本記事は、YouTube動画『株が下がった時に買うだけでは危険?投資のプロが実践する9つの鉄則』の内容を基に構成しています。
株価が下がった時に本当に買える人は少ない
株式投資ではよく「安い時に買い、高い時に売る」と言われます。たしかに、株価が下がった場面で買うことができれば、その後の反発で利益を得られる可能性があります。しかし、実際に相場が下落している最中に冷静に買える人は多くありません。
株価が10%下がると「もう少し待とう」と考え、20%下がると「もっと下がるかもしれない」と不安になり、30%下がると「もう怖くて買えない」と感じてしまいます。その後、株価が反発し始めても、最初は「また下がるかもしれない」と見送り、20%、30%と戻ってきたところで焦って買い、そこから再び下落するということもあります。
これは単なる運の悪さではありません。人間の心理として、恐怖は買うべき場面で行動を止め、焦りは買うべきでない場面で飛び込ませます。つまり、株価が下がったから買うという考え方だけでは不十分なのです。
本当に大切なのは、価格の上下ではなく「なぜ買うのか」という明確な理由です。投資のプロは、下がったから買うのではなく、買う理由があるから買います。本記事では、動画内で語られている投資の基本ルールを、初心者にもわかりやすく整理して解説します。
投資で難しいのは知識よりも実行である
投資の基本原則は、決して複雑なものばかりではありません。むしろ、多くは「それは知っている」と感じるようなシンプルな内容です。
しかし、投資で難しいのは知識を理解することではなく、それを実際の相場で守り続けることです。株価が上がれば欲が出ます。株価が下がれば恐怖が出ます。ニュースが悪ければ不安になり、SNSで誰かが儲けているのを見ると焦ります。
このような感情に振り回されないためには、自分なりのルールを先に決めておく必要があります。今回の動画では、投資初心者が市場に長く残るために重要な9つの鉄則が紹介されています。
第1の鉄則:同時に持つ銘柄はまず3つまでにする
投資初心者がやりがちな失敗の1つが、銘柄を増やしすぎることです。
分散投資は大切です。しかし、分散すればするほど安全になるとは限りません。10銘柄、20銘柄、30銘柄と増やしていくと、一見リスクを分けているように見えますが、実際には管理できない状態になりやすくなります。
たとえば、30社の決算、ニュース、業界動向、為替影響、金利の影響、競合企業の動きなどを、個人が本業や家庭生活の合間に追い続けるのは簡単ではありません。結果として、なぜ上がっているのか、なぜ下がっているのかわからない銘柄が増えていきます。
これは分散投資というより、管理放棄に近い状態です。
さらに、銘柄を増やしすぎるとリターンも薄まりやすくなります。たとえば100万円を20銘柄に分けた場合、1銘柄あたりの投資額は5万円です。そのうち1銘柄が10%上昇しても、利益は5,000円です。ポートフォリオ全体では0.5%の上昇にしかなりません。
もちろん、大きな損失を避けるという意味で分散には価値があります。しかし、初心者が最初から多くの銘柄を持ちすぎると、学びも管理も中途半端になりがちです。
動画では、最初は3銘柄までを目安にすることが勧められています。慣れてきて、決算やニュースを読む力がついてきたら、最大5銘柄程度まで増やすのはよいでしょう。ただし、それ以上に増やす場合は「なぜ管理できるのか」という理由が必要です。
重要なのは、常に同じ3銘柄を持ち続けることではありません。管理できる数に絞り、必要に応じて入れ替えることです。銘柄にしがみつくのではなく、管理可能な範囲で投資を続けることが大切です。
第2の鉄則:すべての取引を記録する
投資で上達するためには、取引の記録が欠かせません。
記録といっても、長い日記を書く必要はありません。動画では、記録する内容は4つだけでよいとされています。
1つ目は、なぜその株を買ったのか。
2つ目は、どの価格で損切りするのか。
3つ目は、保有期間中の株価変動の理由。
4つ目は、なぜ売ったのか。
これだけです。しかも、それぞれ1行から2行程度で十分です。長く書こうとすると続かなくなります。投資記録は、完璧な文章を書くことよりも、続けることの方が重要です。
たとえば、半導体設備投資サイクルが改善していると判断して東京エレクトロンを買ったとします。その場合、「半導体設備投資サイクルが改善しているため購入。損切りラインは現在価格からマイナス10%」と記録します。
その後、株価が3%下落した場合には、「米国の関税関連ニュースが一因と見られる。ただし半導体設備投資の前提はまだ崩れていないため保有継続」と書きます。
そして損切りラインに達したら、「損切りラインに到達。主要顧客の設備投資計画に延期報道が出たため売却」と記録します。
このように書いておけば、後で自分の判断を振り返ることができます。
投資は将棋に似ています。将棋では、対局後に「どの手が良かったのか」「どこで間違えたのか」を振り返る感想戦が重要です。投資も同じです。記録がなければ振り返れません。振り返れなければ、同じ失敗を繰り返してしまいます。
さらに、記録にはもう1つ大きな効果があります。それは、買う前に考えることを強制してくれることです。
もし「なぜ買うのか」を書けないなら、その取引は見送るべき可能性が高いです。なんとなく上がりそう、SNSで話題だから、株価が下がったからという理由だけでは、冷静な判断とは言えません。
第3の鉄則:寄り付きから1時間は取引しない
東京証券取引所は通常9時に取引が始まります。しかし、動画では9時から10時までの1時間は取引を避けることが勧められています。
理由は、この時間帯が最も感情的な注文が入りやすいからです。
寄り付き直後に株価が上がると、「早く買わないと乗り遅れる」と感じる人が増えます。反対に、寄り付き直後に株価が下がると、「まずい、逃げなければ」とパニック売りが出やすくなります。
この時間帯は、前日の米国市場の影響、ニュース、決算発表、為替の変動などが一気に織り込まれるため、値動きが荒くなりやすいです。そこに個人投資家の焦りや恐怖が重なるため、冷静な判断が難しくなります。
同じように、大引け前の30分も注意が必要です。ポジション整理や需給調整が入り、値動きが大きくなることがあります。
比較的落ち着いて判断しやすいのは、寄り付き直後の混乱が過ぎた後の10時台から14時台あたりです。ただし、これは絶対的なルールではありません。重要なのは、何時何分に買うかではなく、買う理由が十分かどうかです。
投資は占いではありません。「10時14分がよい」「10時32分がよい」といった細かい時間にこだわるよりも、何を買うのか、なぜ買うのかに時間を使うべきです。
第4の鉄則:長期投資は1つの銘柄を長く持つことではない
多くの人は、長期投資とは1つの銘柄を長く持ち続けることだと考えています。
しかし、動画ではこの考え方に注意を促しています。株価が30%下がっても「長期投資だから売らない」、50%下がっても「いつか戻るはず」と耐え続け、70%下がってからようやく諦める。これは長期投資ではなく、長期苦行です。
長期投資の本質は、特定の銘柄にしがみつくことではありません。株式市場の中に長く生き残ることです。
市場に長く残るために最も重要なのは、大きな損失を避けることです。1度の大きな損失で資金が半分になれば、元に戻すには100%のリターンが必要になります。これは非常に大変です。
たとえば、100万円が50万円になった場合、50万円を100万円に戻すには50万円の利益が必要です。つまり、残った資金に対して100%増やさなければなりません。
だからこそ、損切りは重要です。
損切りと聞くと、短期売買のためのものだと思う人もいるかもしれません。しかし、損切りは市場に残り続けるための防衛策です。10%の損失で損切りすれば、資金の90%は残ります。その90%で次のチャンスを狙うことができます。
一方で、損切りを先延ばしにすると、10%の損失が30%、50%へと拡大することがあります。そうなると、資金だけでなく、自信や冷静さも失ってしまいます。
成功した投資家の話では、「1つの銘柄を10年持って10倍になった」という例がよく語られます。しかし、その裏には同じように1つの銘柄を持ち続けて大損した人もいます。そうした人たちは表に出てきません。
これを生存者バイアスと呼びます。成功例だけを見て、同じことをすれば自分も成功できると考えるのは危険です。
第5の鉄則:許容できる損失額から投資額を決める
投資額は「いくら持っているか」で決めるのではなく、「いくら失っても大丈夫か」で決めるべきです。
たとえば、10万円の損失なら生活にも睡眠にも判断力にも影響しないとします。その場合、損切りラインを10%に設定するなら、投資額は100万円になります。
一方、5万円の損失が限界なら、同じく損切りライン10%を前提にすると、投資額は50万円です。
このように、許容できる損失額から逆算して投資額を決めると、株価が少し下がっても慌てにくくなります。最初から「ここまでは損する可能性がある」と受け入れているからです。
反対に、全財産を1つの銘柄に入れてしまうと、たった3%の下落でも眠れなくなるかもしれません。その3%が数か月分の生活費に相当する可能性があるからです。
恐怖の中で下す判断は、かなりの確率で間違います。だからこそ、投資を始める前に、自分が冷静でいられる損失額を決めておくことが大切です。
第6の鉄則:レバレッジに安易に手を出さない
2倍ETF、3倍ETF、先物、オプションなどは、利益も損失も大きくなりやすい商品です。
レバレッジ商品は、うまくいけば大きく儲かります。しかし、損をする時も大きく損をします。一見すると公平に見えますが、実際には損失から回復するためには、下落率以上の上昇率が必要になります。
たとえば、2倍レバレッジの商品で対象指数が10%下がった場合、単純化すると約20%の損失になります。そこから元本に戻すには、25%の上昇が必要です。
さらに、多くのレバレッジETFは日々リセットされる仕組みのため、上下を繰り返す相場では、長期の指数変動と大きくずれることがあります。相場が横ばいでも、値動きの荒さによって資産が削られることもあります。
また、レバレッジ商品は心理的にも危険です。儲かった時の快感が強いため、もっと取引したくなります。取引頻度が増えると、手数料やスリッページなどのコストも増えます。気づけば投資ではなく、ゲームのような感覚になってしまうことがあります。
本来、投資は退屈であるべきです。投資が刺激的で楽しくてたまらないと感じる場合、リスクを取りすぎている可能性があります。
特に先物は、プロ向けの道具です。プロほど利益が出た後にすぐポジションを閉じる規律を重視します。個人投資家が同じ規律を毎回守るのは簡単ではありません。だからこそ、初心者は最初から安易に手を出さない方がよいのです。
第7の鉄則:少額でも始める
「手元に5万円や10万円しかないから、投資しても意味がない」と考える人は少なくありません。
しかし、動画ではこの考え方は間違いであり、むしろ危険だと説明されています。
たとえば、10万円を年10%で30年間運用できたと仮定すると、約174万円になります。さらに毎年10万円ずつ追加できれば、条件次第では30年後に約1,800万円規模まで積み上がる可能性があります。
もちろん、毎年10%で安定して運用できる保証はありません。この数字は、時間と複利の力を示すための例です。
少額投資には大きなメリットがあります。それは、失敗しても致命傷になりにくいことです。致命傷になりにくいから慌てにくく、慌てにくいから冷静な判断ができます。冷静な判断ができれば、市場に残り続けることができます。
逆に、何年もかけて100万円を貯め、それを一度に全額投入し、最初の月に15%下がったらどうでしょうか。15万円の損失です。多くの人はパニックになり、恐怖で売ってしまうかもしれません。
少額で始めた人の方が、むしろ長く続けやすいのです。大切なのは、金額の大きさではありません。始めることです。
新NISAのつみたて投資枠などは、長期積み立ての入り口として使いやすい制度の1つです。毎月少額を自動で積み立て、頻繁に触らない仕組みを作ることで、感情に左右されにくい投資がしやすくなります。
第8の鉄則:初心者のポートフォリオは学びを重視する
動画では、初心者が50万円で投資を始める場合の考え方の一例として、次のような配分が紹介されています。
40%をTOPIXまたは日経225に連動するインデックスETFに投資する。
20%を中小型株ETFに投資する。
40%を自分が注目している個別株1銘柄に投資する。
この配分の目的は、単に利益を狙うことだけではありません。学びを得ることです。
インデックスETFは、日本株全体の値動きを取り込むための基本部分です。個別銘柄を選ぶ力がまだ十分でない段階でも、市場全体の成長や企業利益に参加できます。
中小型株ETFは、成長性を加える役割があります。中小型株は値動きが大きくなりやすい一方で、うまく成長すればリターンの源泉にもなります。
そして、残り40%を個別株1銘柄に投資するのは、観察と検証のためです。
なぜ1銘柄なのかというと、複数の個別株を同時に買うと、自分の判断が正しかったのか間違っていたのかが見えにくくなるからです。
たとえば、ソニーとトヨタを同時に買い、片方が上がり、片方が下がったとします。この時、自分の銘柄選択のロジックが正しかったのかを検証するのは難しくなります。
しかし、1銘柄だけ選べば、上がった時にはなぜ判断が正しかったのかを分析できます。下がった時には何を間違えたのかを振り返れます。
投資は一度きりの勝負ではありません。一生続けていくものです。だからこそ、初期段階では目先の利益よりも、判断力を育てることが重要です。
第9の鉄則:高配当を追いかけない
退職が近い人や退職後の人は、高配当株に魅力を感じやすいです。毎年配当金が入ってくれば、安全で安定しているように見えるからです。
しかし、高配当だから安全とは限りません。
配当利回りが高い会社の中には、株価が下がったことで利回りが高く見えているだけの会社もあります。たとえば、株価が下がれば、同じ配当額でも利回りは高く見えます。しかし、その背景に業績悪化や成長鈍化があるなら、元本が継続的に目減りしている可能性があります。
配当を受け取っていても、株価下落による損失の方が大きければ、トータルでは損をしていることになります。
退職世代にとって安全性を高める方法は、高配当株を選ぶことだけではありません。むしろ、投資額そのものを抑える方が効果的な場合があります。
たとえば、退職金が1,000万円あるとして、その全額を高配当株に入れるのは大きなリスクです。代わりに、200万円だけインデックスETFに投資し、残り800万円は安全性の高い場所に置くという考え方もあります。
この場合、リスクにさらされているのは1,000万円ではなく200万円です。安全そうな銘柄を探すよりも、リスクにさらす金額を減らす方が、結果的に安全性を高めやすいことがあります。
追加解説:投資は自己責任であり、自分へのプレゼントでもある
投資の世界では、「投資判断は自己責任です」という言葉がよく使われます。これは法律的にも実務的にも正しい表現です。
ただし、この言葉は冷たく聞こえることもあります。「損をしても知りません」と言われているように感じる人もいるでしょう。
しかし、自己責任とは突き放す言葉ではなく、自分の未来を自分で作るという意味でもあります。
責任ある判断をするためには、知識、規律、経験が必要です。この3つは、短期間で一気に身につくものではありません。時間をかけて少しずつ積み上げていくものです。
最初からすべてを完璧に学ぶ必要はありません。まずは3銘柄までに絞る。取引理由を記録する。寄り付き1時間の取引を避ける。損切りラインを決める。少額から始める。
どれも難しいことではありません。しかし、実際にやらなければ意味がありません。
投資のリスクは、お金を失うことだけではありません。長い目で見れば、何も始めないこともリスクになり得ます。物価が上がり続ける環境では、現金の価値が少しずつ目減りすることもあります。ただし、そのリスクは見えにくいため、多くの人が気づきにくいのです。
まとめ:投資で大切なのは一発勝負ではなく生き残ること
今回の動画で語られていた内容は、どれも非常にシンプルです。
同時に持つ銘柄はまず3銘柄までにする。
毎回の取引で、買った理由、損切りライン、値動きの理由、売った理由を記録する。
寄り付きから1時間は取引を避ける。
長期投資とは、1つの銘柄にしがみつくことではなく、市場に長く残ることである。
許容できる損失額から逆算して投資額を決める。
レバレッジに安易に手を出さない。
少額でも始める。
初心者はインデックスETF、中小型株ETF、個別株1銘柄という形で学びを重視する。
高配当を追いかけすぎない。
どれも理解するだけなら難しくありません。しかし、相場が動き、ニュースが流れ、株価が上下する中で守り続けるのは簡単ではありません。
投資で大切なのは、短期間で大きく儲けることではなく、市場に残り続けることです。大きな損失を避け、記録を取り、少しずつ判断力を磨いていく。その積み重ねが、長期的な成果につながります。
投資は派手な勝負ではなく、習慣の積み重ねです。今日から小さく始め、学び続けることが、将来の自分への大きなプレゼントになるのです。


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