本記事は、YouTube動画『今日はNTT5月8日の決算でやばいことが起きる』の内容を基に構成しています。
NTTは本当に「安全な株」なのか
NTT、証券コード9432は、日本を代表する通信企業です。多くの個人投資家にとって、NTT株には「国策企業だから安心」「配当が安定している」「倒産する心配はほとんどない」といったイメージがあるのではないでしょうか。
実際、NTTは日本の通信インフラを支える巨大企業であり、長期保有を前提に投資している人も少なくありません。株価も100株単位で買いやすい水準にあり、配当利回りも約3.5%とされているため、初心者でも手を出しやすい銘柄として見られています。
しかし、今回の動画では、その「安全そうに見えるNTT株」の裏側にあるリスクが詳しく解説されています。特に注目されているのが、5月8日に予定されている本決算です。
この決算では、単に売上や利益がどうだったかだけでなく、来期の利益見通し、自社株買いの有無、政府保有株の扱い、AIインフラ投資の進捗など、NTT株の今後を左右する重要な材料が一気に出てくる可能性があります。
さらに、現在のNTT株には信用倍率48倍という非常に大きな受給の歪みがあります。これは、借金をしてNTT株を買っている個人投資家が非常に多いことを意味します。もし決算内容が市場の期待を下回れば、信用買いの投げ売りが連鎖する可能性もあります。
NTTはもはや昔ながらの電話会社ではない
NTTというと、固定電話やドコモを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、現在のNTTは、単なる通信会社ではなく、世界規模のAIインフラ企業を目指す会社へと変わろうとしています。
その中心にあるのが「IOWN構想」です。IOWNとは、光技術と電気技術を組み合わせた次世代通信基盤のことで、従来の通信技術よりも高速で、省エネルギーなネットワークを実現しようとするものです。
NTTはこのIOWNを世界標準にするため、2023年度から2027年度までの5年間で約8兆円という巨額投資を進めています。8兆円という金額は非常に大きく、動画内では東京ドームを1600個以上建てられる規模として説明されています。
この投資先には、光通信技術、AIエージェント、データセンターなどが含まれます。特にデータセンター事業はAI需要の拡大によって成長が期待されており、営業利益率も6.7%から11.4%へ改善しているとされています。
つまり、NTTには「日本の安定通信株」という顔だけでなく、「AI時代のインフラ企業」という成長ストーリーもあります。この成長シナリオが実現すれば、現在の株価水準は割安だったと評価される可能性もあります。
売上は伸びているのに利益が減る理由
今回の動画で重要なポイントの1つが、NTTの利益見通しの下方修正です。
NTTは当初、2026年3月期の最終利益を1兆400億円と見込んでいました。しかし、その後の発表で最終利益見通しを9650億円へ引き下げています。削減額は750億円で、率にすると約7%の下方修正です。
ここで注目すべきなのは、売上高は増えているという点です。売上高は14兆164億円とされ、前年より約3.4%増えています。つまり、会社としての収入は増えているのに、最終的に残る利益は減っているという状況です。
その主な理由として挙げられているのが、8兆円規模の設備投資です。
データセンターや光通信インフラに投資すると、その費用は一度にすべて損失になるわけではありません。設備は長期間使うため、会計上は「減価償却費」として毎年少しずつ費用計上されます。
この減価償却費が増えることで、NTTの利益率が圧迫されているのです。動画ではこれを「マージン圧迫」と説明しています。
投資は将来の成長に必要なものですが、短期的には利益を押し下げます。そのため、5月8日の決算では、来期も利益が圧迫されるのか、それとも成長投資の成果が見え始めるのかが大きな焦点になります。
信用倍率48倍という異常な受給構造
今回の動画で最も強調されているリスクが、信用倍率48倍という数字です。
信用倍率とは、信用買い残と信用売り残のバランスを見る指標です。簡単に言えば、借金をして株を買っている人がどれだけ多いかを示すものです。
通常、大型株の信用倍率は数倍程度に収まることも多いですが、NTTでは48倍という非常に高い水準になっていると説明されています。
これは、多くの個人投資家が「NTTは安全」「株価が安い」「配当がある」という理由で信用取引を使って買っていることを意味します。
NTT株は1株あたりの価格が比較的安く、100株でも約1万5000円前後から購入できます。そのため、初心者でも買いやすく、さらに信用取引を使えば少ない資金で大きな金額を買うこともできます。
しかし、信用取引には返済期限や追証のリスクがあります。株価が下がり、含み損が一定水準を超えると、追加の担保を求められます。それができなければ、強制的に売却される可能性があります。
信用買いが多い銘柄では、株価が下がったときに売りが売りを呼ぶ展開になりやすくなります。これが、今回の動画で「地雷原」と表現されている部分です。
最大の買い手だった自社株買いが終了している
NTT株をこれまで支えていた大きな要因の1つが、自社株買いです。
NTTは2025年5月から2026年3月末にかけて、上限2000億円の自社株買いを実施していました。自社株買いとは、会社が市場で自社の株を買い戻すことです。
自社株買いが行われると、市場に大きな買い需要が生まれます。そのため、株価を下支えする効果があります。
しかし、動画によると、この2000億円の自社株買い枠はすでに使い切られており、2026年2月時点で取得終了となっています。
つまり、5月8日の決算を迎える時点では、NTT自身が市場で株を買って支える力がなくなっているということです。
これまで株価を支えていた大きな買い手がいなくなった状態で、信用倍率48倍という重たい買い残が残っている。ここに今回の決算の怖さがあります。
もし5月8日の決算で新たな自社株買いが発表されなければ、「期待外れ」と受け止められる可能性があります。一方で、大規模な自社株買いが新たに発表されれば、株価にはプラス材料となる可能性があります。
外国人投資家がNTT株をあまり買っていない理由
動画では、外国人投資家の保有比率が低いことにも触れられています。
NTTは時価総額13兆円を超える日本を代表する大型株ですが、外国人投資家の保有比率はセグメントによって1.4%から9.6%程度にとどまっていると説明されています。
なぜこれほど巨大な企業なのに、海外投資家の関心が低いのでしょうか。
理由の1つが、NTT法の存在です。NTT法には、研究成果の公開義務や全国一律の通信インフラ維持義務などがあり、NTTの経営自由度を制限している面があります。
NTT法の廃止が進めば、NTTはより自由に海外展開やM&Aを進められる可能性があります。しかし、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどの通信各社はNTT法廃止に強く反対しています。
そのため、NTT法廃止がスムーズに進むとは限りません。政策面での不透明感が、海外投資家にとって大きなリスクになっているのです。
さらに、政府保有株の売却リスクもあります。日本政府はNTT株の3分の1以上を保有することが義務づけられています。動画では、この政府保有株が約4.5兆円規模の潜在的な売り圧力になっていると説明されています。
もし将来的に政府保有義務が撤廃され、政府株が市場に売却されることになれば、需給面で大きな重荷になる可能性があります。
5月8日の決算で考えられる下落シナリオ
5月8日の決算で下落シナリオが起きるとすれば、いくつかの条件が重なる場合です。
まず、来期のガイダンスが市場の期待を下回るケースです。8兆円規模の設備投資によって減価償却費がさらに増え、利益が想定より伸びないと示された場合、投資家心理は悪化しやすくなります。
次に、新しい自社株買いが発表されないケースです。多くの個人投資家が新たな株主還元を期待している場合、それがなければ失望売りにつながる可能性があります。
さらに、政府保有株の売却に関する不透明感が強まるような発言が出れば、海外投資家や機関投資家はより慎重になるかもしれません。
このような材料が重なると、信用買いをしている個人投資家の含み損が拡大し、追証や強制決済による売りが連鎖する可能性があります。
ただし、動画でも強調されているように、必ず暴落するという話ではありません。短期的な利益の下振れは、長期的な企業価値に大きな影響を与えないと見る分析もあります。
重要なのは、下落の可能性を過度に恐れることではなく、どのような条件で下落が起きやすくなるのかを理解しておくことです。
5月8日の決算で考えられる上昇シナリオ
一方で、上昇シナリオも十分に考えられます。
特に注目されるのは、データセンター事業やAI関連事業の収益化スピードです。もし市場の予想を上回る成長が数字として示されれば、NTTのAIインフラ企業としての評価が高まる可能性があります。
また、新たな大規模自社株買いが発表されれば、需給面では大きなプラス材料になります。特に、非中核資産の売却などを原資にした株主還元策が示されれば、市場の評価は変わる可能性があります。
さらに、政府保有株の問題について、経営陣が明確な考え方や対応策を示した場合、不透明感がやわらぐ可能性もあります。
現在、外国人投資家の保有比率が低いということは、見方を変えれば、海外勢がまだ十分に買っていないということでもあります。もしNTTの成長ストーリーが再評価されれば、「持たざるリスク」を意識した海外投資家の買いが入る可能性もあります。
つまり、NTT株は悪材料だけでなく、好材料が出た場合には大きく見直される余地もあるということです。
NTT株の強み・弱み・機会・脅威
NTT株を冷静に見るためには、良い面と悪い面の両方を整理することが大切です。
NTTの強みは、まず日本の通信インフラを支える圧倒的な事業基盤です。通信は社会に欠かせないインフラであり、景気が悪くなっても需要がゼロになることは考えにくい分野です。
さらに、IOWN構想やデータセンター事業など、AI時代に向けた成長投資も進んでいます。もしこれらが収益に結びつけば、NTTは単なる高配当株ではなく、成長株として評価される可能性があります。
一方で弱みは、巨額投資による利益圧迫です。売上が伸びても、減価償却費や投資負担が重ければ、最終利益は伸びにくくなります。また、総資産回転率が低いことも、資本効率を重視する投資家からは厳しく見られやすい点です。
機会としては、AIデータセンター需要の拡大があります。世界中でAI利用が進むなか、データセンターや高速通信インフラの重要性は高まっています。NTTがこの流れにうまく乗れれば、中長期的な成長期待は高まります。
脅威としては、信用倍率48倍という需給リスク、政府保有株の売却リスク、NTT法廃止をめぐる政策リスクがあります。特に短期的には、これらの不透明要因が株価の重荷になりやすいと考えられます。
長期投資家は5月8日の決算をどう見るべきか
今回の動画で伝えられている重要なメッセージは、「NTTが悪い会社だ」ということではありません。
むしろ、NTTは日本を代表する巨大企業であり、AIインフラ時代に向けた成長投資も進めています。長期的な成長ストーリーは確かに存在します。
ただし、現在の株価を取り巻く需給構造には大きな歪みがあります。信用買いが積み上がり、自社株買いが終了し、政府保有株の問題も残っている。この状態で5月8日の決算を迎えるため、株価が大きく動く可能性があるということです。
投資家が決算で確認すべきポイントは、主に次のような点です。
来期の利益見通しは市場期待を上回るのか、それとも下回るのか。
新たな自社株買いや株主還元策は発表されるのか。
政府保有株やNTT法に関する経営陣のコメントはあるのか。
データセンターやAI関連事業の収益化はどれくらい進んでいるのか。
これらを確認したうえで、株価がどう反応するかを見ることが大切です。
すでにNTT株を保有している人は、自分がなぜNTT株を持っているのかを改めて確認する必要があります。短期的な値上がり益を狙っているのか、長期的な配当収入を目的としているのかによって、決算後の判断は変わります。
短期の株価変動に振り回されるのではなく、自分の投資目的に照らして冷静に判断することが重要です。
まとめ:NTTの5月8日決算は「安全株」のイメージを試す重要イベント
NTTは、多くの投資家にとって安心感のある銘柄です。日本最大級の通信企業であり、国策企業としての性格も強く、配当利回りも魅力的です。
しかし、今回の動画で解説されているように、現在のNTT株にはいくつもの重要な論点があります。
まず、8兆円規模のAIインフラ投資によって、将来の成長期待がある一方、短期的には減価償却費が利益を圧迫しています。
次に、信用倍率48倍という異常な受給構造があります。多くの個人投資家が信用買いで参加しているため、悪材料が出た場合には売りが連鎖するリスクがあります。
さらに、これまで株価を支えていた2000億円規模の自社株買いはすでに終了しています。5月8日の決算で新たな自社株買いが発表されるかどうかは、非常に大きな注目点です。
加えて、NTT法の見直しや政府保有株の売却リスクもあります。これらは短期的には不透明要因ですが、もし前向きな進展があれば、海外投資家の評価が変わる可能性もあります。
5月8日の決算は、単なる業績発表ではありません。NTTがAIインフラ企業として本当に成長できるのか、株主還元を継続できるのか、政策リスクとどう向き合うのか、そして積み上がった信用買いがどう反応するのかを見極める重要なイベントです。
NTT株に投資するうえで大切なのは、「国策企業だから安心」と単純に考えることではありません。強みとリスクの両方を理解し、自分の投資目的に合った判断をすることです。
短期的な値動きに振り回されず、決算内容、経営方針、需給の変化を冷静に確認することが、長期投資家にとって最も重要な姿勢だと言えるでしょう。


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