本記事は、YouTube動画『1ドル162円、40年ぶりの円安で生活はどう変わる?円だけで資産を持つ本当のリスク』の内容を基に構成しています。
1ドル162円という歴史的な円安水準が、家計や資産形成に大きな影響を与えています。
多くの人は、為替相場のニュースを投資家だけに関係するものだと考えがちです。しかし、円安の影響を最も強く受けるのは、必ずしも株式や投資信託を保有している人ではありません。
むしろ、収入も預金も資産もすべて円で持ち、海外資産をほとんど保有していない人ほど、円安による物価上昇の影響を一方的に受けやすくなります。
円安が進むと、海外から輸入する食品、エネルギー、スマートフォン、衣料品、日用品などの価格が上昇します。さらに、海外旅行や留学に必要な費用も大きく増加します。
一方で、円だけを保有している場合、物価が上昇しても資産の価値そのものは増えません。
今回の動画では、なぜ円安が進んでいるのか、1ドル162円が生活にどの程度の負担を与えるのか、そして海外資産を持つことがなぜ円安への防御策になるのかについて解説されています。
1ドル162円で本当に怖いのは数字そのものではない
1ドル162円という数字を聞くと、多くの人が「円安が進みすぎている」「海外旅行に行けない」「輸入品が高くなる」といった不安を感じるでしょう。
しかし、本当に警戒すべきなのは、162円という為替レートそのものではありません。
より深刻なのは、円の購買力が徐々に低下し、生活費が少しずつ増えているにもかかわらず、その変化に気づきにくいことです。
消費税が上がった場合は、税率が何%上昇したのか明確に分かります。しかし、円安による物価上昇は、商品やサービスごとに時間差を伴って現れます。
スーパーの食品が数十円値上がりし、電気代が少し上がり、ガソリン価格が高くなり、外食費やスマートフォンの価格も上昇します。
1つひとつの値上げは小さく見えても、家計全体では大きな負担になります。
動画では、円安を「静かな増税」と表現しています。
税金のように明確な請求書が届くわけではありませんが、同じ1万円で買える商品やサービスの量が減少するという意味では、実質的に家計の負担が増えているからです。
なぜ日本円はここまで下落したのか
円安が進んでいる大きな理由として、まず挙げられるのが日本とアメリカの金利差です。
世界の投資資金は、基本的に金利の低い場所から金利の高い場所へと流れやすい性質があります。
例えば、日本の金利が1%で、アメリカの金利が3.5%であれば、同じ資金を置く場合、より高い利息を得られるアメリカのドル資産が選ばれやすくなります。
世界中の投資家が円を売ってドルを買えば、ドルの需要が高まり、円の価値は下落します。
日銀が利上げしても円高にならない理由
一般的には、中央銀行が利上げすると、その国の通貨は買われやすくなります。
そのため、日銀が利上げを行えば、円高になると考える人も少なくありません。
しかし、日銀が利上げをしても、同時にアメリカの金利が高い状態を維持したり、さらに利上げする可能性が意識されたりすれば、日米の金利差は十分に縮まりません。
日本が金利を上げても、アメリカの金利がそれ以上に高ければ、投資家にとってドルを保有する魅力は依然として大きいままです。
動画では、日本の政策金利が1%に上昇しても、アメリカの政策金利が3.5%から3.75%程度であれば、依然として約2.5%以上の金利差が残ると説明しています。
この金利差が続く限り、円を売ってドルを買う動きが起こりやすくなります。
円安は金利差だけで起きているわけではない
現在の円安には、金利差以外にも、日本経済の構造に関わる複数の要因があります。
一時的な投機だけで円安が起きているのではなく、日本から継続的に円が売られ、外貨が買われやすい仕組みが存在しているということです。
エネルギー輸入による円売り
日本は、原油、天然ガス、石炭など、主要なエネルギー資源の多くを海外から輸入しています。
海外から原油や天然ガスを購入する際には、一般的にドルなどの外貨が必要になります。
日本企業が輸入代金を支払うためには、円を売ってドルを買わなければなりません。
つまり、日本がエネルギーを輸入し続ける限り、恒常的に円売りとドル買いが発生します。
さらに、中東情勢の悪化や戦争、産油国の減産などによって原油価格が上昇すると、同じ量のエネルギーを購入するために、より多くのドルが必要になります。
その結果、円売りの規模が大きくなり、貿易赤字が拡大し、さらに円安が進みやすくなります。
エネルギー価格の上昇と円安が同時に進むと、日本の輸入コストは二重に上昇します。
原油そのものの価格が上がることに加え、円の価値も下がるためです。
この影響は、ガソリン価格や電気料金だけにとどまりません。
物流費、製造費、農業用資材、食品加工費などを通じて、幅広い商品やサービスの価格に波及します。
新NISAを通じた海外投資
新NISAの開始以降、日本ではS&P500や全世界株式、いわゆるオルカンへの投資が広く普及しました。
日本人が円で海外株式型の投資信託を購入すると、運用会社はその資金を使って海外の株式を購入します。
その過程では、円を売ってドルなどの外貨を買う取引が行われます。
1人あたりの投資額は小さくても、何百万人もの投資家が継続的に海外資産を購入すれば、大きな円売り要因になります。
ただし、海外投資そのものが悪いわけではありません。
むしろ、後述するように、日本人が円以外の資産を持つことは、長期的な資産防衛につながる可能性があります。
ここで重要なのは、新NISAを通じた海外投資も、為替市場では円売り要因の1つになっているという点です。
円キャリートレード
円キャリートレードも、円安を進める要因として知られています。
円キャリートレードとは、金利の低い円で資金を借り、その資金を金利の高い国の債券や株式などに投資する取引です。
日本の金利が低く、アメリカなどの金利が高い場合、円で借りた資金をドルに換えて運用することで、金利差から利益を得られる可能性があります。
この取引では円が売られ、ドルなどの外貨が買われます。
円キャリートレードが拡大すると、円売りが増え、円安を加速させることがあります。
デジタル赤字も円安要因になる
近年、円安との関係で注目されているのがデジタル赤字です。
日本人は日常的に、Netflix、YouTube、Amazon Web Services、Microsoft、Google、Appleなど、海外企業が提供するデジタルサービスを利用しています。
月額料金は数百円から数千円であっても、利用者が非常に多いため、日本全体では巨額の支払いになります。
海外企業にサービス利用料を支払う際には、円から外貨への交換が必要になります。
こうしたデジタルサービスへの支払いは、原油や天然ガスの輸入ほど目に見えやすくありません。
しかし、毎月継続的に海外へ資金が流出するため、長期的には円売り要因の1つになります。
政府と日銀の為替介入で円安は止められるのか
急激な円安が進むと、政府や日銀が為替介入を行う可能性があります。
円安を止めるための介入では、政府が保有するドルを売り、円を買います。
市場で大量の円が買われるため、一時的には円高方向に動きます。
動画では、4月末から5月にかけて大規模な為替介入が行われ、ドル円相場が一時的に円高へ動いたものの、しばらくすると再び円安方向に戻ったと説明しています。
為替介入の効果が続きにくい理由
為替介入の効果が長続きしにくい理由は、為替市場そのものの規模が非常に大きいからです。
政府が数兆円規模の介入を行ったとしても、世界の為替市場では、それをはるかに上回る金額が日々取引されています。
さらに、金利差や貿易赤字、エネルギー輸入など、円安を生み出している根本的な要因が変わらなければ、介入後も再び円を売る動きが強まります。
そのため、為替介入だけで長期的な円安トレンドを完全に転換させることは困難です。
為替介入は無意味ではない
ただし、為替介入が無意味というわけではありません。
為替介入の主な役割は、相場の方向を永久に変えることではなく、急激な変動を抑え、時間を確保することです。
急激な円安が進むと、輸入企業や家計が価格変動に対応できません。
介入によって円安の速度を一時的に抑えることができれば、企業は販売価格や仕入れ方法を見直す時間を確保できます。
政府や日銀にとっても、次の金融政策決定会合や経済指標の発表まで時間を稼ぐことができます。
つまり、為替介入は円安を完全に止める政策というより、急激な変動による混乱を和らげる政策と考える必要があります。
1ドル162円で生活費はいくら増えるのか
円安は、株式投資をしている人だけに関係する問題ではありません。
むしろ、海外資産を持っていない人ほど、円安による物価上昇を一方的に受ける可能性があります。
動画では、2人以上の世帯の月間支出を約31.4万円として、円安が家計に与える影響を具体的に試算しています。
スマートフォン価格への影響
例えば、価格が1,000ドル前後のスマートフォンを購入するとします。
1ドル140円であれば、日本円での価格は約14万円です。
しかし、1ドル162円になると、同じ1,000ドルの商品でも約16万2,000円になります。
為替レートが変わっただけで、約2万2,000円の負担増加です。
さらに、1ドル180円まで円安が進めば、価格は約18万円になります。
1ドル140円の時代と比べると、約4万円の差になります。
商品の性能や内容が変わっていないにもかかわらず、円の価値が下がっただけで支払額が大きく増えることになります。
海外旅行への影響
海外旅行の費用が2,000ドルだった場合、1ドル140円なら約28万円です。
1ドル162円なら約32万4,000円、1ドル180円なら約36万円になります。
1ドル140円から180円への円安では、同じ旅行内容でも約8万円の負担増加です。
航空券、ホテル代、レストラン代、現地の交通費など、海外旅行に関わるほぼすべての支出が為替の影響を受けます。
留学費用への影響
留学費用が5,000ドルだった場合、1ドル140円なら約70万円です。
1ドル162円なら約81万円、1ドル180円なら約90万円になります。
1ドル140円と180円では、約20万円の差です。
長期留学では、授業料だけでなく家賃、食費、保険料、交通費なども必要になります。
そのため、実際の負担増加はさらに大きくなる可能性があります。
家計全体では年間10万円前後の負担増もあり得る
円安の影響を受けるのは、海外旅行やスマートフォンのような高額な支出だけではありません。
日々購入する食品、ガソリン、電気、ガス、衣料品、日用品などにも影響が及びます。
動画では、月間支出の約30%が為替の影響を受け、そのうち半分程度が価格に転嫁されると仮定した場合、1ドル140円から162円への円安で、月約7,300円、年間約8万8,000円の負担増になると試算しています。
さらに1ドル180円まで円安が進めば、年間で数万円の追加負担が発生し、合計で年間15万円近く家計負担が増える可能性もあるとしています。
もちろん、すべての商品価格が為替レートと同じ割合で上昇するわけではありません。
企業が価格上昇分を負担する場合もあれば、為替予約によって影響を抑えている場合もあります。
反対に、原材料価格や物流費、人件費の上昇が重なると、為替以上に価格が上昇することもあります。
重要なのは、円安による負担が1回限りではなく、毎月の生活費に継続的に影響する点です。
月5,000円の負担増でも、1年間では6万円、10年間では60万円になります。
月1万円なら、10年間で120万円です。
1度上がった物価は簡単には下がらない
円安によって原材料費や輸送費が上昇すると、企業は商品やサービスの価格を引き上げます。
しかし、その後に円高へ戻ったとしても、値上げされた商品価格が以前の水準まで下がるとは限りません。
企業が値上げを決定するまでには、取引先との交渉、値札やパッケージの変更、システム対応、消費者への告知など、多くのコストがかかります。
一度値上げを実施すると、企業は簡単には値下げしません。
また、円安が落ち着いたとしても、人件費や物流費、原材料費などが高止まりしていれば、値下げできない場合があります。
そのため、円安による物価上昇は、一時的な負担ではなく、長期的な生活費の上昇につながる可能性があります。
円だけで資産を持つことの本当のリスク
円安時代に特に厳しい状況になりやすいのが、収入も資産もすべて円で持っている人です。
日本で生活している多くの人は、給与を円で受け取ります。
ボーナスも円、年金も円、退職金も円、銀行預金も円です。
自宅などの不動産も、日本国内にあれば基本的には円建ての資産です。
つまり、多くの日本人は、意識しないまま資産と収入の大部分を日本円に集中させています。
一方、生活に必要な商品やサービスの価格は、世界の市場価格に影響されます。
原油価格、天然ガス価格、小麦価格、トウモロコシ価格、半導体価格、スマートフォン価格などは、世界市場で決まります。
円安になると、これらの価格が円換算で上昇します。
収入と資産は円のまま増えないのに、支出だけが世界価格に引っ張られて上昇する状態です。
これが、円だけで生活し、円だけで資産を持つことの大きなリスクです。
預金をすべて否定する必要はない
動画では、円預金そのものが悪いわけではないとも説明しています。
日常生活に使うお金や、突然の失業、病気、災害などに備える生活防衛資金は、円で保有する必要があります。
日本で生活している以上、毎月の家賃や住宅ローン、食費、光熱費、税金などは円で支払うからです。
生活防衛資金まで株式や外貨に投資すると、必要な時に相場が下落している可能性があります。
問題は、10年、20年、30年と使う予定のない長期資金まで、すべて円預金で保有する必要があるのかという点です。
短期的に必要なお金は円で守り、長期的に使わないお金は世界の資産に分散するという考え方が重要になります。
海外資産を持つと円安が追い風になる理由
海外株式や外貨建て資産を持っている人にとって、円安は短期的には資産評価額の増加要因になります。
例えば、10万ドル分の海外資産を保有しているとします。
株価がまったく変動しなかった場合でも、為替レートによって円換算額は変わります。
1ドル140円なら、10万ドルは1,400万円です。
1ドル162円なら、1,620万円になります。
1ドル180円なら、1,800万円です。
1ドル140円から180円まで円安が進めば、株価が動かなくても円換算額は400万円増えます。
これが、海外資産を保有する人にとっての円安のメリットです。
日本国内で物価が上昇しても、海外資産の円換算額が増えることで、円安による負担をある程度相殺できる可能性があります。
円安はこれから投資を始める人には不利なのか
円安は、すでに海外資産を持っている人にとっては評価額の上昇要因になります。
一方、これから海外資産を購入する人にとっては、同じ円で買えるドル建て資産の量が減ります。
例えば、毎月10万円を海外資産に投資するとします。
1ドル100円なら、1,000ドル分を購入できます。
1ドル162円なら、約617ドル分です。
1ドル180円なら、約556ドル分になります。
円安になるほど、同じ10万円で購入できるドル建て資産の量は少なくなります。
そのため、「今から海外投資を始めるのは遅いのではないか」と考える人もいるでしょう。
しかし、円安と円高には、それぞれ良い面と悪い面があります。
円安の時は、すでに保有している海外資産の円換算額が増えやすくなります。
円高の時は、同じ金額でより多くの海外資産を購入できます。
長期投資では、為替の方向を正確に予測するより、毎月一定額を積み立てることで購入時期を分散する方が現実的です。
1ドル162円で海外株を買って円高になったらどうなるのか
海外投資を始める際、多くの人が不安に感じるのが為替リスクです。
1ドル162円で海外株を購入した後、1ドル120円まで円高になれば、円換算した資産額は大きく減少します。
この不安は合理的です。
しかし、長期投資では、為替だけでなく、投資対象そのものの成長も考える必要があります。
為替変動と株式成長を分けて考える
動画では、過去約30年間のドル円相場とS&P500の成長を比較しています。
ドル円相場は、1ドル80円台から160円台まで大きく変動してきました。
極端に考えれば、円換算した外貨資産の価値が、為替によって半分近くになる可能性もあります。
一方で、S&P500は長期的に大きく成長してきました。
動画では、配当込みで約19.5倍、配当を除いても約10倍程度になったと説明しています。
仮に株式が19.5倍になり、為替によって円換算価値が半分になったとしても、最終的には約9.75倍です。
100万円が約975万円になる計算です。
もちろん、過去のリターンが将来も続く保証はありません。
また、投資する時期によって結果は大きく異なります。
それでも、長期的に成長する資産を保有した場合、為替によるマイナスを資産そのものの成長が上回る可能性があります。
長期投資では投資対象の成長力が重要
例えば、100万円を海外株式に投資した後、円高によって為替評価が半分になったとします。
株価が10倍になれば、100万円は1,000万円になり、為替の影響で半分になっても500万円です。
株価が5倍なら、為替の影響を受けても250万円です。
株価が2倍の場合は、為替が半分になれば円換算額は100万円となり、投資元本と同程度になります。
このように、長期で考える場合は、為替だけではなく、投資先の企業や市場が成長するかどうかが重要です。
為替を完全に無視することはできませんが、為替変動だけを理由に海外投資を避けると、世界経済の成長を取り込む機会まで失う可能性があります。
S&P500が長期的に成長してきた理由
S&P500は、アメリカを代表する約500社で構成される株価指数です。
一度採用された企業が永遠に残り続けるわけではありません。
業績が悪化した企業や、時代に合わなくなった企業は指数から外れ、代わりに成長力のある企業が採用されます。
そのため、S&P500は固定された企業の集合ではなく、時代に合わせて構成企業が入れ替わる仕組みになっています。
かつてアメリカ経済を代表していた企業が衰退しても、新たなテクノロジー企業や成長企業が指数に加わります。
動画では、この仕組みを指数そのものが生存バイアスを持っていると説明しています。
厳密には、S&P500への採用や除外は一定の基準に基づいて行われますが、結果的に強い企業が残り、弱い企業が入れ替わりやすい構造になっています。
これが、S&P500が長期的に成長しやすい理由の1つです。
為替ヘッジ付き商品を選ぶべきか
海外株式型の投資信託には、為替ヘッジありの商品と、為替ヘッジなしの商品があります。
為替ヘッジとは、円高による資産価値の減少を抑えるための仕組みです。
例えば、海外株式が上昇しても、同時に大幅な円高が進むと、円換算した利益が小さくなることがあります。
為替ヘッジを行えば、こうした為替変動の影響を抑えることができます。
為替ヘッジにはコストがかかる
為替ヘッジは無料ではありません。
一般的に、日本と海外の金利差が大きいほど、ヘッジコストは高くなります。
日本の金利が低く、アメリカの金利が高い状態では、為替ヘッジのコストが運用成績を押し下げる可能性があります。
毎年数%のヘッジコストが発生すれば、長期投資では大きな差になります。
また、為替ヘッジを行うと、円高によるマイナスを抑えられる一方で、円安による円換算額の上昇も受けにくくなります。
日本人はすでに円資産に偏っている
為替ヘッジを考える際には、日本人の資産全体がすでに円に偏っている点も重要です。
給与、年金、預金、退職金、不動産など、多くの資産や収入が円建てです。
そこに為替ヘッジ付きの海外資産を追加すると、海外企業に投資していても、為替面では円への偏りが残ります。
一方、為替ヘッジなしの海外株式を持てば、円以外の通貨に資産を分散できます。
円安が進んだ場合には、海外資産の円換算額が増え、円の購買力低下に対する防御策になります。
為替ヘッジの有無は、どちらが絶対に正しいというものではありません。
資産全体の通貨構成、投資期間、価格変動への耐性などを考えて判断する必要があります。
1ドル180円は本当にあり得るのか
今後、1ドル180円まで円安が進むのかについては、誰にも正確には分かりません。
為替相場は、株式相場以上に予測が難しいとされています。
金利、物価、雇用、貿易収支、政治、戦争、投機、中央銀行の発言など、非常に多くの要因が影響するからです。
動画では、2021年頃に1ドル103円程度だったドル円相場が、162円まで円安になった点を挙げています。
103円から162円までは、約57%の円安です。
一方、162円から180円までは、約11%の円安です。
すでに大幅な円安が進んだ後の、さらに1段の下落として考えれば、180円は完全に非現実的な数字ではないという見方です。
円安が続きやすい構造
円安が続く可能性を高める要因には、日米の金利差、エネルギー輸入、海外投資、デジタル赤字、円キャリートレードなどがあります。
これらは、数週間や数カ月で簡単に解消できる問題ではありません。
特に、エネルギーを海外から輸入する日本の構造や、海外のデジタルサービスへの支払いは、長期的に続く可能性があります。
日本人の海外投資も、資産形成の観点からは今後さらに拡大する可能性があります。
そのため、円売り圧力が長期的に残る可能性はあります。
円高に戻る可能性もある
一方で、円高に戻る可能性もあります。
アメリカの景気が悪化し、雇用が弱くなれば、FRBが利下げに転じる可能性があります。
アメリカの物価上昇率が鈍化した場合も、利下げが行われやすくなります。
また、原油価格が下落すれば、日本の輸入負担が減り、円売り圧力が弱まります。
日銀が追加利上げを行い、日本の金利が上昇すれば、円が買われやすくなる可能性もあります。
ただし、為替相場は必ずしも教科書通りには動きません。
金利差が縮小しても円安が続くこともあれば、明確な材料がなくても急激に円高へ動くこともあります。
だからこそ、長期投資家が為替の方向を正確に当てることは困難です。
為替を予測するのではなく、どちらでも困らない資産設計をする
長期投資家が目指すべきなのは、1ドル180円になるか、150円に戻るかを予測することではありません。
円安になっても、円高になっても、生活や資産形成を継続できる状態を作ることです。
1ドル180円になれば、海外資産の円換算額が増えます。
1ドル150円や120円に戻れば、毎月の積立でより多くの海外資産を購入できます。
円安と円高のどちらにもメリットがあります。
大切なのは、一方の方向に資産を集中させないことです。
生活防衛資金は円で確保する
資産形成を始める前に、まず半年から1年分程度の生活費を円預金で確保することが重要です。
これは、急な病気、失業、収入減少、住宅設備の故障、家族の事情などに備えるためのお金です。
生活防衛資金は、価格変動のある株式や投資信託に回すべきではありません。
必要な時に株価が下落していれば、損失を抱えたまま売却しなければならないからです。
生活防衛資金は、利益を増やすためのお金ではなく、生活を守るためのお金です。
そのため、金利が低くても円の普通預金や定期預金など、すぐに使える形で保有することが基本になります。
10年以上使わない資金は世界に分散する
生活防衛資金を確保した後、10年以上使う予定のない資金については、世界の株式などに分散する方法があります。
投資先としては、S&P500や全世界株式型の投資信託などが代表的です。
S&P500はアメリカ企業への投資が中心です。
全世界株式型の投資信託は、アメリカだけでなく、日本、ヨーロッパ、新興国などにも分散します。
どちらが最適かは、投資家の考え方によって異なります。
重要なのは、円だけに資産を集中させず、長期資金の一部を世界経済の成長に振り向けることです。
円安でも円高でも毎月積み立てる
為替相場を正確に予測できない以上、毎月一定額を積み立てる方法が現実的です。
円安の時も円高の時も、同じ金額を継続的に投資します。
円安の時は、すでに保有している海外資産の円換算額が増えやすくなります。
円高の時は、同じ積立額でより多くの口数を購入できます。
積立投資を継続すれば、特定の為替レートや株価で一括投資するリスクを抑えられます。
重要なのは、為替相場が自分にとって有利になるまで待ち続けないことです。
円高を待っている間に株価が上がる可能性もある
「1ドル162円は高すぎるため、140円になるまで待とう」と考える人もいるでしょう。
しかし、円高になるまで待っている間に、海外株式の価格が上昇する可能性があります。
例えば、為替が162円から140円まで円高になったとしても、その間にS&P500が30%上昇していれば、円高によるメリットより株価上昇の方が大きくなる場合があります。
為替で得をしようとして投資を見送った結果、株式市場の上昇を逃す可能性があるということです。
為替と株価の両方が自分にとって理想的な水準になるのを待っていると、いつまでも投資を始められません。
長期投資では、完璧なタイミングを探すよりも、早い段階から少額で始め、時間を分散する考え方が重要になります。
投資をしていない人は円安のデメリットだけを受けやすい
円安が進むと、投資をしている人も生活費の上昇を避けることはできません。
食品、電気、ガソリン、日用品などの値上げは、誰にとっても負担になります。
しかし、海外資産を保有している人は、円安によって資産の円換算額が増える可能性があります。
生活費が上がる一方で、資産価値も上昇するため、円安による損失を部分的に相殺できます。
一方、海外資産を持っていない人は、生活費が上昇しても、保有する円預金の金額は増えません。
むしろ、同じ預金額で購入できる商品やサービスが減るため、実質的な資産価値は低下します。
動画では、投資をしていない人は円安のデメリットだけを受けやすく、投資をしている人はデメリットを受けながらも、海外資産の値上がりというメリットを受けられる可能性があると説明しています。
この差は、1年では小さく見えるかもしれません。
しかし、10年、20年と続けば、家計と資産形成に大きな違いを生む可能性があります。
円安を恐れるより円だけに偏ることを恐れる
1ドル162円という水準は、海外資産をこれから購入する人にとって不安を感じやすい水準です。
しかし、円安を理由に投資を完全に止めることには別のリスクがあります。
円安による物価上昇は、投資をしなくても発生します。
投資をしないことで為替変動のリスクを避けているつもりでも、実際には円だけを保有するという為替リスクを集中して引き受けていることになります。
円預金は価格が変動しないため、安全に見えます。
しかし、円の購買力が低下すれば、預金額が変わらなくても実質的な価値は減少します。
100万円という数字は変わらなくても、その100万円で購入できる商品やサービスの量が減れば、資産価値は実質的に低下しています。
円だけで資産を持つことは、何もリスクを取っていない状態ではありません。
日本円という1つの通貨に資産を集中させている状態です。
まとめ
1ドル162円という円安は、単なる為替市場のニュースではありません。
食品、エネルギー、スマートフォン、海外旅行、留学、外食、サブスクリプションなど、日常生活の幅広い場面に影響します。
円安が進むと、同じ商品やサービスを購入するために、より多くの円が必要になります。
その結果、収入や預金額が変わらなくても、実質的な購買力は低下します。
特に、給与、預金、年金、退職金、不動産など、収入と資産のほぼすべてを円で持っている人は、円安による物価上昇を一方的に受けやすくなります。
一方、海外株式などの円以外の資産を保有していれば、円安によって円換算した資産額が増える可能性があります。
もちろん、海外投資には株価下落や円高による評価額減少のリスクがあります。
しかし、長期的に成長する資産へ分散投資することで、円の購買力低下に備えることができます。
重要なのは、すべてのお金を投資することではありません。
半年から1年分程度の生活防衛資金は、円預金で確保する必要があります。
そのうえで、10年以上使わない長期資金については、S&P500や全世界株式などを通じて、世界の資産に分散する方法があります。
1ドル180円になるか、150円に戻るかは、誰にも正確には分かりません。
だからこそ、為替を予測して投資時期を決めるのではなく、円安でも円高でも困らない資産設計が重要です。
円安の時も円高の時も、毎月一定額を積み立てることで、購入時期を分散できます。
円安の時は保有資産の円換算額が増えやすく、円高の時はより多くの口数を購入できます。
円安を必要以上に恐れるよりも、円だけに資産を集中させることのリスクを理解する必要があります。
生活防衛資金は円で守り、長期資産は世界に分散する。
為替を当てようとせず、毎月淡々と積み立てる。
円安のニュースに振り回されるのではなく、時間を味方につけて資産を育てていくことが、円の購買力低下に備える現実的な方法といえるでしょう。


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