今回は、NVIDIAがMicrosoftを抜いて時価総額で世界トップに立ったという話の動画をご紹介します。
Microsoftといえば、私たちにも馴染み深いWindowsやOfficeなどを提供している大手IT企業ですが、そのMicrosoftを一時的に抜いたのが半導体メーカーのNVIDIAです。
「NVIDIAって名前は聞いたことあるけど、具体的に何をしている会社なのかよく分からない…」という方も多いかもしれません。
そこで今回は、NVIDIAがどんな企業なのか、その強みや歴史、そしてなぜ時価総額で世界一になれたのかを、初心者でも分かりやすく解説します。
NVIDIAとは?
NVIDIAは、アメリカ・カリフォルニア州サンタクララを拠点とする半導体メーカーです。1993年に設立され、約30年以上の歴史を持つ企業です。このNVIDIAの強みは「GPU」にあります。
GPUとは?
GPUとは、「グラフィックス・プロセッシング・ユニット(Graphics Processing Unit)」の略で、コンピュータやスマートフォンで画像や映像を滑らかに表示するために使われる部品です。
例えば、パソコンでゲームをするときに、高画質なグラフィックをスムーズに表示するために重要な役割を果たしています。NVIDIAは、特にdGPU(ディスクリートGPU)という市場で約90%という圧倒的なシェアを持つ企業です。
GPUの活用とAIの発展
もともとGPUは、グラフィック処理に使われてきましたが、近年ではその計算処理能力がAI(人工知能)開発にも役立つことがわかり、注目を集めています。
NVIDIAは2007年に「CUDA」というプラットフォームをリリースしました。このCUDAを使えば、NVIDIAのGPUを使った計算処理が非常に高速に行えるため、プログラマーやエンジニアからの支持が高いです。
特に、AI開発においては、膨大なデータを迅速に処理する能力が求められます。現在、多くのAIエンジニアがCUDAを使って開発を進めており、AI開発が進むほどNVIDIAのGPU需要はますます高まっているのです。
NVIDIAが世界一の時価総額に
2024年6月、NVIDIAの時価総額がMicrosoftを超え、一時的に世界一となりました。
そもそも時価総額とは何かというと、株価 × 発行済株式数で計算される企業の価値を示す指標です。例えば、株価が1,000円で、その会社が1,000株を発行していれば、時価総額は1,000,000円になります。
NVIDIAの株価が急上昇し、一時的に世界トップに躍り出たわけです。
トヨタとNVIDIAの比較
現在、日本の時価総額ランキングトップはトヨタ自動車で、約51兆円です。
しかし、NVIDIAの時価総額は、2024年6月18日時点で約3兆3,350億ドル(日本円にして約530兆円)に達しました。
これはトヨタの約10倍以上の価値に相当します。このような大規模な評価を受けているNVIDIAですが、株価は単に企業の人気や市場のトレンドによって変動するため、時価総額だけでは企業の本質的な価値を判断するのは難しいとも言えます。
NVIDIAの強みとは?
NVIDIAの強みは、その製品の性能だけでなく、プラットフォーム戦略にもあります。
GPUの市場では、すでに高いシェアを誇っているだけでなく、CUDAという独自の開発環境を提供していることが、他社との競争優位性を強化しています。
NVIDIAのGPUを使った開発が進むほど、競合他社がプラットフォームを開発しても乗り換えが難しくなり、結果的にNVIDIAの市場支配がさらに強固なものとなっているのです。
売上高営業利益率で見るNVIDIAの収益力
企業の収益性を見る指標の一つに「売上高営業利益率」があります。
これは、営業利益 ÷ 売上高 × 100で計算され、本業の事業でどれくらい利益を出しているかを示すものです。
一般的には10%を超えると非常に収益性が高いとされますが、NVIDIAの売上高営業利益率は2024年1月決算時点で54%にも達しています。
つまり、売上の半分以上が営業利益として計上されているのです。これだけ高い収益性を誇る企業は、他にはあまり見られません。
NVIDIAの事業内容と成長分野
NVIDIAは、自社の事業を「グラフィックス部門」「コンピューティング・ネットワーク部門」「その他」に分類しています。特に近年注目されているのは「コンピューティング・ネットワーク部門」で、2023年からはこの部門がグラフィックス部門を上回る売上と利益を記録しています。
データセンターと自動運転
NVIDIAのコンピューティング・ネットワーク部門で特に注目されるのは、データセンターと自動運転の分野です。
データセンターでは、従来のCPUが処理していた膨大なデータを、より効率的に処理するためにGPUが活用されています。また、自動運転においても、瞬時に多くのデータを処理する必要があるため、NVIDIAのGPUは非常に重要な役割を果たしています。
例えば、アウディはNVIDIAのディープラーニング技術を用いて、わずか4時間で交通標識を認識できるシステムを開発しました。
従来の技術では、このようなシステムの開発に2年かかっていたことを考えると、NVIDIAの技術がいかに優れているかが分かります。
NVIDIAの未来と新たな挑戦
NVIDIAは、さらなる成長を目指して新しい製品を発表しています。特に注目されるのは、AI開発に特化した次世代型GPU「ブラックウェル」です。
この製品により、これまで以上に迅速なデータ処理が可能となり、AI分野でのNVIDIAの優位性はますます高まるでしょう。
まとめ
NVIDIAは、GPUという半導体のリーディングカンパニーとして、AIや自動運転などの先端技術を支え続けています。
その高い技術力と収益性、そして独自のプラットフォーム戦略により、時価総額で世界トップに躍り出るなど、今後も大きな成長が期待される企業です。
市場のトレンドに左右される部分はあるものの、NVIDIAはその確固たる技術基盤と競争優位性を持って、今後も新たなビジネス領域での成功が期待されています。
ビジネスや投資において、NVIDIAのような企業を理解し、今後の動向をチェックすることが、成功する投資判断に繋がるでしょう。
知っておきたい専門用語集
- 時価総額:企業の株価に発行済み株式数を掛けた値で、企業の市場価値を示す指標
- オペレーティングシステム:パソコンやスマートフォンなどのコンピュータを動かすための基本ソフトウェア
- GPU:グラフィックスプロセッシングユニットの略。画像や映像を滑らかに表示するためのプロセッサ
- dGPU:ディスクリートGPUの略。専用のチップとして搭載される独立型GPU
- CUDA:NVIDIAのGPU専用の並列計算を行うためのプラットフォーム
- 時価総額:企業の株価と発行済株式数を掛け合わせたもので、企業の市場での評価額を示す
- 売上高営業利益率:営業利益を売上高で割って算出される指標。企業の収益性を表す
- コンピューターネットワーク部門:NVIDIAの事業区分の一つで、データセンターや自動運転関連の事業を含む
- データセンター:サーバーやネットワーク機器を設置し、運用するための施設
- CPU:中央処理装置。コンピュータの頭脳として、各種計算処理を行う
- コア:CPUやGPUにおける演算回路の部分。複雑な処理を担当する
- ピクセル:画像を構成する最小単位。拡大すると四角形に見える
- 生成AI:チャットGPTのように文章や画像、音声、動画などのコンテンツを自動生成する人工知能
- ディープラーニング:大量のデータを基に、コンピュータが学習する技術。AI分野で広く利用される
- 自動運転:車が人間の運転手なしで走行することができる技術
- ブラックウェル:NVIDIAが開発中の次世代型GPUで、AI開発に特化した製品
- マーケットメーカー:新しい技術や商品を開発し、それによって新しい市場を作り出す企業
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