新NISAを利用した資産運用が注目されています。
その中で、「楽天SCHD」と「S&P500」を比較し、3%の配当を受け取る方法と3%を取り崩す方法のどちらが有利か、気になっている方も多いでしょう。本記事では、楽天SCHDとS&P500の特性や運用方法を具体的な例を交えながら徹底解説します。
楽天SCHDとは?
楽天SCHDは、楽天証券で2023年9月に販売が開始された投資信託で、特に配当利回りの高さが注目されています。
初月から販売数が急増し、S&P500や全世界株式を抑えて楽天証券で最も売れた投資信託となりました。その魅力は年3%の配当金が得られる点で、多くの投資家がこの特徴に注目しています。
投資戦略と選定基準
SCHDは、少なくとも10年間連続で配当金を支払っている米国株の中から、時価総額や取引量が一定規模以上の企業を対象に、以下のファンダメンタルズ指標で上位100社を選定しています。
- キャッシュフロー総負債比率
- ROE(株主資本利益率)
- 配当利回り
- 過去5年間の配当成長率
これらの指標を総合的に評価し、年1回のリバランス時には上位200社までに入っている限り構成銘柄として維持されます。
SCHD(シュワブ米国配当株式ETF)は、米国の大手金融機関であるチャールズ・シュワブ社が運用する高配当株式ETFです。正式名称は「Schwab U.S. Dividend Equity ETF」で、ダウジョーンズ米国配当100種指数に連動する投資成果を目指しています。
配当利回りと増配率
- 配当利回り:約3.64%(過去30日平均)
- 増配率:
- 過去5年平均(2019〜2023年):11.4%
- 過去10年平均(2014〜2023年):10.9%
トータルリターン
2024年6月末時点でのトータルリターンは以下の通りです。
- 過去5年:11.8%(S&P 500:15.1%)
- 過去10年:10.8%(S&P 500:12.8%)
資産運用の基本:口数・価格・為替の関係
資産運用では、以下の3要素が資産額を決定します:
- 口数(保有する投資信託の数)
- 価格(1口あたりの価格)
- 為替レート(外貨建て資産の場合)
例えば、S&P500を1万口、1口あたり12ドル、1ドル150円で保有しているとします。この場合の資産総額は以下のように計算されます:
- 1万口 × 12ドル × 150円 = 1,800万円
この資産構成をもとに、S&P500の取り崩しと楽天SCHDの配当の違いを見ていきます。
取り崩し vs 配当:どちらが有利?
S&P500の3%取り崩し
S&P500では、保有口数を売却することで現金を受け取ります。以下の例で説明します:
- 初期資産:1万口 × 12ドル × 150円 = 1,800万円
- 3%取り崩し:1,800万円 × 3% = 54万円
54万円を現金化するために、300口を売却します。この場合、残りの口数は以下の通りです:
- 残りの資産:9,700口 × 12ドル × 150円 = 1,746万円
さらに翌年も同じ金額を取り崩すと、口数は減少します。ただし、S&P500は株価の上昇が期待されるため、次のようなシナリオが考えられます:
- 株価が12ドルから13ドルに上昇した場合:
- 残りの資産:9,700口 × 13ドル × 150円 = 1,891万円
株価が上昇することで、取り崩しても資産総額が増える可能性があります。
楽天SCHDの3%配当
一方、楽天SCHDでは保有口数を減らす必要がありません。初期資産を1万口、価格12ドル、1ドル150円とした場合、配当金の受け取りは以下のようになります:
- 初期資産:1,800万円
- 3%配当:1,800万円 × 3% = 54万円
配当金を受け取っても口数や価格は変わらず、見かけ上の資産額は維持されます。ただし、配当金が株価に与える影響を考慮する必要があります。
配当金の本質:株価への影響
配当金は企業の利益の一部を株主に還元する仕組みですが、以下の点に注意が必要です:
- 配当金は株価を押し下げる
配当金が支払われると、その分だけ企業の利益が減少するため、株価が下がる傾向があります。例:12ドルの株価が11ドルに下がる可能性。 - 見えにくいリスク
配当金を受け取ることで口数は減りませんが、株価の成長が抑えられるため、実質的なリターンが低下する可能性があります。
楽天SCHDとS&P500の過去パフォーマンス比較
過去のリターンを比較すると、S&P500のほうが高いパフォーマンスを示しています。以下は2019年から2024年の5年間と2014年から2024年の10年間の比較データです:
5年間のリターン
- S&P500:+103%(約2倍)
- 楽天SCHD:+80%(約1.8倍)
10年間のリターン
- S&P500:+243%(約2.43倍)
- 楽天SCHD:+196%(約1.96倍)
リスク(値動きの幅)
- 5年間:S&P500(21.2%)、楽天SCHD(19.9%)
- 10年間:S&P500(17.8%)、楽天SCHD(16.7%)
結論:どちらを選ぶべきか?
S&P500と楽天SCHDのどちらが適しているかは、投資目的や年齢、リスク許容度によって異なります。
- S&P500を選ぶべき人
- 若い世代で高いリターンを目指したい
- 株価上昇による資産成長を重視
- 楽天SCHDを選ぶべき人
- 安定した配当収入を得たい
- 50代以降でリスクを抑えたい
いずれの場合も、過去のデータは未来のリターンを保証するものではありません。リスクとリターンのバランスを考慮して選択しましょう。
まとめ
S&P500の取り崩しと楽天SCHDの配当金受け取りには、それぞれ異なる特徴とメリットがあります。重要なのは、「口数が減る」ことや「株価が下がる」ことだけにとらわれず、資産全体の成長をどう実現するかという視点です。自分の投資スタイルや目標に合わせて最適な選択をしてください。
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