本記事は、YouTube動画『トランプの対イラン強硬姿勢と米国株10年低迷論を読み解く相場解説』の内容を基に構成しています。
導入
今回の動画では、トランプ大統領によるイランへの軍事圧力と、その後の態度変更を起点に、足元の金融市場、今後の米国株の見通し、セクターごとの強弱、ビットコインや金、オルカン、現金比率の考え方まで、非常に幅広いテーマが取り上げられていました。
表面的には「中東情勢」と「米国株の先行き」を語る動画ですが、実際にはそれだけではありません。動画全体を通して一貫しているのは、これまで長く続いた米国株一強の時代が転換点を迎えつつあり、個人投資家は従来の常識をそのまま信じてはいけないという強いメッセージです。
特に印象的なのは、S&P500は今後10年単位で低迷する可能性がある、AIバブルの崩壊リスクが高まっている、景気後退を確認してから動くのでは遅い、という主張です。近年は新NISAの普及もあって、S&P500やオルカンへの積み立てが半ば「正解」のように語られてきました。しかし動画では、そうした流れに対してかなり慎重な立場が示されていました。
この記事では、動画の内容を初心者向けに整理しながら、背景にある考え方や歴史的な見方も含めて、順を追って丁寧に解説していきます。
背景説明
トランプ政権の対イラン姿勢と市場の反応
動画の冒頭では、トランプ大統領がイランに対して「48時間以内に発電所を軍事攻撃する」と強く圧力をかけていたにもかかわらず、期限直前になって攻撃計画を5日間延期したことが取り上げられています。
トランプ氏は、イランと実りある会話を行ったため延期したと説明しましたが、イラン側は米国と交渉していないと否定しました。動画では、これを「直前になって再びタコった」と表現しています。つまり、強硬姿勢を見せながらも最後のところで後退したという見方です。
市場はひとまず軍事衝突が先送りされたことを好感し、S&P500は1.2%上昇、NASDAQ総合も1.4%上昇しました。しかし、動画ではこの反発を楽観視していません。なぜなら、両指数とも200日移動平均線の奪還に失敗しており、本格的な回復局面と判断するには弱いからです。
株価が上がったから安心、という単純な話ではなく、どの水準を回復できたのか、テクニカル面で重要なラインを超えたのか、そこまで見なければならないということです。
中東情勢が相場に与える影響
さらに動画では、パキスタンの首都イスラマバードで、米国とイランの対面協議が行われる可能性があるとしながらも、その協議は難航する公算が大きいと指摘しています。イラン側の交渉役として名前が挙がったガリバフ国会議長は強硬派として知られ、革命防衛隊司令官の経験もある人物です。
しかも、イラン国内では軍事施設が打撃を受けており、核開発を進めるインセンティブがむしろ高まっているとの見方も示されています。イランがホルムズ海峡封鎖の回避を交渉材料に使おうとしても、米国は核開発再開のリスクを理由に譲歩しづらいという構図です。
このため、動画では米国とイランの対立は簡単には収束せず、むしろ今後いったん激化する可能性が高いとみています。その結果として、株安と原油高のシナリオは当面変わらないというのが動画の結論です。
トランプ氏の延期は弱腰なのか、それとも時間稼ぎなのか
動画では、トランプ大統領が攻撃を延期した本当の理由として、米軍の追加戦力が中東に到着するまでの時間稼ぎではないかと推測しています。ウォール・ストリート・ジャーナルの報道を踏まえ、数千人規模の海軍・海兵隊戦力が中東に追加派遣され、来週中にも到着する可能性があると紹介されています。
この見方に立てば、攻撃延期は単なる後退ではなく、より本格的な軍事行動に備えるための準備期間とも考えられます。つまり、市場は「先送り」を安心材料と受け止めたものの、実際にはリスクが消えたわけではなく、むしろ数日後に再び緊張が高まる余地があるということです。
動画では、イランは「すでに失うものがない状態」に近く、宗教的信念もあって脅しが通用しにくいと説明しています。そうした相手に対して、米国が強い圧力をかけても簡単に妥協は引き出せないだろうという認識です。
この視点は、地政学リスクを考えるうえで重要です。市場は短期的にはニュースに反応して上下しますが、交渉の根本条件が変わっていなければ、リスクそのものは残り続けます。動画が伝えたいのは、株価の一時的反発だけを見て安心してはいけないという点です。
景気後退局面で最も下がりやすいのはハイテクセクター
動画の後半では、視聴者から寄せられた質問に答える形で、今後の投資戦略が詳しく語られています。その中で特に重要なのが、景気後退局面でどのセクターが最も下がりやすいかという論点です。
動画では、最も売られやすいのはハイテクセクターだとしています。理由は単純で、これまでの相場でマグニフィセント7やAI関連株が大きく買われてきたため、多くの投資家のポートフォリオがハイテック株に偏っているからです。
相場が不安定になり、投資家がリスクを落とそうとすれば、まず売られるのは一番多く持っている資産です。つまり、人気だったからこそ、逆回転が始まると売り圧力が集中しやすいわけです。
一方で、ヘルスケアセクターは比較的底堅い可能性があるとしています。薬価引き下げなどの懸念があって、これまで積極的に買われてこなかったため、投資家の持ち高がそれほど膨らんでいないからです。すでに大きく買われていない資産は、売り崩しも起きにくいという考え方です。
これは非常に実践的な視点です。初心者は「良い会社だから下がりにくい」「人気があるから安心」と考えがちですが、相場では人気が過熱していたものほど、反転局面で大きく下げることが少なくありません。
ハイテク株とビットコインは同時に下がりやすい
動画では、米国株が下がる時にビットコインも下がるという認識でよいか、という質問にも答えています。結論としては、その認識で問題ないとしています。
2022年以降のS&P500とビットコインの推移を重ねると、おおまかに似た値動きをしていると説明されています。これは、どちらも「リスク資産」であるためです。投資家のリスク選好が高まれば株もビットコインも買われ、反対にリスク回避が強まれば両方とも売られやすくなります。
動画では、労働市場の減速を踏まえれば米国経済は景気後退入りする可能性が高く、来年は株安が予想されるため、ビットコインも大きく売られる可能性があるとしています。
ここで大切なのは、ビットコインを株とは別物として見るのではなく、金融環境の影響を強く受けるハイリスク資産として見ることです。インフレヘッジやデジタルゴールドという言葉が使われることもありますが、短中期では株式市場のセンチメントにかなり左右される局面があります。
金価格が上がるならレバレッジETFでいいのか
金価格の上昇を見込むなら、レバレッジ型の金ETFに投資してよいのかという質問に対して、動画ではかなり慎重な立場を取っています。
結論としては、短期売買ならまだしも、中長期保有は避けた方がよいという考え方です。理由として強調されているのが、生存バイアスです。つまり、レバレッジETFを長期保有して資産を大きく増やした成功例ばかりに注目すると、多くの失敗例を見落としてしまうということです。
動画では、若くして大きな資産を築いた投資家の中には「資金が少ないうちは集中投資の方がいい」と語る人もいるが、それは成功した人の声が目立っているだけで、同じことをして失敗した人はたくさんいると説明しています。レバレッジETFも同じで、うまくいった事例だけを見て「効率が良い」と判断するのは危険だということです。
特にレバレッジETFは、日々の値動きを何倍かにする商品であり、長期保有では価格の戻り方が単純な倍率通りにはならないことがあります。動画でも、指数が下がった割にベア型ETFの上昇が期待ほど大きくならなかった例が紹介されていました。
ベア型ETFや空売りで下落相場を取るべきか
景気後退を伴う下落相場が予想されるなら、S&P500の空売りやベア型ETFを使うべきではないか、という質問に対して、動画では「やりたい人はやればいいが、自分ならやらない」と答えています。
この理由は明快です。景気後退局面では、とにかくリスクを抑えることが重要であり、下げ相場でも積極的に取りにいこうとすると、結局は常にリスクを負い続けることになるからです。
具体例として、2022年のS&P500は年間で19.4%下落した一方、3倍ベアETFは36.1%上昇にとどまったと説明されています。理屈だけ見れば、3倍レバレッジなら約58.2%上がってもよさそうですが、実際にはそうならなかったというのです。
この差は、レバレッジ商品の特性を考えるうえで非常に大切です。値動きが荒い相場では、日々の変動の積み重ねにより、期待した通りのリターンが得られにくくなります。つまり「下がると分かっているならベアETFで簡単に儲かる」という考え方は危険だということです。
動画が勧めているのは、下落を当てにいくことではなく、そもそも傷を深くしないように持ち高を減らすことです。
S&P500よりオルカンの方が今後10年は有利なのか
視聴者からの質問の中で、多くの人が気になるテーマが「S&P500とオルカンのどちらが今後10年良いか」という点です。動画では、オルカンの方が良い可能性が高いと述べています。
その背景として、2009年3月以降の約16年間でS&P500が約10倍に上昇した一方、欧州株ETF、新興国株ETF、日本株ETFはいずれも3倍前後の上昇にとどまったと説明しています。つまり、過去16年は明らかに米国株一強の時代だったということです。
しかし動画では、歴史を振り返ると、約10年間ブームになった投資対象は景気後退を境に長期停滞局面に入りやすいと主張しています。1970年代の金、1980年代の日本株、1990年代の米ハイテク株、2000年代の新興国株がその例として挙げられています。
この流れに照らせば、2010年代から2020年代前半にかけてブームになった米国株も、次の景気後退を境に長期停滞に入る可能性があるというのが動画の考え方です。そのため、米国株100%に近いS&P500より、米国株比率が約64%のオルカンの方がまだましだとしています。
ただし、動画はそこで終わりません。オルカンも結局は米国株の比率が高いため、米国株が足を引っ張る以上、パフォーマンスは低迷する可能性があると述べています。つまり、S&P500よりオルカンの方が相対的に良いとしても、それでも十分とは言えないという立場です。
欧州株や新興国株を重視すべきという主張
さらに動画では、欧州株や新興国株を中心としたポートフォリオの方が、次の景気拡大局面では高いパフォーマンスが期待できるとしています。
理由は、世界の投資家がこれらにまだあまり投資していないからです。すでに過熱した市場より、人気が集まり過ぎていない市場の方が、次の相場で主役になる可能性があるという考え方です。
このあたりは、近年の「とりあえずS&P500でよい」という空気とはかなり異なる視点です。動画は、次の時代は米国一極集中ではなく、国際分散投資の時代になると予想しています。
現金比率はどのくらい持つべきか
動画では、相場が不安定になる中で現金比率をどれくらい高めるべきかについても、かなり具体的な目安を示しています。
積極的な投資家なら20%から40%、一般的な投資家なら40%から60%、保守的な投資家なら60%から80%程度が望ましいという考え方です。
この数字は、人によってはかなり高く感じるかもしれません。しかし動画では、現金を持つことは「何もしていない」のではなく、次の暴落時に備える積極的な準備だと位置づけています。
この考え方を象徴する例として、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの現金保有額が3816億ドルに達し、保有上場株式の評価額2832億ドルを上回っていることが紹介されています。つまり、株を買う準備をするために、今は大きく現金を持っているというわけです。
相場が崩れてから現金が欲しくなっても遅い、上がっている時にこそ勇気を持って売っておかなければならない。このメッセージは、積み上がった含み益をなかなか手放せない個人投資家にとって非常に重い内容です。
共和党政権の方が暴落しやすいという歴史的視点
「株式市場の暴落は民主党政権より共和党政権の方が少ないのでは」という質問に対し、動画ではむしろ共和党政権の時の方が大きな下落が多いと説明しています。
1950年以降の75年間で、S&P500が1年を通して20%以上下げた年は1974年のマイナス29.7%、2002年のマイナス23.4%、2008年のマイナス38.5%の3回だけで、いずれも共和党政権だったとしています。15%以上の下落年で見ても、共和党政権の方が多いと指摘しています。
ただし、これは共和党の政策そのものが暴落を引き起こすという意味ではなく、景気拡大局面の終盤で共和党政権が誕生することが多かったからだと説明しています。つまり、政党そのものよりも、就任したタイミングの方が重要だということです。
この視点は、政治ニュースをそのまま材料視してしまいがちな投資家にとって参考になります。大統領が誰かだけではなく、その時の景気循環のどの局面にあるのかを考える必要があるということです。
景気後退を確認してからでは遅い理由
動画の中でも特に重要なのが、「景気後退を確認してから株を売るのでは遅い」という指摘です。
過去の例として、金融危機では2007年10月に株価が天井を打ち、景気後退入りは2007年12月でした。.comバブルでは2000年3月に株価が天井を打ち、景気後退入りは2001年3月でした。つまり、株価は景気後退が公式に確認される前から下げ始める傾向があるということです。
しかも、景気後退の判定はNBERが事後的に行うため、本当の意味で「確認」できるのは半年から1年後になることもあります。その時にはすでに大きく下げている可能性が高いわけです。
このため動画では、今がAIバブルのさなかである以上、バブル崩壊による打撃を避けたいなら、個人投資家がまだ株高に浮かれているうちにポジションを落とす必要があると強く主張しています。
今後10年間、米国株は低迷するという予想の根拠
動画の根幹にあるのが、「今後10年間、米国株は低迷する」という見通しです。より正確には、2026年から2040年ごろまで、米国株は年平均で1桁台前半の低いパフォーマンスにとどまるという予想です。
その根拠は大きく2つあります。1つは、米国株がすでに約16年にわたって圧倒的なブームを続けてきたこと。もう1つは、その終盤でAIバブルが膨らんでいることです。
歴史的に見て、前の景気拡大局面でブームになった資産は、次の景気拡大局面で長期停滞しやすいと動画では説明しています。2000年代にブームだった新興国株、1990年代の米ハイテク株、1980年代の日本株が例に挙げられています。
つまり、次の時代の投資では、どれだけ米国株を組み入れたかではなく、どれだけ米国株を排除できたかがパフォーマンスを左右するというのです。
ただし、すべての米国株がだめになるわけではなく、インフレ高止まり局面では鉱山株、エネルギー株、素材株などが相対的に強くなる可能性があるとも述べています。そのため、米国株を持つにしても10%から20%程度で十分という考え方が示されています。
追加解説
積み立てNISAはどう考えるべきか
ここまで読むと、「では積み立てNISAでS&P500やオルカンを積み立てるのもやめるべきなのか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし動画では、積み立てNISAについては少し違う答えを出しています。積み立てNISAは20年で終わるものではなく、30年、40年という超長期で時間を味方につけ、複利効果で資産形成を目指す制度だとしたうえで、基本的にはこれまで通りS&P500インデックスファンドや全世界株式インデックスファンドでよいと述べています。
この点は非常に興味深いところです。動画全体では米国株にかなり悲観的ですが、制度としての積み立てNISAについては、頻繁に投資対象を入れ替えるべきではないと考えているわけです。
つまり、コアの長期積み立てと、相場観に基づく戦略的な投資を分けて考えていることになります。初心者にとっては、この区別がとても大切です。全資産を相場観だけで動かすのではなく、長期枠は長期枠として割り切るという発想です。
利益を出せる投資法を探すより、休むことも大切
動画では、「この局面で利益が出せるセクターや投資法を知りたい」という質問に対しても、あえて派手な答えはしていません。
むしろ、相場格言の「休むも相場」を引きながら、常にリターン最大化を狙う必要はないと述べています。経験の浅い個人投資家ほど、何か行動していないと不安になり、「今すぐ儲かる方法」を探しがちです。しかし、相場には明らかに危険で、無理に勝負すべきでない時期があるというのです。
これは非常に本質的な指摘です。投資では、勝つこと以上に大きく負けないことが重要です。そして大きな暴落局面で買い向かえる人は、その前に現金を持ち、無理なポジションを取っていなかった人です。
「何を買うか」ばかりに意識が向きやすい時代だからこそ、「今は買わない」「今は休む」という判断の価値を再認識する必要があります。
まとめ
今回の動画は、中東情勢をきっかけにしながらも、実際にはこれからの投資環境が大きく変わる可能性を強く訴える内容でした。
トランプ大統領の対イラン強硬姿勢は、見かけ上は後退したように見えても、実際には軍事行動の準備期間に過ぎない可能性があります。そのため、株安・原油高のリスクはなお残っているというのが動画の前提です。
そのうえで、動画は米国株、とりわけAIバブルで膨らんだハイテクセクターに対して強い警戒感を示しています。S&P500は今後10年以上低迷する可能性があり、次の時代は米国株一強ではなく、国際分散投資の時代になるという見方です。
また、ビットコインは株と同じくリスク資産として下がりやすく、レバレッジETFやベア型ETFに安易に頼るのも危険だとしています。最優先すべきは、無理に儲けを狙うことではなく、リスクを落として現金を確保することだという考え方です。
初心者にとって大切なのは、相場が上がっているから強気、下がったから弱気と感情で動くのではなく、今が景気循環のどの位置にあるのか、自分の資産配分が偏りすぎていないか、そして暴落時に動ける余力を持てているかを冷静に見直すことです。
近年は「S&P500を積み立てておけば大丈夫」という空気が非常に強くなっていました。しかし、投資の世界に永遠の正解はありません。今回の動画は、その常識をいったん疑い、自分自身の資産運用を見直すきっかけを与えてくれる内容だったと言えるでしょう。


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