テンバガーの見つけ方とは?ROE・成長性・利益率から10倍株候補を探す方法を元機関投資家が解説

本記事は、YouTube動画『【テンバガー発掘】10倍株3つの条件!ROEと成長性で分析せよ/テンバガーが出やすい業種は?/「含み益は幻」の恐怖に勝つ売買タイミングを、元機関投資家が徹底解説《泉田良輔×佐田志歩》』の内容を基に構成しています。

株価が購入時の10倍になる「テンバガー」は、多くの個人投資家にとって夢のような存在です。

100万円で購入した株式が1,000万円になれば、資産形成に与えるインパクトは非常に大きくなります。しかし、最初から10倍になる銘柄を正確に見つけることは簡単ではありません。

今回の動画では、日本生命保険やフィデリティなどでファンドマネージャー、証券アナリストとして勤務した経験を持つ泉田良輔氏が、過去の企業データからテンバガー候補を探す方法について詳しく解説しています。

重要なポイントは、短期的な株価の値動きを当てることではありません。

ROE、利益成長、営業利益率、ビジネスモデル、事業の拡張性といった企業の本質的な力を分析し、時間を味方につけることが、テンバガーを手にするための王道だといいます。

この記事では、動画で語られたテンバガー候補の探し方、銘柄分析の方法、購入と売却のタイミング、さらに10倍株が生まれやすい業種について、初心者にも分かりやすく解説します。

目次

テンバガーは突然生まれるわけではない

テンバガーとは、株価が購入時から10倍になった銘柄を指します。

この言葉は、野球における「塁打」を意味する「bagger」に由来しており、1試合で10塁打を記録するほど大きな成果を表す表現として使われています。

ただし、企業の株価が1日で10倍になることは通常ありません。

多くのテンバガーは、企業が売上や利益を着実に伸ばし、その成長が長期間続いた結果として生まれます。

つまり、テンバガーは短期間の急騰だけで生まれるのではなく、四半期ごとの成長、毎年の利益拡大、事業エリアの拡大など、小さな成長の積み重ねによって形成されるものです。

そのため、現時点でどの銘柄が将来10倍になるかを完全に予測することはできません。

一方で、過去の決算や事業の成長を分析することで、将来テンバガーになる可能性が高い企業を絞り込むことはできます。

泉田氏は、過去の企業データを振り返り、その会社がどのような成長を続けてきたのかを確認することが、テンバガー探しの基本的なアプローチだと説明しています。

テンバガー候補を探す重要指標はROE

テンバガー候補を分析するうえで、特に重要な指標として挙げられたのがROEです。

ROEは「Return on Equity」の略で、日本語では自己資本利益率と呼ばれます。

簡単にいえば、株主から預かった資本を使って、企業がどれだけ効率よく利益を生み出したかを示す指標です。

ROEは、次の考え方で計算されます。

ROE=当期純利益÷自己資本×100

例えば、株主資本が100億円あり、その企業が1年間で20億円の純利益を稼いだ場合、ROEは20%です。

ROEが高い企業ほど、株主から集めた資本を効率よく使い、利益を生み出していると考えられます。

ROE25%の企業は3年で株主資本が約2倍になる

動画の中では、ROE25%という数字が1つの例として紹介されています。

企業が毎年ROE25%を維持し、その利益を内部に蓄積した場合、株主資本は次のように増えていきます。

1.25×1.25×1.25=約1.95

つまり、ROE25%を3年間継続できれば、理論上、株主資本は約2倍になります。

株主資本が2倍になったからといって、必ず株価も2倍になるわけではありません。

しかし、企業の資産や利益を生み出す基盤が2倍になれば、株価も上昇する可能性は高くなります。

泉田氏がフィデリティでアナリストをしていた時代には、ファンドマネージャーから「倍になる株を探してこい」と言われた経験があったそうです。

当時、どの銘柄が倍になるか分からないと答えたところ、ファンドマネージャーからは、ROE25%程度の企業を中心に調べるよう助言されたといいます。

高いROEを長期間維持する企業は、株主資本を速いペースで積み上げられるため、長期的に株価が上昇する可能性も高くなるという考え方です。

現在のROEだけでなく過去の推移を見る

ROEを見る際に注意したいのは、直近1年の数字だけで判断しないことです。

ある年にROE25%を達成していても、翌年は5%、その次の年は25%というように数字が不安定であれば、安定した複利成長は期待できません。

重要なのは、過去に高いROEを継続してきたかどうかです。

例えば、毎年夏休みの宿題を早めに終わらせる子どもは、翌年も同じように計画的に宿題を終える可能性が高いと考えられます。

一方、毎年8月31日まで宿題を残している子どもは、翌年も同じ行動を繰り返す可能性があります。

企業についても同じです。

過去に安定して高い収益性を維持してきた企業は、将来も同様の収益性を維持できる可能性が高くなります。

したがって、ROEを確認する際には、現在の数字だけでなく、過去数年間の推移を見ることが重要です。

ROEのスクリーニング基準は12%程度

ただし、ROE25%を長期間維持している上場企業は多くありません。

スクリーニング条件をROE25%以上にすると、該当する銘柄が少なくなり、投資候補を十分に比較できなくなる可能性があります。

そこで泉田氏は、最初のスクリーニング基準としてROE12%程度を挙げています。

日本の上場企業には、ROE8%程度を1つの目標とする考え方があります。

その8%に対して約50%を上乗せした12%を、優良企業を探すための基準として利用する方法です。

ROE12%以上の企業を抽出し、そこから利益成長やビジネスモデルを詳しく調べることで、分析対象を効率的に絞り込めます。

ROEだけで銘柄を決定するのではなく、企業分析を始めるための入口として使うことが重要です。

ROEが高いだけでは株価は上がらない

ROEは重要な指標ですが、ROEが高いだけでテンバガーになるわけではありません。

株価が長期的に上昇するためには、利益そのものが成長している必要があります。

企業の利益が増えなければ、株主資本が増えても、市場から高い評価を受け続けることは難しくなります。

そのため、ROEに加えて、次の点を確認する必要があります。

  • 売上が成長しているか
  • 営業利益が増えているか
  • 最終利益が黒字を維持しているか
  • ビジネスモデルが確立されているか
  • 将来も成長できる市場にいるか

特に重要なのが、継続的に黒字を出しているかどうかです。

企業が赤字を計上すると、株主資本が減少します。

せっかく数年間かけて利益を積み上げても、大きな赤字を出せば、それまで蓄積してきた株主資本が失われる可能性があります。

その状態は、3歩進んで2歩下がるようなものです。

テンバガー候補を探す場合は、景気変動や一時的な問題があっても、安定して黒字を維持できる企業が有力になります。

過去10年の業績を確認する

泉田氏は、企業分析を行う際に、可能であれば過去10年程度の業績を確認することを推奨しています。

1年や2年だけ好調な企業ではなく、長期間にわたって売上や利益を成長させてきた企業を探すためです。

理想的なのは、毎年売上と利益が増えている企業です。

ただし、すべての年で増収増益である必要はありません。

景気後退やコロナ禍のような特殊な状況では、売上や利益が一時的に減少することもあります。

重要なのは、売上が減少したとしても、最終利益が赤字に転落していないかどうかです。

黒字を維持できていれば、株主資本は積み上がり続けます。

一方で、景気悪化のたびに大幅赤字を計上する企業は、長期的な複利成長が途切れやすくなります。

リーマン・ショックやコロナ禍で赤字にならなかった企業

企業の強さを判断する方法として、経済危機の際に赤字にならなかったかを見る方法があります。

泉田氏が1つの基準として挙げたのが、2008年から2009年のリーマン・ショックです。

リーマン・ショックでは、世界中の経済活動が大きく落ち込み、多くの大企業が赤字に転落しました。

そのような厳しい環境でも黒字を維持できた企業は、もともとの利益率が高い、財務体質が強い、経営陣の対応力が高いといった特徴を持っている可能性があります。

ただし、リーマン・ショックからは長い時間が経過しています。

そのため、より最近の事例として、コロナ禍で赤字にならなかった企業を確認する方法もあります。

コロナ禍では、業種によって影響の差が大きかったものの、経営環境が急激に変化しました。

その中でも黒字を維持した企業は、環境変化への対応力や高い利益率を持っている可能性があります。

営業利益率からビジネスモデルの強さを判断する

企業のビジネスモデルが強いかどうかを判断する指標として、営業利益率が挙げられます。

営業利益率は、売上高に対してどれだけ営業利益を確保できたかを示す指標です。

営業利益率=営業利益÷売上高×100

営業利益率が高い企業は、商品やサービスを提供する過程で、効率的に利益を残せていると考えられます。

営業利益率が高くなる理由には、さまざまなものがあります。

例えば、商品を安く仕入れられる、ブランド力によって高い価格で販売できる、広告宣伝費を効率よく使えている、店舗運営が効率化されているといった要因です。

高い営業利益率は、企業が自社のビジネスをコントロールできていることの表れでもあります。

ただし、営業利益率の水準は業種によって大きく異なります。

ソフトウェア企業と小売業では、平均的な利益率が異なるため、異なる業種の企業を単純に比較するのは適切ではありません。

同じ業種や同じセクターの中で、競合企業より営業利益率が高いかどうかを確認することが重要です。

同業他社より高い営業利益率を維持している場合、その企業にはブランド、技術力、仕入れ力、販売力、コスト管理など、何らかの強みがあると考えられます。

すでに人気のある優良企業でもテンバガーになる

ROEが高く、利益も成長し、営業利益率も高い企業は、すでに株価が上がっている場合があります。

そのため、「良い企業であることは市場に知られており、すでに株価に織り込まれているのではないか」と考える投資家も少なくありません。

この疑問に対して、泉田氏は「時間を味方につける」という考え方を示しています。

現在の株価には、その企業の将来3年程度の成長が織り込まれているかもしれません。

しかし、企業が4年後、5年後も成長し続ければ、まだ株価に織り込まれていない成長が新たに評価されます。

優良企業を長く保有することで、当初は織り込まれていなかった将来の利益成長を取り込める可能性があります。

高いROEを維持している企業ほど、株主資本や利益が速く増えるため、株価上昇までに必要な時間が短くなる可能性もあります。

スターバックスも当初から有名な成長企業だった

動画では、時間を味方につけた企業の例としてスターバックスが紹介されています。

泉田氏が日本生命で外国株式の運用や調査を担当していた2000年頃、最初に担当した企業の1つがスターバックスでした。

当時もスターバックスは知られたブランドであり、成長企業として注目されていました。

しかし、社内では「ヨーロッパには独自のコーヒー文化があるため、スターバックスは広がらないのではないか」「日本人が高いコーヒーを飲むのか」といった議論があったそうです。

その後、スターバックスは国や地域を広げながら店舗数を増やし、長期的に大きく成長しました。

当時から知られていた人気企業であっても、世界展開を続けることで株価は大幅に上昇しています。

テンバガーは、誰にも注目されていない割安株からだけ生まれるとは限りません。

すでに人気がある成長企業でも、成長できる市場が十分に残っていれば、長い時間をかけてテンバガーになる可能性があります。

ビジネスモデルの変化が企業価値を変える

同じ企業であっても、時代とともにビジネスモデルが変化することがあります。

動画では、米国のウォルト・ディズニーが例として挙げられています。

かつてのディズニーは、テーマパークだけでなく、テレビ放送局の広告収入に大きく依存する企業でした。

広告収入は景気の影響を受けやすいため、当時のディズニーは景気敏感株として見られる側面もありました。

しかし、その後はクルーズ、映像配信、サブスクリプションなど、収益源を多様化させています。

企業名が同じでも、収益構造やビジネスモデルが変化すれば、市場からの評価も変わります。

これまで大きく成長した企業でも、新しい事業モデルを確立することで、再び成長株として評価される可能性があります。

ファンダメンタルズ分析は売上と利益を分解する

テンバガー候補を見つけるためには、ファンダメンタルズ分析の力も必要です。

ファンダメンタルズ分析とは、企業の売上、利益、財務状況、事業内容などを分析し、企業の本質的な価値を判断する方法です。

その基本は、売上と利益がどのような要因で増減するのかを考えることです。

売上は、基本的に次のように分解できます。

売上=販売数量×販売単価

小売業であれば、店舗数、1店舗当たりの売上、客数、客単価などに分けられます。

例えば、売上が伸びている場合でも、新規出店によって伸びているのか、既存店の売上が増えているのかによって、成長の質は異なります。

利益については、売上が増えた分だけ単純に増えるとは限りません。

原材料費、人件費、広告費、物流費、店舗賃料など、さまざまなコストがかかります。

どの費用が売上に連動し、どの費用が固定的なのかを考えることで、利益が伸びる仕組みを理解しやすくなります。

売上や利益を伸ばす要因は、アーニングスドライバーとも呼ばれます。

企業ごとのアーニングスドライバーを理解することが、将来の利益を予測するための基礎になります。

テンバガー候補を見極める3つのステップ

動画では、テンバガー候補を見極めるための条件が大きく3つに整理されています。

商品やサービスに需要がある

1つ目は、企業の商品やサービスに需要があることです。

どれほど高い技術を持っていても、消費者や企業が利用しなければ売上は伸びません。

需要があるかどうかを判断するためには、KPIを確認する方法があります。

KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、重要業績評価指標と呼ばれます。

企業の成長を測るための具体的な数字です。

例えば、小売業であれば既存店売上高や店舗数、インターネットサービスであれば会員数や利用者数、サブスクリプションサービスであれば契約者数などがKPIになります。

企業が決算説明資料などでKPIを公開している場合、その数字を継続的に確認することで、事業の成長を外部から観察できます。

会社が重要指標として示している数字を追うだけでも、企業の成長性を判断する手がかりになります。

ビジネスモデルの質が高い

2つ目は、ビジネスモデルの質が高いことです。

その判断材料になるのが、営業利益率です。

同業他社より営業利益率が高く、その水準を維持している企業には、競争優位性がある可能性があります。

企業の決算資料や説明会資料には、自社の強みが記載されていることがあります。

その内容と実際の利益率を照らし合わせることで、強みが数字に表れているかを確認できます。

単に「ブランド力がある」「技術力が高い」という説明を読むだけでなく、その強みが売上や利益率に反映されているかを見ることが重要です。

事業に拡張性がある

3つ目は、事業に拡張性があることです。

拡張性は、スケーラビリティとも呼ばれます。

現在の事業が好調であっても、市場が小さければ、いずれ成長は止まります。

例えば、ある地域で高い人気を得ていても、その地域だけで事業が完結する場合、店舗数や顧客数には限界があります。

一方、全国展開や海外展開が可能な企業は、成長余地が大きくなります。

商品やサービスが別の地域、別の国、別の顧客層にも展開できるかどうかを確認することが重要です。

現在の売上や利益だけでなく、将来どこまで事業を広げられるかを見ることが、テンバガー候補を探すうえで欠かせません。

時価総額が小さい企業ほど10倍になりやすい

テンバガーを狙う場合、一般的には時価総額が小さい企業ほど株価が10倍になりやすいと考えられます。

時価総額100億円の企業が1,000億円になることと、時価総額10兆円の企業が100兆円になることでは、必要な成長規模が大きく異なります。

そのため、小型株や中小型株の方が、10倍になる可能性は高くなります。

ただし、小型株には流動性が低い、業績が不安定、情報が少ないといったリスクもあります。

また、近年の市場では大型株に資金が集中し、小型グロース株が評価されにくい局面もあります。

それでも、企業の利益規模が大きくなれば、徐々に機関投資家の注目を集めるようになります。

機関投資家が注目し始める時価総額

機関投資家は、運用する資金が非常に大きいため、時価総額の小さい企業には投資しにくいという事情があります。

大量の株式を購入すると、自ら株価を押し上げてしまう可能性があるためです。

また、ファンドによっては投資できる時価総額に基準が設けられています。

泉田氏によると、中小型株ファンドでも、時価総額300億円を下回る企業には投資しにくいケースがあります。

大型株中心のファンドでは、時価総額1,000億円以上が1つの基準になることもあります。

一方、積極的なファンドマネージャーであれば、時価総額100億円程度でも、成長性が高ければ投資対象として検討する場合があります。

個人投資家にとっての理想は、企業がまだ小さい段階で成長性を見つけ、その後、利益の拡大とともに機関投資家が参入する展開です。

機関投資家の資金が入り始めると、株価が大きく上昇する可能性があります。

テンバガーを途中で売らないための考え方

テンバガー候補を見つけても、実際に株価が10倍になるまで保有し続けることは簡単ではありません。

株価が2倍、3倍になると、利益を確定したくなるのが自然です。

また、コロナショックや金融危機、地政学リスクなどが起きると、企業業績に問題がなくても株価が急落することがあります。

こうした局面で投資家は、「含み益は幻であり、利益確定しなければ意味がない」と考えやすくなります。

しかし、泉田氏は、売却するかどうかを判断する際に重要なのは、株価が何倍になったかではなく、他にもっと魅力的な銘柄があるかどうかだと説明しています。

現在保有している企業よりも、明らかに成長性や割安度が高い企業が見つかったのであれば、乗り換えを検討できます。

一方、売却後に投資したい企業が見つからないのであれば、優良企業をそのまま保有するという選択肢があります。

売却後の現金をどうするかまで考える

株式を売却すると、手元には現金が残ります。

暴落前に売却できれば、一時的には安心できます。

しかし、その後に株価が急反発した場合、現金のままでは上昇相場に参加できません。

機関投資家も、常に利益確定を考えています。

ただし、売った後に投資先がなければ、運用していない状態になります。

そのため、売却する際には、次の投資先を考えておく必要があります。

個人投資家も同様です。

市場全体が下落しそうだから売るのではなく、企業の業績に直接的な悪影響があるのか、より有望な投資先があるのかを判断することが重要です。

企業の成長シナリオが崩れておらず、代わりとなる魅力的な銘柄もないのであれば、短期的な株価下落だけを理由に売却する必要はないという考え方です。

購入は決算後が王道

テンバガー候補を購入するタイミングについて、長期投資では決算を確認した後に買う方法が王道だと説明されています。

決算前に購入すると、決算内容によって株価が大きく下落するリスクがあります。

業績に確信が持てない場合は、決算発表という不確定要素を避けることも1つの選択肢です。

決算後に良い数字が発表され、株価が急騰すると、購入しにくいと感じるかもしれません。

しかし、長期投資では、現在の株価ではなく、将来の利益と目標株価を基準に判断します。

将来の目標株価まで十分な上昇余地があるのであれば、決算後に株価が上昇していても購入を検討できます。

一方、良い決算によって株価が目標株価に近づいてしまった場合は、無理に買う必要はありません。

目標株価は過去のPERとPBRから考える

株式投資では、購入前に目標株価を設定することが重要です。

目標株価を考える際には、PERやPBRが利用されます。

PERは株価収益率と呼ばれ、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示します。

PBRは株価純資産倍率と呼ばれ、株価が1株当たり純資産の何倍まで評価されているかを示します。

目標株価を設定する際には、現在のPERだけでなく、その企業が過去にどの程度のPERで取引されてきたかを確認します。

これをヒストリカルバリュエーションと呼びます。

例えば、ある企業のPERが過去10年間、15倍から25倍の範囲で推移していたとします。

現在のPERが15倍で、業績が改善しているのであれば、市場が再び25倍まで評価する可能性があります。

この場合、PERの上昇だけで株価は約1.67倍になります。

逆に、現在のPERがすでに25倍であれば、過去の評価レンジから見た上昇余地は小さくなります。

株価は利益成長とマルチプル拡大の掛け算

株価が10倍になる仕組みは、利益の成長とPERなどの評価倍率の上昇に分解できます。

株価は、概念的には次のように考えられます。

株価=1株当たり利益×PER

したがって、株価が10倍になるには、利益が10倍になる方法だけでなく、利益とPERの両方が上昇する方法があります。

例えば、PERが15倍から30倍になれば、評価倍率は2倍になります。

同時に利益が5倍になれば、株価は次のようになります。

2倍×5倍=10倍

このように、テンバガーは利益成長とマルチプル拡大の組み合わせによって生まれます。

組み合わせは、2倍×5倍だけではありません。

3倍×約3.3倍、5倍×2倍など、さまざまな形があります。

ただし、PERが3倍や5倍に上昇するケースはそれほど多くありません。

そのため、テンバガーを探す際に最も重要なのは、利益が大きく成長する企業を見つけることです。

マルチプル拡大は利益成長の後についてくる

企業の利益が伸びると、市場参加者はその企業の成長性を高く評価するようになります。

その結果、これまでPER15倍で評価されていた企業が、PER20倍、25倍、30倍で評価されることがあります。

これがマルチプル拡大です。

マルチプル拡大だけを予想するのは困難ですが、利益成長が続けば、後から市場の評価が上昇する可能性があります。

テンバガー候補を探す際には、PERが上がるかどうかを最初に考えるよりも、利益がどこまで成長するかを分析する方が重要です。

利益成長が実現すれば、結果としてマルチプルも上昇し、株価上昇が加速する可能性があります。

AIや半導体でマルチプルが拡大する理由

AIや半導体関連株では、過去のPERレンジを超えて株価が上昇することがあります。

その背景には、市場規模に対する見方の変化があります。

従来、半導体メモリやデータセンターの需要は、一定の範囲で予測されていました。

しかし、生成AIの普及によって、大量のデータ処理や保存が必要になり、データセンターや半導体の需要が従来の想定を超えて拡大する可能性が出てきました。

市場規模そのものが大きくなると判断されれば、投資家は企業の将来利益を高く見積もります。

その結果、過去のPERレンジを超えて評価されることがあります。

これは、企業の事業にスケーラビリティがあると判断された例です。

テンバガーが出やすい業種は小売業

動画では、テンバガーが生まれやすい業種の1つとして小売業が紹介されています。

小売業は身近な商品やサービスを扱っているため、個人投資家でも企業の成長を観察しやすい業種です。

代表的な例として、ユニクロを展開するファーストリテイリングや、家具販売のニトリが挙げられています。

ファーストリテイリングは山口県、ニトリは北海道から成長した企業です。

両社に共通するのは、地方で効率的な低コスト運営を確立し、その後、全国展開や海外展開を進めたことです。

地方発の小売業が成長しやすい理由

地方は大都市に比べて市場が小さく、人口も限られています。

その環境で事業を成長させるためには、低いコストで効率的に店舗を運営し、手頃な価格で良い商品を提供する必要があります。

地方で成功した小売企業は、すでにローコストオペレーションを確立している可能性があります。

その企業が上場によって資金を調達し、東京や大都市に進出すれば、店舗数と顧客数を大きく増やせます。

さらに、国内で成功したビジネスモデルを海外に展開できれば、成長余地は一段と大きくなります。

テンバガー候補を探す場合、地方で高い人気を持ち、まだ全国展開や海外展開を本格化させていない小売企業は、有力な分析対象になります。

ラーメンや回転寿司にも成長のヒントがある

海外展開が期待できるのは、衣料品や家具だけではありません。

ラーメン店や回転寿司など、日本の外食企業も海外進出を進めています。

国内で効率的な店舗運営を確立し、海外でも需要がある商品やサービスを提供できれば、成長市場を広げられます。

小売業や外食業を見る際には、次の点が重要になります。

  • 国内で低コスト運営ができているか
  • 商品やサービスに需要があるか
  • 店舗を増やしても利益率を維持できるか
  • 海外の消費者にも受け入れられるか
  • 進出できる国や地域が十分に残っているか

身近な店舗の混雑状況や新規出店、外国人利用者の増加なども、個人投資家が確認できる情報です。

テクノロジーで既存産業を変える企業

テンバガーが生まれやすいもう1つの分野が、テクノロジーによって既存のビジネスモデルを変える企業です。

Googleは、インターネットを利用した広告ビジネスを大きく成長させました。

Amazonは、オンライン販売と物流網を組み合わせ、従来の小売業の仕組みを変えました。

こうした企業は、単に新しい技術を持っていただけではありません。

その技術を利用して、既存の流通、広告、販売、情報提供の方法を変え、大きな売上と利益を生み出しました。

新しい技術そのものよりも、その技術によってどのようなサービスを提供し、どのように利益を生み出すかが重要です。

AI投資の次に注目されるのはサービス企業

現在のAI市場では、半導体、データセンター、メモリなど、AIに必要な設備投資関連の企業が注目されています。

しかし、今後の重要なテーマは、AIを使ってどのような新しいサービスが生まれるかです。

現時点では、多くの人がChatGPTやGeminiなどを利用していますが、AIを活用した新しいサービスはまだ発展途上です。

今後、AIによって売上や利益を大きく伸ばす企業が登場すれば、投資家の関心は設備投資関連企業からAIサービス企業へ移る可能性があります。

テンバガー候補を探す場合、単に「AI関連」というだけでなく、AIを使ってどのような課題を解決し、どのように収益を得るのかを確認する必要があります。

テンバガー探しで最も重要なのは利益成長

テンバガー候補を探す際には、ROE、営業利益率、PER、PBR、KPIなど、さまざまな指標を確認します。

しかし、最終的に株価を大きく押し上げるのは利益成長です。

高いROEを維持し、利益を再投資しながら、売上と利益を拡大できる企業は、長期的に企業価値を高められます。

さらに、市場規模が拡大し、投資家からの評価が高まれば、PERも上昇します。

利益成長とマルチプル拡大が重なることで、株価は大きく上昇します。

テンバガーを探すとは、単に安い株を探すことではありません。

将来の利益が何倍になるのか、その成長を支える需要やビジネスモデルがあるのかを分析する作業です。

まとめ

テンバガーを見つけるためには、短期的な株価の動きを予想するのではなく、企業の長期的な成長力を分析することが重要です。

最初のスクリーニングでは、ROE12%以上を1つの基準として利用できます。

そのうえで、過去のROEが安定しているか、利益が成長しているか、赤字を繰り返していないかを確認します。

企業分析では、過去10年程度の売上、営業利益、最終利益、ROE、PER、PBRなどを見ることが有効です。

さらに、営業利益率からビジネスモデルの強さを確認し、KPIから商品やサービスの需要を判断します。

現在の事業が好調であるだけでなく、全国展開、海外展開、新規サービスなどによって成長を続けられるかも重要です。

テンバガー候補を判断する大きな条件は、次の3つです。

  • 商品やサービスに需要がある
  • ビジネスモデルの質が高い
  • 事業に拡張性がある

株価が10倍になる仕組みは、利益成長とマルチプル拡大の掛け算で説明できます。

例えば、利益が5倍になり、PERが2倍になれば、株価は10倍になります。

ただし、PERの大幅な上昇は簡単には起こりません。

そのため、最も重点的に分析すべきなのは、企業の利益がどこまで成長できるかです。

購入後は、株価が2倍や3倍になったという理由だけで売るのではなく、保有企業より魅力的な投資先があるかどうかを判断します。

企業の成長シナリオが崩れておらず、より優れた投資先がないのであれば、長期保有を続けることがテンバガーを手にするための選択肢になります。

テンバガー投資では、優良企業を見つける分析力だけでなく、その成長を信じて待つ忍耐力も必要です。

高いROE、安定した黒字、利益成長、強いビジネスモデル、広い成長市場を持つ企業を探し、時間を味方につけることが、10倍株に近づくための基本的な方法だといえるでしょう。

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