本記事は、YouTube動画『利回り4%の日本国債、非課税に!?国債NISA法案提出!』の内容を基に構成しています。
日本国債をNISAで直接購入できるようにし、利子や売却益を非課税にする、いわゆる「国債NISA法案」が提出されました。
日本では長期間にわたって低金利が続いてきましたが、近年は物価上昇や金融政策の正常化を背景に、国債利回りが上昇しています。個人向け国債の固定5年は年2%に近づき、30年国債では利回りが4%前後に達するケースも出ています。
そのため、国債がNISAの対象になれば、元本の安全性を重視しながら非課税で運用できる商品として、多くの個人投資家から注目を集める可能性があります。
一方で、国債は株式より値動きが小さいから安全、国の商品だから元本保証、利回り4%だからお得、と単純に考えるのは危険です。
国債には、個人向け国債、通常の長期国債、債券ファンドなど複数の種類があり、それぞれ価格変動や中途換金、再投資に関するリスクが異なります。
また、限られたNISAの非課税枠を、長期的な成長が期待できる株式ではなく国債に使うべきなのかという問題もあります。
ここでは、国債NISA法案が提出された背景や制度の狙い、国債の種類ごとの違い、利回り4%の30年国債に投資する際の注意点、NISAで国債を買うべきかどうかについて詳しく解説します。
国債NISA法案とは何か
国民民主党は7月10日、いわゆる「国債NISA法案」を参議院に提出しました。
この法案の主な内容は、NISA口座で日本国債を直接購入できるようにし、国債から受け取る利子や売却益を非課税にするというものです。
通常、日本国債から受け取る利子や売却によって得た利益には、原則として約20%の税金がかかります。
しかし、国債がNISAの対象になれば、NISA口座内で得た利子や売却益については税金がかからなくなります。
さらに、NISA口座で保有する国債について、相続税を非課税とする措置も検討されているとされています。
制度が実現すれば、国債は次のような特徴を持つ金融商品になります。
・国が発行する比較的信用力の高い金融商品
・利子や売却益が非課税
・相続時にも優遇される可能性がある
・株式よりも値動きが小さい場合が多い
一見すると、非常に魅力的な制度に見えます。
しかし、国債NISA法案を考えるうえでは、投資家側のメリットだけでなく、なぜ国がこの時期に個人による国債購入を促そうとしているのかという背景も理解する必要があります。
なぜ今、国債をNISAに入れようとしているのか
国債NISA法案が提出された背景には、日本銀行の金融政策の変化があります。
日本銀行は長年にわたり、大量の日本国債を市場から購入してきました。
日銀が国債を買うと国債価格が上昇し、長期金利は低下しやすくなります。
長期金利が低く抑えられることで、企業は低い金利で資金を借りやすくなり、住宅ローン金利なども上昇しにくくなります。
これは、日本銀行が長期間続けてきた大規模な金融緩和政策の中心的な仕組みの1つでした。
ところが、近年は日本でも物価や賃金が上昇し始めています。
そのため、日本銀行は金融政策を徐々に通常の状態へ戻そうとしています。
日銀が国債市場で巨大な買い手になりすぎると、市場の需給によって本来決まるはずの国債価格や金利が、正常に形成されにくくなります。
そこで、日本銀行は金利が急激に上昇しないよう注意しながら、国債の買い入れ額を段階的に減らしていると考えられます。
日銀が買わなくなった国債を誰が買うのか
日本銀行が国債の購入量を減らしたとしても、日本政府が国債を発行しなくなるわけではありません。
日本政府には、社会保障費、防衛費、経済対策、公共事業など、さまざまな支出があります。
さらに、過去に発行した国債が満期を迎えた際には、その返済資金を調達するために新たな国債を発行する、いわゆる借り換えも行われます。
そのため、日本政府は今後も一定規模の国債を発行し続ける必要があります。
これまで大量の国債を購入してきた日本銀行が買い入れを減らせば、その国債を別の投資家が購入しなければなりません。
候補となるのは、銀行、生命保険会社、年金基金、海外投資家、そして個人投資家です。
国民民主党の資料では、国債NISA法案によって期待される効果として、家計の安定的な資産形成と国債の円滑な発行が挙げられています。
つまり、この制度には個人の資産形成を支援する目的と同時に、個人に日本国債をより多く購入してもらう目的があると考えられます。
国債NISAは個人の資産形成支援なのか
個人が日本国債を購入すること自体には、大きな問題はありません。
国債は、生活防衛資金や数年以内に使う予定の資金など、守ることを重視するお金の置き場所として有力な選択肢です。
特に個人向け国債は、一定の条件を満たせば中途換金ができ、基本的には元本割れを避けやすい仕組みになっています。
普通預金よりも高い利回りが期待できることもあり、安全性と収益性のバランスを考えるうえでは有効です。
ただし、国債を購入してもらうためにNISAを使う必要があるのかという点には議論の余地があります。
NISAは本来、国民が長期的に資産を育てるための制度です。
現行のNISAでは、1人当たりの生涯投資枠が1800万円に限られています。
国が国債を買ってほしいという事情から、個人の限られた非課税枠に国債を追加するのであれば、制度の目的と手段が合っているのかを慎重に考える必要があります。
国債を税制面で優遇したいのであれば、NISAに入れるのではなく、国債の利子そのものを非課税にするという方法もあります。
あるいは、現在のNISAの1800万円とは別に、国債専用の非課税枠を設ける方法も考えられます。
その方が、株式や投資信託による長期的な資産形成を妨げることなく、個人による国債購入を促しやすくなるでしょう。
国債なら安全というイメージに注意が必要
国債NISAが導入された場合、特に注意したいのが「国債は安全だから初心者にも安心」というイメージだけが広がることです。
日本には、投資には興味があるものの、元本割れや株価下落を強く恐れている人が少なくありません。
預金よりは増やしたいものの、株式ほど価格が上下する商品には投資したくないという需要があります。
金融機関もこうした需要を把握しており、「貯金以上、投資未満」といったコンセプトの商品を販売しています。
動画では、住友生命の積立保険が例として紹介されています。
月1万円を5年間支払い、払込総額が60万円、10年後の積立金額が約63万7000円になる商品では、返戻率は106.1%です。
ここで注意したいのは、1年間で6.1%増えるのではなく、10年間で6.1%増えるという点です。
保証がついた保険商品であるため、株式投資信託と単純に比較することはできません。
しかし、老後資産を大きく増やす主力商品として考えた場合には、資産形成のスピードはかなり緩やかです。
そこへ、国の商品、元本保証、非課税、相続税も優遇される可能性がある国債NISAが登場すれば、投資初心者にとって非常に魅力的に映るでしょう。
その結果、株式は暴落する危険な商品、国債は国が守ってくれる安全な商品という単純な印象が広がる可能性があります。
しかし、金融商品を選ぶ際には、安全か危険かという2択ではなく、どのようなリスクがあるのかを具体的に見る必要があります。
金融における「リスク」の本当の意味
一般的な会話では、リスクという言葉は危険、事故、損失など、できるだけ避けるべきものとして使われます。
一方、金融の世界でいうリスクは、価格やリターンの変動幅、将来の結果がどの程度不確実かという意味です。
株式は大きく値上がりする可能性がある一方、大きく値下がりする可能性もあります。
そのため、株式はリスクが高い金融商品だといわれます。
国債は一般的に株式よりも値動きが小さく、個人向け国債には額面で換金しやすい仕組みもあります。
したがって、価格変動という意味ではリスクが低いといえます。
ただし、リスクが低いことと、長期的に見て何の問題もないことは同じではありません。
株式は企業の一部を保有する金融商品です。
企業の業績が悪化すれば株価は下がり、景気が後退すれば株式市場全体が下落することもあります。
その不確実性を引き受ける代わりに、投資家は企業利益や経済成長の恩恵を受けることができます。
この上乗せ収益の可能性が、リスクプレミアムと呼ばれるものです。
一方、国債は値動きや元本割れの可能性を抑えやすい代わりに、株式ほど高いリターンは期待しにくくなります。
値下がりはしたくないものの、高い利益だけは得たいという都合の良い金融商品は基本的に存在しません。
株式と国債では長期リターンに大きな差がある
動画では、米国株式と米国長期国債の実質リターンに関するデータが紹介されています。
過去の長期的な実績では、米国株式の実質リターンが年6.6%程度だったのに対し、米国の長期国債は年1.6%程度とされ、約5%の差がありました。
これはあくまでも過去の実績であり、将来のリターンを保証するものではありません。
しかし、年数%の差が数十年間続くと、最終的な資産額には非常に大きな違いが生まれます。
例えば、25歳から65歳までの40年間、毎月3万円を積み立てたとします。
積立元本は合計1440万円です。
年2%で運用した場合、最終的な資産額は約2200万円になります。
毎月5万円を積み立てた場合は、約3670万円です。
一方、年7%で運用できた場合、毎月3万円の積立額は約7870万円になります。
毎月5万円であれば、約1億3100万円です。
毎月3万円のケースでは、年2%と年7%の差によって、最終的な資産額に5000万円以上の差が生じます。
毎月5万円の場合には、差は約9400万円に広がります。
もちろん、株式が毎年安定して7%ずつ増えるわけではありません。
金融危機や景気後退が起きれば、株価が30%から40%下落することもあります。
しかし、その大きな価格変動を長期間引き受けた対価として、過去の株式は国債を上回るリターンを生み出してきました。
元本が減らないことだけが安全ではない
国債で運用した場合、元本が減っていなければ損をしていないように見えます。
しかし、40年間にわたって株式で運用した人との資産差が数千万円に広がれば、人生の選択肢にも大きな違いが生まれます。
例えば、仕事を辞められる時期、旅行へ行ける回数、介護に使える資金、家族へ残せる資産などが変わる可能性があります。
元本は減らなかったものの、資産が十分に育たず、将来の選択肢が減ってしまうこともリスクの1つです。
特に若い世代が、値動きが少なく安心だからという理由だけで、老後まで使わない資金をすべて国債で運用する場合には注意が必要です。
20年から40年という長期間では、株式とのリターン差が非常に大きくなる可能性があります。
インフレによってお金の価値は減少する
国債や預金を考える際には、金額だけでなく購買力を見る必要があります。
仮に物価が毎年2%ずつ上昇した場合、現在の100万円の実質的な価値は、10年後には約82万円、20年後には約67万円、40年後には約45万円まで低下します。
通帳や証券口座に表示されている金額が100万円のままでも、その100万円で買える商品やサービスは減っていきます。
つまり、額面上は元本が減っていなくても、実質的には資産価値が減少している可能性があります。
国債の利回りがインフレ率を下回れば、税引き前では利益が出ていても、実質的な購買力は低下します。
退職後の生活費や数年以内に使う予定のお金であれば、値動きを抑えることには大きな意味があります。
しかし、25歳、30歳、40歳の人が、長期間使わない資金まで国債だけで運用すると、インフレと低いリターンによって資産形成が遅れる可能性があります。
利回り4%の30年国債は本当に魅力的なのか
国民民主党の玉木代表は、X上で国債NISAに関するシミュレーションを公開したとされています。
その内容は、50歳で1000万円分の30年国債を購入し、利回り年4.013%で30年間複利運用するというものです。
NISA口座で運用した場合、80歳時点で約3256万円になります。
一方、現在の課税制度のまま運用した場合は約2571万円となり、非課税による差額は約685万円になります。
利回り4%前後という条件は、現実離れした数字ではありません。
30年国債では、実際に利回りが4%近くなる場面があります。
ただし、シミュレーションを現実の運用に当てはめる際には、いくつか重要な前提条件があります。
30年国債は自動的に複利運用されない
30年国債の利子は、一般的に半年ごとに現金で支払われます。
投資信託のように、受け取った利益が商品内部で自動的に再投資されるわけではありません。
複利で運用するためには、受け取った利子を投資家自身が再投資する必要があります。
さらに、30年間にわたって、毎回4%前後の利回りで再投資できる保証はありません。
将来、金利が低下すれば、受け取った利子を再投資する際の利回りも下がる可能性があります。
反対に金利が上昇する可能性もありますが、30年間にわたり同じ利回りが続く前提はかなり強いといえます。
これは再投資リスクと呼ばれます。
80歳まで利子を使わない前提になっている
1000万円を約3256万円にするためには、50歳から80歳までの30年間、受け取った利子を一切使わず、すべて再投資する必要があります。
しかし、老後資金は増やすことだけが目的ではありません。
旅行、趣味、医療、介護、住まいの修繕など、元気なうちに使うことも重要です。
80歳になった時点で大きな資産を持っていても、体力や健康状態によっては、その資産を十分に活用できない可能性があります。
資産形成では、最終的な資産額だけでなく、いつ、何のために使うのかという視点も欠かせません。
30年国債は途中で売却すると元本割れする可能性がある
通常の30年国債は、満期まで保有すれば額面金額で償還されます。
しかし、満期前に売却する場合は、その時点の市場価格で売ることになります。
国債価格と市場金利は、基本的に反対方向へ動きます。
購入後に市場金利が上昇すると、すでに発行されている低い利率の国債は魅力が低下するため、価格が下落します。
例えば、保有している国債の利率が4%で、新しく発行される国債の利率が5%になれば、投資家は新しい国債を選びやすくなります。
そのため、古い国債を途中で売るには、価格を下げなければ買い手が見つかりにくくなります。
50歳で30年国債を購入した場合、80歳まで保有すれば額面で償還されます。
しかし、その間に病気、介護、住宅修繕、家族への支援などで現金が必要になる可能性はあります。
途中売却の必要が生じた時点で金利が上昇していれば、元本割れする恐れがあります。
1000万円を一括投資できるとは限らない
現行NISAでは、年間投資枠はつみたて投資枠と成長投資枠を合わせて最大360万円です。
そのため、1000万円を同じ年に一括してNISA口座へ投資することはできません。
複数年に分けて購入する必要があります。
購入時期が異なれば、その都度、国債価格や利回りも変わります。
したがって、1000万円全額を同じ利回りで一括購入するシミュレーションは、現在のNISA制度とは条件が異なります。
国債NISA法案によって年間投資枠の扱いが変更される可能性はありますが、少なくとも現行制度を前提にすれば注意が必要です。
30年後の3256万円は現在の3256万円と同じ価値ではない
30年後に受け取る3256万円は名目額です。
仮に物価が毎年2%上昇した場合、30年後の3256万円を現在価値に換算すると、およそ1800万円程度になります。
つまり、口座上では1000万円が3256万円に増えていても、実際に購入できる商品やサービスの量は、額面ほど増えていない可能性があります。
国債の運用結果を考える際には、利回りだけでなく、インフレを差し引いた実質利回りを見ることが重要です。
利回り4%で物価上昇率が2%なら、単純に考えた実質的な増加率は約2%です。
さらに税金や再投資条件などによって、実際の結果は変わります。
国債は種類によって仕組みが異なる
国債という言葉で一括りにされがちですが、商品によって性質は大きく異なります。
動画では、主に個人向け国債、通常の30年国債、国内債券ファンドの違いが説明されています。
個人向け国債
個人向け国債には、主に次の3種類があります。
・変動10年
・固定5年
・固定3年
動画で紹介された7月募集分の利率は、変動10年が年1.8%、固定5年が年1.95%、固定3年が年1.56%です。
個人向け国債は、発行から1年が経過すれば中途換金できます。
中途換金する場合には、原則として直前2回分の利子相当額が差し引かれます。
ただし、通常は額面金額を基準に換金されるため、一般的な長期国債と比べて元本割れしにくい仕組みです。
数年以内に使う予定がある資金や、生活防衛資金の一部を置いておく手段として使いやすい商品です。
通常の30年国債
30年国債は市場で取引される国債です。
満期まで保有すれば額面金額で償還されますが、満期前に売却する場合は市場価格で売ることになります。
市場金利が上昇すれば、国債価格が下落する可能性があります。
償還までの期間が長い債券ほど、金利変動による価格への影響が大きくなる傾向があります。
そのため、利回りが高いからといって、個人向け国債と同じ感覚で購入すると想定外の値下がりに直面する可能性があります。
国内債券ファンド
国内債券ファンドは、複数の日本国債や社債などに投資する投資信託です。
一部の国内債券ファンドは、すでにNISAの対象になっています。
債券という言葉から、価格がほとんど下がらない商品を想像する人もいるかもしれません。
しかし、債券ファンドには満期がありません。
ファンドの中では債券の売買が継続的に行われるため、金利上昇局面では基準価額が下落する可能性があります。
動画では、eMAXIS Slim国内債券インデックスについて、基準日によって数字は変動するものの、直近5年間で約15%から16%下落している例が紹介されています。
日本の金利が上昇したことで、以前に発行された低金利の債券価格が下落したことが一因です。
債券ファンドは、個人向け国債のように満期まで保有すれば元本が戻る仕組みではありません。
国債、債券ファンド、個人向け国債は、それぞれ異なる金融商品として理解する必要があります。
NISAで国債を買わないという考え方
動画の発信者は、現在の条件であればNISAでは国債を買わないとしています。
理由は、NISAの非課税効果は利益が大きいほど高くなるからです。
通常、投資によって得た利益には約20%の税金がかかります。
利益が100万円であれば、税負担は約20万円です。
利益が1000万円なら、税負担は約200万円になります。
そのため、長期的に大きな利益が期待できる株式や株式投資信託をNISAに入れた方が、非課税の恩恵を受けやすいと考えられます。
一方、国債は株式より期待リターンが低い傾向があります。
利益が小さければ、非課税によって節税できる金額も小さくなります。
限られた生涯投資枠1800万円を有効に使うという観点では、長期間使わない資金には株式や株式投資信託を優先するという考え方には合理性があります。
全財産を株式へ投資するという意味ではない
NISAで国債を買わないという考え方は、すべての資産を株式に投資することを意味しません。
資産形成では、お金を使う時期や目的によって分けることが重要です。
長期間使わない「育てるお金」
老後まで15年から20年以上使わない資金は、株式や株式投資信託を活用し、NISAで優先的に運用する方法が考えられます。
長期間保有できれば、短期的な価格変動を乗り越えながら、企業利益や経済成長を取り込める可能性があります。
数年以内に使う「守るお金」
教育費、住宅の修繕費、車の購入資金、数年以内の生活費などは、価格変動の大きい株式には向きにくい資金です。
こうした資金には、普通預金、定期預金、個人向け国債などが候補になります。
高いリターンよりも、必要なときに大きく減っていないことが重要です。
すぐに使う可能性があるお金
明日や来月に使う可能性がある資金は、普通預金に置いておくのが基本です。
個人向け国債は発行から1年間、中途換金できないという制限があります。
そのため、緊急時にすぐ必要になる生活防衛資金の全額を個人向け国債へ移すのは適切ではありません。
当面必要な現金は普通預金で確保し、余裕資金の一部を個人向け国債に回すといった使い分けが考えられます。
金融商品にはそれぞれ異なるリスクがある
投資商品にリスクがある一方で、預金や国債にはリスクがないと考える人もいます。
しかし、実際には、どの金融商品にも異なる形のリスクがあります。
株式には、価格が大きく下落するリスクがあります。
その代わり、企業利益や経済成長を取り込めるリスクプレミアムがあります。
現金や預金には、インフレによって購買力が低下するリスクがあります。
国債には、資産が十分に増えず、長期的な資産形成が遅れるリスクがあります。
通常の長期国債には、満期前に売却すると価格が下落している可能性があります。
固定金利の国債には、受け取った利子を同じ金利で再投資できない再投資リスクがあります。
どの商品にもリスクはあります。
違いは、リスクが存在するかどうかではなく、どのような形で現れるかです。
「元本保証」「非課税」「利回り4%」だけで判断してはいけない
国債NISAが今後推進される場合、制度を説明する側には慎重さが求められます。
元本保証、非課税、国の商品、利回り4%、30年間という言葉だけを並べると、非常に安全で高収益な商品に見えます。
しかし、実際にはさまざまな条件があります。
30年国債は満期前に売れば元本割れする可能性があります。
利子を複利運用するには、自分で再投資しなければなりません。
将来も同じ利回りで再投資できる保証はありません。
30年間保有する間に、資金が必要になる可能性もあります。
さらに、インフレを考慮すれば、30年後の金額は現在と同じ価値ではありません。
若い世代が国債だけを長期間保有すれば、株式との資産差が数千万円に広がる可能性もあります。
価格が下がらない安心感には、機会費用が伴います。
高いリターンを得られる可能性を手放すことで、将来の資産額や人生の選択肢が小さくなる可能性があります。
安心は無料ではなく、低い将来リターンという形で対価を支払っているとも考えられます。
国債NISA法案を考える際の重要なポイント
国債NISAは、守る資産を非課税で運用したい人にとって魅力的な制度になる可能性があります。
特に、退職が近い人や、株式の値動きに耐えられない人、近い将来に使う資金を少しでも有利に運用したい人には選択肢となるでしょう。
一方で、長期の資産形成を目的とする若い世代が、NISAの大半を国債で埋めることが適切かどうかは慎重に考える必要があります。
NISAの生涯投資枠は1800万円に限られています。
非課税枠を国債に使えば、その分だけ株式や株式投資信託を非課税で保有できる枠が減ります。
国債を購入する際には、単に利回りだけを見るのではなく、次の点を確認することが重要です。
・個人向け国債なのか、通常の国債なのか
・満期まで保有できるのか
・途中売却した場合に価格が下がる可能性はあるのか
・利子は自動的に再投資されるのか
・受け取った利子を同じ利回りで再投資できるのか
・インフレを考慮した実質リターンはいくらか
・NISA枠を国債に使うことで、ほかの投資機会を失わないか
こうした条件を理解したうえで、自分のお金の目的に合わせて選ぶ必要があります。
まとめ
国債NISA法案は、NISAで日本国債を直接購入できるようにし、利子や売却益を非課税にすることを目指す法案です。
国債を非課税で保有できれば、預金より高い利回りを求めつつ、株式ほど大きな値動きを避けたい人にとって有力な選択肢になる可能性があります。
一方、この法案には、日本銀行が国債の買い入れを減らすなかで、個人投資家に国債を購入してもらい、国債発行を円滑に進めたいという政策的な背景もあります。
国債がNISAの対象になったとしても、すべての人が購入すべきとは限りません。
特に、利回り4%の30年国債については、30年間同じ利回りで再投資できる保証がないこと、途中売却では元本割れする可能性があること、複利運用には利子の再投資が必要なこと、インフレによって実質価値が低下することを理解する必要があります。
また、個人向け国債、通常の長期国債、債券ファンドでは、元本や価格変動、中途換金の仕組みが大きく異なります。
国債という名前だけで、安全性を一括りにしてはいけません。
NISAは限られた非課税枠です。
長期間使わない育てるお金には株式や株式投資信託を使い、数年以内に使う守るお金には預金や個人向け国債を使うなど、目的に応じた使い分けが重要です。
国債は資産を守るための有力な道具ですが、資産を大きく育てる主力商品とは限りません。
元本が減らない安心感だけでなく、インフレや機会損失、将来の資産額まで含めて考えることで、自分に合った資産配分が見えてくるでしょう。


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