近年、新NISA(少額投資非課税制度)の普及に伴い、多くの投資初心者がインデックス投資や積立投資に参入しています。
しかし、本当にすべての投資家が平均リターンを享受できるのでしょうか?
『投資シミュレーションの危険性』をテーマに、藤川太氏の著書を参考にしながら、投資のリスクと現実を詳しく解説した動画をご紹介します。
投資シミュレーションの落とし穴
YouTubeや書籍では、「20年・30年の長期投資でこれくらいのリターンが期待できます」といったシミュレーションがよく紹介されます。
例えば、「年平均リターン5%で30年運用すれば、資産は数倍になる」といった話です。
しかし、これらのシミュレーションが示しているのはあくまで平均値であり、実際にはほとんどの投資家がこのリターンを達成できません。統計的に見ても、リターンの分布には大きなばらつきがあるのです。
コインゲームで理解する投資リスク
本書では、シンプルなコインゲームを例に、投資シミュレーションの本質を説明しています。
ルール:
- 元本100万円で投資を開始。
- コインを投げて表が出たら+20%、裏が出たら-20%。
- 16人の投資家が参加し、それぞれ4回コインを投げる。
結果の分析:
- 平均リターンは100万円のまま。
- しかし、中央値は92万円。
- 平均リターンを達成できたのは16人中わずか5人。
- 9人は平均リターンに届かなかった。
このように、投資シミュレーションでは平均値が強調されがちですが、実際には中央値の方が現実的なリターンを示しています。
現実の投資シミュレーションの結果
生活デザイン株式会社の資産運用シミュレーターによると、先進国株式ファンドに120万円を一括投資し、10年間運用した場合、以下のような結果が示されました。
- 平均リターン:346万円
- 中央値:285万円
- 平均リターンを達成できる確率:37.8%
- 63%の投資家は平均リターンに届かない
この結果からもわかるように、平均値だけを見て「30年後には1億円になる!」といった話を鵜呑みにするのは危険です。
長期投資を行っても、すべての投資家が平均リターンを得られるわけではないのです。
投資タイミングが結果を左右する
同じ商品に投資しても、購入のタイミングが異なるだけでリターンは大きく変わります。
例えば、以下の2人の投資家を考えてみましょう。
- Aさん:市場が低迷しているタイミングで投資し、10年間運用。
- Bさん:市場が好調なタイミングで投資し、10年間運用。
この場合、Aさんは市場回復の恩恵を受ける可能性が高いですが、Bさんはすでに株価が高い水準で買っているため、その後のリターンが低くなる可能性があります。
投資シミュレーションでは、こうしたタイミングの影響は考慮されていません。
元本割れのリスク
「10年以上投資すれば損をしない」とよく言われますが、これは本当でしょうか?
先進国株式ファンドに10年間投資した場合の元本割れ確率は8.1%。つまり、100人中8人は損をする可能性があるのです。
しかし、運用期間を20年に伸ばすと元本割れ確率は2.4%まで低下します。これが長期投資の効果です。
元本割れ確率を下げる2つの方法
本書では、元本割れのリスクを最小限に抑えるために、以下の2つの方法を推奨しています。
- 長期投資:
- 10年より20年、20年より30年と、投資期間を長くすることで、元本割れの確率が減少。
- 分散投資:
- 株式100%ではなく、債券と組み合わせることでリスクを軽減。
- 例えば、株式と債券を5:5の割合にすると、元本割れ確率が5%以下になる。
年代別の運用戦略
投資のアプローチは年代によって異なります。
20〜30代:
- 運用期間が長いため、株式比率を高めるのが有効。
- ただし、住宅購入や子育てなどのライフイベントを考慮し、一定の現金も確保。
40〜50代:
- 資産形成のピーク期。
- 株式と債券をバランスよく組み合わせ、リスクを抑える。
60代以上:
- 運用期間が短いため、一括投資が有利。
- リタイア後の生活資金として、流動性の高い資産も確保。
まとめ
本書では、投資シミュレーションの落とし穴を解説し、より現実的な視点で投資戦略を考える重要性を示しています。
- 平均リターンではなく、中央値を意識することが大切。
- 投資タイミングによってリターンは大きく異なる。
- 元本割れ確率を下げるには長期投資と分散投資が有効。
投資は甘くないという現実をしっかり理解し、賢い資産運用を行いましょう!
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