本記事は、YouTube動画『【ソフトバンクG】10兆円出資したOpenAI評価額のカラクリ』の内容を基に構成しています。
導入
ソフトバンクグループは、個人投資家から高い人気を集める企業の1つです。創業者である孫正義氏の存在感は大きく、これまで日本のインターネット産業や通信業界をけん引してきた人物として知られています。近年は特にAI分野への積極投資が注目されており、その中心にあるのがOpenAIです。
AIが次の巨大産業になるという見方は強く、ソフトバンクグループがその波に乗ろうとしていることに魅力を感じる投資家も少なくありません。実際、株価の値動きやニュース報道を見ると、「いまは押し目買いの好機なのではないか」「将来のAI成長を考えると、まだ大きな上昇余地があるのではないか」と考える人が出てくるのも自然です。
しかし、この動画では、そうした期待の裏にある「評価額の仕組み」や「数字の見え方の危うさ」が丁寧に掘り下げられていました。
特に焦点となるのは、ソフトバンクグループの企業価値を考えるうえで重要視されているNAV、つまり純資産価値の中身です。そして、その中でもOpenAIの評価額が本当に信頼できるのかどうかという点が、大きな論点として提示されています。
一見すると、ソフトバンクグループは「保有資産より株価が安い割安株」に見えます。
しかし、その前提となる資産評価に疑問があるなら、話は大きく変わってきます。本記事では、動画の内容をもとに、ソフトバンクグループの決算数字の見方、OpenAI評価額のカラクリ、そして投資家が注意すべきリスクについて、初心者にも分かるよう丁寧に整理していきます。
背景説明
ソフトバンクグループはもはや事業会社ではなく投資会社として見る必要がある
ソフトバンクグループというと、携帯電話会社の「ソフトバンク」を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、現在のソフトバンクグループは、単なる通信会社ではなく、保有株式や未上場株への投資を通じて価値を生み出す「投資会社」としての性格が非常に強くなっています。
そのため、通常の企業分析で重視される売上高や営業利益、純利益といった損益計算書の数字だけを見ても、会社の本当の実力はつかみにくい面があります。
なぜなら、保有している株式や投資先企業の評価額が上がれば、その評価益が利益として計上される構造になっているからです。逆にいえば、評価額が下がれば大きな損失が出る可能性もあります。
つまり、ソフトバンクグループを見るときは「本業でどれだけ稼いでいるか」だけではなく、「どの資産を持っていて、それがどのくらいの価値と見積もられているのか」を重視しなければなりません。
決算数字は非常に大きいが、その中身を理解する必要がある
動画では、直近の第3四半期累計決算として、売上高が5兆7000億円、税引前利益が4兆1000億円、当期純利益が3兆1000億円に達していることが紹介されていました。利益は前年から2兆5000億円増という、非常に大きな数字になっています。
この数字だけを見ると、「やはりソフトバンクグループは絶好調だ」と感じるかもしれません。
しかし、動画では、こうした利益増加の背景には投資先の評価額上昇があると説明されていました。とりわけOpenAIの評価額が上昇したことが、利益の大きな押し上げ要因になっているとされています。
この点は非常に重要です。なぜなら、実際の現金収入が増えたわけではなく、あくまで「持っている資産の評価が上がった」と会計上みなされた結果として利益が増えているからです。投資会社では珍しくない構造ですが、投資家がその仕組みを理解せずに数字だけを見ると、実態以上に好調に見えてしまう危険があります。
動画内容の詳細解説
ソフトバンクグループを見るうえで重要なNAVとは何か
動画で最も重視されていた指標が、NAVです。NAVは「ネットアセットバリュー」の略で、日本語では純資産価値や時価純資産といった意味で使われます。
これは、ソフトバンクグループが保有している株式や投資資産の価値から、負債を差し引いた残りの価値を示すものです。投資会社にとっては、会社そのものの価値を測るうえで非常に重要な考え方です。
動画では、2026年2月11日時点でソフトバンクグループのNAVが33.1兆円である一方、株式市場での時価総額は20兆円程度だと説明されていました。単純に比較すれば、時価総額の方が約10兆円以上低いことになります。この見方に立てば、「ソフトバンクグループは本来の資産価値より安く放置されている割安株だ」と考えることができます。
実際、多くの投資家はこのNAVに注目し、孫正義氏が保有している資産群を割安に買えるという発想から、ソフトバンクグループ株に魅力を感じているのだと思われます。
ただしNAVの中身を精査しなければ意味がない
しかし動画では、NAVという数字をそのまま信用してはいけないと強く指摘されていました。なぜなら、NAVを構成する資産の中には、時価評価が比較的明確なものと、そうでないものが混在しているからです。
たとえば、アームやソフトバンク、Tモバイルのように上場している株式については、市場で日々売買されており、価格が明確です。これらはある程度信頼できる評価額といえます。
一方で、問題となるのがソフトバンク・ビジョン・ファンドの中に含まれる未上場株です。特にOpenAIのような未上場企業は、株式市場で日々取引されているわけではないため、「いくらが妥当な価格なのか」を客観的に決めることが難しいという問題があります。
この未上場株の評価が大きく膨らんでいるなら、NAVそのものも見かけほど確かな数字ではないかもしれません。つまり、「33.1兆円の価値がある」という前提自体が揺らぐ可能性があるのです。
OpenAI評価額の上昇が利益押し上げの原動力になっていた
動画では、ソフトバンクグループの利益増加の背景として、OpenAIの評価額上昇が大きく影響している点が解説されていました。未上場株であるOpenAIの評価が上がったことで、その評価益がソフトバンクグループの利益に反映されたというわけです。
動画内では、OpenAI関連の評価益として約200億ドル、日本円で約3兆円規模の影響があったという趣旨の説明がなされていました。これは、当期純利益3兆円超という決算数字と非常に近い規模であり、OpenAIの評価がソフトバンクグループの業績を大きく左右していることを示しています。
ここで問題になるのは、「その評価額はどのように決まったのか」という点です。未上場株の評価は、一般的には資金調達ラウンドで外部投資家がどの価格で出資したかを基準に算定されます。たとえば、新たな出資者が1株1000円という評価で資金を入れたなら、その企業全体の評価額もそれに応じて引き上げられる、という考え方です。
この仕組み自体は一般的ですが、OpenAIについては、その資金調達や株式売買の中身に注意が必要だと動画では指摘されていました。
問題視されたのは「自分で評価をつり上げているように見える構図」
動画で最も印象的だった論点の1つが、OpenAIの評価額上昇が、ソフトバンクグループ自身の資金拠出によって生じているように見える点です。
動画では、ここ1年のOpenAIの資金調達の多くが、実はソフトバンクグループによるものであると説明されていました。他の外部投資家も一部参加しているものの、かなり大きな割合をソフトバンク側が負担しているという構図です。
さらに、2025年10月に行われた従業員向けの大規模なセカンダリー取引、つまり既存株主である従業員の株式を買い取る取引が、評価額算定に強く影響した可能性があると解説されていました。これは、OpenAIが新株を発行して資金を調達するのではなく、既存の株式をソフトバンクグループが買い取ることで持ち分を増やす仕組みです。
ここで重要なのは、その買い取り価格です。もしソフトバンクグループが高い価格で従業員の株を買い取れば、それが「OpenAI株の新たな評価基準」となり、保有している他の株式の評価額も引き上げられます。結果として、ソフトバンクグループは自らお金を出して株を高値で買うことで、保有株全体の評価額を引き上げ、自社の利益やNAVを押し上げるような構図になります。
動画では、この構図を「マッチポンプ」に近いものではないかと問題提起していました。もちろん、法律上の扱いや会計上の妥当性は別途精査が必要ですが、少なくとも投資家としては、「その評価額は本当に市場全体が認めた価格なのか」を慎重に見なければならないというメッセージが込められていました。
外部投資家の参加は安心材料にも見えるが、手放しでは喜べない
一方で、動画は一方的な悲観論だけで終わってはいませんでした。最近のOpenAIへの資金調達には、ソフトバンクグループ以外にもAmazonやNVIDIAといった大手企業が関わっていると紹介されています。
これだけを聞けば、「ソフトバンクが1社で値段をつり上げているわけではなく、他の有力企業もその価格を認めているのだから、一定の妥当性はあるのではないか」と考えることもできます。確かに、それは1つの反論として成り立ちます。第三者が参加することで、評価がよりフェアバリューに近づく可能性はあります。
しかし動画では、ここにも注意点があると述べられていました。なぜAmazonやNVIDIAなのか、という点です。もし本当に純粋な投資対象として非常に魅力的なら、もっと幅広い投資家、たとえば大手ファンドや機関投資家が積極的に参加していてもおかしくありません。ところが実際には、OpenAIと事業上のつながりが強い企業が中心になっているのです。
Amazonの出資は純粋な投資ではなく戦略提携の性格が強い
Amazonについて、動画ではOpenAIとの戦略的パートナーシップの存在が紹介されていました。そこでは、OpenAIとAmazon Web Servicesが生成AI関連の環境を共同で開発し、AWSのクラウド基盤をOpenAIが活用していくといった内容が語られています。
要するに、Amazonは単に株式投資で利益を狙っているだけではなく、自社のクラウドやインフラをOpenAIに使ってもらうための関係づくりとして資金を出している可能性があります。OpenAIがAWSを利用すれば、当然Amazon側には利用料収入が入ります。そう考えると、この出資は金融投資というより、事業提携や取引関係の一環としての意味合いが濃いともいえます。
この場合、Amazonが出資しているからといって、それがそのまま「OpenAIの企業価値は市場的に妥当だ」という証明にはなりにくい面があります。
NVIDIAの動きにも慎重な見方が必要
動画ではNVIDIAについても触れられており、当初はOpenAIに対して大きな投資をする構想があったものの、その後「これが最後かもしれない」といった趣旨の発言が出ている点が紹介されていました。
その理由としては、OpenAIが将来的に上場する可能性があることなどが挙げられていますが、動画ではそれだけではなく、生成AI業界における競争激化も背景にあるのではないかと見ていました。GoogleのGeminiやAnthropicのClaudeなど、競合モデルが存在感を強める中で、ChatGPTを持つOpenAIが今後も圧倒的優位を維持できる保証はありません。
しかもNVIDIAは、OpenAIが大量の半導体を購入してくれる重要顧客でもあります。その意味で、NVIDIAの出資にも純粋な投資以上の戦略的意図が含まれている可能性があります。もしそうなら、やはり「第三者が参加しているから安心」と単純に考えるのは危険です。
OpenAIが先行者だからといって勝者であり続けるとは限らない
動画では、OpenAIの将来性に疑問を投げかける根拠として、「市場の先行者が最終的な勝者になるとは限らない」という歴史的な視点も紹介されていました。
たとえば、検索エンジンではGoogleが圧倒的勝者になりましたが、最初からGoogleが市場を支配していたわけではありません。メール、ブラウザ、SNS、ビデオ通話、ビジネスチャットなど、多くの分野で、先に市場に登場した企業より後発企業が最終的に主導権を握った例は数多くあります。
動画では、先行者の平均市場シェアが思ったほど高くないことや、現在の市場リーダーの多くが後発組であることが紹介されていました。こうした事例を踏まえると、「OpenAIは先に有名になったから今後も勝ち続ける」と考えるのは早計だということになります。
特に生成AI分野は技術進化のスピードが極めて速く、資本力、半導体供給、データセンター、企業向け展開力、倫理面への対応など、競争要因が多岐にわたります。今の知名度や話題性だけで長期の勝敗を判断するのは危ういといえるでしょう。
孫正義氏が見ているのはAIの未来であってOpenAIの勝利とは限らない
動画では、孫正義氏が語るAIの未来そのものには大きな可能性があるとしつつも、「AI市場が拡大すること」と「OpenAIがその勝者になること」は別問題ではないかと指摘していました。
これは非常に重要な論点です。たしかにAIが社会に大きな変化をもたらす可能性は高く、多くの人がその成長性を感じています。しかし、AI市場が拡大したからといって、その利益を最終的に誰が最も獲得するのかは分かりません。OpenAIかもしれませんし、Googleかもしれませんし、Anthropicや別の新興企業かもしれません。あるいは、モデル提供企業ではなく、半導体メーカーやクラウド事業者がより大きな果実を得る可能性もあります。
動画では、孫氏がAIの未来については熱く語っている一方で、「なぜOpenAIでなければならないのか」という説得力のある説明は十分ではないように感じられると述べていました。もしこの見方が正しいなら、ソフトバンクグループはAIの成長に賭けているというより、OpenAIという1社に極めて大きく集中投資している状態だといえます。
追加解説
集中投資とレバレッジがリスクをさらに大きくしている
投資の世界では、一般に分散投資がリスク管理の基本とされています。しかし動画では、ソフトバンクグループがOpenAIに対してかなり強い集中投資を進めているように見えると指摘されていました。
さらに問題なのは、その投資が借入金によるレバレッジと結びついている可能性があることです。評価額が上がっていることを背景に、借入れを増やしながら投資を拡大しているのであれば、OpenAIがうまくいった場合には大きな利益を生む一方、逆に評価が崩れたときの損失も膨らみやすくなります。
これは個人投資家にも分かりやすい構造です。自己資金だけで投資するのではなく、お金を借りて投資額を増やすと、上昇局面では利益が大きくなりますが、下落局面では損失も大きくなります。ソフトバンクグループは巨大企業であり、個人投資家の信用取引とは規模も手法も異なりますが、レバレッジの基本構造は共通しています。
つまり、ソフトバンクグループ株に投資するということは、単に「AIの成長に賭ける」だけでなく、「OpenAIへの集中投資と、それに伴う財務リスク」にも同時に賭けることになるのです。
格付けの見方も楽観一辺倒ではいられない
動画では格付けについても触れられていました。日本の格付け会社では比較的高めの評価が与えられている一方で、海外、特にアメリカ系の評価では厳しめに見られているという点です。
格付けは絶対的なものではありませんが、投資家が財務リスクを把握するうえで参考になる指標です。一般に、投機的とみなされる水準に近づくほど、外部からの資金調達コストが上がったり、市場の見方が厳しくなったりする可能性があります。
もちろん、ただちに経営危機に陥るという話ではありません。しかし、国内では人気があっても、海外の金融市場ではより冷静かつ厳しい目線で見られている可能性があるという点は、個人投資家も認識しておくべきでしょう。
アームは魅力的な資産だが、それを売ってまでOpenAIに賭けるなら話は変わる
動画では、ソフトバンクグループの保有資産の中でも、アームについては比較的前向きな評価が示されていました。アームは低消費電力の半導体設計で強みを持ち、スマートフォンからデータセンター向けまで幅広く使われています。AI時代のインフラを支える重要な企業の1つとして、一定の成長期待があるとみることは十分可能です。
しかし、そのアームは上場株であり、必要があれば売却できる資産でもあります。もしソフトバンクグループがOpenAIへの投資資金を確保するために、NVIDIA株に続いてアーム株まで売却するようなことがあれば、それはリスク管理の観点から危険信号と受け止められるかもしれません。
良質な流動資産を手放して、より不確実性の高い未上場AI企業への依存度を高めていくのであれば、投資家としては一段と慎重に見なければならない局面に入るでしょう。
まとめ
ソフトバンクグループ株が割安に見える最大の根拠は、NAVが33.1兆円ある一方で、時価総額が20兆円前後にとどまっているという点です。この差だけを見ると、たしかに大きな魅力があるように映ります。
しかし、本記事で見てきたように、そのNAVの中には未上場株であるOpenAIの評価額が大きく含まれており、その評価の妥当性には慎重な検討が必要です。特に、ソフトバンクグループ自身の出資やセカンダリー取引が評価額上昇に影響しているように見える点は、投資家にとって無視できない論点です。
また、AmazonやNVIDIAの参加は一定の安心材料にも見えますが、両社とも純粋な金融投資というより、戦略的な事情を抱えている可能性があります。さらに、AI市場そのものが成長しても、OpenAIが最終的な勝者になるとは限りません。歴史を振り返れば、先行者が後発組に逆転される例は少なくないからです。
結局のところ、ソフトバンクグループへの投資は、「AIの未来」への投資であると同時に、「OpenAIという1社への集中投資」と「レバレッジを伴う高い不確実性」への投資でもあります。孫正義氏の描く未来に強く共感し、そのリスクも理解したうえで賭けるのであれば投資判断として成立しますが、単に「NAVより安いから割安」「株価が半値になったから買い」といった表面的な理由だけで判断するのは危険です。
ソフトバンクグループ株を検討する際は、AIの成長性だけでなく、OpenAIの競争力、未上場株評価の信頼性、資金調達の構造、そして財務リスクまで含めて総合的に見る必要があります。今回の動画は、その点を考えるきっかけとして非常に示唆に富んだ内容でした。


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