英当局が“6.1万BTC”押収──中国発・世界最大級の暗号資産事件を時系列で完全解説

目次

中国の「ビットコイン女王」から1兆円押収!

― イギリス史上最大の暗号資産事件をやさしく解説 ―

2025年10月、イギリスの裁判所が“世界最大級”と呼ばれる暗号資産の押収を正式に発表しました。
押収されたビットコインの総額は、なんと約6万1,000BTC


日本円にしておよそ1兆円という、とんでもない規模です。

このビットコインを所有していたのは、中国人女性の銭志敏(せん・しびん/英名Yadi Zhang)
一部の海外メディアでは「ビットコイン女王(Bitcoin Queen)」と呼ばれています。


1. どんな事件だったのか?

銭志敏は、中国で投資家からお金を集める“投資ビジネス”を装い、実際はポンジ・スキーム(ねずみ講的な詐欺)で莫大な資金を手にしていました。

彼女は

「ビットコインのマイニング(採掘)事業に投資すれば高配当が得られる」
「最先端の金融テクノロジーで資産を増やせる」

などと宣伝し、
中国全土から約13万人もの投資家が資金を預けたと言われています。


2. 詐欺グループの手口

初期の頃は「カメリア油(椿油)事業への投資」などを名目にお金を集めていました。
“畑を見学できるツアー”まで用意して、あたかも本物のビジネスがあるように演出していたのです。

その後、ビットコインの人気が高まると、「マイニング工場を見学できます」として投資を募りました。


実際に中国・天津などでは数百人規模の“見学ツアー”まで行われましたが、現場では機械が動いておらず、会社側は「放射線の影響があるので止めている」と説明していたそうです。

このように、「実体があるように見せる演出」を巧みに利用し、信頼を勝ち取っていたわけです。


3. 中国からの逃亡と「ビットコインへの変換」

2017年ごろ、中国の公安当局がこの会社を捜査し始めました。
仲間が次々に逮捕される中、銭志敏は資金を持って国外へ逃亡。


逃亡直前に、詐欺で集めた資金の一部――およそ11億人民元(約220億円)を使って、約6万1,000BTCを購入していたことが分かっています。

当時のビットコイン価格はまだ安く、1BTC=20万円前後の時期。
つまり、220億円で6万BTC以上買えた計算です。

しかし、その後ビットコイン価格は急上昇。
2025年時点では1BTC=1,700万円前後になっており、保有資産の価値は1兆円以上に膨れ上がったというわけです。


4. イギリスでの逮捕と押収

銭志敏は逃亡先のイギリス・ロンドンで豪華な生活を送っていました。
高級住宅を借り、ブランド品を買い漁り、不動産の購入も進めていたそうです。

しかし、彼女の“右腕”だった中国人女性・ジェン・ウェン(Jian Wen)が2024年に逮捕され、マネーロンダリング(資金洗浄)の罪で禁錮6年8か月の判決を受けます。

これが突破口となり、警察がウォレットを特定。
関連アカウントから約6.1万BTC
を差し押さえました。

その後、2025年9月末に銭志敏本人も有罪を認め、ビットコインはすべて英当局により正式に押収されました。


5. 押収されたビットコインの行方

現時点で押収されたビットコインの評価額は50億〜70億ドル(約7,000億〜1兆円)
イギリス史上最大、世界でもトップクラスの押収規模です。

ただし問題は、「このお金を誰が受け取るのか?」という点。
詐欺被害者の多くは中国国内の個人投資家ですが、ビットコインの購入・マイニング自体が当時の中国法でグレーゾーンだったため、被害者が名乗り出にくい状況です。

そのため、今後は英当局が資産を換金し、被害者申請がなければイギリス政府の没収財産として扱われる可能性が高いと見られています。


6. 日本への影響と教訓

今回の事件は、単なる海外ニュースではありません。
日本でも、似たような「暗号資産で資産運用」「高配当の海外投資」などの勧誘が後を絶ちません。

特に注意すべきは次の3点です。

  1. 「高利回り」「リスクゼロ」と言う投資はほぼ詐欺
  2. 海外送金や暗号資産を使った“逃げ道”がある案件は要注意
  3. 投資先企業の実態(登記住所・代表者・収益源)を必ず確認すること

今回の“ビットコイン女王事件”は、
「夢のような投資話」に群がる人々の心理を突いた典型的な詐欺。
そして、暗号資産がいかに“資金洗浄”に使われやすいかを世界に示す事件にもなりました。


まとめ

  • 犯人:中国人女性・銭志敏(Yadi Zhang)
  • 押収額:約6万1,000BTC(約1兆円)
  • 犯行:投資詐欺→ビットコイン購入→国外逃亡
  • 結末:イギリスで逮捕・有罪答弁・資産押収

この事件は、暗号資産の「自由さ」と「危険さ」を象徴する出来事でした。
技術の進歩とともに、資産の透明性と監視のルール作りがますます重要になっていくでしょう。

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