本記事は、YouTube動画『原油価格は今後どうなる?供給不安と原油投資の考え方』の内容を基に構成しています。
中東情勢の緊迫化を受け、世界の原油市場が再び大きく動いています。特に注目されているのが、世界有数の原油輸送ルートであるホルムズ海峡の機能不全です。
原油価格を考える際、多くの人は世界経済や石油需要に注目します。しかし、動画では、原油相場を左右する最も重要な要因は「需要」よりも「供給」であると説明されています。
石油需要は短期間で急増しにくい一方、戦争や制裁、輸送ルートの遮断によって供給は突然減少することがあります。現在は中東の生産減少に加え、OPECプラスの増産余力、米国の原油在庫、シェールオイルの伸び悩みなど、複数の供給不安が重なっている状況です。
今後の原油価格はどのように動く可能性があるのでしょうか。原油価格が100ドルを超えるシナリオや、反対に60ドル台まで下落する条件、初心者が検討できる原油関連の投資方法まで、動画の内容を詳しく整理します。
原油相場では需要より供給が重要になる
原油価格を左右する要因には、OPECプラスの生産方針、中東情勢、中国経済、米国経済、FRBの金融政策、ドル相場などがあります。
これらのうち、動画で最も重視されているのが原油の供給です。
原油価格の基本的な仕組みは比較的単純です。市場に供給される原油が減れば価格は上がりやすくなり、供給が増えれば価格は下がりやすくなります。
もちろん、世界経済が成長すれば工場の稼働や物流が活発になり、原油需要も増加します。反対に景気後退が起きれば、企業活動や人の移動が減り、需要が落ち込む可能性があります。
ただし、世界の石油需要が短期間で突然2割、3割と増えることは通常ありません。一方、供給については、戦争や施設への攻撃、制裁、油田の故障、海峡の封鎖などによって急激に減少することがあります。
原油相場では、この供給側の変化が価格を急騰させる大きな引き金になります。そのため、原油価格を分析するときは、景気や需要だけでなく、どこでどれほどの原油が生産され、どの経路で運ばれているのかを確認する必要があります。
2004年以降に大きく変化した原油市場
動画では、原油市場の価格水準が大きく変化した時期として2004年が挙げられています。
それ以前の原油価格は、1バレル40ドルを超える場面が限られていました。しかし、2004年以降は価格が大幅に上昇し、それまでとは異なる相場環境に入りました。
背景には、中国をはじめとする新興国の成長による需要増加、産油国の供給能力に対する不安、地政学的リスク、投機資金の流入など、複数の要因がありました。
その後も原油価格は、世界金融危機、中東の政情不安、米国のシェール革命、新型コロナウイルスによる需要崩壊、ロシアによるウクライナ侵攻などに反応し、大きな変動を繰り返してきました。
この歴史からも分かるように、原油は株価チャートだけを見て取引できる単純な商品ではありません。テクニカル分析に加え、供給量、在庫、生産コスト、輸送経路、国際政治などのファンダメンタルズを理解することが重要です。
OPECプラスが増産しても供給はすぐに戻らない
OPECプラスは、石油輸出国機構であるOPECと、ロシアなどの非加盟産油国が協調する枠組みです。参加国は原油価格や世界の需給状況を見ながら、生産量を調整してきました。
原油価格が低迷した局面では、OPECプラスが減産を実施し、供給を絞ることで価格を支えようとしてきました。しかし、中東情勢の悪化によって供給不足が意識されるようになると、今度は増産が求められます。
問題は、減らした生産量をすぐに元へ戻せるとは限らないことです。
減産が長期間続くと、油田や設備の維持、人員の確保、輸送網の再稼働などに時間がかかります。さらに、戦争によって生産施設や輸送インフラが損傷すれば、単に蛇口を開くように生産を再開することはできません。
動画では、中東の主要産油国で生産量が大幅に減少している状況が紹介されています。なかでもサウジアラビアについては、かつて1日1,000万バレルを超えていた生産量が、約700万バレルまで減少したとの説明がありました。
仮に1日約300万バレルの減産が続けば、世界の需給に与える影響は小さくありません。情勢が落ち着いて生産が回復し始めても、元の水準まで戻るには相当な時間を要する可能性があります。
産油国が必要とする原油価格は生産コストより高い
原油価格を考えるうえでは、油田から石油を取り出すための生産コストだけでなく、産油国の財政が均衡する価格にも注目する必要があります。
動画によると、世界全体で見た原油の生産コストは、おおむね1バレル50ドル前後とされています。米国のシェールオイルでは、約60ドルが目安として挙げられています。
ただし、これは原油を生産して販売する事業そのものの採算を示す数字です。産油国の多くは、石油輸出による収入を国家財政の柱にしています。その収入から行政サービス、社会保障、インフラ整備、軍事費などを賄わなければなりません。
したがって、国家の歳入と歳出が均衡するために必要な原油価格は、単純な生産コストよりも高くなります。
動画では、財政均衡に必要な価格として、サウジアラビアが1バレル約91ドル、バーレーンが約127ドル、イランが約124ドルという数字が紹介されています。一方、UAEやカタールは比較的低い価格でも財政を維持しやすいと説明されています。
同じ産油国でも、必要とする原油価格は大きく異なります。財政均衡価格が高い国は、70ドルや80ドルでは十分な収入を確保できないため、より高い価格を望むことになります。
こうした事情から、OPECプラスの内部でも利害が一致するとは限りません。低い価格でも利益を確保できる国は生産量を増やしたいと考えますが、高い価格を必要とする国は減産によって相場を支えようとします。
この対立が、生産調整を難しくする要因になります。
ホルムズ海峡の機能不全が最大の供給リスク
今後の原油市場における最大のリスクとして挙げられているのが、中東情勢とホルムズ海峡の問題です。
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ狭い海峡です。サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、UAEなどで生産された原油の多くが、この海峡を通って世界へ輸送されます。
動画では、ホルムズ海峡を経由して、平常時には1日約1,400万~1,500万バレルの原油が運ばれていたと説明されています。
この規模の輸送が止まれば、世界の原油供給は大きく減少します。他の地域で増産しても、短期間ですべてを補うことは困難です。
また、完全に封鎖されなくても、船舶への攻撃リスクが高まれば、海運会社が航行を避ける可能性があります。保険料や輸送費も上昇し、原油そのものの価格だけでなく、最終的なエネルギーコストも押し上げられます。
特に日本は輸入原油の多くを中東に依存しています。そのため、ホルムズ海峡の問題は、ガソリン価格、電気料金、運送費、製品価格などを通じて、日本の家計や企業活動にも影響します。
中国の需要減少は原油価格を抑える要因になる
供給面では価格上昇の要因が目立つ一方、需要面には原油価格の上値を抑える材料もあります。その代表が中国経済の停滞です。
中国は世界最大級の原油輸入国であり、中国の景気や工業生産の動きは世界の石油需要に大きな影響を与えます。
中国経済が拡大すれば、工場の稼働、物流、自動車利用、建設などが活発になり、原油需要が増えます。一方、不動産不況や個人消費の低迷、工業生産の鈍化が続けば、石油の輸入量も減少しやすくなります。
動画では、中国の原油輸入が前年と比べて大幅に減少している状況が紹介されています。この動きが続けば、世界的な供給不足の一部を相殺し、原油価格の上昇を抑える可能性があります。
ただし、中国経済が今後回復し、原油需要が再び増加すれば状況は変わります。供給の回復が遅いまま中国の需要が戻れば、需給が一段と引き締まり、原油価格が上昇する可能性があります。
米国のシェールオイルは価格上昇を抑えられるのか
2010年代以降、世界の原油市場を大きく変えたのが米国のシェールオイルです。
シェールオイルとは、地下の岩盤層に含まれる原油を、水圧破砕や水平掘削などの技術によって取り出すものです。この技術の普及により、米国の原油生産量は大幅に増加しました。
原油価格が80ドルや90ドルを超えてくると、シェールオイル企業は利益を得やすくなります。企業が増産すれば市場への供給が増えるため、価格の上昇を抑える働きが期待されます。
これは、原油価格が上昇すると新たな供給が呼び込まれ、その供給によって価格が抑えられるという市場の調整機能です。
しかし、動画では米国のシェールオイルにも限界が見え始めていると指摘されています。米国の原油生産に占めるシェールオイルの割合は約68%まで拡大した一方、生産量の伸び率は次第に鈍化しているといいます。
有望な採掘場所には限りがあり、掘削コストや人件費、資材価格も上昇します。原油価格が上がったからといって、以前と同じ勢いで無制限に増産できるわけではありません。
米国の供給力が伸び悩むなかで中東からの供給も減少すれば、世界全体の需給は厳しい状態が続く可能性があります。
米国の原油輸出増加と国内在庫の減少
米国は世界最大級の産油国ですが、国全体で見ると大量の原油を消費する国でもあります。
米国内では、地域によって原油の種類や精製設備、輸送網の状況が異なります。そのため、ある地域では原油を輸入する一方、別の地域からは輸出するという構造が生まれます。
ホルムズ海峡を通る原油の供給が減少すれば、日本を含む米国の同盟国は、米国に追加供給を求めることになります。米国からの輸出が増えるほど、米国内に残る原油は少なくなります。
動画では、米国の原油在庫が過去10年間の下限付近まで減少していると説明されています。また、緊急時に利用する戦略石油備蓄も減少しており、供給余力が以前より小さくなっている点が指摘されました。
在庫は、供給障害が発生したときのクッションとして機能します。在庫が豊富であれば、一時的に生産や輸入が減っても市場へ原油を供給できます。しかし、在庫が少ない状態では、新たな供給障害が直ちに価格へ反映されやすくなります。
供給正常化には少なくとも数カ月かかる可能性
仮に中東情勢が落ち着き、ホルムズ海峡が再び利用できるようになったとしても、原油供給がすぐに完全回復するとは限りません。
停止した生産設備の点検、損傷した施設の修復、作業員の再配置、タンカーの確保、保険契約の見直しなど、多くの作業が必要になります。
動画では、情勢が急速に正常化した場合でも、供給を元の状態へ戻すには半年程度かかる可能性があるとの見方が示されています。
つまり、中東情勢の改善が報じられたからといって、その瞬間に供給不足が解消されるわけではありません。原油価格は実際の生産量や在庫が回復するまで、高止まりする可能性があります。
今後の原油価格を左右する3つのシナリオ
今後の原油価格については、1つの予測に絞るのではなく、複数のシナリオを想定しておく必要があります。
基本シナリオは高値圏での安定
動画で現実的な展開として示されているのが、需給が少しずつ安定し、原油価格が高値圏で落ち着くシナリオです。
OPECプラスが段階的に増産し、中東の生産量も徐々に回復する一方、世界経済や中国経済も緩やかに改善すると想定します。この場合、需要と供給の双方が増えるため、一方的な急騰や暴落にはなりにくくなります。
ただし、OPECプラスが劇的に増産できるとは限りません。供給回復には時間がかかるため、原油価格が簡単に以前の安値へ戻るとは考えにくい状況です。
強気シナリオでは100ドル超えも視野に入る
原油価格が100ドルを超える可能性も、完全には否定できません。
中東で軍事衝突が拡大し、ホルムズ海峡の機能不全が長期化すれば、供給不足への懸念が強まります。石油施設やタンカーに対するミサイル、無人機などの攻撃が続けば、実際の供給量だけでなく、輸送コストや保険料も上昇します。
さらに、ロシアとウクライナの戦闘が激化し、ロシアの石油関連施設が攻撃されたり、制裁が強化されたりすれば、別の供給不安も加わります。
そこへ中国経済の回復や世界的な景気拡大が重なれば、供給が限られるなかで需要が増加します。この場合、原油価格が再び1バレル100ドルを超える展開も想定しておく必要があります。
原油価格の急騰はインフレを再燃させます。ガソリン、電気、物流、化学製品などの価格が上がり、幅広い物価へ波及するためです。
インフレが再加速すれば、FRBが金融引き締めを強化し、利上げへ向かう可能性もあります。金利上昇は企業の資金調達コストや株式の評価に影響するため、原油市場だけでなく株式市場全体の下落要因になりかねません。
弱気シナリオでは60ドル台を試す可能性
原油価格が大きく下落するには、複数の条件が重なる必要があります。
例えば、ホルムズ海峡の問題が解決し、中東からの原油輸送が正常化するとします。同時にOPECプラスや米国が増産し、世界の供給量が需要を上回れば、価格には下落圧力がかかります。
さらにFRBの利上げなどをきっかけとして米国経済が後退し、中国経済も停滞すれば、世界の原油需要が減少します。
世界的な景気後退によって需要が急減した場合、原油価格が60ドルを試し、状況によっては一時的に下回る可能性もあります。
ただし、動画では、現在の供給不安を踏まえると、この弱気シナリオの可能性は相対的に低いと評価されています。
長期的な原油需要をどう考えるか
原油の長期見通しを考える際には、電気自動車の普及や脱炭素政策の影響を無視できません。
EVが普及すれば、自動車用ガソリンの需要は減少します。再生可能エネルギーや蓄電池の導入が進めば、化石燃料への依存度も徐々に低下する可能性があります。
一方、航空機、船舶、石油化学製品などでは、依然として石油が重要な役割を担っています。プラスチック、化学繊維、塗料、医薬品など、原油は燃料以外の幅広い製品にも使われています。
そのため、EVが増えただけで世界の原油需要が直ちに減少へ転じるとは限りません。
長期的な需要見通しについては、機関によって意見が分かれています。動画では、産油国側のOPECが2050年に向けて石油需要の増加が続くと予測する一方、消費国側の国際機関はエネルギー転換の進展を想定し、より慎重な見通しを示していると説明されています。
ここで重要なのは、予測を発表する機関の立場です。産油国は将来も需要が増えるという見通しを示しやすく、エネルギー転換を重視する機関は需要の伸びを低く見積もる傾向があります。
どちらか一方を絶対視するのではなく、それぞれの前提や利害関係を理解したうえで予測を見る必要があります。
原油高を想定した投資方法
原油価格が下がりにくいと考える場合、エネルギー関連資産をポートフォリオに取り入れる方法があります。
ただし、原油そのものに投資する方法と、石油会社へ投資する方法では、値動きやリスクが異なります。
エネルギー関連ETFに分散投資する
初心者にとって比較的取り組みやすい方法は、エネルギー関連企業をまとめて保有するETFです。
米国のエネルギーセクターETFとしては、動画内でXLEが例に挙げられています。こうしたETFには、エクソンモービルやシェブロンなど、複数の大手エネルギー企業が組み入れられています。
ETFを利用するメリットは、1つの企業に集中するリスクを抑えられることです。特定企業の油田事故や経営問題が発生しても、複数銘柄へ分散されていれば影響をある程度軽減できます。
一方、エネルギー株ETFの価格は、原油価格と完全には連動しません。企業の業績、配当政策、設備投資、為替、株式市場全体の動きなどにも左右されます。
そのため、原油価格そのものへの投資ではなく、原油高によって恩恵を受けやすい企業群への投資と考える必要があります。
石油メジャーの個別株を保有する
エクソンモービル、シェブロン、シェルなどの石油メジャーへ直接投資する方法もあります。
大手石油会社は、原油の採掘だけでなく、精製、輸送、販売、化学事業などを幅広く展開しています。そのため、原油価格の変動に対して一定の耐久力があります。
また、配当や自社株買いを積極的に行う企業も多く、インカム収入を重視する投資家にとって検討しやすい分野です。
原油価格が70~80ドル台で推移すれば、大手石油会社には高いキャッシュフローが生まれる可能性があります。原油高やインフレに強い資産として、ポートフォリオの一部に加える考え方もあります。
ただし、個別株には企業固有のリスクがあります。油田開発の失敗、事故、訴訟、環境規制、経営判断などによって、同じ原油価格でも企業ごとの株価に差が出ます。
パイプライン企業や石油サービス会社へ投資する
原油関連の投資先は、石油を生産する会社だけではありません。
パイプライン企業は、原油や天然ガスを輸送し、その利用料を得る事業を展開しています。輸送量や契約条件によって収益が決まるため、原油価格そのものよりも安定した利益を得られる場合があります。
高配当を実施している企業も多く、収益や配当の安定性を重視する投資家にとって選択肢になります。
また、原油価格が上昇して石油会社の設備投資が増えれば、掘削や油田管理を支援する石油サービス会社にも追い風となります。タンカーなどの海運関連企業も、輸送需要や運賃の上昇によって恩恵を受ける可能性があります。
原油先物・CFD・原油ETFは上級者向け
原油価格の値動きを直接利益につなげたい場合、原油先物、CFD、原油連動型ETFなどを利用する方法があります。
これらの商品は、原油価格の上昇や下落を比較的直接的に取引できます。値動きが大きいため、多くの取引機会が生まれることも事実です。
しかし、利益を得る機会が多い一方、損失を出す可能性も高くなります。特にレバレッジを利用する先物やCFDでは、短期間で大きな損失が発生する危険があります。
原油市場には、政治的なニュースによって価格が急騰・急落する特徴があります。相場が高すぎると判断して安易に空売りすると、供給障害のニュースによってさらに価格が上昇し、損失が急拡大することがあります。
動画では、上昇局面で「高すぎるから売る」という逆張りは避け、基本的にはトレンドに沿って取引すべきだと説明されています。
また、原油先物や先物連動型ETFには、限月を乗り換える際のロールコストがあります。長期保有すると、原油価格が予想どおりに動いても、ロールコストによって期待した利益を得られない場合があります。
そのため、原油価格に直接連動する商品は短期取引向きであり、初心者の長期的な資産形成には適していない可能性があります。
初心者はサテライト運用として少額を組み入れる
資産形成を目的とする初心者にとって、値動きの激しい原油へ資産の大部分を投じることは適切とはいえません。
原油価格に連動する先物型ETFを長期間保有する方法も、ロールコストや価格変動の大きさを考えると、初心者には推奨しにくい投資です。
一方、インフレ対策としてエネルギー関連資産を少額保有する考え方はあります。
例えば、世界のインフラ、資源、コモディティなどへ分散投資する投資信託やETFを利用すれば、原油だけへ集中するリスクを軽減できます。高配当の石油メジャーやエネルギーETFを、ポートフォリオの一部に組み入れる方法も考えられます。
この場合、株式や投資信託を中心とするコア資産とは別に、補助的なサテライト資産として保有するのが現実的です。
原油価格が急騰すれば、エネルギー関連資産が上昇し、生活費やほかの投資資産に対するインフレの悪影響を一部補える可能性があります。
原油安で恩恵を受ける業種もある
原油価格が下落すると、石油会社にとっては逆風になりますが、燃料を大量に使用する企業には追い風となります。
代表的なのが航空会社や陸運・海運などの輸送関連企業です。燃料費はこれらの企業にとって大きなコストであり、原油価格が下がれば利益率が改善する可能性があります。
世界景気が後退し、供給過剰と需要減少が同時に起きる弱気シナリオでは、エネルギー株よりも燃料コスト低下の恩恵を受ける企業が有利になる場合があります。
ただし、景気後退によって旅客や物流の需要そのものが減れば、燃料安の効果が相殺されることもあります。単純に「原油安だから航空株が上がる」と判断するのではなく、需要の動向も併せて確認することが重要です。
原油価格は株式市場と金融政策にも影響する
原油市場は、エネルギー関連企業だけの問題ではありません。
原油価格が上昇すれば、ガソリン、電気、輸送、包装、化学製品など、幅広い分野のコストが高まります。企業が増加したコストを販売価格へ転嫁すれば、消費者物価が上昇します。
インフレが再燃すると、中央銀行は金利を高く維持したり、追加利上げを検討したりする可能性があります。
金利上昇は、企業の借入コストを増やし、将来利益の現在価値を下げます。特に高い成長期待を織り込んでいるハイテク株や、借入の多い企業にとっては逆風になりやすい要因です。
つまり、ホルムズ海峡で起きた供給問題が、原油価格、物価、金融政策、金利、株価という経路を通じて、世界の金融市場全体に波及する可能性があります。
投資家はエネルギー株を保有していなくても、原油相場を確認しておく必要があります。
まとめ
動画では、原油価格を考えるうえで最も重要なのは供給側の状況であると説明されています。
石油需要は短期間で急変しにくい一方、戦争、制裁、施設への攻撃、ホルムズ海峡の機能不全などによって、供給は突然減少します。
現在は中東の生産減少、OPECプラスの増産余力、米国の原油在庫減少、シェールオイル生産の伸び悩みなど、原油価格を下支えする材料が複数あります。情勢が正常化しても、供給が元へ戻るまでには数カ月かかる可能性があります。
中国経済の停滞は価格上昇を抑える要因ですが、中国の需要が回復し、中東やロシアからの供給不安が続けば、原油価格が100ドルを超えるシナリオも念頭に置く必要があります。
一方、ホルムズ海峡の正常化、産油国の増産、世界的な景気後退が重なれば、60ドル台まで下落する可能性もあります。ただし、動画では現時点でこの可能性は比較的低いとみています。
初心者が原油高やインフレに備える場合、原油先物やCFDへ直接投資するより、エネルギー関連ETFや大手石油会社、高配当のパイプライン企業などを少額保有する方法が現実的です。
原油は値動きが激しく、専門知識を必要とする市場です。単純に「高いから売る」「下がったから買う」と考えるのではなく、供給量、在庫、中東情勢、中国経済、米国の金融政策を総合的に確認することが重要です。
原油価格は、将来のインフレや金融政策を左右する重要な指標でもあります。原油へ直接投資しない人にとっても、ホルムズ海峡をはじめとする供給網の動向を継続的に観察する必要があるでしょう。


コメント