本記事は、YouTube動画『他人とどこまで投資や資産の話をするのか』の内容を基に構成しています。
友人や親族と投資の話になったとき、「NISAをやっている」「S&P500を買っている」といった話をすることは珍しくありません。
しかし、そこから「いくら投資しているの?」「資産はいくらあるの?」「どれくらい儲かったの?」と話が進んでいくと、会話の性質は少しずつ変わってきます。
投資についての情報交換だったはずが、いつの間にかお互いの資産額を比較する話になってしまうことがあるからです。
一方で、「トラブルになる可能性があるなら、お金の話は誰ともしない方がいい」と考えるのも極端です。投資の考え方や失敗談を共有することには大きなメリットがあります。
大切なのは、お金について「話すか、話さないか」ではありません。
誰と、何を、何のために話すのか。
今回は、友人や親族との投資・資産の話について、どこまで話すのが適切なのかを考えていきます。
資産額を話した瞬間に「比較」が始まる
まず考えておきたいのが、「投資の話」と「資産の話」は同じではないということです。
例えば、
「NISAをやっている」
「インデックスファンドを中心に買っている」
「長期で市場全体の成長に乗りたいと考えている」
といった会話は、投資方法や考え方についての情報交換です。
誰かがS&P500を買っていると聞けば、それをきっかけに自分でもS&P500について調べることができます。
ところが、
「いくら持っているの?」
という質問になった瞬間、少し性質が変わります。
ここから先は投資方法ではなく、個人の資産情報だからです。
例えば同じS&P500に投資している人でも、300万円を投資している人もいれば、3000万円、1億円を投資している人もいます。
しかし、その金額だけを聞いても、その人の投資方法をそのまま再現できるわけではありません。
年齢、収入、家族構成、生活費、住宅ローン、将来お金を使う時期など、それぞれの状況がまったく違うためです。
1億円の資産を持つ人が株式100%で運用しているからといって、自分も株式100%にすればよいとは限りません。
投資方法には参考になる情報がありますが、資産額そのものから得られる情報は意外と少ないのです。
そして具体的な金額が出ると、人間はどうしても比較してしまいます。
「自分より多い」
「思ったより持っている」
「意外と少ない」
「うらやましい」
「自慢しているのではないか」
このような感情が入り込みます。
動画ではこれを、ドラゴンボールの「スカウター」に例えています。
それまではNISAやインデックス投資について話していたのに、資産額が出た瞬間、「誰の戦闘力が高いのか」という話に変わってしまうわけです。
他人の5000万円を知ると、自分の1000万円が小さく見える
例えば、何年もかけて資産1000万円を作ったとします。
初めて1000万円を超えた瞬間は、かなりうれしいはずです。
ところが翌日、友人から、
「俺はもう5000万円あるよ」
と言われたとします。
すると、それまで誇らしかった1000万円が、急に小さく感じられることがあります。
しかし、よく考えてみると不思議です。
自分の1000万円は1円も減っていません。
昨日も1000万円、今日も1000万円です。
変わったのは、自分の資産ではありません。
他人の数字を知ったことで、自分の満足度が変わっただけです。
逆のケースもあります。
自分が5000万円を持っていて、相手が500万円だったとします。
聞かれたので正直に答えただけで、自慢するつもりはまったくなかったとしても、相手が投資で損をした直後だったり、仕事や住宅ローン、教育費などで苦労していたりすれば、「自慢された」と受け取られる可能性があります。
発言した側の意図と、受け取る側の感情は必ずしも一致しません。
だからこそ、具体的な資産額については、「相手が本当に知る必要がある数字なのか」を一度考えた方がよいでしょう。
「自分は大丈夫」と証明するために資産額を使わない
動画では、発信者自身が親族との会話で、危うく自分の資産額を話しそうになった経験についても語っています。
その理由は、自慢したかったからではありません。
むしろ、「自分は大丈夫だと理解してほしかったから」でした。
長年勤めた金融機関を辞め、自分の仕事をしながらサイドFIREに近い生活を始めた場合、周囲から見れば、
「せっかく安定した会社にいたのに、なぜ辞めたの?」
「この先、本当に大丈夫なの?」
と思われることもあります。
しかし本人からすれば、会社員時代から何年も投資を続け、自分の仕事を作り、家族とも話し合い、将来の計画を立てたうえでの決断です。
そこで、
「資産はこれだけある」
「収入もこれくらいある」
「仕事もこれだけできている」
とすべて説明すれば、「それなら大丈夫だね」と納得してもらえるかもしれません。
しかし、相手から「大丈夫」と認定してもらったところで、資産が増えるわけでも人生が変わるわけでもありません。
得られるのは、他人からの承認だけです。
そして他人を完全に納得させようとすれば、終わりがありません。
会社員を続ければ「会社員だけで大丈夫なの?」と言われる。
家を買えば「こんな高い時期に買うの?」と言われる。
賃貸なら「ずっと家賃を払い続けるの?」と言われる。
投資をすれば「株なんて怖くない?」と言われ、投資をしなければ「インフレなのに現金だけで大丈夫?」と言われる。
結局、どの選択をしても何かを言う人はいます。
そのたびに自分の判断が正しかった理由を説明していてはきりがありません。
一度話した資産情報は回収できない
もう1つ注意したいのが、個人情報としての資産額です。
もちろん、友人に資産額を話したからといって、必ずトラブルになるわけではありません。
ほとんどの場合、何も起こらないでしょう。
ただし、一度外に出た情報を完全に回収することはできません。
例えば、
「株で500万円利益が出た」
という話だったものが、人から人へ伝わるうちに、
「株でかなり儲かったらしい」
「株で成功しているらしい」
「あの人は株で何億円も持っているらしい」
と変化してしまう可能性があります。
悪意がなくても、噂は広がります。
「すごいらしいよ」という単なる雑談から広がることもあります。
動画では、1人が2人、その2人がさらに2人ずつに話していくような形になれば、最初は1人にしか話していなくても多くの人へ情報が伝わる可能性があると説明しています。
SNS型投資詐欺が増えている時代だからこそ情報管理も重要
動画では、SNS型投資詐欺についても触れられています。
2025年のSNS型投資詐欺について、動画内では被害件数が9523件、被害額が1288億円、単純平均すると1件あたり約1350万円という数字が紹介されています。
もちろん、これは「友人に資産額を話すと投資詐欺に遭う」という因果関係を示すものではありません。
重要なのは、SNSを利用した投資詐欺そのものが大きな被害につながっているという事実です。
資産情報だけでなく、
証券口座の画面、配当金、金融機関からの郵便物、住宅の外観、窓から見える景色、旅行先、普段よく利用する店なども、それぞれ単体では大した情報に見えないかもしれません。
しかし複数の情報を組み合わせると、その人の資産状況や生活圏がある程度推測できることがあります。
そのため、資産情報とリアルな生活情報を必要以上に組み合わせて公開しないことも重要です。
「お金の話は一切しない」も正解ではない
ここまで読むと、
「それならお金の話は誰ともしない方がいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし動画では、それも極端だと指摘しています。
「資産額を言わないこと」と「お金について話さないこと」は別です。
日本では昔から、お金の話を人前ですることに抵抗を持つ人が少なくありません。
給料、貯金、投資などについて積極的に話さない家庭もあります。
しかし、お金の話そのものを完全に避けてしまえば、金融について学ぶ機会まで失われてしまいます。
動画で紹介されたJ-FLECの2025年金融リテラシー調査では、18歳から79歳までの3万人を対象とした調査で、学校や大学の授業、勤務先の研修・セミナーなどで金融経済教育を受けたと認識している人は8.7%だったとしています。
つまり、金融教育を受けたと認識している人は1割にも届いていません。
さらに動画では、2021年に大学生を対象として行われた研究についても紹介されています。
そこでは、お金の話をすることに対する心理的な抵抗感が強い学生ほど、相対的に金融リテラシーが低い傾向が確認されたとされています。
家庭でもお金の話をしない。
友達とも話さない。
学校や職場でも金融について学ぶ機会がない。
その状態で20代になり、初めて投資に興味を持ったとします。
最初にお金について教えてくれる人が、信頼できる先輩や良い本なら問題ありません。
しかし、LINEで突然つながった謎の投資家や、投資グループに誘導してくる人物だったらどうでしょうか。
「怪しい投資話にだまされたくないから誰とも投資の話をしない」という考え方が、逆に正しい金融知識に触れる機会まで減らしてしまう可能性があります。
良い投資仲間とは「いくら儲かったか」ではなく「なぜ」を話す
投資仲間との会話には大きなメリットがあります。
動画では、発信者が会社員時代、企業型DCについて同僚から教えてもらった経験が紹介されています。
「若いうちで金額もまだ大きくないなら、長期で株式を中心に持つ考え方もある」
「外国株式のリスクとは、必ずしもお金がなくなることを意味するわけではない」
こうした考え方を教えてもらったことが、自分で投資について調べるきっかけになったといいます。
ここで重要なのは、特定の商品を強く勧められたわけでも、同僚の総資産額を聞いたわけでもないことです。
投資の考え方を1つ共有してもらっただけです。
こうした会話には大きな価値があります。
例えば、
友人が手数料の高い商品を買って後悔した話を聞けば、自分は商品の手数料を確認するようになります。
暴落で株を全部売ってしまい、その後株価が回復したという話を聞けば、自分は暴落時のルールを事前に決めようと考えられます。
SNSの怪しい投資話に引っかかった人の話を聞けば、その手口を知り、自分は避けることができます。
すべての失敗を自分自身で経験する必要はありません。
他人の失敗から学ぶこともできます。
家族とはむしろお金について話した方がいい
友人や知人には資産額を必要以上に公開しなくても、家族については事情が異なります。
特に配偶者など家計を共にする人とは、お金について話しておく必要があります。
例えば、
家計、保険、住宅ローン、税金、NISA、教育費、老後資金、貯金、投資などです。
子どもとも、お小遣いや貯金、働くこと、欲しいものを買うか我慢するかといった身近なお金の話はできます。
毎日株価チャートを見せる必要はありませんが、「お金の話は汚いから一切しない」とする必要もありません。
大切なのは、必要な人に、必要な情報を伝えることです。
他人の儲け話で自分の投資スタイルを壊さない
投資仲間との会話にはメリットがありますが、もう1つ注意したい問題があります。
それが、他人の投資成績との比較です。
例えば、自分が1000万円をインデックス投資で運用し、1年間で10%上昇したとします。
利益は100万円です。
100万円という利益は決して小さくありません。
しかし友人から、
「今年は個別株で50%増えた」
と聞けばどうでしょうか。
同じ1000万円なら利益は500万円です。
その瞬間、自分の100万円が小さく感じられるかもしれません。
しかし、自分の運用成績は何も変わっていません。
変わったのは比較対象だけです。
投資方針を変える「2年間の寄り道」が大きな差になることも
動画では、1000万円を年率7%で20年間運用する単純なシミュレーションを紹介しています。
1000万円を年7%で20年間運用すると、約3870万円になります。
一方、友人の高い運用成績を聞いて個別株へ乗り換え、1年目に50%上昇したとします。
1000万円は1500万円になります。
しかし翌年40%下落すると、1500万円は900万円になります。
そこでインデックス投資へ戻し、残り18年間を年7%で運用すると、最終的な金額は約3040万円です。
差は約830万円になります。
もちろん、このシミュレーションは個別株投資の平均的な結果を示すものではありません。
個別株へ投資して、そのまま大きく資産を増やせるケースもあります。
重要なのは、「個別株かインデックスか」という話ではなく、他人の成績を見て自分の投資方針をコロコロ変えることのリスクです。
投資ではスーパーショットより「大きなミスをしない」ことが重要
ここで動画では、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』が紹介されています。
もともとの考え方はテニスから来ています。
プロのテニスでは、素晴らしいショットを決めることによってポイントが生まれます。
一方、アマチュアのテニスでは、ネットにかけたりアウトにしたりといったミスによってポイントを失うケースが多くなります。
そのため、アマチュアが勝つにはスーパーショットを連発するより、大きなミスを減らすことが重要になります。
投資にも似た部分があります。
毎年もっとも値上がりする商品を当て続ける必要はありません。
それよりも、
高値で飛び乗って安値で投げ売りする。
レバレッジをかけすぎる。
1つの商品に集中しすぎる。
手数料を確認しない。
生活資金まで投資する。
こうした大きなミスを避けることの方が重要です。
そして、「他人の爆益を追いかけて自分の投資ルールを壊す」ことも、大きなミスの1つになり得ます。
良い投資仲間は「利益額」より「理由」を聞く
良い投資仲間との会話で重要なのは、「今年いくら儲かったの?」だけを聞くことではありません。
むしろ、
なぜその商品を買ったのか。
どのような条件になったら売るのか。
最大のリスクは何だと考えているのか。
その情報はどこから得たのか。
どのような状況になれば自分の判断が間違いだったと認めるのか。
こうした「なぜ」の部分を聞く方が、自分の投資にも応用できます。
一方、
「誰が一番お金を持っているのか」
「誰が一番儲かったのか」
「誰が一番早く1億円に到達したのか」
という話になってしまうと、投資仲間がいつの間にか競争相手になってしまいます。
投資の話はしても、順位表にはしない。
この距離感が重要です。
結局大切なのは「誰と、何を、何のために話すのか」
では、投資や資産についてどこまで話せばよいのでしょうか。
動画では、次のような考え方に整理されています。
何のために話すのかを考える
まず、その情報を伝える目的を考えます。
「自分をすごいと思ってほしい」
「自分が正しいと認めてほしい」
「相手より上だと確認したい」
もしこうした気持ちが中心になっているのであれば、具体的な資産額を話す前に一度考えた方がよいでしょう。
結果よりも考え方や失敗を話す
「資産1億円」という数字だけを聞いても、その方法を再現することはできません。
年収5000万円だったのかもしれません。
20年間積み立て続けたのかもしれません。
相続したのかもしれません。
会社を売却したのかもしれません。
それより、
なぜその投資を選んだのか。
何に失敗したのか。
暴落時にどう行動したのか。
家計をどのように管理してきたのか。
こうした話の方が再現性があります。
必要な人には正確な数字を伝える
一方、資産額を正確に共有した方がよい相手もいます。
配偶者や家計を共にする家族、税理士、弁護士、相続に関わる人などです。
自分に何かあったとき、家族が銀行口座や証券会社、保険の存在を何も知らなければ困ります。
秘密主義になる必要はありません。
重要なのは、情報を渡す相手を選ぶことです。
最後の判断は本人に残す
投資の話をするときは、良い面だけでなく悪い面やリスクも伝えることが大切です。
しかし最後に投資するかどうかを決めるのは本人です。
友達が言ったから、有名人が言ったから、投資に詳しい人が言ったからではなく、最後は自分で判断する必要があります。
お金を「人生の成績表」にしない
動画の最後で、特に印象的なのが「自分の人生を資産額で証明しない」という考え方です。
「いつか成功して見返してやる」
という気持ちが、努力するエネルギーになることもあります。
しかし、
「資産1億円になれば、あの人は自分を認めるだろうか」
「2億円になれば、さすがに認めてくれるだろう」
と考え続けていたら、自分の人生なのに、ずっと他人が審査員になってしまいます。
お金は数字なので比較が簡単です。
年収、資産額、家、車など、あらゆるものを数字や価格で比較できます。
だからこそ、お金を人生そのものの物差しとして使ってしまいがちです。
しかし、本来のお金は人生の成績表ではなく、生活のための道具です。
自分や家族の生活を守る。
やりたい仕事をする。
嫌なことから離れる。
自由な時間を作る。
病気やもしもの事態に備える。
子どもの選択肢を増やす。
老後を安心して暮らす。
お金は、こうした目的を実現するための手段です。
誰かに「自分の人生は正しかったでしょう」と見せるための成績表ではありません。
まとめ
友人や親族と投資について話すこと自体は、決して悪いことではありません。
考え方を共有する。
失敗談を共有する。
怪しい投資話について情報交換する。
他人の経験から学ぶ。
こうした会話には大きな価値があります。
一方で、具体的な資産額は、相手の投資判断に必ずしも必要な情報ではありません。
むしろ他人との比較や噂、不必要な勧誘などにつながる可能性もあります。
そのため、
考え方は話す。
経験も話す。
失敗も話す。
しかし、具体的な資産額は必要以上に話さない。
そして他人に自分の投資方法を押し付けず、自分自身も他人の「爆益」に振り回されない。
最終的に重要なのは、「お金の話をするか、しないか」という単純な二択ではありません。
誰と、何を、何のために話すのか。
そして何より、自分の人生が正しいことを証明するために資産額を使わないことです。
説得する必要も、証明する必要も、誰かを見返す必要もありません。
お金は他人と競争するための戦闘力ではなく、自分や家族の人生をより良くするための道具として考えることが大切ではないでしょうか。


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