日経平均が1315円安から急反発した理由とは?米CPIで相場が激変する可能性と半導体株の行方を解説

本記事は、YouTube動画『今日は日経急落後に急反発の理由と明日激変する理由がやばい』の内容を基に構成しています。

日経平均株価は大幅に下落し、終値では前日比1315円安の6万7243円となりました。取引時間中には6万6653円まで売られる場面があり、高値から安値までの下落幅は2400円を超えています。

しかし、14時30分ごろに台湾の半導体大手TSMCに関する好材料が伝わると、日経平均は安値から約590円反発しました。

この動きから分かるのは、市場がTSMCの材料を完全に無視したわけでも、全面的に好感したわけでもないということです。

日経平均は大幅安となった一方、東証株価指数のTOPIXは上昇しました。つまり、今回の下落は日本株全体が一斉に売られた「全面的な暴落」ではなく、日経平均への影響が大きい半導体株や値がさ株に売りが集中した可能性があります。

さらに市場の関心は、米国で発表される消費者物価指数、いわゆるCPIへと移っています。

CPIの結果次第では、米国金利、NASDAQ、半導体株、ドル円、日経平均先物が大きく動く可能性があります。今回の相場では、表面的な上げ下げだけでなく、機関投資家のヘッジ取引や個人投資家の損切りまで含めて考えることが重要です。

目次

日経平均1315円安は日本株全体の暴落ではない

今回の日経平均の下落だけを見ると、日本株全体が崩れたように感じるかもしれません。

しかし、日経平均が1315円安となった一方で、TOPIXは上昇しました。この違いは非常に重要です。

日経平均とTOPIXは、どちらも日本株の代表的な株価指数ですが、指数の計算方法が異なります。

日経平均は、採用銘柄のうち株価の高い銘柄、いわゆる値がさ株の影響を強く受けます。東京エレクトロンやアドバンテストなど、一部の値がさ半導体株が大きく下落すると、それだけで日経平均を数百円押し下げることがあります。

一方、TOPIXは企業の時価総額を重視して計算される指数です。

TOPIXが上昇していたということは、銀行、保険、内需、高配当株など、日経平均では目立ちにくい銘柄には資金が残っていた可能性があります。

つまり、今回起きたのは日本企業全体に対する失望ではなく、特定の業種や銘柄から別の業種への資金移動だったと考えられます。

例えるなら、街全体が停電したのではなく、高層ビルが集中する一角だけで電気が消えたような状態です。

日経平均が大きく下落したからといって、保有している日本株をすべて同じ危険度で判断する必要はありません。まずは、自分が保有している銘柄が日経平均型なのか、TOPIX型なのかを確認することが大切です。

相場急落時に起きる機関投資家の資金移動

機関投資家は、相場が不安定になったからといって、必ずしも保有株をすべて売却するわけではありません。

株価上昇によって割高感が強くなった半導体株やAI関連株を減らし、金利上昇に比較的強い銀行株や、価格変動の小さいディフェンシブ銘柄へ資金を移すことがあります。

今回の相場も、こうした資金移動が起きた可能性があります。

半導体株が大きく売られた一方で、銀行株や内需株が買われているのであれば、市場全体から資金が逃げたわけではありません。

投資家の資金が消えたのではなく、株式市場の中で移動しただけです。

日経平均の下落幅だけを見てパニックになるのではなく、TOPIX、業種別指数、値上がり銘柄数、値下がり銘柄数まで確認することで、市場の実態をより正確に把握できます。

なぜ半導体株だけが狙われたのか

半導体株が大きく売られた理由を、単純に半導体需要の減少や企業業績の悪化と考えるのは早計です。

今回の下落では、企業の利益そのものよりも、株価を評価する際の基準が変化した可能性があります。

半導体企業やAI関連企業の株価には、現在の利益だけでなく、数年後に利益が大きく伸びるという期待が織り込まれています。

例えるなら、まだ完成していない高層マンションを、完成後の人気や将来の値上がりまで含めた高い価格で購入しているようなものです。

ところが、米国の金利が上昇すると、将来得られる利益の現在価値は低下します。

銀行預金や国債から比較的高い利回りを得られるようになると、遠い将来まで待たなければ得られない利益に対して、投資家は以前ほど高い価格を支払わなくなります。

そのため、半導体企業の業績が悪化していなくても、米国金利が上昇しただけでPERの高い成長株が売られることがあります。

これが、米国のCPIが日本の半導体株にも大きな影響を与える理由です。

米国CPIが日本株を動かす仕組み

CPIは米国の物価動向を示す経済指標です。

一見すると日本株とは関係が薄いように思えますが、実際には日経平均や半導体株を大きく動かす重要な指標です。

CPIが市場予想を上回ると、米連邦準備制度理事会であるFRBが政策金利を高い状態に維持するとの見方が強まります。

その結果、米国債の利回りが上昇し、NASDAQや半導体株など、金利上昇に弱い成長株が売られやすくなります。

米国の半導体株が下落すると、夜間の日経平均先物を通じて日本市場にも売りが波及します。翌日の東京市場では、東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、SCREENホールディングスなどが売られ、日経平均を大きく押し下げる可能性があります。

反対にCPIが市場予想を下回れば、米国金利が低下し、これまで売られていた半導体株が買い戻されることがあります。

重要なのは、半導体企業の技術力や需要が一晩で変化するわけではないという点です。

変化するのは、市場が株価を評価する際に使う「物差し」です。

TSMCの売上高68%増は本当に強い材料なのか

台湾の半導体大手TSMCは、6月の売上高が前年同月比68%増、前月比6%増になったと発表しました。

数字だけを見れば、半導体株にとって非常に強い材料に見えます。AI向け半導体需要が引き続き旺盛であることを示す数字だからです。

ただし、株価を見る際には、前年同月比68%増という見出しだけで判断しないことが大切です。

動画では、第2四半期全体の売上高は前年同期比で約36%増となり、市場予想に対する上振れは1%未満だったと解説されています。

つまり、TSMCの業績は非常に強かったものの、市場参加者が驚くほど予想を上回ったわけではないということです。

6月単月の伸び率が大きくなった背景には、前年6月の売上高が比較的低かったことも影響している可能性があります。

前年の比較対象が低ければ、今年の売上高が同じように伸びていても、増加率は大きく表示されます。これを「ベース効果」と呼びます。

また、半導体の売上高は毎月均等に計上されるとは限りません。出荷や検収のタイミングによって、月ごとの売上高が大きく変動することがあります。

だからといって、TSMCの成長が偽物だという意味ではありません。

AI向けの最先端半導体、3ナノメートル製品、先端パッケージングなどの需要が強いことは、半導体業界にとって重要な追い風です。

ただし株価にとって重要なのは、数字が良いか悪いかではありません。市場予想よりどの程度良かったかという点です。

好決算でも株価が下がる理由

株式市場では、好決算を発表した企業の株価が下落することがあります。

初心者にとっては理解しにくい動きですが、その理由は市場の期待値にあります。

すでに株価が大きく上昇し、多くの投資家が高成長を期待している場合、良い決算を発表するだけでは十分ではありません。

市場予想を大幅に上回り、さらに将来の業績見通しまで引き上げなければ、追加の買い材料にならないことがあります。

例えるなら、テストで90点を取ったとしても、周囲が100点を期待していれば評価されにくいのと同じです。

90点は十分に優秀です。しかし、株式市場では絶対的な点数よりも、期待との差が重視されます。

TSMCの売上高68%増という数字も、企業の成長力を示す強い数字です。しかし、その成長がすでに株価へ織り込まれている場合、株価をさらに押し上げるには、より大きな上振れが必要になります。

14時30分に起きた日経平均の急反発

日経平均は14時30分ごろに6万6653円の安値をつけました。

この時間帯は、TSMCの月次売上高が発表された時刻と重なっています。

発表後、日経平均は安値から約590円反発しました。

もしTSMCの数字が完全な悪材料だったのであれば、発表後も売りが続いていた可能性が高いでしょう。

反対に、圧倒的な好材料として受け止められたのであれば、日経平均は下落幅をさらに大きく縮小しても不思議ではありません。

しかし実際には、日経平均は安値から戻したものの、終値ではなお1315円安でした。

この値動きからは、TSMCの売上高が半導体株の下値を支えた一方で、米国金利の上昇懸念やAI株の割高感を打ち消すほどの材料ではなかったことがうかがえます。

現在の半導体相場では、業績も需要も強い一方で、株価はそれ以上の成長を要求しています。

これが、半導体相場を難しくしている最大の理由です。

TSMC決算で重要なのは設備投資とAI需要の見通し

今後のTSMCで本当に重要なのは、過去1か月の売上高だけではありません。

市場が注目するのは、決算説明会で示される設備投資計画やAI需要の見通しです。

特に確認したいのは、次のような点です。

  • 設備投資額を引き上げるのか
  • AI向け半導体需要の見通しを上方修正するのか
  • 2ナノメートル製品の量産計画に変更があるのか
  • 先端パッケージングの生産能力をどこまで増強するのか
  • 高性能半導体の受注が今後も維持されるのか

日本の半導体関連企業にとっては、TSMCの売上高そのものより、TSMCが今後どれだけ工場や製造装置へ投資するかが重要です。

東京エレクトロン、SCREENホールディングス、ディスコ、アドバンテストなどは、TSMCや世界の半導体メーカーによる設備投資の影響を強く受けます。

TSMCが設備投資を拡大すれば、日本の半導体製造装置や検査装置、材料関連企業にとって追い風となります。

反対に設備投資計画が抑制されれば、TSMCの売上高が増えていても、日本の装置株には失望売りが出る可能性があります。

CPIで見るべき数字は総合指数だけではない

米国CPIが発表されると、ニュースでは総合CPIの前年同月比が大きく報道される傾向があります。

しかし、今回の相場で特に重要なのは、食品とエネルギーを除いたコアCPIの前月比です。

総合CPIにはガソリンや原油など、価格変動の大きいエネルギーが含まれます。

ガソリン価格が前月より大きく下落している場合、総合CPIは自然に低く見えます。

しかし、その裏側で家賃、医療、保険、外食、人件費を反映しやすいサービス価格が高止まりしていれば、FRBはインフレが十分に収まっていないと判断する可能性があります。

そのため、総合CPIが低かったからといって、単純に株高になるとは限りません。

市場が最も警戒すべきなのは、総合CPIの低下を見て株価が一度上昇した後、コアCPIや住居費の高さが確認され、米国金利が上昇する展開です。

CPI発表後の「だまし上げ」に注意

CPI発表直後は、アルゴリズムによる高速取引が見出しの数字に瞬時に反応します。

総合CPIが市場予想を下回った場合、発表直後にNASDAQ先物や日経平均先物が急上昇することがあります。

しかし、数分後にコアCPI、住居費、サービス価格などの内訳が分析されると、最初の反応が逆転することがあります。

例えば、総合CPIは低下していても、コアCPIや住居費が高止まりしていれば、米国債利回りが上昇します。

するとNASDAQ先物や半導体株が反落し、日経平均先物も急落する可能性があります。

このように、一度上昇した後に急反落する動きが「だまし上げ」です。

個人投資家が巻き込まれやすいのは、大きく下がった場面よりも、最初の上昇を見て安心した直後です。

機関投資家や高速取引は見出しの数字へ一瞬で反応しますが、その後は内訳を分析した投資家が売買を修正します。

したがって、発表直後の1分間の値動きだけで、相場の方向を決めつけないことが重要です。

CPI発表後に確認したい順番

CPI発表後は、数字そのものだけでなく、市場が数字をどう評価したかを見る必要があります。

確認したい順番は次の通りです。

  • コアCPIの前月比
  • 米国2年債利回り
  • 米国10年債利回り
  • NASDAQ先物
  • 半導体株指数
  • ドル円
  • 日経平均先物

特に重要なのは、米国2年債利回りです。

2年債利回りはFRBの金融政策見通しを反映しやすく、CPI発表後の利上げ・利下げ観測を確認する際に役立ちます。

CPIが低かったにもかかわらず2年債利回りが上昇する場合、内訳にインフレ再加速を示す要素が含まれている可能性があります。

反対にCPIが高かったにもかかわらず、米国金利や半導体株がほとんど下落しない場合、悪材料がすでに株価へ織り込まれていた可能性があります。

数字よりも、市場の反応が重要です。

日経平均が上昇するシナリオ

強気シナリオは、コアCPIの前月比が0.2%以下となり、住居費やサービス価格にも鈍化が確認される場合です。

この場合、インフレが落ち着きつつあるとの見方が強まり、FRBが高金利を長期間維持する必要性が低下します。

米国2年債や10年債の利回りが低下すれば、NASDAQや半導体株は反発しやすくなります。

動画では、この場合の日経平均の想定範囲として、6万8250円から6万9600円が示されています。

特に注目したいのが、海外投資家による先物の買い戻しです。

海外投資家が現物株を買いながら日経平均先物を売っている場合、それは日本企業の中長期的な成長には期待しつつ、短期的な指数下落には備えている状態です。

先物売りは、保有している現物株の下落リスクを抑える保険として利用されます。

CPIが低下し、相場の下落リスクが後退すれば、投資家は保険として売っていた先物を買い戻す必要があります。

この買い戻しは、通常の新規買いよりも短時間に集中しやすいため、日経平均が一晩で大きく反発することがあります。

さらにTSMCの売上好調が再評価されれば、今回大きく売られた半導体株に買い戻しが集中する可能性があります。

強気シナリオでも輸出株には注意

CPIが低下すれば、すべての日本株が上昇するとは限りません。

米国金利が下がると、ドルが売られ、ドル円が円高方向へ動きやすくなります。

円高は、海外売上高の大きい自動車、機械、電機などの輸出企業にとって逆風になります。

半導体株は金利低下を好感して上昇する一方、輸出株は円高を警戒して伸び悩む可能性があります。

この場合、日経平均とTOPIXの動きが再び分かれることも考えられます。

CPIが低いから日本株全面高、CPIが高いから日本株全面安という単純な関係ではありません。

金利、為替、業種ごとの影響を分けて考えることが必要です。

日経平均が下落するシナリオ

警戒すべき弱気シナリオは、コアCPIの前月比が0.3%以上となり、住居費やサービス価格の高止まりが確認される場合です。

前月比0.3%という数字は小さく見えますが、同じペースが1年間続けば、単純計算では年率約3.7%となります。

これはFRBが目標とする2%を大きく上回る水準です。

市場では、利下げの後ずれや高金利の長期化、場合によっては追加利上げへの警戒が強まります。

米国2年債や10年債の利回りが上昇し、NASDAQや半導体株が下落すれば、日経平均はまず今回の安値である6万6653円を試す可能性があります。

この水準を明確に割り込めば、6万5000円、さらに6万4000円台が視野に入ります。

円安が日本株を守らない可能性

一般的に円安は、日本の輸出企業にとって業績上のプラス材料です。

海外で得た利益を円へ換算した際の金額が増えるためです。

しかし、円安が極端な水準まで進むと、必ずしも日本株全体にとって好材料にはなりません。

急激な円安が進めば、政府・日銀による為替介入への警戒が強まります。

また、原油、天然ガス、食料、原材料などの輸入価格が上昇し、企業や家計の負担が増えます。

さらに円安による物価上昇が続けば、日銀が追加利上げへ動くとの見方も強まります。

その結果、住宅ローンや企業の借入金利が上昇し、国内景気へ悪影響を与える可能性があります。

CPIが高く、ドル円が163円や164円へ上昇したとしても、円安がそのまま日本株の下支えになるとは限りません。

現在のような円安水準では、輸出企業の利益増加よりも、介入、輸入インフレ、国内金利上昇への警戒が強くなる場合があります。

原油高と円安が重なるテールリスク

日本は原油の多くを海外から輸入しています。

そのため、円安と原油高が同時に進むと、円換算した原油の輸入価格が急激に上昇します。

企業にとっては、電力、輸送、原材料などのコスト増加につながります。

動画では、コアCPIが前月比0.4%以上となり、米国10年債利回りが大きく上昇し、原油価格が1バレル80ドルを超える場合、日経平均が数日かけて6万2000円から6万4000円を試すテールリスクもあると解説されています。

ただし、これは中心的なシナリオではありません。

高いコアCPI、米国金利上昇、原油高、円安、信用取引の整理など、複数の悪材料が同時に重なった場合のリスクです。

最悪の数字だけを見て恐怖を膨らませるのではなく、どの条件がそろった時に弱気シナリオへ近づくのかを確認することが重要です。

海外投資家は現物を買いながら先物を売る

相場を理解するうえで重要なのが、投資家の需給です。

動画では、海外投資家が現物株を買いながら、株価指数先物を売る動きを続けていたと説明されています。

一見すると矛盾しているように見えます。

しかし、現物株を買う取引と先物を売る取引では、目的が異なります。

現物株の購入は、日本企業の中長期的な価値や成長性に投資する取引です。

一方の先物売りは、短期的な市場下落から保有資産を守るためのヘッジです。

機関投資家は、相場の未来を1つに決めつけません。

上昇した場合の利益を残しつつ、下落した場合の損失も抑えられるように、現物株と先物を組み合わせます。

個人投資家も、機関投資家の売買を単純な強気・弱気で判断するのではなく、現物と先物を分けて見る必要があります。

機関投資家と個人投資家の行動の違い

個人投資家は、株価が上昇している時には「乗り遅れたくない」と考え、高値で買いやすくなります。

一方、株価が大きく下落すると、恐怖から損切りすることがあります。

これに対して機関投資家は、金利、オプション、先物、ポジション量を見ながら、早い段階でヘッジを行います。

相場急落の初期に売るのは、金利上昇やオプション市場の変化を見て動く機関投資家であることが少なくありません。

その後、株価下落によって信用取引の損失が拡大すると、個人投資家に追加証拠金が発生します。

損失に耐えられなくなった投資家が、相場下落の後半で保有株を売却します。

つまり、最初の売り手と最後の売り手は同じではありません。

最初に売るのは、リスクを察知して動く機関投資家です。

最後に売らされるのは、損失や追証に耐えられなくなった個人投資家です。

長期的に市場へ残るためには、この「最後の売り手」になることを避けなければなりません。

日経平均が下がったのに恐怖指数が低下した理由

日経平均が大幅に下落したにもかかわらず、日経平均VIが低下するという、一見不思議な動きも見られました。

日経平均VIは、将来の日経平均の変動に対する市場参加者の予想を示す指数です。

一般的には「恐怖指数」と呼ばれ、相場が大きく下落すると上昇する傾向があります。

それにもかかわらずVIが低下した理由として、事前に下落へ備える保険がすでに多く買われていた可能性があります。

相場下落に備えてプットオプションを買っていた投資家が、実際の下落によって利益を確定し、保険を手放したのかもしれません。

また、大きなイベントへ向けて積み上がっていた警戒ポジションが、今回の下落によって一部解消された可能性もあります。

ただし、VIが低下したからといって安全になったとは限りません。

保険が一度解約された後に、CPIが市場予想から大きく外れれば、投資家が慌てて保険を買い直す動きが起きます。

オプションの売り手は、自らのリスクを抑えるために先物を売るため、相場の値動きがさらに増幅されることがあります。

日経平均とVIの組み合わせを確認する

CPI発表後は、日経平均が上がったか下がったかだけでなく、VIがどのように動いているかも確認する必要があります。

日経平均が下落しているにもかかわらずVIが低下している場合、売りの勢いが弱まりつつある可能性があります。

一方、日経平均が下落し、VIも急上昇している場合は、投資家の恐怖が強まり、機械的なヘッジ売りが加速している可能性があります。

株価と恐怖指数を組み合わせることで、相場下落の質を判断しやすくなります。

単なる利益確定なのか、それとも信用取引の整理やヘッジ売りを伴う本格的な下落なのかを見極める材料になります。

市場で起きている5つの逆説

今回の相場には、ニュースの見出しだけでは理解しにくい5つの逆説があります。

日経平均が暴落しても日本株全体が弱いとは限らない

日経平均が1000円以上下落しても、TOPIXが上昇しているなら、市場から資金が完全に流出したとは限りません。

半導体株や値がさ株から、銀行、内需、高配当株へ資金が移動している可能性があります。

TSMCの売上高が68%増でも株価が上がるとは限らない

株価を動かすのは、数字の絶対的な大きさではありません。

市場予想との差と、将来見通しです。

高い成長がすでに株価へ織り込まれていれば、好決算でも株価が下落することがあります。

CPIが低くても株価が下がることがある

総合CPIが低下しても、コアCPIや住居費、サービス価格が高止まりしていれば、米国金利が上昇する可能性があります。

市場は見出しの数字よりも、インフレの中身を見ています。

円安が進んでも日本株が上がらないことがある

緩やかな円安は輸出企業にプラスですが、過度な円安は為替介入、輸入物価上昇、日銀の利上げ観測を強めます。

円安が一定水準を超えると、好材料から悪材料へ変わる可能性があります。

恐怖指数が下がっても安全とは限らない

事前に買われていた保険が解約されたことでVIが下がっている場合、予想外の材料が出ると保険の買い直しが集中します。

その結果、株価の値幅がさらに拡大することがあります。

日経平均と半導体相場をSWOT分析

現在の日経平均と半導体相場を、強み、弱み、機会、脅威の4つに分けて整理します。

強み

TSMCの売上高は高い成長を維持しており、AI向け半導体需要も引き続き強い状態です。

日本の半導体製造装置、検査装置、材料、先端パッケージング関連企業には、中長期的な需要の追い風があります。

日本企業による自社株買いや企業統治改革も、日本株全体の構造的な下支えとなります。

さらに海外投資家は、先物を売ってリスクを抑えながらも、現物株を完全に手放しているわけではありません。

弱み

半導体株は、すでに高い成長を株価へ織り込んでいます。

良い決算を発表するだけでは上昇しにくく、市場予想を大幅に上回る数字や強い将来見通しが必要です。

また、日経平均は一部の値がさ株の影響を大きく受けます。

米国金利やNASDAQが下落すると、日本企業全体の業績が変化していなくても、日経平均が大きく下がる構造があります。

信用買いが積み上がった銘柄では、株価下落時に追証や損切りが発生し、下落が増幅される可能性があります。

機会

CPIが鈍化し、米国金利が低下すれば、海外投資家による先物ヘッジの買い戻しが発生する可能性があります。

今回大きく売られた半導体株に、TSMCの好調な業績が重なれば、急反発することも考えられます。

TSMCの決算説明会で設備投資計画やAI需要の見通しが引き上げられれば、日本の製造装置、検査装置、材料関連企業に新たな買い材料が生まれます。

脅威

コアCPIの再加速、米国金利の上昇、原油高、ドル円の急上昇が重なると、AI株のバリュエーション低下と日本の輸入インフレが同時に進みます。

さらに海外投資家の先物売り、オプション市場のヘッジ、信用取引の損切りが重なれば、企業業績以上に株価が下落する可能性があります。

このSWOT分析から分かるのは、半導体産業の中長期的な成長物語は維持されている一方、短期的な株価は金利と需給に大きく振り回されるということです。

長期投資家はCPIを当てようとしすぎない

長期投資家にとって大切なのは、CPIの数字を完璧に予想することではありません。

CPIが市場予想を上回るか下回るかを、事前に確実に当てることは困難です。

重要なのは、結果が出た後にどう対応するかを、あらかじめ考えておくことです。

上昇、下落、だまし上げの3つのシナリオを用意しておけば、発表直後の激しい値動きに振り回されにくくなります。

保有銘柄が日経平均型かTOPIX型か確認する

長期投資家が最初に確認したいのは、自分の保有銘柄がどの指数の影響を受けやすいかという点です。

半導体、AI、電子部品などの比率が高い場合、米国金利やNASDAQ、SOX指数の影響を強く受けます。

銀行、保険、内需、高配当株の比率が高い場合、日経平均が1000円下落しても、保有銘柄が同じように下落するとは限りません。

日本株という大きなくくりだけで判断せず、業種や収益構造まで分けて考えることが重要です。

株価ではなく投資前提を見る

株価が下落した時は、価格そのものよりも、投資を始めた時の前提が崩れていないかを確認する必要があります。

半導体株であれば、TSMCの設備投資、AI需要、受注、利益率、競争力などが重要です。

これらが維持されているにもかかわらず株価だけが下落している場合は、バリュエーション調整の可能性があります。

一方、株価が反発していても、設備投資や受注が減速し、利益率が悪化しているのであれば、上昇の持続性には注意が必要です。

価格と事業の前提を分けて考えることで、相場の値動きに感情を左右されにくくなります。

CPI発表直後に結論を出さない

CPI発表直後は、アルゴリズム取引によって株価、金利、為替が上下に大きく振れることがあります。

最初の数分間の値動きだけで、相場の方向を判断しないことが重要です。

コアCPI、米国2年債利回り、NASDAQ先物、半導体株指数、ドル円、日経平均先物の順に確認し、数字と市場反応が一致しているかを見ます。

CPIが低いのに米国金利が上昇する場合は、内訳に問題がある可能性があります。

CPIが高いのに半導体株が下落しない場合は、悪材料がすでに織り込まれている可能性があります。

発表された数字だけではなく、その数字に対して市場がどのように反応したかを見ることが大切です。

生活資金と投資資金を分ける

相場が大きく動いた時に最も苦しくなるのは、近いうちに必要となる生活資金まで株式市場へ置いている場合です。

生活費、住宅購入資金、教育費、税金など、近い将来に使う予定がある資金は、値動きの大きい資産とは分けて管理する必要があります。

長期投資では、時間を味方につけられる状態を作ることが最大の防御になります。

相場が下落しても、すぐに売却する必要がなければ、冷静に企業業績や投資前提を確認できます。

下落をすぐに失敗と決めつけない

長期投資では、株価が下がったこと自体よりも、下落によって投資前提が壊れたかどうかが重要です。

価格が下がっただけで、需要、受注、利益率、競争力が維持されているのであれば、市場の評価が調整された可能性があります。

一方、需要そのものが減少し、利益率や受注も悪化しているのであれば、投資前提の見直しが必要です。

株価の下落と、企業価値の悪化を分けて考えられる投資家は、パニック相場の中でも判断を失いにくくなります。

日経平均の重要ラインと強気シナリオの条件

動画では、強気シナリオへ傾く条件として、次のポイントが示されています。

コアCPIの前月比が0.2%以下となり、米国2年債利回りが低下し、米国半導体株が上昇することです。

さらに日経平均が6万8500円を回復し、6万9600円を終値で上回れば、今回の下落が短期的な需給調整だった可能性が高まります。

TSMCの好調な業績と、海外投資家による先物ヘッジの買い戻しが重なれば、日経平均が急反発することも考えられます。

弱気シナリオへ傾く条件

弱気シナリオへ傾く条件は、コアCPIの前月比が0.4%以上となり、米国債利回りが急上昇することです。

原油価格が1バレル80ドルを超え、日経平均が今回の安値である6万6653円を明確に割り込む場合も注意が必要です。

さらに6万5000円を割り込み、出来高と日経平均VIが同時に上昇する場合は、単なる押し目ではなく、信用取引の整理や機械的なヘッジ売りが始まっている可能性があります。

中立シナリオではTSMC決算が次の材料になる

CPIが市場予想通りとなり、米国金利が大きく動かず、日経平均が6万6500円から6万9000円の範囲で推移する場合は、中立シナリオとなります。

この場合、次の主役はTSMCの決算説明会です。

設備投資、AI需要、先端半導体、先端パッケージングの見通しが強ければ、日本の半導体関連株が再評価される可能性があります。

反対に設備投資を抑制し、AI需要の見通しを下方修正する場合は、日本の製造装置や検査装置企業の受注減速が警戒されます。

強気と弱気の見通しを撤回する条件

相場では、最初に立てたシナリオへ固執しないことも重要です。

強気見通しを撤回する条件は、TSMCが設備投資を抑え、AI需要の伸びを下方修正し、日本の半導体装置企業の受注も減速する場合です。

一方、弱気見通しを撤回する条件は、CPIが高かったにもかかわらず米国金利が上昇せず、半導体株も下落しない場合です。

悪材料が出ても相場が下がらない時は、すでに売りたい投資家が減っている可能性があります。

市場では、材料そのものよりも、材料に対する反応の強さを見ることが重要です。

まとめ

今回の日経平均1315円安を、単純な日本株全体の暴落と考えると、相場の本質を見失う可能性があります。

日経平均が大幅安となった一方でTOPIXが上昇していることから、日本企業全体が売られたのではなく、半導体株や値がさ株から銀行、内需、高配当株などへ資金が移動した可能性があります。

TSMCの6月売上高が前年同月比68%増となったことは、AI向け半導体需要の強さを示す重要な材料です。

ただし、第2四半期全体の伸び率や市場予想との差を見ると、投資家が驚くほどの上振れではなかったとされています。

企業業績は強い一方、市場の期待も非常に高い状態です。

そのため、良い数字が発表されたからといって、必ず株価が上昇するわけではありません。

米国CPIで特に重要なのは、総合CPIだけでなく、食品とエネルギーを除いたコアCPIの前月比です。

総合CPIが低下しても、コアCPI、住居費、サービス価格が高止まりしていれば、米国金利が上昇し、半導体株が売られる可能性があります。

最も警戒したいのは、総合CPIの低下を見て先物が一度上昇した後、コアインフレの高さが確認され、米国金利の上昇とともに相場が急反落する「だまし上げ」です。

強気シナリオでは、米国金利の低下、海外投資家による先物ヘッジの買い戻し、TSMCの好調な業績が重なり、日経平均が6万9000円台を試す可能性があります。

弱気シナリオでは、米国金利上昇、原油高、過度な円安、信用取引の整理が重なり、6万5000円や6万4000円台を試す可能性があります。

ただし、現時点でどちらか一方へ決めつける必要はありません。

相場は未来を完全に予言するものではなく、条件を確認しながら対応するものです。

日経平均の値動きだけでなく、TOPIX、米国2年債利回り、NASDAQ先物、半導体株指数、ドル円、日経平均VI、TSMCの設備投資計画まで確認することで、ニュースの見出しだけでは見えない相場の実態に近づけます。

投資家が学ぶ目的は、すべての値動きを当てることではありません。

市場のパニックや短期的な需給の罠に巻き込まれず、長期的に市場へ残り続けることです。

なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や個別銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえたうえで行ってください。

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