本記事は、YouTube動画『NTTが大化け?光半導体がやばい』の内容を基に構成しています。
NTT株はなぜ注目されているのか
NTTがいま、改めて投資家の間で注目されています。
その理由は、単なる通信会社としてのNTTではなく、AI時代のインフラを支える可能性を持つ企業として見直され始めているからです。
現在、世界中でAIの利用が急速に拡大しています。ChatGPTのような生成AI、大規模言語モデル、画像生成AI、企業向けAIシステムなどを動かすには、巨大なデータセンターが必要です。
しかし、そのデータセンターでは大きな問題が起きています。
それが、電力消費と発熱の限界です。
AIを動かすためには、膨大な数のGPUや半導体チップを同時に動かす必要があります。しかし、チップ同士を電気配線でつなぐ現在の仕組みでは、電力を大量に消費し、熱も発生します。
このままAIの処理量が増え続ければ、データセンターの電力消費はさらに膨らみ、設備の維持コストも上がっていきます。
そこで注目されているのが、NTTが進めている「光電融合」や「IOWN」と呼ばれる技術です。
これは、これまで電気で行っていたデータ伝送を、できる限り光に置き換えるという考え方です。光を使えば、電気よりも少ない消費電力で高速通信ができ、発熱も抑えられる可能性があります。
つまりNTTは、AI時代のデータセンターが直面する物理的な限界を突破する技術を持つ企業の1つとして注目されているのです。
NTTの業績は悪くないが、株価は重い
一方で、NTTの株価は大きく上昇しているわけではありません。むしろ、年初来安値圏にとどまる場面もあり、市場から強く評価されているとは言いにくい状況です。
その背景には、業績面と需給面の両方に理由があります。
2026年3月期の決算では、NTTの営業収益は14兆491億円となり、過去最高を更新しました。売上規模だけを見れば、非常に大きな企業であり、安定感もあります。
しかし、投資家が注目したのは売上ではなく利益です。
営業利益は1兆762億円、当期純利益は1兆37億円となりました。そして2027年3月期の会社予想では、営業収益は15兆600億円へ伸びる見込みである一方、当期純利益は9800億円と、前期比で約5.5%減る見通しが示されています。
1株当たり利益の予想は12.10円です。配当は5.4円となり、16期連続の増配が見込まれています。
配当だけを見れば魅力的に感じる投資家もいるでしょう。しかし市場が気にしているのは、NTTの利益成長が鈍化しているという点です。
さらに、中期経営目標でも市場に冷たい印象を与えました。
NTTは、もともと2027年度に達成するとしていたEBITDA4兆円という目標を、2030年度へ3年間後ろ倒ししました。
これは、既存の通信事業だけでは成長が鈍化していること、そしてAIインフラや次世代通信技術への投資に多額の資金が必要になることを示しています。
2030年度までに合計12兆円規模の投資が必要になるとされており、短期的に見ればこれは利益を圧迫する要因です。
投資家から見ると、売上は伸びているものの利益は伸びにくく、さらに今後も巨額投資が必要になるという構図です。このため、NTT株には重さが残っているのです。
信用買い残と政府保有株という需給の重し
NTT株が上がりにくい理由は、業績だけではありません。
もう1つ重要なのが、需給です。
2026年6月時点で、NTTの信用買い残は2億522万9000株に達しており、前の週からさらに655万6000株増えています。一方で、信用売り残は591万8900株にとどまっています。
この結果、信用倍率は約43倍という非常に偏った水準になっています。
信用買い残とは、借金をして株を買っている投資家の未決済分です。これが多いということは、将来的に売り圧力になる株が大量に積み上がっていることを意味します。
株価が少し上がると、含み損を抱えていた投資家が「やれやれ売り」を出す可能性があります。また、株価が下がれば損失拡大を避けるために売らざるを得ない投資家も出てきます。
つまり、上にも下にも売り圧力が出やすい状態です。
2023年にNTTは株式を25分割しました。これによって個人投資家が非常に買いやすくなり、株価が下がるたびに買い増しする人も増えたと見られます。
しかし、その結果として信用買い残が膨らみ、株価の上値を重くしている面があります。
さらに、政府保有株の問題もあります。
日本政府はNTT法に基づき、NTT株を約34.25%保有しています。時価では約4.7兆円規模とされ、防衛費の財源として売却が議論されてきました。
もちろん、一気に売却すれば市場に大きな影響が出るため、段階的に売却される可能性が高いと考えられます。
ただし、投資家から見れば「将来的に政府から大量の売りが出るかもしれない」という警戒感は残ります。
このように、NTT株には利益成長の鈍化、信用買い残の多さ、政府保有株の売却リスクという3つの重しがかかっています。
AIデータセンターが直面する電力と発熱の限界
ここからが、NTTの将来性に関わる重要な部分です。
世界のAI業界は、いま大きな物理的な壁に直面しています。
AIを高度化するには、膨大なデータを処理する必要があります。世界のデータ生成量は急速に増えており、2025年には275ゼタバイト規模に達するという予測もあります。
このデータを処理するために、世界中でデータセンターの建設が進んでいます。
しかし、データセンターは大量の電力を消費します。2030年までに、データセンターの電力消費量が世界の電力消費全体の3%から5%を占めるという見方もあります。
特に生成AIでは、1万個を超えるGPUを同時につないで巨大な計算を行うことがあります。
このとき問題になるのは、チップそのものの性能だけではありません。チップとチップをつなぐ配線がボトルネックになります。
半導体はこれまで、回路を微細化することで性能を高めてきました。しかし、配線が極限まで細くなると、電気が漏れたり、熱がこもったりする問題が大きくなります。
発熱を抑えるために、チップの一部をあえて使わない「ダークシリコン」と呼ばれる現象も起きています。
つまり、計算能力そのものは進化しているのに、それをつなぐ電気配線が限界に近づいているのです。
NTTの光電融合技術とは何か
この問題を解決する技術として注目されているのが、NTTの光電融合です。
光電融合とは、これまで電気で行っていたデータ伝送を、できる限り光に置き換える技術です。
光は電気と比べて、長距離を伝送しても信号が劣化しにくく、発熱も少ないという特徴があります。そのため、データセンター内の通信を光に置き換えることで、消費電力を大きく削減できる可能性があります。
NTTはこの技術を段階的に実用化しようとしています。
まずはデータセンター同士を光でつなぐ段階です。次に、サーバー内のボードとボードを光でつなぐ段階へ進みます。その後、チップの近くまで光を引き込み、最終的にはチップ内部の配線そのものを光に置き換える構想です。
現在、特に重要な段階にあるのが、ボード間をつなぐ光電融合スイッチです。
NTTは、2026年第4四半期に向けて、光電融合スイッチの商用サンプル提供や製品化が見込まれる段階にあるとしています。
このスイッチは、102.4Tbpsという巨大な通信容量を実現しながら、従来の電気スイッチと比べて消費電力を約50%削減できるとされています。
さらに注目すべきは、故障時に基板ごと廃棄するのではなく、光を出す部品だけを交換できる構造になっている点です。
データセンター運営企業にとって、修理や交換のコストは非常に重要です。NTTの技術は、単に高性能なだけでなく、現場の運用コストにも配慮された設計になっているのです。
NVIDIA依存を避けたいクラウド企業にとっての選択肢
現在、AI半導体の世界ではNVIDIAが圧倒的な存在感を持っています。
NVIDIAはGPUだけでなく、チップ同士を高速につなぐ通信技術も持っており、計算から通信までを自社で固める垂直統合型の戦略を取っています。
一方で、Microsoft、Amazon、Google、Metaといった巨大クラウド企業は、1社にすべてを依存することへの警戒感を持っています。
価格決定力を特定企業に握られたくないため、開かれた標準規格でデータセンターを構築したいという思惑があります。
そこで注目されるのが、NTTが主導するIOWN Global Forumです。
IOWN Global Forumには160社以上が参加しており、光を活用した次世代通信基盤の標準化を進めています。
また、NVIDIAの通信技術における有力な競合企業であるBroadcomとNTTが協力関係を築いている点も注目されます。
これを単純に「反NVIDIA同盟」と断定するのは正確ではありません。
しかし、NVIDIAへの依存を避けたいハイパースケーラーにとって、NTTの光技術を活用した開かれた通信基盤が選択肢になる可能性はあります。
もし将来、巨大クラウド企業の一部がNTTの光電融合技術を採用するようになれば、NTTの評価は大きく変わる可能性があります。
ただし、これは現時点ではあくまで仮説です。確定した大型採用が発表されているわけではないため、期待だけで判断するのは危険です。
NTTの本当の強みは素材と物理の技術にある
NTTの光電融合技術は、単に通信速度が速くなるという話ではありません。
本当の強みは、もっと地味で深い素材技術や物理技術にあります。
光を発生させたり、電気信号を光信号に変換したりするには、シリコンだけでは不十分です。特殊な化合物半導体を組み合わせる必要があります。
NTTのデバイスイノベーションセンターは、100GHzを超える直接変調レーザーの開発に成功しています。
その鍵となるのが、化合物半導体を約250nmという非常に薄い膜にし、熱をよく逃がすダイヤモンド基板の上に貼り付ける技術です。
これによって、光を小さな範囲に強く閉じ込め、少ない電力で高速に制御できるようになります。
さらに、放熱性能が高いため、温度が上がりやすいサーバー内部でも安定して動作しやすくなります。
実証実験では、256Gbps級の信号生成にも成功しているとされています。
このような技術は、短期間で簡単に真似できるものではありません。長年の基礎研究の積み重ねがあって初めて実現できる領域です。
また、光を伝える基板素材や、光を電気に変換する受光器などの分野でも、日本企業が重要な役割を担う可能性があります。
ただし、これらの企業がNTTのIOWNサプライチェーンとして大きな恩恵を受けるかどうかは、現時点では投資仮説の段階です。確定した事実として考えるべきではありません。
800億円規模のIOWN・AIファンドが意味すること
優れた技術があっても、研究室の中だけで終わってしまえば事業にはなりません。
実際に量産し、世界中のデータセンターで使われるためには、資金、パートナー、サプライチェーン、ソフトウェア、標準化が必要です。
2026年6月10日、NTTは総額約800億円規模となるIOWN・AIファンドの設立を発表しました。
このファンドの目的は、単なる投資リターンだけではないと見られます。
光電融合には、光を作る部品、パッケージング技術、制御ソフトウェア、AIインフラ全体の設計など、幅広い技術が必要です。
NTTはこのファンドを通じて、有望な技術を持つ企業に投資し、自社の構想の中に取り込んでいくことで、実用化までの時間を短縮しようとしている可能性があります。
また、他社主導の標準規格に流れを奪われないためにも、早い段階で仲間を増やすことは重要です。
ただし、これもまだ取り組みが始まった段階です。ファンド設立そのものが成功を保証するわけではありません。
NTT株の上昇シナリオ
NTT株が上昇するシナリオとしては、まず光電融合スイッチの商用化が順調に進むことが重要です。
2026年第4四半期に予定される商用サンプル提供が具体化し、性能や省電力効果が市場から評価されれば、NTTを見る目は変わる可能性があります。
さらに、巨大クラウド企業がNTTの光電融合技術を採用する動きを見せれば、NTTは単なる通信会社ではなく、AIデータセンター関連企業として評価される可能性があります。
その場合、株価収益率などの評価倍率が見直されることも考えられます。
現在のNTTは、安定配当の通信株として見られています。しかし、AIインフラの中核技術を持つ企業として認識されれば、投資家の評価軸が変わる可能性があります。
これが、NTT株の大きな上昇シナリオです。
NTT株の下落シナリオ
一方で、下落シナリオも冷静に見ておく必要があります。
光電融合の商用化が計画より遅れたり、省電力効果が期待ほど出なかったりすれば、技術期待は後退します。
また、信用買い残が多い状態が続けば、株価が上がっても売り圧力が出やすくなります。
さらに、政府保有株の売却議論が具体化すれば、需給面の不安が再び強まる可能性があります。
EBITDA4兆円目標が3年後ろ倒しになったことも、短期的には明確な悪材料です。
つまり、NTTには長期的な技術期待がある一方で、短期的には株価を押さえる材料も多く残っています。
ここを見落として、技術の夢だけで買い進めるのは危険です。
市場の目標株価と理論株価のギャップ
NTT株については、一部で300円から500円といった強気の理論株価が語られることもあります。
しかし、現時点で市場の主要アナリストが示す目標株価の平均は約170円、最も強気な予想でも215円程度とされています。
つまり、300円や500円という水準は、現時点の市場コンセンサスからはかなり離れた超強気シナリオです。
もちろん、将来的にNTTの光電融合技術が世界のAIデータセンターで広く採用されれば、評価が大きく変わる可能性はあります。
ただし、それはまだ実現していない未来です。
投資判断では、夢のシナリオと現在の市場評価のギャップを正しく理解することが重要です。
NTTの強み・弱み・機会・脅威
NTTの強みは、世界トップクラスの光半導体・光電融合技術を持っていることです。
また、IOWN Global Forumを通じて、160社以上が参加する国際的な標準化の中心にいる点も大きな強みです。
さらに、日本国内には素材、部品、装置に強みを持つ企業が多く、周辺産業との連携余地もあります。
一方、弱みは既存の通信事業の成長が鈍化していることです。売上規模は大きいものの、利益が大きく伸びにくくなっています。
また、EBITDA4兆円目標が3年後ろ倒しになったことは、成長計画が当初より遅れていることを示しています。
機会としては、AIデータセンターの電力問題があります。
世界中の企業がデータセンターの省電力化を求めており、NTTの光電融合技術がその解決策になる可能性があります。
また、巨大クラウド企業がNVIDIA依存を避けたいと考えていることも、開かれた技術であるIOWNにとって追い風になる可能性があります。
脅威としては、政府保有株の売却リスク、競合技術が先に普及するリスク、商用化の遅れ、そして巨額投資による利益圧迫があります。
これらはどれも軽視できません。
長期投資家はNTTとどう向き合うべきか
NTTという会社は、いま2つの時間軸を同時に持っています。
1つは、四半期ごとの決算で評価される通信会社としての時間軸です。
もう1つは、数年単位で実装が進む光電融合・IOWN企業としての時間軸です。
短期的な株価だけを見れば、NTTは重い銘柄に見えるかもしれません。利益成長は鈍化し、信用買い残は多く、政府保有株の売却リスクもあります。
しかし、長期的に見れば、AIデータセンターの電力問題を解決する技術を持つ企業として、大きな可能性を秘めています。
重要なのは、どちらか一方だけを見ることではありません。
技術の将来性に期待しすぎれば、目の前の需給リスクや利益鈍化を見落とします。逆に、短期的な株価の重さだけを見れば、将来の大きな変化を見逃す可能性があります。
今後の確認ポイントは、2026年第4四半期に予定される光電融合スイッチの商用サンプル提供が順調に進むかどうかです。
さらに、巨大クラウド企業による採用や実証実験の発表があるかどうかも重要です。
NTT株を見るうえでは、良いニュースに飛びつくのではなく、悪いニュースだけで悲観するのでもなく、事実を1つずつ確認していく姿勢が必要です。
まとめ
NTTは、現在の株価だけを見ると重い銘柄です。
利益成長の鈍化、信用買い残の多さ、政府保有株の売却リスクという3つの重しがあり、短期的には簡単に上昇しにくい構造があります。
一方で、NTTが進める光電融合やIOWNは、AIデータセンターが直面する電力消費と発熱の問題を解決する可能性を持っています。
特に、データセンター内の通信を電気から光へ置き換える技術は、AI時代のインフラにおいて重要なテーマになる可能性があります。
今後、光電融合スイッチの商用化が進み、巨大クラウド企業の採用が具体化すれば、NTTの評価は通信会社からAIインフラ関連企業へと変わる可能性があります。
ただし、現時点ではまだ期待段階の部分も多く、300円から500円といった強気の理論株価は市場コンセンサスから大きく離れています。
NTT株を見るうえで大切なのは、夢だけを見ることでも、目先の悪材料だけを見ることでもありません。
光電融合の実装状況、商用サンプルの進展、巨大クラウド企業の採用動向、信用買い残の変化、政府保有株の売却議論を冷静に確認しながら判断することです。
NTTは、短期では重い通信株でありながら、長期ではAI時代のインフラ企業へ変わる可能性を持つ銘柄です。
その両面を理解したうえで、投資判断を行うことが重要です。


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