益
- リアルタイム株価や板情報を証券会社へ有料提供
- 年間数百万円〜数千万円規模の契約が主流
- 各証券会社を通じて個人投資家も無料で利用可能
さらに、近年はシステム関連収益も拡大。
高速取引(アルゴ取引)でサーバー設置場所が重要になるため、JPXのデータセンター利用料だけで年間100億円超の収入となっています。
JPXの財務状況
バランスシート(BS)
- 総資産:85.4兆円
- 自己資本比率:0.41%(極端に低い)
一見すると不安に見えますが、その理由は「清算引受資産(立替資金)」にあります。
この項目だけで77兆円を占めており、毎日の数兆円規模の取引を支えるための資金です。
また、証券会社からの「預託金」も約7兆円。これは万一証券会社が破綻しても取引を保証できるように確保されています。
つまり、巨額の資産と負債はビジネスモデル上必要なものであり、経営の危険性を示すものではありません。
損益計算書(PL)
- 売上高:1622億円
- 営業利益率:55%
取引所という性質上、売上が増えても費用は急激には増えにくいため、非常に高い利益率を誇ります。
日経平均や売買代金の増加が業績を押し上げる構造です。
- 収益内訳:取引関連が約40%、清算・情報が各20%、上場関連は約10%
- 上場収益は伸び悩む一方で、売買代金増加による取引収益が業績を押し上げています
キャッシュフロー(CF)
- 営業CF:+860億円
- 投資CF:-610億円(主に余剰金の運用)
- 財務CF:-540億円(主に配当)
利益の約半分を株主へ還元する形で配当を実施。
配当利回りは約2%台で安定しており、近年は記念配当や特別配当も頻繁に出ています。
JPXの今後の課題と強み
- 課題
- IPO件数の伸び悩み(M&A増加、上場前買収の増加)
- 世界的にも上場企業数は減少傾向
- 強み
- 株式市場の取引増加に比例して収益が伸びる安定ビジネス
- 情報提供・システム利用料など高利益率の事業が拡大
- 巨額の資金力に支えられた「日本の金融インフラ」
まとめ
JPX(日本取引所グループ)は単なる「取引所運営会社」ではなく、
- 売買の場を提供する
- 安全な決済を保証する
- 情報を発信する
といった多角的な役割を担う、日本株投資のインフラ企業です。
業績は日経平均や売買代金に連動するため、株式市場が活発になるほどJPXの利益も拡大します。
安定した収益基盤と高い利益率を持ち、配当株としても魅力のある存在だと言えるでしょう。
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